20 / 117
1章「対立するエルフの森」
20話「麗しきエルフの森!」
しおりを挟む
丁寧に作られた藁の家。広く取られたまっさらの木の柵。動物の皮が綺麗に干されており、真ん中の焚き火には多くのエルフが集まっていた。
子供のエルフ。青年のエルフ。老人のエルフ。年齢性別問わず、様々なエルフたちがそこにいた。
山の中にある不自然なほど平坦な大地。そこにクエッテの村があった。
「――ラペットガット村。ここが私たちが住んでいるところよ」
クエッテは村の扉を開けたのだった。
「おいクエッテ!!どういうつもりだ!!??」
クエッテが若い男に怒鳴られている。その後ろではビクビクしているヘキオンと平然としているカエデを軽蔑の眼差しで迎えるエルフたちがいた。
「……こうするしかなかった。とにかく村長に会わせて」
「会わせるわけないだろ!!今すぐその人間を殺せ!!そう命令されていただろ!!」
男がクエッテの胸元を掴んだ。親の仇を見るかのような目でクエッテを睨みつけている。
「おーおー野蛮だね。ちゃんと睡眠はとってるのか?」
「黙れ人間!!クエッテが殺さないなら俺が殺ってやる!!」
クエッテを突き放し、男がカエデの方に歩いてきた。腰から黒い短刀を取り出している。
ヘキオンはビビってカエデの後ろに隠れた。他人にここまで殺意を向けられるのは生まれて初めてだったからだろう。
「やめておけよ。クエッテは抵抗しなかったぞ?」
「それはあいつがビビりなだけだろ!!俺は違う!!俺はこの村で1番強いぞ!!」
大きい声を出して鼓舞をしている。しかしそれでは隠しきれない冷や汗が男の頬を通り過ぎた。
「ま、待って」
「ダメだ。こいつから仕掛けてくるんだ。殺されても仕方ないだろ。村人全員は殺さないさ」
制止しようとするクエッテを無視して男の方へ歩くカエデ。男は振り上げた短刀をカエデに向かって振り下ろしてきた――。
「やめんかァァァ!!!!!!」
瞬間。とんでもない怒号が村を包み込んだ。一瞬で男の動きが止まる。
怒号を放ったのは白髪の老エルフだった。鋭い眼光をしており、体には獣につけられたであろう傷が着いてあった。
「……村長……」
「……人間。用があるのは私だろ。来るなら来い」
「話が早いな」
ズカズカと背を向けて歩く村長にカエデは着いて行った。その後ろをヘキオンがさらにちょこちょこと着いていく。
「クエッテ。お前は休んでいろ」
「……はい」
クエッテに顔を向けることなく命令する。静かにクエッテは反応した。
「ダメだ。クエッテもこい」
「なっっ――調子に乗るなよ人間!!」
男がカエデに襲いかかろうとした。それを周りのエルフが制止する。
「――やめろ!!……わかった。すまないクエッテ。来てくれ」
「……分かりました」
村長に続くクエッテ。エルフの村の人々はそんな4人を無音で見つめていたのであった。
「――それで何の用だ人間」
村長の家。大きな椅子に腰掛け話す村長。隣にはクエッテ。その正面に立つのはカエデとヘキオン。
やはりと言うべきか、かなり険悪なムードが漂っていた。
「簡潔に言おう。おたくの村人さんに危うく殺されかけた。これは賠償ものなんじゃないかな?」
「……この森に勝手に入ってきた貴様らが悪いのだろう」
「この森はお前らの物じゃない」
鋭く突きつけられる眼光。ヘキオンはその眼光にたじろいでいた。
「話を聞くに……お前らは何かを隠しているようだったなぁ。もしやお宝だったりして……」
「貴様が望むようなものでは――いや、わかった。いいだろう」
「いいね。その決断の速さは好きだぞ」
カエデか指をパチンと鳴らした。
「――ただし。1つだけ願いがある。それを叶えてくれたら貴様らの望むものをやろう」
「……はぁ」
1つため息をつく。
「お前は立場を分かってるのか?別にやろうと思えばここにいるエルフを皆殺しにできるんだぞ」
「殺したら望みのものの場所も分からないぞ」
「なら体に聞くまでだ。徹底的に痛ぶって――」
「か、カエデさん!!」
ヘキオンが怒るように声を出した。さすがにやりすぎたと感じたらしい。
涙目でフルフルと怒るヘキオンを見たカエデはまた1つため息をついた。
「……ごめん。悪ふざけがすぎた。許してくれ」
「……ふん。許すわけないだろう。この村にズケズケと入り込んでおいてこの仕打ち……いつか必ず晴らしてやる」
「お前に言ってない。それに今ここで1番強いのは俺だ。決定権は全て俺にある。お前らは俺に従えば――」
「カエデさん!!」
「すまんすまん。もうやらない。君の前で無意味に乱暴なことはしないよ」
怒るヘキオンをなだめるように声を発する。
「……私から見るに、決定権はお前にはなさそうなんだがな」
「この子は例外だよ。……仕方ない。大人しく言うことを聞いてやる」
頭をポリポリとかきながらカエデは応えた。
続く
子供のエルフ。青年のエルフ。老人のエルフ。年齢性別問わず、様々なエルフたちがそこにいた。
山の中にある不自然なほど平坦な大地。そこにクエッテの村があった。
「――ラペットガット村。ここが私たちが住んでいるところよ」
クエッテは村の扉を開けたのだった。
「おいクエッテ!!どういうつもりだ!!??」
クエッテが若い男に怒鳴られている。その後ろではビクビクしているヘキオンと平然としているカエデを軽蔑の眼差しで迎えるエルフたちがいた。
