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策士【ライル視点】
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「お疲れ様でございました」
「あぁ、お前達もな」
血生臭い王の部屋を出て、かけられたディーンの言葉に、周囲に集まった臣下達の顔を見渡す。
「随分と長い間、お前達に我慢を強いたな。こんな不甲斐ない主人に利がない中、仕えてくれていた事に感謝する」
そう告げると、その場にいた者達がバラバラとその場に膝をついて頭を垂れた。
中には泣いている者もいる。
正直、自分は海賊のあの生活に満足してはいた。しかし従ってきてくれていた臣下達は皆が皆、納得しているとは思っていなかったが・・・。
やはりここまで悔しい気持ちを押し殺して、不甲斐ない主人をもどかしく思ってもいたのだろう。
彼等の名誉と、人生までも自身の勝手に巻き込んでいた事を申し訳なく思う。
「とりあえず、まずは内政を把握しなければな。ディーン、宰相と議会長の身柄は抑えてるな?早急に面会する手配を整えてくれ。エリオット、近衛を掌握してくれ。ディンゴは今城外を包囲している軍の対応を頼む。現在の軍司令はエドラン卿だな、話が通じる男だからそう難航はしないだろう」
次々と指示を飛ばせば、臣下達は生き生きとして立ち上がって、走っていく。
ここまできたら、これ以上無駄な血を流すことは無意味だ。今度は被害を最小限に抑えることに心血を注がなければならない。
「しばらくは、寝る間もないほどに忙しくなりそうだな」
「御覚悟があるならば良かったです」
ため息まじりにつぶやくと、他の者たちに指示を飛ばし終えたディーンがホッとしたように息を吐く。
「なんだ?流石に今すぐ全てをかなぐり捨ててリリーを探すだなんて事は言わんぞ?だいたい、お前の事だから、リリーの居場所は把握しているのだろう?」
俺だってそこまで馬鹿ではないぞ?と忠臣を睨めつければ、ディーンからは何故かとても驚いた視線を向けられた。
「次の私の仕事は、すぐさまリリー様を探しに行こうとする貴方様を諫めて玉座に縛り付ける事だと思っておりました。」
どうやら本当に、そんな馬鹿だと思われていたらしい。
「お前、よくそんな男に忠誠を誓ってついてきているな。流石に人の命を奪ってまで得たのだから、王として国民へのの責務は果たするつもりだぞ?」
俺の言葉に、ディーンは心底安心したというように息を吐いて
「ならば、よいのですが・・・ご安心下さいリリー様の所在は把握しております。お子様もご無事にお産まれになってすくすくとお育ちだと聞いています」
と信じられない爆弾を投下した。
「は!?子!?誰の?まさかリリーは既に他の男と??」
「まさか、陛下のお子だと伺っていますよ。新大陸に渡ってすぐご懐妊が分かったそうですから」
「っ!それは本当か!?すぐに迎えを!」
「御身の周りの安全の確保と内政を安定させなければ、現状の状況ではお二人を守りきれません!そこは少し堪えて国王としての責務に集中して下さい。リリー様とお子様の御身の安全には最適な者をつけておりますのでご安心を」
ピシャリとディーンに取りなされて俺は言葉を失う。
「まさか、お前、そのために今までその事を黙っていたのか?」
「そうとなれば、陛下は死に物狂いで働くでしょう。早く国が整えば、それだけその後の治世も楽になるはずです」
ニヤリと笑った彼は、「では私も御命を片付けてまいります」と長い回廊を歩いて行ってしまった。
「もしかして俺は随分と前から、ディーンの手のひらの上で転がされていたのか?」
ディーンの背中を見送りながら呆然と呟くと。
「それは、僕程度では分かりかねますが・・・ディラン書記官ならあり得る事と思います」
今までそばに黙って控えていたギルが恐る恐ると言った様子で同意した。
「あぁ、お前達もな」
血生臭い王の部屋を出て、かけられたディーンの言葉に、周囲に集まった臣下達の顔を見渡す。
「随分と長い間、お前達に我慢を強いたな。こんな不甲斐ない主人に利がない中、仕えてくれていた事に感謝する」
そう告げると、その場にいた者達がバラバラとその場に膝をついて頭を垂れた。
中には泣いている者もいる。
正直、自分は海賊のあの生活に満足してはいた。しかし従ってきてくれていた臣下達は皆が皆、納得しているとは思っていなかったが・・・。
やはりここまで悔しい気持ちを押し殺して、不甲斐ない主人をもどかしく思ってもいたのだろう。
彼等の名誉と、人生までも自身の勝手に巻き込んでいた事を申し訳なく思う。
「とりあえず、まずは内政を把握しなければな。ディーン、宰相と議会長の身柄は抑えてるな?早急に面会する手配を整えてくれ。エリオット、近衛を掌握してくれ。ディンゴは今城外を包囲している軍の対応を頼む。現在の軍司令はエドラン卿だな、話が通じる男だからそう難航はしないだろう」
次々と指示を飛ばせば、臣下達は生き生きとして立ち上がって、走っていく。
ここまできたら、これ以上無駄な血を流すことは無意味だ。今度は被害を最小限に抑えることに心血を注がなければならない。
「しばらくは、寝る間もないほどに忙しくなりそうだな」
「御覚悟があるならば良かったです」
ため息まじりにつぶやくと、他の者たちに指示を飛ばし終えたディーンがホッとしたように息を吐く。
「なんだ?流石に今すぐ全てをかなぐり捨ててリリーを探すだなんて事は言わんぞ?だいたい、お前の事だから、リリーの居場所は把握しているのだろう?」
俺だってそこまで馬鹿ではないぞ?と忠臣を睨めつければ、ディーンからは何故かとても驚いた視線を向けられた。
「次の私の仕事は、すぐさまリリー様を探しに行こうとする貴方様を諫めて玉座に縛り付ける事だと思っておりました。」
どうやら本当に、そんな馬鹿だと思われていたらしい。
「お前、よくそんな男に忠誠を誓ってついてきているな。流石に人の命を奪ってまで得たのだから、王として国民へのの責務は果たするつもりだぞ?」
俺の言葉に、ディーンは心底安心したというように息を吐いて
「ならば、よいのですが・・・ご安心下さいリリー様の所在は把握しております。お子様もご無事にお産まれになってすくすくとお育ちだと聞いています」
と信じられない爆弾を投下した。
「は!?子!?誰の?まさかリリーは既に他の男と??」
「まさか、陛下のお子だと伺っていますよ。新大陸に渡ってすぐご懐妊が分かったそうですから」
「っ!それは本当か!?すぐに迎えを!」
「御身の周りの安全の確保と内政を安定させなければ、現状の状況ではお二人を守りきれません!そこは少し堪えて国王としての責務に集中して下さい。リリー様とお子様の御身の安全には最適な者をつけておりますのでご安心を」
ピシャリとディーンに取りなされて俺は言葉を失う。
「まさか、お前、そのために今までその事を黙っていたのか?」
「そうとなれば、陛下は死に物狂いで働くでしょう。早く国が整えば、それだけその後の治世も楽になるはずです」
ニヤリと笑った彼は、「では私も御命を片付けてまいります」と長い回廊を歩いて行ってしまった。
「もしかして俺は随分と前から、ディーンの手のひらの上で転がされていたのか?」
ディーンの背中を見送りながら呆然と呟くと。
「それは、僕程度では分かりかねますが・・・ディラン書記官ならあり得る事と思います」
今までそばに黙って控えていたギルが恐る恐ると言った様子で同意した。
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