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1章「対立するエルフの森」
22話「友好関係を結べ!」
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「……え」
呆気にとられた表情で見上げるクエッテ。同じような顔でカエデを見つめるヘキオン。
「世界?言い方が悪いな……共存できる……山?まぁとにかくふたつの種族の仲を取り持ってやる」
「なっ……え?」
「その代わり、取りもてたら宝の場所を教えろよ」
目を丸くする2人。さっきまでとはまったく雰囲気が変わったことに違和感しかなかったのだろう。2人とも脳がショートしている。
そんな2人を有無を言わさずに抱える。まだ脳がショートしているようで、カエデに抱えられても反応していない。
「――へ?え?え?な、何してるんですか!?」
雑な抱えられ方に顔を真っ赤にしてジタバタと抗議するヘキオン。未だ状況が呑み込めてないクエッテ。
「鍛えるのはあとでクエッテにしてもらうつもりだからな。今はふたつの種族の仲を取り持つのが先だ」
「答えになってないんですけど!?」
ペチペチとカエデの頬を殴っている。
「クエッテ。古き者の柱の方向はこっちで合ってるか?」
「……え?あ、うん。合ってます……」
「よーし。……2人とも衝撃に備えろよ」
頭から?を出す2人を横目に、屈伸をして準備体操をするカエデ。
カエデはグッとしゃがんだ。ピキピキとふくらはぎと太ももが強ばる。2人を抱える力が強くなる。呼吸の長さが1回1回長くなる。
段々と変わるカエデの体を見た2人はなんとなくやろうとしていることがわかったようだ。
「え……う、嘘ですよね?ね?まさかそんなことしないですよね?」
「む、無茶だ。古き者の柱はここから5kmは先にあるんだぞ?」
「5kmだろ。近い近い」
「いや全然近くな――」
2人の言葉も虚しく、轟音の中へと消えていった。まるで弾丸のように飛び上がるカエデ。立っていたところの地面は隕石が落ちたかのように抉れていた。
「「いやァァァァァァ!!!!」」
2人の悲痛な叫びがもう一度……ヘキオンは3度目か。2人の悲痛な叫びが山の中にこだまするのだった。
木の家。燃える松明。山の岩壁に面した村があった。古臭い村とは不釣り合いな白い柱が岩壁に堂々と立っていた。
そんな村のとある家。
薄暗い部屋。松明の小さな光のみが部屋を照らしている。中は質素でよく分からない箱と藁の布団しか置かれていない。
「……クエッテ」
その布団の上で座っている男がいる。真っ黒の肌に動きやすそうな軽い服。顔は世間一般的にはイケメンと言えるだろう。
そんな男の手には木の丸いペンダントが握られてあった。白が多い木の球体。それを大事そうに、大事そうに撫でている。
「必ず……迎えに行ってやるからな」
そう男が呟いた瞬間だった。
隕石が落ちたかのような爆音が森に轟く。風圧はなかったはずだが、風圧を感じたと錯覚するほどの轟音だ。
反射的に耳を塞いで体を縮こめる男。仕方ないと言えば仕方ないが、なんかダサい。
「な、なんだ!?」
男は素早く外に出た。その先で見た景色は――。
「――死ぬかと思ったァァァァァ!!!!」
「高い速い痛い重い辛い怖い――」
涙目で叫ぶヘキオンと真っ青な顔でブルブル震えるクエッテがいた。
砂煙の中からヌルッとカエデが現れる。
「おー。ここが古き者の柱かー」
「――バカバカバカバカァ!!死ぬかと思った!!死ぬかと思ったァァ!!」
水を纏った拳でカエデをベチベチと叩くヘキオン。カエデはなんか幸せそうな顔になっていた。
「あははーごめんごめん。これが速かったし」
「せめてなんか言ってよぉぉぉ!!一瞬天国が見えたぁぁぁ!!」
一般人が喰らったら死にそうなくらいの威力の殴りをカエデにボコボコ放つヘキオン。信頼しているからこそできることなのだろう。……多分。
「く、クエッテ!?なんでここに!?」
「……ザッシュ!!」
家から出てきたザッシュに飛びつくクエッテ。まるで子供のように抱きついている。
「ちょっと、痛い痛い!どうしたんだ?」
「――あ、す、すまない」
バッと離れるクエッテ。真っ青だった顔は真っ赤に変わっていた。
「それは別にいいんだが――そいつらは誰だ」
敵意の目をカエデとヘキオンに向ける。見るからに怪しさ満点だからこればっかりは仕方ない。
「この人たちは……み、味方?なのかな?」
「味方の定義にもよるが俺からしたら味方だな」
「――そうか!よく来たな人間!」
パアッと満面の笑みになるザッシュ。さっきまでの敵視の目から一転、かつての友と再開したかのような優しい目付きになる。
「しっかしここに来る人間も珍しいな。俺も人間なんて数年ぶりに見たぞ!」
カエデの肩をバンバンと叩く。
「あれ?警戒しないのか?」
「クエッテが連れてきた人間なら悪いヤツじゃないんだろうしな」
「クエッテがじゃなくて、クエッテをだけどな」
笑い合う2人。なかなか気が合うようだ。
「……あなたがザッシュさんなんですか?」
「おう。俺がザッシュ。クエッテの自称夫だ」
明るい笑みを浮かべて話すザッシュ。その隣では恥ずかしそうにしているクエッテがいる。
