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1章「対立するエルフの森」
34話「激熱、白熱、熱界雷!」
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轟く雷。弾ける水滴。
植物焦がす雷。波打つ水。
不規則に並ぶ木々をすり抜けながら高圧噴射で空を飛ぶヘキオン。撃たれる雷をスラスラと避け、アクアスプラッシュで反撃する。
麒麟は器用に木々を避けながらヘキオンを追う。青白い眼光が布を縫う1本の糸のようにくねりくねりと漂い続ける。
「――だりゃぁ!!」
水を拳の形にして麒麟にぶつける。鉄線のような雷がぶつけてきた水を一瞬で蒸発させた。
「だ、ダメか……」
倒れる木を避け、水を地面に叩きつけて木の葉を撒き散らせる。麒麟はそんな目隠しなどお構いなく突っ込んできた。
バシュ。
木の葉を電熱で溶かしながらヘキオンに向かって走る。色を変えて角を消せば、競走馬のようにも見えるだろう。それほどまでに美しいフォーム、美しい走り方であった。
作られる雷の刃。作るのとほとんど同時に発射される。
「ウォータースプラッシュ!!」
刹那、右手からなぞるように水を放出した。撃ち落とされる雷の刃たち。
空中に投げ出された純水。水は一点に集中し、それは球体の形へと変貌する。
「からの――ウォーターボール!!」
指の動きと連動するように水球が動く。高速で動き回る水球が辺りの木々を薙ぎ倒し、走っていく麒麟に向かって木を倒した。
今さら木を倒した程度で麒麟にダメージが入ることは無い。降ってくる木が麒麟の上空で弾けとんだ。弾けた木片が雨のように上から降り注いでゆく。
振り回した水球を拳の形に変化させる。
「ウォーターグラップ――」
その拳はミサイルのように麒麟へと向かっていった。撃墜しようと蒼雷を放出する。
雷が水を蒸発させる。それでも近く。近くへ水の拳が接近していく。
超接近。全ての水を蒸発させようと雷が水の拳に向かって走ってくる。当たれば全て蒸発させられるだろう。
その瞬間。水の拳は一気に収縮する。形も球体へと変転し、まるでビー玉のようにテカテカと光っていた。
金網のように敷き詰められている雷をすり抜け、麒麟の右頬に到達する。
「――ウォーターボム!!」
その時。その瞬間。その刹那。
収縮した水球が爆発的に膨張する。ビー玉からバランスボール、大岩の如き大きさへと。衝撃が麒麟の頬に直撃した。
体勢が崩れて近くにあった木に衝突する。
「――よっしゃ!!」
ヘキオンの声と共に地面に滑るように倒れる。弾けた雷が辺りを掘り起こしていった。
グラりと起きる麒麟。ダメージは見られない。しかしその顔には怒りが混じっていた。
ただの人間に攻撃を喰らう。自分が最強と疑わなかったプライドにヒビが入っているのは当然。
『ちょこまかちょこまかと……』
体内から溢れ出る雷。蒼く眩い光が麒麟を包み込んだ。
「――っありゃあ!!」
そんな麒麟の頬に蹴りを入れるヘキオン。手から水を高圧噴射し、その反動を使って攻撃をする。
頬を貫き、地面に着地する。その顔には希望のような……歓喜のような表情が見えていた。
「……やっぱり。強い衝撃とか、速い攻撃だったら反撃できないんだ」
ダラりと流れる鼻血。血は麒麟の口周りにまで流れる。
「やった!やっとダメージが入った!」
グッと喜ぶ。それとは対照的に麒麟は不快感を露わにしている。
「これなら私でも勝てちゃうかな……?」
ニヤリと笑う。それはまるでいたずらっ子の少女のようだ。
『はは……はは……』
力無く笑う。謎の不気味さに背筋がゾクリとする。
『ふふ……ふは……ふははは……ははは』
蒼く眩く光。浮かぶ細やかな砂鉄。弾けるような音を出す空間。
『いいだろう……いいだろう……ははは』
『はははははははははははははははは!!!』
まるで大きな波のように放出される雷。全方位に流れる大きな雷。もはやその場にいるだけで痺れてしまう。
『いいだろう!!身の程知らずの劣等種族め!!私が本気で貴様を殺してやる!!』
走る稲妻。ヘキオンはその威圧に圧倒されていた。
