51 / 117
2章「宝石が並ぶ村」
51話「地下に住む宝石たち!」
しおりを挟む
「やはりいたか……クリスタリアン」
スプリングが嬉しそうにボソッと呟いた。
「クリスタリアン?」
「宝石族と呼ばれているヤツらだ。体の外も中も全てが宝石でできている。ここら辺にいるって噂は聞いていたんだが……やっぱり本当だったんだ」
妹を褒められた時と同じぐらいに喜んでいる。それほどまで嬉しいのだろう。
「とりあえずあの人たちに話を聞けば地上に出られますかね?」
「さぁな。でも聞いてみる価値はありそうだ」
意見の一致。2人はクリスタリアンたちの村へと歩いていった。
第1村人発見。村の入口付近にいた1人の少女。無愛想なスプリングの前にヘキオンが立つ。感情が顔に出るヘキオンの方がここは無難だろう。
「こんにちはお嬢ちゃん。ちょっとお話聞かせてくれない?」
優しく微笑みかけるヘキオン。まるで聖母……身長と見た目とオーラは、母というのには似つかないが。
少女がヘキオンをじっと見つめている。じっと。
「……」
「……あの?」
手を振る。目の前の自分が見えているかを確認している。
「……」
「……き、聞こえてるかな~?」
「――に、人間だァァァァァァ!!」
「「!?」」
突如少女が叫んだ。ドームの空間に反響しまくる子供の高い声。キーンと耳鳴りがするほど。思わず耳を塞ぐ2人。
「え?え?ど、どうしたの?」
「人間だァ!!人間が来たぞーー!!」
「え?ちょっと――」
村の奥へと走り去る少女。ヘキオンが止める暇もなかった。
キョトンとするヘキオン。突然のことすぎて固まっていた。
「……な、なんなんだろう?」
「――動くな!!」
ゾロゾロとクリスタリアンが出てくる。手に持つは槍。向けられた刃はヘキオンとスプリング。刃も透明感のある宝石でできていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「何をしに来た人間!!いや、それよりもどこでここの情報を手に入れた!!」
前に並ぶクリスタリアンのうちの1人が問いかける。後ろにも配置されており、逃げることはできなさそうだ。
「話を聞いてください!私たちは遭難しちゃって――」
「人間の言うことなど信じられるか!!」
ヘキオンの言葉を遮るように叫ぶ。
「……ならなんで聞いたの……」
不満そうにボソッと呟いたのだった。
「下がっていろ」
後ろにヘキオンを押しのける。前に乗り出すスプリング。
「大丈夫なんですか?」
「まぁ待っていろ。――おい!人間はしんじられないんだろう!?」
前と後ろに並ぶクリスタリアンに叫ぶ。
「……どういう意味だ」
「俺をちゃんと見てみろ」
フードを脱いだ。髪。肌。まつ毛に眉毛。唇。口の中までも真っ白。瞳は真っ赤だが、周りの白でそれが目立つ。
袖をまくる。顔と同じように真っ白で筋肉質な腕がさらけ出された。真っ白の肌。爪もその中身まで真っ白だ。
「なっっ――」
「俺が何者かわかったか?」
「――アルビアーナか」
恐る恐る呟くクリスタリアン。こくりと頷くスプリング。
「アルビアーナ……あ!あのアルビアーナ!」
ヘキオンも理解したようで、手をポンと叩いた。
アルビアーナ。クリスタリンと同じく、輪郭や形は人間と一緒。食べるものも一緒。髪は普通に映えてるし、肌の質感も一緒。
しかし色が違う。違うと言うとなんだか語弊を産むかもしれないが、まぁとにかく違う。
真っ白。ほとんど全てが真っ白。爪も真っ白。腕も真っ白。脚も髪も真っ白。瞳以外は全てが真っ白。それも完全な白。
内蔵とも白だ。心臓も血液も赤色なんかでは無い。真っ白。絵の具のように白い。
その白さ。幻想的なほど美しい白さ。それこそその肌を欲しいと思えるほど。
アルビアーナは昔から肌や髪の毛を狙われてきた。その髪は服に、その肌は家具に、その血液は薬にされると言われている。
昔から人々の間で『アルビアーナの内蔵を食べた者は不老不死になる』と言われている。
そんな噂が流れても普通なら『アホくさ』となって終わりだろう。だが、それでも信じるアホはいる。その結果がどうなるのか。想像するのは簡単であろう。
「まだ絶滅していなかったのか、アルビアーナ……」
「お前らを襲ったところで俺にメリットはない。……お前らも同じ境遇ならわかるだろ?」
優しく声をかける。クリスタリアンもその体から人間に狙われ続けてきた。同じく狙われ続けてきた者同士。
「……なぜ人間と?」
「成り行きだ。こいつも悪いやつじゃない……だよな?ヘキオン?」
