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2章
57 細やかな願望
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「なんだか、お2人の空気が変わりましたね?」
陵瑜と霜苓の変化に、すぐさま反応したのは、やはりというか……当然の如く汪景だった。
「思った以上に早かったな」と苦笑を浮かべて陵瑜は書類から汪景に視線を向ける。
「お2人というより、霜苓様というべきでしょうか? なんだか殿下にかまえておいでですが……」
何をなさったのです?と少々心配混じりの声音に陵瑜が肩をすくめる。
「少しやりすぎたんだ……反省しているから。傷口をえぐるような事をしてくれるな」
「何をなさったのです?」
普段豪快に見えながらも、実は計算をしつくした上でその様相を演じている陵瑜が、「やりすぎる」なんてことは珍しい。それをだれよりもそばに居て知っている汪景だ。めずらしい事だと目を見開く。
「昨日、春芽に話して聞かせたこと……アレが真実だと告げたのだ。あの場で本人に全く響いていなかったゆえ、悔しくてな。あれは真実だと……」
「結構、言いましたね……。それで反応が、避けられていると……」
「避けられているわけではない!よそよそしいだけだ。一緒の寝台で眠ってくれているし、食事も一緒に摂る……ただ時々あからさまに視線をそらされるだけだ」
それは避けられている内に入るのではないだろうかと、ツッコみたいのを喉元で飲み込んで、汪景はやれやれと眉を下げる。
「前進したのか、後退したのかわかりませんね……。でも、意識はしているということですよね……しかも嫌ではない……」
はっきりした性格の霜苓が、陵瑜の側で過ごすことに抵抗を見せないところを見ると、生理的に無理!ということはなさそうであるし、好意を持たれていることを迷惑に思ってもいないのであろう。これは、なかなか脈アリなのではないだろうか……。密かにそんな事を感じながら、しかし汪景は、主が落ち込み気味な様子であることが気になった。
「まあぁな……前ほど気軽に触れられなくなったのは悲しいが……」
答えはなんのことはない、今まで霜苓が初で世間知らずで仕事熱心な事をいいことに、当然のような顔をして彼女に触れていた誤魔化しがきかなくなったと言うだけのことだ。
「いっても、頬を撫でたり頭をポンポンしてみたりくらいのことですよね? そんな10歳の子供程度のこと大したことありませんよ」
「悪かったな10歳で!こちらは必死なんだ!」
頼むから、齢30を目前にして、そんな小さな事で一喜一憂してくれるな……。そう想う汪景に対して、しかし陵瑜はそれだけでもいっぱいいっぱいなのだと主張する。
「もう、素直にお伝えしては? 珠樹様の父親……あの晩の相手がご自分だったと……」
汪景にしてみれば、それが一番手取り早いのではないかと思うのだ。それは同じ側近である漢登も実は同じ意見であるのだが、陵瑜が頑なにそれをしたがらない様子に、違和感を覚えていた。
「っ……」
やはりいつものように渋る様子を見せ、眉を寄せる陵瑜は、そうするつもりがないようで……
「あの媚薬の効果に、忘却が強く出る催淫効果があったのですから、もしかしたら一生彼女は貴方の事を思い出さないかもしれませんよ?」
念を押すように懸念を伝える。
後に調査でわかったことであるが、あの晩霜苓が盛られていたのは、帝都で横行し問題となっていた媚薬の一種……その中でもかなり質の悪いものだった。要は女性を酩酊させ、薬が一番強く効いている数分~数時間の間の記憶を混濁させるために使われる事が多い代物だ。帝都の中流層では、そうしたものを盛られて、ならず者に姦淫されたという事件が一時期相次いでおり、ちょうど陵瑜達が戦場に向かう頃にそうした成分が解明され、摘発の動きが強くなった頃だった。とはいえ、薬の効能のせいか、被害者の多くは加害者の男たちの顔や背格好、年齢や人数など記憶がはっきりしない事が多かった。そのため泣き寝入りすることになる者も多く、中には襲われたことすら記憶にない者もいるかもしれず、未だ被害の全貌が明らかでない厄介な代物なのだ。
もしや霜苓が盛られたものもそうだったのではないかという懸念は、はじめからあった。しかし霜苓の場合は早めに冷まし薬を飲ませていたため、さほど強い効果は出ていないだろうと思っていたのだ。結局それが、行為は覚えているが相手の顔を覚えていない……という結果になってしまっている。
