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1章
10 辻褄合わせ
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「具体的にどうしたらいいのだ?」
ずっとこの男の手の上で踊らされていたのかと少し面白くない気分を抱えながらも、詳しい話の続きを促す。任務の内容を予め確認する事は基本である。
生真面目に問うた霜苓の姿勢を陵瑜はどう思ったのだろうか、眉を下げて息をつくと、「簡単だよ」と口を開いた。
「口裏を合わせてくれたらいい、誰に何を言われようとも珠樹は俺の子供で間違いないと言い通してくれたらいい」
「なるほど……それで、私達はいつどのようにして知り合った事になる?」
言われたことをいつもの任務のときのように、頭の中に叩き込みながら、順を追て問うて行く。
「なんだ、なかなか乗り気じゃないか!」
なぜか嬉しそうに破顔する陵瑜に「余計な事はいい!」とイラ立ちを覚える。
「こんな事、潜入しての暗殺や情報収集と同じだろう? 一見任務に関係ない所でもきちんと決めておかないとそこからボロが出る。基本中の基本だ」
だから余計な事を言わずにさっさと説明しろ!と睨めつけると、なぜか「あぁ、そういうことか……」と寂しそうにつぶやかれる。
「頼もしい限りだな……そうだな、1年と2.3か月前か…霜苓はどこにいた?」
「……珠碧を身籠った頃か……任務に出ていた。銀鉤国と仙娥国の戦があっただろう? あれに出ていた」
「あぁ、あれか……ならばちょうどいい、そこで知り合った事にするか、俺もあの辺りを彷徨いていた」
「戦場でか?」
商人の陵瑜と刺客として雇われていた自分にどんな接点が考えられるのだろうか……そんな懸念をしっかりと顔に出すが、対する陵瑜は、当然のような顔をして……
「戦場で……だったのだろう?」
「っ……そうだな」
実際にあり得たのだから、そうなのだろう?と、当たり前のように言われ、言葉を失った。実際そんな状況になり、子まで産んだ霜苓にこそ否定できないと我に返った。
「そこで知り合って、心を通わせたが、戦場での事、色々な不運が重なり、互いの境遇を知らないまま別れる事になった。俺はその時聞いた霜苓の故郷の話を頼りに探し出し、霜苓はいつか俺と会えると信じて、俺の子を大切に育てていた……なかなか泣ける話じゃないか」
良いことを思いついたというように不敵に笑い、話を続ける陵瑜に霜苓は半ば呆れる。
「ちょっと美談にしすぎじゃないか?」
「それくらいがちょうどいいんだよ」
しかし、陵瑜はいい考えだとほくほく顔で自身の脇で、大人のやり取りをじっと見つめている珠樹に視線を移すと、「珠樹もそう思うよなぁ?」とデレた声で問いかけだす。
「まぁそちらの家族とやらを納得させるのだから、陵瑜がそれでいいのなら別にいいが……」
何を言ってもこの路線を変えるつもりはなさそうな上、彼の家の者がどういう人間かも分からない霜苓には、それを覆す気にもなれず、それ以上の言及を諦めた。
「ならばそれで行こう!」
珠樹を抱き上げ、随分と慣れてきた手付きで自身の腕の中に収めた陵瑜は
「今日から俺がお前の父だ! よろしくな~」
デレデレの声で珠樹に話しかけている。
もしかしてこの男は珠樹可愛さに、こんな提案をしてきたのではないか……そんな疑念すら生まれてくる。
しかし、それならば霜苓には好都合なのではないかと、胸の奥でもうひとりの自分が声を挙げる。
もし、霜苓がこの先追手に見つかり逃げねばならなくなったとしても、この男ならば珠樹を匿ってくれるかもしれなではないか。まだ、色々と落とし込めていない所はあるが、それでも彼が珠樹を可愛がってくれるであろうことは間違いないだろう。ここへきて下の世界の事は正直霜苓には分からない事が多そうなのだから、珠樹を安全に育てられる状況に身を置けるのならばそれを選ばない選択肢はない。たとえそれが金持ちの男の道楽に付き合うような事でも、利用したらいい。目的は、なんとしてでも珠樹を生かすことなのだから……と。