「え?……ま、まぁそりゃあ。自分で言うのもなんか恥ずかしいですが……私はいい人です!」
胸を叩いて自分を示す。
「……いいだろう。殺すのは止めてやる」
槍を下ろす。とりあえず敵対するのはやめてくれたようだ。安心して肩を下ろすヘキオン。
「感謝する」
「ただ念の為だ。自由に動かせることはできないぞ」
「いい。それでいい。ヘキオンもそれでいいだろう」
「はい!」
フードを直すスプリング。
「ならまずはリーダーに会ってもらうぞ」
「え?リーダー?」
「まぁ村長のようなものだ。会ってもらうぞ。構わないな」
頷くヘキオン。歩くクリスタリアンに2人はついて行った。
続く
スプリングが嬉しそうにボソッと呟いた。
「クリスタリアン?」
「宝石族と呼ばれているヤツらだ。体の外も中も全てが宝石でできている。ここら辺にいるって噂は聞いていたんだが……やっぱり本当だったんだ」
妹を褒められた時と同じぐらいに喜んでいる。それほどまで嬉しいのだろう。
「とりあえずあの人たちに話を聞けば地上に出られますかね?」
「さぁな。でも聞いてみる価値はありそうだ」
意見の一致。2人はクリスタリアンたちの村へと歩いていった。
第1村人発見。村の入口付近にいた1人の少女。無愛想なスプリングの前にヘキオンが立つ。感情が顔に出るヘキオンの方がここは無難だろう。
「こんにちはお嬢ちゃん。ちょっとお話聞かせてくれない?」
優しく微笑みかけるヘキオン。まるで聖母……身長と見た目とオーラは、母というのには似つかないが。
少女がヘキオンをじっと見つめている。じっと。
「……」
「……あの?」
手を振る。目の前の自分が見えているかを確認している。
「……」
「……き、聞こえてるかな~?」
「――に、人間だァァァァァァ!!」
「「!?」」
突如少女が叫んだ。ドームの空間に反響しまくる子供の高い声。キーンと耳鳴りがするほど。思わず耳を塞ぐ2人。
「え?え?ど、どうしたの?」
「人間だァ!!人間が来たぞーー!!」
「え?ちょっと――」
村の奥へと走り去る少女。ヘキオンが止める暇もなかった。
キョトンとするヘキオン。突然のことすぎて固まっていた。
「……な、なんなんだろう?」
「――動くな!!」
ゾロゾロとクリスタリアンが出てくる。手に持つは槍。向けられた刃はヘキオンとスプリング。刃も透明感のある宝石でできていた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「何をしに来た人間!!いや、それよりもどこでここの情報を手に入れた!!」
前に並ぶクリスタリアンのうちの1人が問いかける。後ろにも配置されており、逃げることはできなさそうだ。
「話を聞いてください!私たちは遭難しちゃって――」
「人間の言うことなど信じられるか!!」
ヘキオンの言葉を遮るように叫ぶ。
「……ならなんで聞いたの……」
不満そうにボソッと呟いたのだった。
「下がっていろ」
後ろにヘキオンを押しのける。前に乗り出すスプリング。
「大丈夫なんですか?」
「まぁ待っていろ。――おい!人間はしんじられないんだろう!?」
前と後ろに並ぶクリスタリアンに叫ぶ。
「……どういう意味だ」
「俺をちゃんと見てみろ」
フードを脱いだ。髪。肌。まつ毛に眉毛。唇。口の中までも真っ白。瞳は真っ赤だが、周りの白でそれが目立つ。
袖をまくる。顔と同じように真っ白で筋肉質な腕がさらけ出された。真っ白の肌。爪もその中身まで真っ白だ。
「なっっ――」
「俺が何者かわかったか?」
「――アルビアーナか」
恐る恐る呟くクリスタリアン。こくりと頷くスプリング。
「アルビアーナ……あ!あのアルビアーナ!」
ヘキオンも理解したようで、手をポンと叩いた。
アルビアーナ。クリスタリンと同じく、輪郭や形は人間と一緒。食べるものも一緒。髪は普通に映えてるし、肌の質感も一緒。
しかし色が違う。違うと言うとなんだか語弊を産むかもしれないが、まぁとにかく違う。
真っ白。ほとんど全てが真っ白。爪も真っ白。腕も真っ白。脚も髪も真っ白。瞳以外は全てが真っ白。それも完全な白。
内蔵とも白だ。心臓も血液も赤色なんかでは無い。真っ白。絵の具のように白い。
その白さ。幻想的なほど美しい白さ。それこそその肌を欲しいと思えるほど。
アルビアーナは昔から肌や髪の毛を狙われてきた。その髪は服に、その肌は家具に、その血液は薬にされると言われている。
昔から人々の間で『アルビアーナの内蔵を食べた者は不老不死になる』と言われている。
そんな噂が流れても普通なら『アホくさ』となって終わりだろう。だが、それでも信じるアホはいる。その結果がどうなるのか。想像するのは簡単であろう。
