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2章「宝石が並ぶ村」
52話「柔らかヘキオン!」
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「スプリングさんってアルビアーナだったんですね」
ボソッと言うヘキオン。特にコソコソ言うような話では無いはずだが、なぜか小さい声で話す。
「そうだ」
「だから真っ黒な服を着てたんですね」
「アルビアーナは紫外線に弱いからな。ずっと服を着てないと肌が死ぬ」
「そうなんですね……確かに妹さんも白かったな」
「妹は正確に言うとアルビアーナでは無い」
頭を傾げるヘキオン。
「いや……なんて言ったらいいんだろうかな。アルビアーナからは遠いが、アルビアーナの血は引いている。……でもそうなると俺もアルビアーナでは無いしな……」
「どういうことですか?」
「簡単に言うとだな、妹と俺はアルビアーナと妖精のハーフなんだ。俺の場合はほとんどアルビアーナの遺伝子でできているんだが、妹は俺よりも妖精の遺伝子が強いんだ。だから俺と違って肌を多少露出しても大丈夫だし、可愛い」
「へぇ~」
納得そうに聞く。純粋なアルビアーナでは無いが、それでも狙われるだけの価値はある。クリスタリアンたちに言ったことも嘘では無いのだろう。
村の中心。宝石のように綺麗なレンガでできた大きな家。明らかに特別な家の前に立っていた。
「すごく綺麗……」
「地上では建てられない素材を使ってるからな」
「地上では建てられない素材?」
「この地下の1番ちょうどいい気圧でのみ最大限効力を発揮できる。気圧が高くても、低くても本来の強度にはならない。1番美しいのもこの気圧だけだ」
これまた美しい宝石でできたドアを開けて中に入った。
中は広く、こざっぱりとしている。水族館のような青色の光が上から注がれおり、床はその光をサポートするかのように輝かせていた。
「リーダー!」
家の中心に座っている男に声をかける。ヘキオン側からは後ろ姿しか見えない。椅子は豪華で金持ちが使っているような形をしている。
「――人間?なぜここに通した?」
「あの……片方はアルビアーナだったので信頼できるかと……」
椅子から立ち上がる。ゆっくりとこっちを向く姿はまるで賢者。全てを知り尽くしているような、圧倒的オーラを感じ取れる。
その姿。年齢は30~40ほどか。つい最近エルフの村にいたせいか、村長にしてはとても若く見える。細かい髭も生えているが、全てが宝石なので汚らしい印象はない。むしろ綺麗なほどだ。
「……なるほど。男の方は確かにアルビアーナだな」
軽く見ただけ。フードを被って皮膚がほとんど見えないはずのスプリングを人目でアルビアーナだと見抜いた。なかなかの観察眼。もはや透視能力でも持っているのではないかとも思う。
「だからといってなぜ信頼する理由になる」
「……知ってるだろうが、アルビアーナはほとんど絶滅したと言ってもいい状態だ。そんな状態でお前らを襲って人に売りに行くのは、鴨が葱を背負って来るようなものだ」
じっと見つめるクリスタリアンの村長。
「……そうだな。だが残念ながら完全に信頼できたわけではない。でも話ぐらいは聞いてやる。こっちに来て座りなさい」
「さてと……色々と聞きたいのだろう。だがな――」
両頬をツンツンと触られるヘキオン。触っているのはクリスタリアンの少女たちだ。
「人間って柔らかいねぇ~」
「私こんなに柔らかいもの初めて~」
ムニムニと柔らかいヘキオンの頬を触る。ヘキオンは恥ずかしそうにしていた。
ため息をつく村長。
「……あー。すまない。なにしろ娘たちは人間どころか、クリスタリアン以外の種族に会ったことがないからな。初めての人間に興味深いのだよ」
「あ、あははー。大丈夫です――ひゃ!?」
脇腹をぷにぷにつつかれる。さすがにくすぐったかったのか、気の抜けた声を出してしまった。カエデが羨ましがりそうな状況だ。
「ねぇねぇお兄さんも触っていいー?」
「……いいぞ」
ヘキオンの肩からスプリングの肩へと飛び移る。重さは人間よりも軽いので、飛び乗られた時の反動はそこまでなかった。
「私も私もー」
ヘキオンの膝に乗っていた少女もスプリングに飛び乗る。2人はヘキオンの時と同じように、スプリングの腹筋と頬を触っていた。
「……私たちよりかは柔らかいけどー」
「――やっぱりお姉ちゃんの方がいいや」
今度はヘキオンに飛び乗る2人。子供なのでやはりアグレッシブだ。
ちょっとショックを受けているスプリング。そういう感情が合ったのは驚きだ。
「お姉ちゃんの太もも柔かーい」
「わひゃ!?」
太ももを撫でられる。少女の小さな手がくすぐったさを倍増させているのだろう。あと太ももを撫でられることはないというのも原因のひとつだろう。彼女か彼氏でも居れば別だが。
「お胸ってこんなに柔らかかったんだぁ……ママより小さいけど柔らかい……ボフ」
「ふぁ!?……やっ……うぅ……」
胸に顔を疼くめる少女。ヘキオンの胸は割とある。それこそ人の顔をうずくめさせられるぐらいは。
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする。アクティブ系少女と言っても、やはり女の子。子供とはいえ、人前で顔をうずくめられると死ぬほど恥ずかしい。……カエデが居れば血涙を流して羨ましがりそうだ。
気まずそうな男二人。ヘキオンから顔を逸らしている。スプリングはともかく、村長の方も紳士だったようだ。
「――お、お前たち。さ、ささ、触らせてもらうのは後にしてもらいなさい。これから大事な話をしないといけないんだ」
「はーい」
