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1章「対立するエルフの森」
14話「歩けヘキオン!」
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「――疲れたぁ……」
ヘキオンとカエデは森の中を歩いていた。東西南北どこを見渡しても緑しか色を見ることができない。
もちろんそんなところの地面など舗装されてるはずはない。石やら段差やら木の根っこやらが地面にある。
まずはつまづく。次に乗り越える。この2動作で体力がかなり持ってかれてしまう。
「少し休みませんかぁ~」
ヘキオンが情けない声を出す。ヘキオンの前で歩いていたカエデは足を止めた。
「それもそうだな。近くに川の音がするし、そこで休憩するか」
「ほんと!?……川の音聞こえませんけど……」
「んー。ここから1km先くらいだね」
「――それ近くって言わないよ~~!!」
ヘキオンの悲痛な叫びが森の中へと響き渡った。
「うぇ!?カエデさんって17歳なんですか!?」
驚きの声が上がった。声にビビって少しよろめく。
「……まぁ、見えないわな……」
周りの空間が青になるくらいに落ち込んでいる。割と気にしていたようだ。
「いや……な、なんかそういう……貫禄!貫禄があります!」
「……」
やはり無理があったようだ。周りの雰囲気が青黒くなった。
「……じゃあわざわざ敬語を使う必要もありませんよね?」
「ん?ヘキオンの基準は知らないけど、俺は別に敬語じゃなくてもいいよ」
「えっとそれじゃあ――カ、カエデ……」
カエデの顔が赤く染まってゆく。その赤さはまるで成熟したイチゴ。チューリップ。林檎といったところか。
ヘキオンも紅く染まっていた。その紅さはまるで紅いリップ……もういいですよね。
「――まぁ……ちょっとずつ……慣れよっか」
「そう……ですね」
2人は付き合って1日目みたいな距離感で歩いていたのであった。
ヘキオンとカエデは地図を見ていた。ヘキオンのバックに入っていた世界地図だ。
「一応次はベネッチアに行こうと思ってたんですが」
「いいと思う。俺も行ってみたかったし。ここからだいたい北西に80kmか……」
「……き、キツいなぁ」
ベネッチア。水の都と呼ばれており、街の中に複雑な川が通っているという珍しい街だ。建物も白を基調とした物が多く、美しい水と合わさってとても美しい景色となっている。
そのためか女性に人気の街だ。海にも近いので魚や海藻などのヘルシーな食料が多く採れるのも女性がくる理由になっているのだろう。
「――この罪の森ってなんですか?」
ベネッチアへの道の途中。ちょうど直線で行く場合には、この罪の森にぶつかる。
「んー?……あーね。ギルドの人達から聞いたことがある」
「そうなんですか?」
「罪の森。魔物は少ないものの、常に争っているウッドエルフとダークエルフがいるらしい。そのため普通の冒険者はここを通らないそうだ」
ウッドエルフ。
緑色の肌に横に長い耳。男はイケメン、女は絶世の美女と言われている。弓を得意としている。人間とはあまり良好な関係ではない。
ダークエルフ。
黒や灰色の肌。縦に長い耳。男は化け物、女は怪物と揶揄されているほど醜いとされている。魔法を得意としている。こちらも人間とは良好な関係ではない。
「へぇ。怖そうですね。回り道するんですか?」
「いや。普通に通るけど」
「……えぇ!?」
ヘキオンが驚く。カエデは当たり前かのように話した。
「通った方が圧倒的に速いだろ。俺がいる限りはヘキオンは死なないし」
「それは頼もしいけど……」
「それに楽ばっかりしてたらいつまでたっても強くはならないしね」
「え?カエデさんまだ強くなるんですか?」
「俺じゃなくてヘキオンだよ」
ヘキオンが首を傾げる。
「なんで私?」
「そりゃあ一緒に旅をさせてくれるんだったら多少は鍛えてあげないと。才能はかなりあると思うし」
「……つまりカエデさんは師匠ってことですね!」
満面の笑みをカエデに見せる。太陽のような笑顔に目が眩んだのか、ヘキオンの方が目を逸らした。
「まぁね!……とりあえず罪の森からは近いし、日が沈む前にさっさと森に入るか」
「そうですね。まだまだ私は元気ですよ!」
ヘキオンはカエデの前でマッスルポーズをした。その子供のような行動にホッコリとするカエデであった。
「――ついたぁぁぁ……」
透き通るほど綺麗な川。水が跳ねる音が心地よいくらいに耳をつんざく。自然の匂いは味があると錯覚するほど鼻腔を燻っていた。
そんな川の前でヘキオンはドサッと倒れた。疲れきっているのに脚をパタパタさせている。
「お疲れ様。とりあえず今日はここで野宿しようか」
「賛成でぇぇぇぇす……」
