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5日目
連鎖
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「あそこに爆弾を……!?」
いつ。どこで。まさか初めからか――。考えを巡らせている蓮見の後ろで――銃声が産声を上げた。
倒れる村人。その先には氷華が立っていた。
「ふぅぅぅ……」
コッキングで排莢を行う。
「遅いよ桃也。死んだかと思った」
氷華は敵だ。村人も頭では分かっていても、体が動いてくれない。桃也と戦うために持ってきた武器を構えるには構えている。
だが構えているだけ。攻撃してくる気配もない。だから氷華も焦ったり慌てたりなどはしていなかった。
――そんな村人たちの前に義明が立つ。その背中は壁のように。その脚は銅像のように。その腕は鉄のように。村人はそう見えた。
「全員。羽衣桃也のところに行け。蓮見の言う通りにしろ」
義明の言葉を聞いて一斉に村人たちが移動する。狙いは羽衣桃也。多勢に無勢で殺す気だ。
「……久しぶりだな氷華」
「そうだね」
弾は予備を含めて残り20発。使い所は考えないといけない。
「もう何も聞かん。羽衣桃也と組んだ理由も。この村を裏切った理由も。父さんや椿を殺した理由も」
「……うん。言い訳するつもりもない」
「ならいい。それでいい。――殺すのに躊躇がなくなった」
体を低く。でかい図体が氷華と目線が合うくらいにまで低くなる。この構えは突進。笑ってしまうほどに単純。しかし効果は絶大だ。
折れた肋骨がギリギリと痛む。脚も。顔も。特に頬が。喋るだけでも泣きそうなほど痛い。それでも戦わなくては。
――舌を噛んだ。義明と戦う時に一時的にでも痛みを麻痺させるために。
――目を見開いた。素早い氷華を見逃さないために。
合図はない。ただ方向は違えど、互いに戦いに長けていた。だから――タイミングは同じであった。
「――ハハハハハハハハハ!!!!」
村人の数は何百人にも登る。キリがない。なのに桃也はそれを喜んでいた。なぜなら楽しい時間がずっと続いてくれるから。
殺しにも拷問にも楽しさは芽生えなかった。そんな男が1つの楽しみを見つけた。それが――殺し合いである。
一方的にじゃない。必死に。死に物狂いで。背水の陣で。相手が自分を殺しにかかっている。そのスリルを楽しんでいた。
向かってくる村人に恐怖の色が見える。目の前の男はただの人間だ。しかし同じ種族には見えない。
先程脳裏に思い描いた悪魔。現実の姿とは違う。違うはずなのに――徐々に。徐々に。その姿は思い描いていた悪魔とリンクし始めていた。
ナタを相手に叩きつける。死体の持っていた鎌を奪い、そのままの勢いで首に突き立てる。
「ぎゃああああああ!!!???」
「ぐぎぃぃ!?」
恐怖からの叫びと同時に、日本軍の兵士のように自分を鼓舞する。そうじゃないと自分を保つことができない。
そんな相手にも容赦しない。たかが叫んで鼓舞しただけの人間じゃ、今の羽衣桃也は殺せない。鉄の錆になるだけだ。
「くひひ――ハハハハハハハハ!!!」
血は炎と同色に。黒い体は赤く染まっていく。笑う喉は大きく張り上げ。体は更にスピードを上げていく。
だが数というのは恐ろしいもの。アドレナリンでハイになっている桃也でも、疲れが所々に見え始めていた。
村人の攻撃を背中に受ける。ヒートアップしていた頭はほんの少し冷めた。
(キリがないな……)
持っていた桑を村人に投げつけると、桃也は家屋の間に潜り込んだ。つまるところ路地裏。かなり狭いところである。
「に、逃げたぞ!!」
ある村人の叫びで恐怖が麻痺した。水のように桃也の後を追いかける。もちろん路地裏にうん10人も入ることはできない。入口で何人も詰まっていた。
それでも数人は抜けられる。距離はそう遠くない。桃也の場所まで一直線で走り続ける。
「――蟻かお前らは!!」
走ってる最中。桃也は何かを引きちぎっていた。――バクダンだ。こんな路地裏にまで仕掛けてあった。
咄嗟のことだ。誰も気が付かない。マッチで火をつけ、追ってきた村人に投げつける。
「はぁ――」