霜苓がこの先、あの夜の相手の顔を思い出すのか思い出さないのか……現状では全くわからないのである。
汪景の言葉に、陵瑜が大きく息を吐いて額に手を当てる。
「わかっている……だが、もし名乗ったら……霜苓は俺に珠樹を託して消えそうな気がする……」
相手がわかって、しかもそれが今の夫で……それで、めでたしめでたし、とならないのだと……つぶやく陵瑜の言葉に、汪景は理解できないと首を傾ける。
「どういうことです?」
「霜苓の中では、珠樹を守ることが最優先事項なのはわかっているだろう? 珠樹を一番安全に置いておくのは、霜苓が珠樹から離れることなのだ。郷は霜苓を探しているわけだし、彼らには同胞を見分ける手段がある。霜苓といるほうが珠樹は危険なのだ……」
どんな人混みに紛れていようと、一定の空間にいれば同胞を見分けられるという彼らの特殊な性質は、混血である珠樹には受け継がれていない。ゆえに、珠樹は市井に混じれば郷のものに見つかる可能性はかなり低いと会う。しかし霜苓は違う。
「確かにそれはそうですが……霜苓様が珠樹様のそばを離れるとは到底思えません」
何よりも我が子を想い、命がけでここまで来た霜苓が、そう簡単にそんな事ができるだろうか……。普段から、珠樹を慈しみ大切にしている霜苓の様子を見ているからこそ汪景にはその選択があることすら考えもつかない。
しかし、陵瑜にはそうした事が起こり得る可能性が見えているらしい。「今は…な」と小さく唸る。
「銀鉤国の皇族になり、見つかってもすぐに手が出せない状況になっているからな。庶民に紛れて逃げ回るよりは安心かもしれない。しかし、彼らが最終的にどんな判断をするのか、霜苓を見逃すのかはわからない。こうなった今も霜苓はそれを恐れている」
実のところ、旅の日々が終わり、居所が落ち着いたこの状況になっても、霜苓は毎晩のようにうなされている。大丈夫……とはいえやはり不安は拭えない。
そんなときに、珠樹の父親が陵瑜だとわかれば、彼女は本当の父ならば、陵瑜ならば珠樹を慈しんで育てるだろうと、珠樹のそばを離れるのではないか。
「霜苓が珠樹の側を離れるなんてことは、ないかもしれないし、反対にあり得る話かもしれない。俺は、もう二度と彼女をこの手から離したくない。できることならば彼女を煩わせている郷を滅ぼしてしまいたいくらいだ」
己の手を苦しげに見つめ、握りしめる陵瑜の切な気な表情は、長年側にいる汪景もあまり見たことがなかった。
彼の口から出てきた物騒な言葉は、冗談でも虚勢でもないことがヒシヒシと伝わってくる。
「それは……」
流石にまずいのでは……そう本気で心配になった汪景に、陵瑜は口元だけわずかに緩め、皮肉げに微笑む。
「後に色々禍根を残す上、この国にどんな災厄が降りかかるかわからない……霊山の部族に手を出そうなど考える為政者はどれだけ歴代を遡っても居ない」
そんなことはしない……しかし、全てを捨てる気になってしまったらもしくは……そんな危うさを汪景は感じる。
おそらく汪景のその懸念は、彼にしては珍しく顔に出てしまったのだろう。視線を合わせた陵瑜が「言ってみただけだ、忘れろ」という表情で肩をすくめ、弱々しく微笑む。
「気持ちの面で本当に彼女を縫い留められたと思えた時に、話そうと想う。そんな日が来るかはわからんが……本当に俺は卑怯な男だ」
「……私は、一人の女性に殿下がそんな風になれた事が嬉しいです。誰でも駆け引きはします。卑怯でもなんでもないです」
人は誰しも、弱くて卑怯で、それでいて欲張りな面を持っている。汪景自身も、有能で公正で冷静沈着と評されるが、その奥底は自身の主と、周囲の者、そして自身の家族が幸福ならばそれでいいと思っているのだ。
むしろ、生まれたときから皇太子として、皆の幸せのために、周囲の期待通りに、付いてくる臣下のためにその身を捧げてきた陵瑜の初めての我儘が、霜苓を側に置きたいというささやかなものなのだ。
そのためにジタバタすることが悪いことだとは、到底思えない。
「そうか、ありがとう汪景、少し気分が軽くなった」
汪景の言葉をどの程度に受け取ったかは分からない。しかし、少しばかり晴れやかになった陵瑜の表情を見て汪景は安堵する。
「良かったです……」
「ところで、そなたは何かを持ってきたのではなかったのか?」