「……こうするしかなかった。とにかく村長に会わせて」
「会わせるわけないだろ!!今すぐその人間を殺せ!!そう命令されていただろ!!」
男がクエッテの胸元を掴んだ。親の仇を見るかのような目でクエッテを睨みつけている。
「おーおー野蛮だね。ちゃんと睡眠はとってるのか?」
「黙れ人間!!クエッテが殺さないなら俺が殺ってやる!!」
クエッテを突き放し、男がカエデの方に歩いてきた。腰から黒い短刀を取り出している。
ヘキオンはビビってカエデの後ろに隠れた。他人にここまで殺意を向けられるのは生まれて初めてだったからだろう。
「やめておけよ。クエッテは抵抗しなかったぞ?」
「それはあいつがビビりなだけだろ!!俺は違う!!俺はこの村で1番強いぞ!!」
大きい声を出して鼓舞をしている。しかしそれでは隠しきれない冷や汗が男の頬を通り過ぎた。
「ま、待って」
「ダメだ。こいつから仕掛けてくるんだ。殺されても仕方ないだろ。村人全員は殺さないさ」
制止しようとするクエッテを無視して男の方へ歩くカエデ。男は振り上げた短刀をカエデに向かって振り下ろしてきた――。
「やめんかァァァ!!!!!!」
瞬間。とんでもない怒号が村を包み込んだ。一瞬で男の動きが止まる。
怒号を放ったのは白髪の老エルフだった。鋭い眼光をしており、体には獣につけられたであろう傷が着いてあった。
「……村長……」
「……人間。用があるのは私だろ。来るなら来い」
「話が早いな」
ズカズカと背を向けて歩く村長にカエデは着いて行った。その後ろをヘキオンがさらにちょこちょこと着いていく。
「クエッテ。お前は休んでいろ」
「……はい」
クエッテに顔を向けることなく命令する。静かにクエッテは反応した。
「ダメだ。クエッテもこい」
「なっっ――調子に乗るなよ人間!!」
男がカエデに襲いかかろうとした。それを周りのエルフが制止する。
「――やめろ!!……わかった。すまないクエッテ。来てくれ」
「……分かりました」
村長に続くクエッテ。エルフの村の人々はそんな4人を無音で見つめていたのであった。
「――それで何の用だ人間」
村長の家。大きな椅子に腰掛け話す村長。隣にはクエッテ。その正面に立つのはカエデとヘキオン。
やはりと言うべきか、かなり険悪なムードが漂っていた。
「簡潔に言おう。おたくの村人さんに危うく殺されかけた。これは賠償ものなんじゃないかな?」
「……この森に勝手に入ってきた貴様らが悪いのだろう」
「この森はお前らの物じゃない」
鋭く突きつけられる眼光。ヘキオンはその眼光にたじろいでいた。
「話を聞くに……お前らは何かを隠しているようだったなぁ。もしやお宝だったりして……」
「貴様が望むようなものでは――いや、わかった。いいだろう」
「いいね。その決断の速さは好きだぞ」
カエデか指をパチンと鳴らした。
「――ただし。1つだけ願いがある。それを叶えてくれたら貴様らの望むものをやろう」
「……はぁ」
1つため息をつく。
「お前は立場を分かってるのか?別にやろうと思えばここにいるエルフを皆殺しにできるんだぞ」
「殺したら望みのものの場所も分からないぞ」
「なら体に聞くまでだ。徹底的に痛ぶって――」
「か、カエデさん!!」
ヘキオンが怒るように声を出した。さすがにやりすぎたと感じたらしい。
涙目でフルフルと怒るヘキオンを見たカエデはまた1つため息をついた。
「……ごめん。悪ふざけがすぎた。許してくれ」
「……ふん。許すわけないだろう。この村にズケズケと入り込んでおいてこの仕打ち……いつか必ず晴らしてやる」
「お前に言ってない。それに今ここで1番強いのは俺だ。決定権は全て俺にある。お前らは俺に従えば――」
「カエデさん!!」
「すまんすまん。もうやらない。君の前で無意味に乱暴なことはしないよ」
怒るヘキオンをなだめるように声を発する。
「……私から見るに、決定権はお前にはなさそうなんだがな」
「この子は例外だよ。……仕方ない。大人しく言うことを聞いてやる」
頭をポリポリとかきながらカエデは応えた。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ゆとりある生活を異世界で
コロ
ファンタジー
とある世界の皇国
公爵家の長男坊は
少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた…
それなりに頑張って生きていた俺は48歳
なかなか楽しい人生だと満喫していたら
交通事故でアッサリ逝ってもた…orz
そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が
『楽しませてくれた礼をあげるよ』
とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に…
それもチートまでくれて♪
ありがたやありがたや
チート?強力なのがあります→使うとは言ってない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います
宜しくお付き合い下さい
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる