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5章

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その晩私はジェイドと寝室のソファに並びあって腰掛けていた。

昨晩慣らす機会が欲しいといった手前、この状況を拒む事もできず。かと言って改まって「よろしくお願いします」と改まっていう場面でもなくて、どうすればいいものかと視線を彷徨わせることしか出来ない。

しかし、この状況はジェイド曰く「よろしく無い」のでは無かったのだろうか?
昨日の今日で大丈夫になるのものでもないだろうに、、、隣で酒を飲むジェイドをチラリと見上げれは、しっかり視線があった彼が「どうした?」と言うように首を傾ける。
 
「疲れただろう、公務に。挙げ句の果てに今日はアースラン兄上の事もあったしな」

私の視線をどう解釈したのか、彼は労る様にそう言って、私の髪を柔らかく撫でる。

「確かに、疲れたわ。予想以上に読めない方だったので余計にね」

「すまんな、俺にも掴めない人だからあの人は」

私のため息混じりの言葉に、ジェイドも肩を竦めて苦笑する。

「ご兄弟の交流は無かったの?」
王妃の実子であったジェイドとユーリ様は、今いるこの王の居住区で育ち、公妃の子供であったアースラン殿下は西の塔の宮殿で育っているのは慣例であるから理解はできる。歳が近ければ、一緒に学習をしたり遊んだりすることはあったはずだ。

私は幼い頃からユーリ様とジェイドとよく遊んでいたけれど、そこにアースラン殿下が混ざることは一切無かった。

私の問いにジェイドは「そうだなぁ」とすこし考える素振りをして。

「ユーリは遠ざけられていたけれど、俺は割と一緒だった事もあったかな。何をやらせても軽々こなすけど、極めるような方ではなかった。今日の話を聞いてみて考えるに、きっとそうしたものにもあまり執着しない人だったからなんだろうな。
まぁ俺には優しい兄上だったよ。」

ジェイド自身もアースラン殿下には悪い印象は一切ないようで、本当に読めない人というだけだったらしい。

「ご兄弟3人それぞれ背負っていたのね。」  

性別を偽り生きるユーリ様。
その秘密を知りながら、幼いながら知らないふりをしつつ、突出しないように自身の才能をおさえていたアースラン殿下。
ユーリ様の代わりに子を成すことを求められるジェイド。

全員が全員、自分の王族としての責務を理解して、望まれるように行動した結果がここまで、この大きな秘密を守り通してきたのだ。
それが彼らにとって、幸福な事なのかどうかは別として。

「言っとくが、俺は背負っているつもりはないぞ」

ジェイドの言葉にきょとんとして彼を見上げる。彼の顔は少し不機嫌そうだった。

「だってユーリが男だったら、お前俺になんて見向きもしなかっただろう?
お前を手に入れるにはこの状況でないと無理だった」

自信満々といった様子で言われて、私は絶句する。

そんな事はないと言いたいところだけれど、確かに考えてみれば、私は男性のユーリ様に恋をして、意気揚々と嫁いだわけで、、、説得力がない。

でもきっと

「ユーリ様が女性として最初からいらしたら、、、きっとジェイドに振り向いていたカモ」

「カモなのかよ!」
ポツリと言った言葉に、ジェイドがククッと喉を鳴らすから、私は唇を尖らせる。

「シチュエーションが想像できないのよぉ。
だって本当に小さい頃から2人は私の中にいたから」

そう、小さい頃から、、、本当に覚えていない頃からジェイドもユーリ様も当たり前のように表の性別で私の前にいたのだ。それが覆った時に関係性がどうなっていたのかなんて本当に想像がつかないのだ。

髪を撫でていたジェイドの手が降りてきて。頬を撫でる。

「まぁいいさ、、今は俺だけをみてくれている?」

「っ、、!」

悪戯めいた視線で、顔を覗き込まれて私は息を飲む。ジェイドのグリーンの瞳が怪しげな輝きを放っている。

「ねぇアルマ?」
絶句した私をまるで探り出すように妖艶に笑んだ彼から視線を逸らせない。

「っ、、みてる!」
やっとの思いで精一杯言葉を紡ぐけれど。

「なにを?」
意地悪に聞き返されて

「ちゃんと言って?」
強請るように、甘く囁かれる。
頬を撫でるジェイドの手つきは、いつも口付ける前に触れるような甘さを感じて。
まるで「きちんと言えたらご褒美をあげるよ」と言われているようだ。

「ジェイドだけを、、、見てるわっ!」
やっとの事で、言えた言葉の最後は、ジェイドに押されてソファの背もたれに身体が沈んで、驚きの声に変わった。


ヒュッと息を吸ったその直後、ご褒美の口付けが落ちてきて、深く深く口内を貪るように舌が絡んでくる。
彼が飲んでいた濃い酒のかおりが広がって。
くらくらとして熱くなってくるのはそのせいなのかもしれない。

髪を頬を撫でられながら、彼のくれる熱と刺激に溶かされそうになった私も答えるように彼の首に両手を絡ませた。
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