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序章
8話 慣れって凄い!
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――3ヶ月後。
「「「カンパーーイ!!!」」」
ヘキオンはギルドにいた。3ヶ月前まではビクビクしていたが、やはり慣れというのは怖いというものでね。
今はギルド内のおじさんおばさんお姉さんと飲み物を片手に騒ぎ合う仲へとなっていた。
「ヘキオンちゃんがここに来て3ヶ月になりましたーー!!」
「「フゥゥゥゥ!!」」
ジョッキの並々入ったお酒の粒が周りに飛び散っている。もはやギルドというより酒場だ。
ちなみに言っておくと、ヘキオンが飲んでいるのはお酒ではなくジュースである。
「ありがとーー!ありがとーー!今日はカエデの奢りだからいっぱい飲んでねーー!」
「「「カエデ太っ腹ーーー!!!」」」
「なんで俺が奢ることになってんだよー!!」
もはや祭りのような騒がしさだ。耳のいい人が入ったら鼓膜が破れそうなほど騒がしい。
「――ヘキオンちゃんが来てもう3ヶ月なのね」
椅子に座ってチビチビジュースを飲んでいるヘキオンの横にカウンターのお姉さんがちょこんと座った。
「もう3ヶ月なんですね……」
「見違えるほどに変わっちゃって――こんな馬鹿共に馴染んちゃってる」
「それって褒めてるんですかぁ?」
微笑みながら談笑する。周りで暴れている男達とは世界が違うようだ。
「来た時なんてあんなに可愛かったのにね~。今も可愛いけど」
「んふふ。レベルも25になったし、お金もあとちょっとで5万に到達するしね!」
「……5万円が溜まったら旅立っちゃうの?」
「うん。次はベネッチアに行こうと思ってるんだ」
「……寂しいわね」
言葉の通り、寂しそうな顔でヘキオンを見つめていた。
「……そうだなぁ」
ヘキオンも寂しそうな顔になる。
「――ところでさ。ヘキオン」
お姉さんが真面目な顔になる。ヘキオンは不思議そうな顔になってお姉さんの方に向いた。
「最近暴れてる化け犬の話って知ってる?」
「あぁ~。化け犬が街の人や兵士を襲っているってたやつ。最近よく噂になってたね。それがどうかしたの?」
「――機密の依頼を受けて欲しいの」
「機密の……依頼?」
残っていたジュースを全て飲み干してお姉さんの話に聞き入る。
「――その化け犬を止めて欲しいの」
「え?そりゃあいいけど、なんでそれが機密の依頼なの?」
「……その化け犬の正体は人狼。月の神に魅入られた狼の血を引く者。狼男になれば身体能力をあげられる代わりに、人格が変わってしまうの」
人狼と魔物と似てはいるが、正確に言うなら違う。種族の1つとして認識していい。
「そ、それはわかったよ。でもその化け犬が人狼ってなんでわかったの?」
「……その人狼はこの街の市長の息子なの」
「なるほど。知られたら市長の座から落ちちゃう。それで極秘に止めて欲しいってわけね」
確かにそれなら極秘に頼むのも納得の話だ。しかし1つヘキオンには疑問が思いついていた。
「それをなんで私に聞いてきたの?普通に兵士に頼めばいいんじゃないの?ギルドに頼むにしても、盗賊の人とか暗殺者の人、それこそカエデさんにでも頼めばいいでしょ?」
「別に殺すのが目的ではないの。兵士だと目立つでしょ。盗賊とか、暗殺者のやつらとか、カエデとかは普通に殺しそうだし」
ヘキオンは納得したように首を縦に振っていた。
「それに……」
「どうかしたの?」
「ヘキオンなら信頼できるからね。腕試しとしてもいいんじゃない?」
ヘキオンは顔を赤くして照れている。お姉さんはそんなヘキオンを妹を見るような目で見ていた。
「じゃあ受けるよ。達成したら一緒に甘いものでも食べに行こ!」
「いいわね。美味しいお店探しておくわ」