「ちょっと鼻血出ただけなのに……まぁいいよ。上等!!」
その怒りに呼応するように、ヘキオンは強く構えた。
続く
植物焦がす雷。波打つ水。
不規則に並ぶ木々をすり抜けながら高圧噴射で空を飛ぶヘキオン。撃たれる雷をスラスラと避け、アクアスプラッシュで反撃する。
麒麟は器用に木々を避けながらヘキオンを追う。青白い眼光が布を縫う1本の糸のようにくねりくねりと漂い続ける。
「――だりゃぁ!!」
水を拳の形にして麒麟にぶつける。鉄線のような雷がぶつけてきた水を一瞬で蒸発させた。
「だ、ダメか……」
倒れる木を避け、水を地面に叩きつけて木の葉を撒き散らせる。麒麟はそんな目隠しなどお構いなく突っ込んできた。
バシュ。
木の葉を電熱で溶かしながらヘキオンに向かって走る。色を変えて角を消せば、競走馬のようにも見えるだろう。それほどまでに美しいフォーム、美しい走り方であった。
作られる雷の刃。作るのとほとんど同時に発射される。
「ウォータースプラッシュ!!」
刹那、右手からなぞるように水を放出した。撃ち落とされる雷の刃たち。
空中に投げ出された純水。水は一点に集中し、それは球体の形へと変貌する。
「からの――ウォーターボール!!」
指の動きと連動するように水球が動く。高速で動き回る水球が辺りの木々を薙ぎ倒し、走っていく麒麟に向かって木を倒した。
今さら木を倒した程度で麒麟にダメージが入ることは無い。降ってくる木が麒麟の上空で弾けとんだ。弾けた木片が雨のように上から降り注いでゆく。
振り回した水球を拳の形に変化させる。
「ウォーターグラップ――」
その拳はミサイルのように麒麟へと向かっていった。撃墜しようと蒼雷を放出する。
雷が水を蒸発させる。それでも近く。近くへ水の拳が接近していく。
超接近。全ての水を蒸発させようと雷が水の拳に向かって走ってくる。当たれば全て蒸発させられるだろう。
その瞬間。水の拳は一気に収縮する。形も球体へと変転し、まるでビー玉のようにテカテカと光っていた。
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その時。その瞬間。その刹那。
収縮した水球が爆発的に膨張する。ビー玉からバランスボール、大岩の如き大きさへと。衝撃が麒麟の頬に直撃した。
体勢が崩れて近くにあった木に衝突する。
「――よっしゃ!!」
ヘキオンの声と共に地面に滑るように倒れる。弾けた雷が辺りを掘り起こしていった。
グラりと起きる麒麟。ダメージは見られない。しかしその顔には怒りが混じっていた。
ただの人間に攻撃を喰らう。自分が最強と疑わなかったプライドにヒビが入っているのは当然。
『ちょこまかちょこまかと……』
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「――っありゃあ!!」
そんな麒麟の頬に蹴りを入れるヘキオン。手から水を高圧噴射し、その反動を使って攻撃をする。
頬を貫き、地面に着地する。その顔には希望のような……歓喜のような表情が見えていた。
「……やっぱり。強い衝撃とか、速い攻撃だったら反撃できないんだ」
ダラりと流れる鼻血。血は麒麟の口周りにまで流れる。
「やった!やっとダメージが入った!」
グッと喜ぶ。それとは対照的に麒麟は不快感を露わにしている。
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『はは……はは……』
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『はははははははははははははははは!!!』
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『いいだろう!!身の程知らずの劣等種族め!!私が本気で貴様を殺してやる!!』
走る稲妻。ヘキオンはその威圧に圧倒されていた。
「ちょっと鼻血出ただけなのに……まぁいいよ。上等!!」
その怒りに呼応するように、ヘキオンは強く構えた。
続く
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