「……自称じゃなくて本当だけど」
そうボソッと呟いたのをヘキオンは聞き逃さなかった。
続く
呆気にとられた表情で見上げるクエッテ。同じような顔でカエデを見つめるヘキオン。
「世界?言い方が悪いな……共存できる……山?まぁとにかくふたつの種族の仲を取り持ってやる」
「なっ……え?」
「その代わり、取りもてたら宝の場所を教えろよ」
目を丸くする2人。さっきまでとはまったく雰囲気が変わったことに違和感しかなかったのだろう。2人とも脳がショートしている。
そんな2人を有無を言わさずに抱える。まだ脳がショートしているようで、カエデに抱えられても反応していない。
「――へ?え?え?な、何してるんですか!?」
雑な抱えられ方に顔を真っ赤にしてジタバタと抗議するヘキオン。未だ状況が呑み込めてないクエッテ。
「鍛えるのはあとでクエッテにしてもらうつもりだからな。今はふたつの種族の仲を取り持つのが先だ」
「答えになってないんですけど!?」
ペチペチとカエデの頬を殴っている。
「クエッテ。古き者の柱の方向はこっちで合ってるか?」
「……え?あ、うん。合ってます……」
「よーし。……2人とも衝撃に備えろよ」
頭から?を出す2人を横目に、屈伸をして準備体操をするカエデ。
カエデはグッとしゃがんだ。ピキピキとふくらはぎと太ももが強ばる。2人を抱える力が強くなる。呼吸の長さが1回1回長くなる。
段々と変わるカエデの体を見た2人はなんとなくやろうとしていることがわかったようだ。
「え……う、嘘ですよね?ね?まさかそんなことしないですよね?」
「む、無茶だ。古き者の柱はここから5kmは先にあるんだぞ?」
「5kmだろ。近い近い」
「いや全然近くな――」
2人の言葉も虚しく、轟音の中へと消えていった。まるで弾丸のように飛び上がるカエデ。立っていたところの地面は隕石が落ちたかのように抉れていた。
「「いやァァァァァァ!!!!」」
2人の悲痛な叫びがもう一度……ヘキオンは3度目か。2人の悲痛な叫びが山の中にこだまするのだった。
木の家。燃える松明。山の岩壁に面した村があった。古臭い村とは不釣り合いな白い柱が岩壁に堂々と立っていた。
そんな村のとある家。
薄暗い部屋。松明の小さな光のみが部屋を照らしている。中は質素でよく分からない箱と藁の布団しか置かれていない。
「……クエッテ」
その布団の上で座っている男がいる。真っ黒の肌に動きやすそうな軽い服。顔は世間一般的にはイケメンと言えるだろう。
そんな男の手には木の丸いペンダントが握られてあった。白が多い木の球体。それを大事そうに、大事そうに撫でている。
「必ず……迎えに行ってやるからな」
そう男が呟いた瞬間だった。
隕石が落ちたかのような爆音が森に轟く。風圧はなかったはずだが、風圧を感じたと錯覚するほどの轟音だ。
反射的に耳を塞いで体を縮こめる男。仕方ないと言えば仕方ないが、なんかダサい。
「な、なんだ!?」
男は素早く外に出た。その先で見た景色は――。
「――死ぬかと思ったァァァァァ!!!!」
「高い速い痛い重い辛い怖い――」
涙目で叫ぶヘキオンと真っ青な顔でブルブル震えるクエッテがいた。
砂煙の中からヌルッとカエデが現れる。
「おー。ここが古き者の柱かー」
「――バカバカバカバカァ!!死ぬかと思った!!死ぬかと思ったァァ!!」
水を纏った拳でカエデをベチベチと叩くヘキオン。カエデはなんか幸せそうな顔になっていた。
「あははーごめんごめん。これが速かったし」
「せめてなんか言ってよぉぉぉ!!一瞬天国が見えたぁぁぁ!!」
一般人が喰らったら死にそうなくらいの威力の殴りをカエデにボコボコ放つヘキオン。信頼しているからこそできることなのだろう。……多分。
「く、クエッテ!?なんでここに!?」
「……ザッシュ!!」
家から出てきたザッシュに飛びつくクエッテ。まるで子供のように抱きついている。
「ちょっと、痛い痛い!どうしたんだ?」
「――あ、す、すまない」
バッと離れるクエッテ。真っ青だった顔は真っ赤に変わっていた。
「それは別にいいんだが――そいつらは誰だ」
敵意の目をカエデとヘキオンに向ける。見るからに怪しさ満点だからこればっかりは仕方ない。
「この人たちは……み、味方?なのかな?」
「味方の定義にもよるが俺からしたら味方だな」
「――そうか!よく来たな人間!」
パアッと満面の笑みになるザッシュ。さっきまでの敵視の目から一転、かつての友と再開したかのような優しい目付きになる。
「しっかしここに来る人間も珍しいな。俺も人間なんて数年ぶりに見たぞ!」
カエデの肩をバンバンと叩く。
「あれ?警戒しないのか?」
「クエッテが連れてきた人間なら悪いヤツじゃないんだろうしな」
「クエッテがじゃなくて、クエッテをだけどな」
笑い合う2人。なかなか気が合うようだ。
「……あなたがザッシュさんなんですか?」
「おう。俺がザッシュ。クエッテの自称夫だ」
明るい笑みを浮かべて話すザッシュ。その隣では恥ずかしそうにしているクエッテがいる。
「……自称じゃなくて本当だけど」
そうボソッと呟いたのをヘキオンは聞き逃さなかった。
続く
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