渋々ヘキオンの体から降りる少女たち。
「じゃあお姉ちゃんまた後でねー」
2人は家の2階へと歩いていった。
続く
ボソッと言うヘキオン。特にコソコソ言うような話では無いはずだが、なぜか小さい声で話す。
「そうだ」
「だから真っ黒な服を着てたんですね」
「アルビアーナは紫外線に弱いからな。ずっと服を着てないと肌が死ぬ」
「そうなんですね……確かに妹さんも白かったな」
「妹は正確に言うとアルビアーナでは無い」
頭を傾げるヘキオン。
「いや……なんて言ったらいいんだろうかな。アルビアーナからは遠いが、アルビアーナの血は引いている。……でもそうなると俺もアルビアーナでは無いしな……」
「どういうことですか?」
「簡単に言うとだな、妹と俺はアルビアーナと妖精のハーフなんだ。俺の場合はほとんどアルビアーナの遺伝子でできているんだが、妹は俺よりも妖精の遺伝子が強いんだ。だから俺と違って肌を多少露出しても大丈夫だし、可愛い」
「へぇ~」
納得そうに聞く。純粋なアルビアーナでは無いが、それでも狙われるだけの価値はある。クリスタリアンたちに言ったことも嘘では無いのだろう。
村の中心。宝石のように綺麗なレンガでできた大きな家。明らかに特別な家の前に立っていた。
「すごく綺麗……」
「地上では建てられない素材を使ってるからな」
「地上では建てられない素材?」
「この地下の1番ちょうどいい気圧でのみ最大限効力を発揮できる。気圧が高くても、低くても本来の強度にはならない。1番美しいのもこの気圧だけだ」
これまた美しい宝石でできたドアを開けて中に入った。
中は広く、こざっぱりとしている。水族館のような青色の光が上から注がれおり、床はその光をサポートするかのように輝かせていた。
「リーダー!」
家の中心に座っている男に声をかける。ヘキオン側からは後ろ姿しか見えない。椅子は豪華で金持ちが使っているような形をしている。
「――人間?なぜここに通した?」
「あの……片方はアルビアーナだったので信頼できるかと……」
椅子から立ち上がる。ゆっくりとこっちを向く姿はまるで賢者。全てを知り尽くしているような、圧倒的オーラを感じ取れる。
その姿。年齢は30~40ほどか。つい最近エルフの村にいたせいか、村長にしてはとても若く見える。細かい髭も生えているが、全てが宝石なので汚らしい印象はない。むしろ綺麗なほどだ。
「……なるほど。男の方は確かにアルビアーナだな」
軽く見ただけ。フードを被って皮膚がほとんど見えないはずのスプリングを人目でアルビアーナだと見抜いた。なかなかの観察眼。もはや透視能力でも持っているのではないかとも思う。
「だからといってなぜ信頼する理由になる」
「……知ってるだろうが、アルビアーナはほとんど絶滅したと言ってもいい状態だ。そんな状態でお前らを襲って人に売りに行くのは、鴨が葱を背負って来るようなものだ」
じっと見つめるクリスタリアンの村長。
「……そうだな。だが残念ながら完全に信頼できたわけではない。でも話ぐらいは聞いてやる。こっちに来て座りなさい」
「さてと……色々と聞きたいのだろう。だがな――」
両頬をツンツンと触られるヘキオン。触っているのはクリスタリアンの少女たちだ。
「人間って柔らかいねぇ~」
「私こんなに柔らかいもの初めて~」
ムニムニと柔らかいヘキオンの頬を触る。ヘキオンは恥ずかしそうにしていた。
ため息をつく村長。
「……あー。すまない。なにしろ娘たちは人間どころか、クリスタリアン以外の種族に会ったことがないからな。初めての人間に興味深いのだよ」
「あ、あははー。大丈夫です――ひゃ!?」
脇腹をぷにぷにつつかれる。さすがにくすぐったかったのか、気の抜けた声を出してしまった。カエデが羨ましがりそうな状況だ。
「ねぇねぇお兄さんも触っていいー?」
「……いいぞ」
ヘキオンの肩からスプリングの肩へと飛び移る。重さは人間よりも軽いので、飛び乗られた時の反動はそこまでなかった。
「私も私もー」
ヘキオンの膝に乗っていた少女もスプリングに飛び乗る。2人はヘキオンの時と同じように、スプリングの腹筋と頬を触っていた。
「……私たちよりかは柔らかいけどー」
「――やっぱりお姉ちゃんの方がいいや」
今度はヘキオンに飛び乗る2人。子供なのでやはりアグレッシブだ。
ちょっとショックを受けているスプリング。そういう感情が合ったのは驚きだ。
「お姉ちゃんの太もも柔かーい」
「わひゃ!?」
太ももを撫でられる。少女の小さな手がくすぐったさを倍増させているのだろう。あと太ももを撫でられることはないというのも原因のひとつだろう。彼女か彼氏でも居れば別だが。
「お胸ってこんなに柔らかかったんだぁ……ママより小さいけど柔らかい……ボフ」
「ふぁ!?……やっ……うぅ……」
胸に顔を疼くめる少女。ヘキオンの胸は割とある。それこそ人の顔をうずくめさせられるぐらいは。
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする。アクティブ系少女と言っても、やはり女の子。子供とはいえ、人前で顔をうずくめられると死ぬほど恥ずかしい。……カエデが居れば血涙を流して羨ましがりそうだ。
気まずそうな男二人。ヘキオンから顔を逸らしている。スプリングはともかく、村長の方も紳士だったようだ。
「――お、お前たち。さ、ささ、触らせてもらうのは後にしてもらいなさい。これから大事な話をしないといけないんだ」
「はーい」
渋々ヘキオンの体から降りる少女たち。
「じゃあお姉ちゃんまた後でねー」
2人は家の2階へと歩いていった。
続く
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