「まだ絶滅していなかったのか、アルビアーナ……」
「お前らを襲ったところで俺にメリットはない。……お前らも同じ境遇ならわかるだろ?」
優しく声をかける。クリスタリアンもその体から人間に狙われ続けてきた。同じく狙われ続けてきた者同士。
「……なぜ人間と?」
「成り行きだ。こいつも悪いやつじゃない……だよな?ヘキオン?」
「え?……ま、まぁそりゃあ。自分で言うのもなんか恥ずかしいですが……私はいい人です!」
胸を叩いて自分を示す。
「……いいだろう。殺すのは止めてやる」
槍を下ろす。とりあえず敵対するのはやめてくれたようだ。安心して肩を下ろすヘキオン。
「感謝する」
「ただ念の為だ。自由に動かせることはできないぞ」
「いい。それでいい。ヘキオンもそれでいいだろう」
「はい!」
フードを直すスプリング。
「ならまずはリーダーに会ってもらうぞ」
「え?リーダー?」
「まぁ村長のようなものだ。会ってもらうぞ。構わないな」
頷くヘキオン。歩くクリスタリアンに2人はついて行った。
続く
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした
あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を
自分の世界へと召喚した。
召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと
願いを託す。
しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、
全く向けられていなかった。
何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、
将来性も期待性もバッチリであったが...
この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。
でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか?
だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし...
周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を
俺に投げてくる始末。
そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と
罵って蔑ろにしてきやがる...。
元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで
最低、一年はかかるとの事だ。
こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から
出ようとした瞬間...
「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」
...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。
※小説家になろう様でも掲載しています。

転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり
椿紅颯
ファンタジー
どの世界でも不遇職はやはり不人気。モンスターからは格好の標的にもなりえり、それは人間の汚い部分の標的にもなりやすい。
だが、なりたい自分、譲れない信念を貫いていく――
そんな主人公が己が力と仲間で逆境を切り開いていくそんな物語。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

救国の巫女姫、誕生史
ぺきぺき
ファンタジー
霊や妖による事件が起こる国で、それらに立ち向かうため新設された部署・巫覡院(ふげきいん)。その立ち上げに抜擢されたのはまだ15歳の少女だった。
少女は期待以上の働きを見せ、どんどん怪奇事件を解決していくが、事件はなくなることなく起こり続ける。
さらにその少女自身にもなにやら秘密がいっぱいあるようで…。
新米巫覡がやがて救国の巫女姫と呼ばれるようになるまでの雑用係の少年との日常と事件録。
ーーーー
毎日更新・最終話まで執筆済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる