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1章「対立するエルフの森」
19話「聞きたいことがある!」
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「――あぅぅ……」
膝から崩れ落ちた。疲労と緊張が解けたことによるものだろう。
「か、勝てたぁぁぁ……」
ドサッと音を立てて地面に倒れる。そんなヘキオンの視界にカエデがヌルッと入ってきた。
「お疲れさん。アクアマジックは面白かったな。あんなのどうやって考えたんだ?」
「……クレインと戦った後、さすがにただ殴り合うだけだったら私は弱いって分かったんです。そもそも私は魔法使いだから耐久力は弱いですし。だからどうにかしようって……」
「そんなんならわざわざ近接戦闘なんてしなかったらいいのに」
流れている鼻血を拭きながらムクっと立ち上がる。
「もともと私は格闘家になりたかったんです。それなのにお母さんが『魔法使いになれ!』ってうるさかったから……それなら魔法使い格闘家を目指してやろうって」
「はは!やっぱり面白いなヘキオンは」
ヘキオンに手を貸して立ち上がらせた。
「――」
「……」
「……」
「……で、どうするんですか」
2人の目の前には縛られた女がいる。傍から見ればただの犯罪でしかない。
「どうするって……どうする?」
「これ見つからったらえらいことになりません!?そもそも倒す必要ってあったのかな……」
アワアワと慌ただしく動くヘキオン。それに対してカエデは冷静にしていた。
「こいつは俺らを殺す気だったんだ。何されても仕方ないよ。こいつのせいで俺らの荷物燃えたし」
「そうだけど……」
「それにな――」
カエデがニヤリと微笑む。
「もしかしたらここは、とんでもないところかもしれないぞ」
「へ?」
「この女と話した時『ここに侵入してきた者は殺せって言われてる』と言ってたんだ。……これは怪しいとしか言えないよなぁ……」
カエデが悪い顔をする。ヘキオンは若干引きながらカエデを見ていた。
女が目を覚ます。暴れるのかと思ったが、意外に冷静にしていた。
「――何が目的だ」
女が言葉を発した。話し方も冷静だ。下手したらヘキオンの方が焦っている。
「あ、あのっ「取り引きをしよう」
話をしようとするヘキオンを遮ってカエデが前に出た。
「お前の村に案内しろ。それと隠してることを話せ。そしたらある程度自由にしてやる」
「え?解放するんじゃ――」
「なわけないだろ。秘密をちゃーーーんと確認したら解放してやる」
ニヤニヤとしている。
「……断る……と言ったら?」
「言わなきゃ分からないか?」
「……ふん。分かった……村に案内しよう」
「頭のいい判断だな」
ヘキオンが縛っていた縄を切って女を解放する。襲われるのかちょっと心配だったのか、女に対してビクビクしている。
「名前は?」
「……クエッテ」
「よしクエッテ。まぁしないとは思うが、逃げようとするなよ。お前を殺すのに1秒もかからないことを覚えておけ」
クエッテに対して低い声で威嚇する。それに対してクエッテは無言で頷いた。
「そ、そんなに脅す必要ってあるんですか?」
カエデに対してボソッと呟いた。
「もしものためだよ。こんな森で逃げられると探すの面倒だし」
「でもすっごい警戒されてません?」
「だろうな。安心しろ、俺も警戒してるから」
「そ、そういうことじゃないんですけどぉ……」
若干涙目でヘキオンはカエデに抗議するのであった。
――次の日。
「ハァハァ……ちょ、ちょい……速いですぅ」
汗をダラダラ流しながら歩いているヘキオン。その前を歩くのはヘキオンとクエッテ。
「……あの子遅い」
「まだ修行中なんだ。許してやってくれ」
「私を倒したくせに……なんで?」
2人が立ち止まった。息を大きく切らしながら歩くヘキオンを2人でじっと見ている。
「……もうすぐよ。あと5kmぐらいで着くから」
「ぞ、それ……近くって言わないよ~~!!」
この森に入って2回目の悲痛な叫びが森に轟いたのだった。
続く
膝から崩れ落ちた。疲労と緊張が解けたことによるものだろう。
「か、勝てたぁぁぁ……」
ドサッと音を立てて地面に倒れる。そんなヘキオンの視界にカエデがヌルッと入ってきた。
「お疲れさん。アクアマジックは面白かったな。あんなのどうやって考えたんだ?」
「……クレインと戦った後、さすがにただ殴り合うだけだったら私は弱いって分かったんです。そもそも私は魔法使いだから耐久力は弱いですし。だからどうにかしようって……」
「そんなんならわざわざ近接戦闘なんてしなかったらいいのに」
流れている鼻血を拭きながらムクっと立ち上がる。
「もともと私は格闘家になりたかったんです。それなのにお母さんが『魔法使いになれ!』ってうるさかったから……それなら魔法使い格闘家を目指してやろうって」
「はは!やっぱり面白いなヘキオンは」
ヘキオンに手を貸して立ち上がらせた。
「――」
「……」
「……」
「……で、どうするんですか」
2人の目の前には縛られた女がいる。傍から見ればただの犯罪でしかない。
「どうするって……どうする?」
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「こいつは俺らを殺す気だったんだ。何されても仕方ないよ。こいつのせいで俺らの荷物燃えたし」
「そうだけど……」
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「もしかしたらここは、とんでもないところかもしれないぞ」
「へ?」
「この女と話した時『ここに侵入してきた者は殺せって言われてる』と言ってたんだ。……これは怪しいとしか言えないよなぁ……」
カエデが悪い顔をする。ヘキオンは若干引きながらカエデを見ていた。
女が目を覚ます。暴れるのかと思ったが、意外に冷静にしていた。
「――何が目的だ」
女が言葉を発した。話し方も冷静だ。下手したらヘキオンの方が焦っている。
「あ、あのっ「取り引きをしよう」
話をしようとするヘキオンを遮ってカエデが前に出た。
「お前の村に案内しろ。それと隠してることを話せ。そしたらある程度自由にしてやる」
「え?解放するんじゃ――」
「なわけないだろ。秘密をちゃーーーんと確認したら解放してやる」
ニヤニヤとしている。
「……断る……と言ったら?」
「言わなきゃ分からないか?」
「……ふん。分かった……村に案内しよう」
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ヘキオンが縛っていた縄を切って女を解放する。襲われるのかちょっと心配だったのか、女に対してビクビクしている。
「名前は?」
「……クエッテ」
「よしクエッテ。まぁしないとは思うが、逃げようとするなよ。お前を殺すのに1秒もかからないことを覚えておけ」
クエッテに対して低い声で威嚇する。それに対してクエッテは無言で頷いた。
「そ、そんなに脅す必要ってあるんですか?」
カエデに対してボソッと呟いた。
「もしものためだよ。こんな森で逃げられると探すの面倒だし」
「でもすっごい警戒されてません?」
「だろうな。安心しろ、俺も警戒してるから」
「そ、そういうことじゃないんですけどぉ……」
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――次の日。
「ハァハァ……ちょ、ちょい……速いですぅ」
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「……あの子遅い」
「まだ修行中なんだ。許してやってくれ」
「私を倒したくせに……なんで?」
2人が立ち止まった。息を大きく切らしながら歩くヘキオンを2人でじっと見ている。
「……もうすぐよ。あと5kmぐらいで着くから」
「ぞ、それ……近くって言わないよ~~!!」
この森に入って2回目の悲痛な叫びが森に轟いたのだった。
続く
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