ずっとこの男の手の上で踊らされていたのかと少し面白くない気分を抱えながらも、詳しい話の続きを促す。任務の内容を予め確認する事は基本である。
生真面目に問うた霜苓の姿勢を陵瑜はどう思ったのだろうか、眉を下げて息をつくと、「簡単だよ」と口を開いた。
「口裏を合わせてくれたらいい、誰に何を言われようとも珠樹は俺の子供で間違いないと言い通してくれたらいい」
「なるほど……それで、私達はいつどのようにして知り合った事になる?」
言われたことをいつもの任務のときのように、頭の中に叩き込みながら、順を追て問うて行く。
「なんだ、なかなか乗り気じゃないか!」
なぜか嬉しそうに破顔する陵瑜に「余計な事はいい!」とイラ立ちを覚える。
「こんな事、潜入しての暗殺や情報収集と同じだろう? 一見任務に関係ない所でもきちんと決めておかないとそこからボロが出る。基本中の基本だ」
だから余計な事を言わずにさっさと説明しろ!と睨めつけると、なぜか「あぁ、そういうことか……」と寂しそうにつぶやかれる。
「頼もしい限りだな……そうだな、1年と2.3か月前か…霜苓はどこにいた?」
「……珠碧を身籠った頃か……任務に出ていた。銀鉤国と仙娥国の戦があっただろう? あれに出ていた」
「あぁ、あれか……ならばちょうどいい、そこで知り合った事にするか、俺もあの辺りを彷徨いていた」
「戦場でか?」
商人の陵瑜と刺客として雇われていた自分にどんな接点が考えられるのだろうか……そんな懸念をしっかりと顔に出すが、対する陵瑜は、当然のような顔をして……
「戦場で……だったのだろう?」
「っ……そうだな」
実際にあり得たのだから、そうなのだろう?と、当たり前のように言われ、言葉を失った。実際そんな状況になり、子まで産んだ霜苓にこそ否定できないと我に返った。
「そこで知り合って、心を通わせたが、戦場での事、色々な不運が重なり、互いの境遇を知らないまま別れる事になった。俺はその時聞いた霜苓の故郷の話を頼りに探し出し、霜苓はいつか俺と会えると信じて、俺の子を大切に育てていた……なかなか泣ける話じゃないか」
良いことを思いついたというように不敵に笑い、話を続ける陵瑜に霜苓は半ば呆れる。
「ちょっと美談にしすぎじゃないか?」
「それくらいがちょうどいいんだよ」
しかし、陵瑜はいい考えだとほくほく顔で自身の脇で、大人のやり取りをじっと見つめている珠樹に視線を移すと、「珠樹もそう思うよなぁ?」とデレた声で問いかけだす。
「まぁそちらの家族とやらを納得させるのだから、陵瑜がそれでいいのなら別にいいが……」
何を言ってもこの路線を変えるつもりはなさそうな上、彼の家の者がどういう人間かも分からない霜苓には、それを覆す気にもなれず、それ以上の言及を諦めた。
「ならばそれで行こう!」
珠樹を抱き上げ、随分と慣れてきた手付きで自身の腕の中に収めた陵瑜は
「今日から俺がお前の父だ! よろしくな~」
デレデレの声で珠樹に話しかけている。
もしかしてこの男は珠樹可愛さに、こんな提案をしてきたのではないか……そんな疑念すら生まれてくる。
しかし、それならば霜苓には好都合なのではないかと、胸の奥でもうひとりの自分が声を挙げる。
もし、霜苓がこの先追手に見つかり逃げねばならなくなったとしても、この男ならば珠樹を匿ってくれるかもしれなではないか。まだ、色々と落とし込めていない所はあるが、それでも彼が珠樹を可愛がってくれるであろうことは間違いないだろう。ここへきて下の世界の事は正直霜苓には分からない事が多そうなのだから、珠樹を安全に育てられる状況に身を置けるのならばそれを選ばない選択肢はない。たとえそれが金持ちの男の道楽に付き合うような事でも、利用したらいい。目的は、なんとしてでも珠樹を生かすことなのだから……と。
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