2人はまさに友達のように笑っていた。
そんなヘキオンの姿をカエデは静かに見つめていた。
続く
「「「カンパーーイ!!!」」」
ヘキオンはギルドにいた。3ヶ月前まではビクビクしていたが、やはり慣れというのは怖いというものでね。
今はギルド内のおじさんおばさんお姉さんと飲み物を片手に騒ぎ合う仲へとなっていた。
「ヘキオンちゃんがここに来て3ヶ月になりましたーー!!」
「「フゥゥゥゥ!!」」
ジョッキの並々入ったお酒の粒が周りに飛び散っている。もはやギルドというより酒場だ。
ちなみに言っておくと、ヘキオンが飲んでいるのはお酒ではなくジュースである。
「ありがとーー!ありがとーー!今日はカエデの奢りだからいっぱい飲んでねーー!」
「「「カエデ太っ腹ーーー!!!」」」
「なんで俺が奢ることになってんだよー!!」
もはや祭りのような騒がしさだ。耳のいい人が入ったら鼓膜が破れそうなほど騒がしい。
「――ヘキオンちゃんが来てもう3ヶ月なのね」
椅子に座ってチビチビジュースを飲んでいるヘキオンの横にカウンターのお姉さんがちょこんと座った。
「もう3ヶ月なんですね……」
「見違えるほどに変わっちゃって――こんな馬鹿共に馴染んちゃってる」
「それって褒めてるんですかぁ?」
微笑みながら談笑する。周りで暴れている男達とは世界が違うようだ。
「来た時なんてあんなに可愛かったのにね~。今も可愛いけど」
「んふふ。レベルも25になったし、お金もあとちょっとで5万に到達するしね!」
「……5万円が溜まったら旅立っちゃうの?」
「うん。次はベネッチアに行こうと思ってるんだ」
「……寂しいわね」
言葉の通り、寂しそうな顔でヘキオンを見つめていた。
「……そうだなぁ」
ヘキオンも寂しそうな顔になる。
「――ところでさ。ヘキオン」
お姉さんが真面目な顔になる。ヘキオンは不思議そうな顔になってお姉さんの方に向いた。
「最近暴れてる化け犬の話って知ってる?」
「あぁ~。化け犬が街の人や兵士を襲っているってたやつ。最近よく噂になってたね。それがどうかしたの?」
「――機密の依頼を受けて欲しいの」
「機密の……依頼?」
残っていたジュースを全て飲み干してお姉さんの話に聞き入る。
「――その化け犬を止めて欲しいの」
「え?そりゃあいいけど、なんでそれが機密の依頼なの?」
「……その化け犬の正体は人狼。月の神に魅入られた狼の血を引く者。狼男になれば身体能力をあげられる代わりに、人格が変わってしまうの」
人狼と魔物と似てはいるが、正確に言うなら違う。種族の1つとして認識していい。
「そ、それはわかったよ。でもその化け犬が人狼ってなんでわかったの?」
「……その人狼はこの街の市長の息子なの」
「なるほど。知られたら市長の座から落ちちゃう。それで極秘に止めて欲しいってわけね」
確かにそれなら極秘に頼むのも納得の話だ。しかし1つヘキオンには疑問が思いついていた。
「それをなんで私に聞いてきたの?普通に兵士に頼めばいいんじゃないの?ギルドに頼むにしても、盗賊の人とか暗殺者の人、それこそカエデさんにでも頼めばいいでしょ?」
「別に殺すのが目的ではないの。兵士だと目立つでしょ。盗賊とか、暗殺者のやつらとか、カエデとかは普通に殺しそうだし」
ヘキオンは納得したように首を縦に振っていた。
「それに……」
「どうかしたの?」
「ヘキオンなら信頼できるからね。腕試しとしてもいいんじゃない?」
ヘキオンは顔を赤くして照れている。お姉さんはそんなヘキオンを妹を見るような目で見ていた。
「じゃあ受けるよ。達成したら一緒に甘いものでも食べに行こ!」
「いいわね。美味しいお店探しておくわ」
2人はまさに友達のように笑っていた。
そんなヘキオンの姿をカエデは静かに見つめていた。
続く
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