気を取り直し、居住まいを正した陵瑜の言葉に、汪景はそこで初めて自身が執務室にやってきた理由を思い出す。
「あ……実は……皇后宮から親書が届きまして……」
陵瑜と霜苓の変化に、すぐさま反応したのは、やはりというか……当然の如く汪景だった。
「思った以上に早かったな」と苦笑を浮かべて陵瑜は書類から汪景に視線を向ける。
「お2人というより、霜苓様というべきでしょうか? なんだか殿下にかまえておいでですが……」
何をなさったのです?と少々心配混じりの声音に陵瑜が肩をすくめる。
「少しやりすぎたんだ……反省しているから。傷口をえぐるような事をしてくれるな」
「何をなさったのです?」
普段豪快に見えながらも、実は計算をしつくした上でその様相を演じている陵瑜が、「やりすぎる」なんてことは珍しい。それをだれよりもそばに居て知っている汪景だ。めずらしい事だと目を見開く。
「昨日、春芽に話して聞かせたこと……アレが真実だと告げたのだ。あの場で本人に全く響いていなかったゆえ、悔しくてな。あれは真実だと……」
「結構、言いましたね……。それで反応が、避けられていると……」
「避けられているわけではない!よそよそしいだけだ。一緒の寝台で眠ってくれているし、食事も一緒に摂る……ただ時々あからさまに視線をそらされるだけだ」
それは避けられている内に入るのではないだろうかと、ツッコみたいのを喉元で飲み込んで、汪景はやれやれと眉を下げる。
「前進したのか、後退したのかわかりませんね……。でも、意識はしているということですよね……しかも嫌ではない……」
はっきりした性格の霜苓が、陵瑜の側で過ごすことに抵抗を見せないところを見ると、生理的に無理!ということはなさそうであるし、好意を持たれていることを迷惑に思ってもいないのであろう。これは、なかなか脈アリなのではないだろうか……。密かにそんな事を感じながら、しかし汪景は、主が落ち込み気味な様子であることが気になった。
「まあぁな……前ほど気軽に触れられなくなったのは悲しいが……」
答えはなんのことはない、今まで霜苓が初で世間知らずで仕事熱心な事をいいことに、当然のような顔をして彼女に触れていた誤魔化しがきかなくなったと言うだけのことだ。
「いっても、頬を撫でたり頭をポンポンしてみたりくらいのことですよね? そんな10歳の子供程度のこと大したことありませんよ」
「悪かったな10歳で!こちらは必死なんだ!」
頼むから、齢30を目前にして、そんな小さな事で一喜一憂してくれるな……。そう想う汪景に対して、しかし陵瑜はそれだけでもいっぱいいっぱいなのだと主張する。
「もう、素直にお伝えしては? 珠樹様の父親……あの晩の相手がご自分だったと……」
汪景にしてみれば、それが一番手取り早いのではないかと思うのだ。それは同じ側近である漢登も実は同じ意見であるのだが、陵瑜が頑なにそれをしたがらない様子に、違和感を覚えていた。
「っ……」
やはりいつものように渋る様子を見せ、眉を寄せる陵瑜は、そうするつもりがないようで……
「あの媚薬の効果に、忘却が強く出る催淫効果があったのですから、もしかしたら一生彼女は貴方の事を思い出さないかもしれませんよ?」
念を押すように懸念を伝える。
後に調査でわかったことであるが、あの晩霜苓が盛られていたのは、帝都で横行し問題となっていた媚薬の一種……その中でもかなり質の悪いものだった。要は女性を酩酊させ、薬が一番強く効いている数分~数時間の間の記憶を混濁させるために使われる事が多い代物だ。帝都の中流層では、そうしたものを盛られて、ならず者に姦淫されたという事件が一時期相次いでおり、ちょうど陵瑜達が戦場に向かう頃にそうした成分が解明され、摘発の動きが強くなった頃だった。とはいえ、薬の効能のせいか、被害者の多くは加害者の男たちの顔や背格好、年齢や人数など記憶がはっきりしない事が多かった。そのため泣き寝入りすることになる者も多く、中には襲われたことすら記憶にない者もいるかもしれず、未だ被害の全貌が明らかでない厄介な代物なのだ。
もしや霜苓が盛られたものもそうだったのではないかという懸念は、はじめからあった。しかし霜苓の場合は早めに冷まし薬を飲ませていたため、さほど強い効果は出ていないだろうと思っていたのだ。結局それが、行為は覚えているが相手の顔を覚えていない……という結果になってしまっている。
霜苓がこの先、あの夜の相手の顔を思い出すのか思い出さないのか……現状では全くわからないのである。