――断末魔すらなく爆弾は爆発した。それと同時に桃也は路地裏を抜けた。
いつ。どこで。まさか初めからか――。考えを巡らせている蓮見の後ろで――銃声が産声を上げた。
倒れる村人。その先には氷華が立っていた。
「ふぅぅぅ……」
コッキングで排莢を行う。
「遅いよ桃也。死んだかと思った」
氷華は敵だ。村人も頭では分かっていても、体が動いてくれない。桃也と戦うために持ってきた武器を構えるには構えている。
だが構えているだけ。攻撃してくる気配もない。だから氷華も焦ったり慌てたりなどはしていなかった。
――そんな村人たちの前に義明が立つ。その背中は壁のように。その脚は銅像のように。その腕は鉄のように。村人はそう見えた。
「全員。羽衣桃也のところに行け。蓮見の言う通りにしろ」
義明の言葉を聞いて一斉に村人たちが移動する。狙いは羽衣桃也。多勢に無勢で殺す気だ。
「……久しぶりだな氷華」
「そうだね」
弾は予備を含めて残り20発。使い所は考えないといけない。
「もう何も聞かん。羽衣桃也と組んだ理由も。この村を裏切った理由も。父さんや椿を殺した理由も」
「……うん。言い訳するつもりもない」
「ならいい。それでいい。――殺すのに躊躇がなくなった」
体を低く。でかい図体が氷華と目線が合うくらいにまで低くなる。この構えは突進。笑ってしまうほどに単純。しかし効果は絶大だ。
折れた肋骨がギリギリと痛む。脚も。顔も。特に頬が。喋るだけでも泣きそうなほど痛い。それでも戦わなくては。
――舌を噛んだ。義明と戦う時に一時的にでも痛みを麻痺させるために。
――目を見開いた。素早い氷華を見逃さないために。
合図はない。ただ方向は違えど、互いに戦いに長けていた。だから――タイミングは同じであった。
「――ハハハハハハハハハ!!!!」
村人の数は何百人にも登る。キリがない。なのに桃也はそれを喜んでいた。なぜなら楽しい時間がずっと続いてくれるから。
殺しにも拷問にも楽しさは芽生えなかった。そんな男が1つの楽しみを見つけた。それが――殺し合いである。
一方的にじゃない。必死に。死に物狂いで。背水の陣で。相手が自分を殺しにかかっている。そのスリルを楽しんでいた。
向かってくる村人に恐怖の色が見える。目の前の男はただの人間だ。しかし同じ種族には見えない。
先程脳裏に思い描いた悪魔。現実の姿とは違う。違うはずなのに――徐々に。徐々に。その姿は思い描いていた悪魔とリンクし始めていた。
ナタを相手に叩きつける。死体の持っていた鎌を奪い、そのままの勢いで首に突き立てる。
「ぎゃああああああ!!!???」
「ぐぎぃぃ!?」
恐怖からの叫びと同時に、日本軍の兵士のように自分を鼓舞する。そうじゃないと自分を保つことができない。
そんな相手にも容赦しない。たかが叫んで鼓舞しただけの人間じゃ、今の羽衣桃也は殺せない。鉄の錆になるだけだ。
「くひひ――ハハハハハハハハ!!!」
血は炎と同色に。黒い体は赤く染まっていく。笑う喉は大きく張り上げ。体は更にスピードを上げていく。
だが数というのは恐ろしいもの。アドレナリンでハイになっている桃也でも、疲れが所々に見え始めていた。
村人の攻撃を背中に受ける。ヒートアップしていた頭はほんの少し冷めた。
(キリがないな……)
持っていた桑を村人に投げつけると、桃也は家屋の間に潜り込んだ。つまるところ路地裏。かなり狭いところである。
「に、逃げたぞ!!」
ある村人の叫びで恐怖が麻痺した。水のように桃也の後を追いかける。もちろん路地裏にうん10人も入ることはできない。入口で何人も詰まっていた。
それでも数人は抜けられる。距離はそう遠くない。桃也の場所まで一直線で走り続ける。
「――蟻かお前らは!!」
走ってる最中。桃也は何かを引きちぎっていた。――バクダンだ。こんな路地裏にまで仕掛けてあった。
咄嗟のことだ。誰も気が付かない。マッチで火をつけ、追ってきた村人に投げつける。
「はぁ――」
――断末魔すらなく爆弾は爆発した。それと同時に桃也は路地裏を抜けた。
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