倒れてるヘキオンの横にバックを置き、体をグッと伸ばした。森のいい匂いを堪能する。ヘキオンはそんな余裕がなさそうだ。
続く
ヘキオンとカエデは森の中を歩いていた。東西南北どこを見渡しても緑しか色を見ることができない。
もちろんそんなところの地面など舗装されてるはずはない。石やら段差やら木の根っこやらが地面にある。
まずはつまづく。次に乗り越える。この2動作で体力がかなり持ってかれてしまう。
「少し休みませんかぁ~」
ヘキオンが情けない声を出す。ヘキオンの前で歩いていたカエデは足を止めた。
「それもそうだな。近くに川の音がするし、そこで休憩するか」
「ほんと!?……川の音聞こえませんけど……」
「んー。ここから1km先くらいだね」
「――それ近くって言わないよ~~!!」
ヘキオンの悲痛な叫びが森の中へと響き渡った。
「うぇ!?カエデさんって17歳なんですか!?」
驚きの声が上がった。声にビビって少しよろめく。
「……まぁ、見えないわな……」
周りの空間が青になるくらいに落ち込んでいる。割と気にしていたようだ。
「いや……な、なんかそういう……貫禄!貫禄があります!」
「……」
やはり無理があったようだ。周りの雰囲気が青黒くなった。
「……じゃあわざわざ敬語を使う必要もありませんよね?」
「ん?ヘキオンの基準は知らないけど、俺は別に敬語じゃなくてもいいよ」
「えっとそれじゃあ――カ、カエデ……」
カエデの顔が赤く染まってゆく。その赤さはまるで成熟したイチゴ。チューリップ。林檎といったところか。
ヘキオンも紅く染まっていた。その紅さはまるで紅いリップ……もういいですよね。
「――まぁ……ちょっとずつ……慣れよっか」
「そう……ですね」
2人は付き合って1日目みたいな距離感で歩いていたのであった。
ヘキオンとカエデは地図を見ていた。ヘキオンのバックに入っていた世界地図だ。
「一応次はベネッチアに行こうと思ってたんですが」
「いいと思う。俺も行ってみたかったし。ここからだいたい北西に80kmか……」
「……き、キツいなぁ」
ベネッチア。水の都と呼ばれており、街の中に複雑な川が通っているという珍しい街だ。建物も白を基調とした物が多く、美しい水と合わさってとても美しい景色となっている。
そのためか女性に人気の街だ。海にも近いので魚や海藻などのヘルシーな食料が多く採れるのも女性がくる理由になっているのだろう。
「――この罪の森ってなんですか?」
ベネッチアへの道の途中。ちょうど直線で行く場合には、この罪の森にぶつかる。
「んー?……あーね。ギルドの人達から聞いたことがある」
「そうなんですか?」
「罪の森。魔物は少ないものの、常に争っているウッドエルフとダークエルフがいるらしい。そのため普通の冒険者はここを通らないそうだ」
ウッドエルフ。
緑色の肌に横に長い耳。男はイケメン、女は絶世の美女と言われている。弓を得意としている。人間とはあまり良好な関係ではない。
ダークエルフ。
黒や灰色の肌。縦に長い耳。男は化け物、女は怪物と揶揄されているほど醜いとされている。魔法を得意としている。こちらも人間とは良好な関係ではない。
「へぇ。怖そうですね。回り道するんですか?」
「いや。普通に通るけど」
「……えぇ!?」
ヘキオンが驚く。カエデは当たり前かのように話した。
「通った方が圧倒的に速いだろ。俺がいる限りはヘキオンは死なないし」
「それは頼もしいけど……」
「それに楽ばっかりしてたらいつまでたっても強くはならないしね」
「え?カエデさんまだ強くなるんですか?」
「俺じゃなくてヘキオンだよ」
ヘキオンが首を傾げる。
「なんで私?」
「そりゃあ一緒に旅をさせてくれるんだったら多少は鍛えてあげないと。才能はかなりあると思うし」
「……つまりカエデさんは師匠ってことですね!」
満面の笑みをカエデに見せる。太陽のような笑顔に目が眩んだのか、ヘキオンの方が目を逸らした。
「まぁね!……とりあえず罪の森からは近いし、日が沈む前にさっさと森に入るか」
「そうですね。まだまだ私は元気ですよ!」
ヘキオンはカエデの前でマッスルポーズをした。その子供のような行動にホッコリとするカエデであった。
「――ついたぁぁぁ……」
透き通るほど綺麗な川。水が跳ねる音が心地よいくらいに耳をつんざく。自然の匂いは味があると錯覚するほど鼻腔を燻っていた。
そんな川の前でヘキオンはドサッと倒れた。疲れきっているのに脚をパタパタさせている。
「お疲れ様。とりあえず今日はここで野宿しようか」
「賛成でぇぇぇぇす……」
倒れてるヘキオンの横にバックを置き、体をグッと伸ばした。森のいい匂いを堪能する。ヘキオンはそんな余裕がなさそうだ。
続く
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