汪景の言葉に、陵瑜が大きく息を吐いて額に手を当てる。
「わかっている……だが、もし名乗ったら……霜苓は俺に珠樹を託して消えそうな気がする……」
相手がわかって、しかもそれが今の夫で……それで、めでたしめでたし、とならないのだと……つぶやく陵瑜の言葉に、汪景は理解できないと首を傾ける。
「どういうことです?」
「霜苓の中では、珠樹を守ることが最優先事項なのはわかっているだろう? 珠樹を一番安全に置いておくのは、霜苓が珠樹から離れることなのだ。郷は霜苓を探しているわけだし、彼らには同胞を見分ける手段がある。霜苓といるほうが珠樹は危険なのだ……」
どんな人混みに紛れていようと、一定の空間にいれば同胞を見分けられるという彼らの特殊な性質は、混血である珠樹には受け継がれていない。ゆえに、珠樹は市井に混じれば郷のものに見つかる可能性はかなり低いと会う。しかし霜苓は違う。
「確かにそれはそうですが……霜苓様が珠樹様のそばを離れるとは到底思えません」
何よりも我が子を想い、命がけでここまで来た霜苓が、そう簡単にそんな事ができるだろうか……。普段から、珠樹を慈しみ大切にしている霜苓の様子を見ているからこそ汪景にはその選択があることすら考えもつかない。
しかし、陵瑜にはそうした事が起こり得る可能性が見えているらしい。「今は…な」と小さく唸る。
「銀鉤国の皇族になり、見つかってもすぐに手が出せない状況になっているからな。庶民に紛れて逃げ回るよりは安心かもしれない。しかし、彼らが最終的にどんな判断をするのか、霜苓を見逃すのかはわからない。こうなった今も霜苓はそれを恐れている」
実のところ、旅の日々が終わり、居所が落ち着いたこの状況になっても、霜苓は毎晩のようにうなされている。大丈夫……とはいえやはり不安は拭えない。
そんなときに、珠樹の父親が陵瑜だとわかれば、彼女は本当の父ならば、陵瑜ならば珠樹を慈しんで育てるだろうと、珠樹のそばを離れるのではないか。
「霜苓が珠樹の側を離れるなんてことは、ないかもしれないし、反対にあり得る話かもしれない。俺は、もう二度と彼女をこの手から離したくない。できることならば彼女を煩わせている郷を滅ぼしてしまいたいくらいだ」
己の手を苦しげに見つめ、握りしめる陵瑜の切な気な表情は、長年側にいる汪景もあまり見たことがなかった。
彼の口から出てきた物騒な言葉は、冗談でも虚勢でもないことがヒシヒシと伝わってくる。
「それは……」
流石にまずいのでは……そう本気で心配になった汪景に、陵瑜は口元だけわずかに緩め、皮肉げに微笑む。
「後に色々禍根を残す上、この国にどんな災厄が降りかかるかわからない……霊山の部族に手を出そうなど考える為政者はどれだけ歴代を遡っても居ない」
そんなことはしない……しかし、全てを捨てる気になってしまったらもしくは……そんな危うさを汪景は感じる。
おそらく汪景のその懸念は、彼にしては珍しく顔に出てしまったのだろう。視線を合わせた陵瑜が「言ってみただけだ、忘れろ」という表情で肩をすくめ、弱々しく微笑む。
「気持ちの面で本当に彼女を縫い留められたと思えた時に、話そうと想う。そんな日が来るかはわからんが……本当に俺は卑怯な男だ」
「……私は、一人の女性に殿下がそんな風になれた事が嬉しいです。誰でも駆け引きはします。卑怯でもなんでもないです」
人は誰しも、弱くて卑怯で、それでいて欲張りな面を持っている。汪景自身も、有能で公正で冷静沈着と評されるが、その奥底は自身の主と、周囲の者、そして自身の家族が幸福ならばそれでいいと思っているのだ。
むしろ、生まれたときから皇太子として、皆の幸せのために、周囲の期待通りに、付いてくる臣下のためにその身を捧げてきた陵瑜の初めての我儘が、霜苓を側に置きたいというささやかなものなのだ。
そのためにジタバタすることが悪いことだとは、到底思えない。
「そうか、ありがとう汪景、少し気分が軽くなった」
汪景の言葉をどの程度に受け取ったかは分からない。しかし、少しばかり晴れやかになった陵瑜の表情を見て汪景は安堵する。
「良かったです……」
「ところで、そなたは何かを持ってきたのではなかったのか?」
気を取り直し、居住まいを正した陵瑜の言葉に、汪景はそこで初めて自身が執務室にやってきた理由を思い出す。
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