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1章
18 再会の裏側②
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霊月山は大陸のうちでも随一の高さを持つ霊峰で、古くから神の御所として崇められてきた。
そんな霊峰の中に住まう、少数の人々は、その環境の影響を受けるゆえか、様々な力を持つと言われ、神秘に包まれていた。多くの部族は山から出ることなく、下の世界とも交わることもない。
その中で唯一例外なのは、霊月山の麓付近に住む、戦闘系の力を有する一族達だ。もともとは神の御所である霊月山を守護するために、山麓にそうした力をもつ者達が生を受けた事が始まりらしい。
というのは戦から戻った陵瑜がすぐに調べて知ったことだ。
霊峰を守る彼らが技を磨き、力をつける内にその意思が守るものから攻めるものに変わって行くようになり下の世界に交わりだしたのが500年ほど前のことだという。
戦いに飢え、磨いた技を試す場所を探していた彼らにとって、丁度その頃下の世界が迎えていた戦乱時代は最高の環境だった。高い戦闘力を持つ彼らを雇った国や有力者は力をつけ、雇われた彼らには多くの金が入った。
金を手にした彼らは、それにより多くの質の良い武具と栄養価の高い食物を手に入れられる事を知り、更に強靭な肉体と戦闘力を手に入れた。そうして霊月山の人間でありながら、彼ら戦闘系の部族は下の世界との共生の道を歩みだした。
しかし、良い事ばかりではなく、その弊害も多かったという。
幾年か下の世界と交わる内に彼らは自分たちに起こる変化が、種の存続に関わることに気づき出したというのだ。
郷外との血の交わりによって、霊月山の守人として与えられた力が弱くなる事が分かったのだ。
すぐに彼らは、再び下の世界との一線を引き、種を守る事に重きをおいた。
しかしすでに下の世界と関わり過ぎた彼らには、一度知ってしまった世界を切り離す事はむずかしかった。
その頃の部族の中心的な指導者達がすでに、生まれた時から下の世界と交わり育って来た者たちだったのだ。その上、郷の経済もすでに下の世界から入ってきた金の概念で定着してしまっていた。
結局、すべてを昔に戻す事はできず、それぞれの部族が様々な紆余曲折を経て、厳格な掟を設けることにより、下の世界との関わりを維持することとなった。
そうしてまた彼らの生活や所在は謎に包まれる事となり、彼らは国家や一部の有力者の依頼で戦への参加や諜報活動、中には要人や商団の護衛などの任につくなど、裏側の仕事になくてはならない存在となった。
霜苓の郷である蝕の郷もまた、古くから銀鉤国とつながりの深い部族の一つであった。ゆえに霊月山のどの辺りに郷があるかということはなんとなく目星はついていた。
西から南にかけての霊月山山麓の樹海の中。本当にそんなざっくりした情報だけで、陵瑜は霊峰に分け入ろうと思いやってきて、そして自分の考えの浅はかさに愕然としたところだったのだ。
国境を出て、山麓の街道沿いにある宿場町を渡り歩いている内に、なんとなくの情報くらいは手に入るだろうと思っていたのだ。むしろ、宿場町の者たちこそ、口を固く噤んでいる印象を受けた。
途方にくれて数日、なんとなく商人のなりをして街道を行ったり来たりしながら、昼夜を問わず、人の流れを見守っていた。そんな折に深夜、街道沿いの道端に倒れている子連れの女を見つけたのだ。
駆け寄って見れば、意識をなくした母親に守られるように抱きかかえられた子供がキラキラと耀く大きな瞳でこちらを見上げていた。
その瞳と目があった瞬間。その子供の瞳が暗緑色であった事に息を飲んだ。この子供が自分の血族であると瞬時に分かったのだ。
そんな霊峰の中に住まう、少数の人々は、その環境の影響を受けるゆえか、様々な力を持つと言われ、神秘に包まれていた。多くの部族は山から出ることなく、下の世界とも交わることもない。
その中で唯一例外なのは、霊月山の麓付近に住む、戦闘系の力を有する一族達だ。もともとは神の御所である霊月山を守護するために、山麓にそうした力をもつ者達が生を受けた事が始まりらしい。
というのは戦から戻った陵瑜がすぐに調べて知ったことだ。
霊峰を守る彼らが技を磨き、力をつける内にその意思が守るものから攻めるものに変わって行くようになり下の世界に交わりだしたのが500年ほど前のことだという。
戦いに飢え、磨いた技を試す場所を探していた彼らにとって、丁度その頃下の世界が迎えていた戦乱時代は最高の環境だった。高い戦闘力を持つ彼らを雇った国や有力者は力をつけ、雇われた彼らには多くの金が入った。
金を手にした彼らは、それにより多くの質の良い武具と栄養価の高い食物を手に入れられる事を知り、更に強靭な肉体と戦闘力を手に入れた。そうして霊月山の人間でありながら、彼ら戦闘系の部族は下の世界との共生の道を歩みだした。
しかし、良い事ばかりではなく、その弊害も多かったという。
幾年か下の世界と交わる内に彼らは自分たちに起こる変化が、種の存続に関わることに気づき出したというのだ。
郷外との血の交わりによって、霊月山の守人として与えられた力が弱くなる事が分かったのだ。
すぐに彼らは、再び下の世界との一線を引き、種を守る事に重きをおいた。
しかしすでに下の世界と関わり過ぎた彼らには、一度知ってしまった世界を切り離す事はむずかしかった。
その頃の部族の中心的な指導者達がすでに、生まれた時から下の世界と交わり育って来た者たちだったのだ。その上、郷の経済もすでに下の世界から入ってきた金の概念で定着してしまっていた。
結局、すべてを昔に戻す事はできず、それぞれの部族が様々な紆余曲折を経て、厳格な掟を設けることにより、下の世界との関わりを維持することとなった。
そうしてまた彼らの生活や所在は謎に包まれる事となり、彼らは国家や一部の有力者の依頼で戦への参加や諜報活動、中には要人や商団の護衛などの任につくなど、裏側の仕事になくてはならない存在となった。
霜苓の郷である蝕の郷もまた、古くから銀鉤国とつながりの深い部族の一つであった。ゆえに霊月山のどの辺りに郷があるかということはなんとなく目星はついていた。
西から南にかけての霊月山山麓の樹海の中。本当にそんなざっくりした情報だけで、陵瑜は霊峰に分け入ろうと思いやってきて、そして自分の考えの浅はかさに愕然としたところだったのだ。
国境を出て、山麓の街道沿いにある宿場町を渡り歩いている内に、なんとなくの情報くらいは手に入るだろうと思っていたのだ。むしろ、宿場町の者たちこそ、口を固く噤んでいる印象を受けた。
途方にくれて数日、なんとなく商人のなりをして街道を行ったり来たりしながら、昼夜を問わず、人の流れを見守っていた。そんな折に深夜、街道沿いの道端に倒れている子連れの女を見つけたのだ。
駆け寄って見れば、意識をなくした母親に守られるように抱きかかえられた子供がキラキラと耀く大きな瞳でこちらを見上げていた。
その瞳と目があった瞬間。その子供の瞳が暗緑色であった事に息を飲んだ。この子供が自分の血族であると瞬時に分かったのだ。
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