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5章
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しおりを挟むそんなバタバタと忙しく過ごして、少しずつ皇帝代行の仕事にも慣れてきたある日。
議員たちのと意見交流の時間を終えて、執務へ戻るため、先王陛下と2人でユーリ様のお部屋に向かおうと、ジェイドの執務室のある階まで上がってきた時だ。
「そこの御令嬢、ここで何をしておる?」
国王の居住階に向かう階段の前で、上を見ながらウロウロとしている金髪の巻き毛の若い女の姿があった。
先王陛下の声かけに、ビクリと肩を震わせ振り返った彼女は、、、エリスだった。
彼女は先王陛下のお姿を認識すると慌てて礼を取る。
「エリス?こんな所で何をしているの?」
なんとなく嫌な予感を感じて問えば、エリスは上の階をちらちらと確認しながら。
「そのぉっ、、お父様の御用についてきたのです」
以前私1人と対峙した時とはまるで違う、愁傷な態度である。
「ベルベルト卿のご御用?」
見回してみるけれど、そのお父上の姿は見当たらない。しかもジェイドは数日前から視察に出ているので今日は執務室にはいないから、前回のようにジェイドの執務室に居るという事は無いはずだ。
「それで、ベルベルト卿はどちらに?」
そう問えば、彼女は唇を噛んで少し俯きながら気まずげに
「その、、、陛下はお怪我で動けなくて色々と退屈かと、、、この機会に陛下にお会いして、私を公妃にお迎えくださらないかとお話をする、、、と父が、、、」
そう言ってチラリと彼女がまた階段の上を見るので、私と先王陛下は顔を見合わせて、同時に嫌な考えが過った。
おかしいとは思ったのだ。この場にいつも配されているはずの見張りの近衛の姿が無いのだ。
先王陛下がエリスを押しのけて、階段を駆け上がり、私もそれに続く。
階段を登り切れば、フロアの部分で、兵に囲まれて何やら喚きがら制止されているベルベルト卿のお姿があった。
「ベルベルト卿、何をされているのだ!」
先王陛下が厳しい言葉を投げかければ、その場の皆がこちらを振り返る。
「こ、これは先王陛下!お久しぶりにございます。本日は、お怪我でお心を痛めておられるユリウス陛下を見舞い、お慰めしよう思いまして」
「ここは王族以外が入れる場所ではない!何故ここまで入れた!」
先王陛下の厳しいお言葉の最後は、彼を取り囲んでいる近衛に向いた。
近衛達は、困惑したように頭を下げると。
「国王陛下にご自身は許可を取り呼ばれたのだとご説明を受けまして、、、その王太子妃殿下のお父上でありましたので、、、しかし、そのような話は聞いておりませんので、今侍女を捕まえてお休み中の陛下に確認をさせている所でございます。」
なるほど、、、王太子妃の父である事を盾にここまで入り込めたらしい。
国王側と王太子側がどの程度の仲であるのかを知らない近衛が困惑しても仕方はないのかもしれない、しかし
「それは有り得ない。今のユーリは到底公妃を娶る気も、なんならそんな下心のあるような者を寄せ付けるわけがない!即刻ここから出ていきなさい!」
先王陛下の厳しいお声がホールに響くのと、カチャリと居室の扉が開くのは同時だった。
居室の扉からひょこりと顔を出したのは、アイシャで、彼女は私達の姿を見とめると礼を取り、近衛に向き直る。
「ただいま陛下にご確認しましたが、そのような約束はないと、、、そして例え王太子妃のお父上でもお会いするつもりはない。またここまで不躾にやってこられることは許されざる事、即刻この階より下がられよと申されております」
明確なユーリ様からの拒絶の言葉だった。
これで、ベルベルト卿も諦めて下がられるか、、、と思ったのだが、、、。
「そんな!陛下!ユリウス様お待ち下さい!」
そこにいつの間にかエリスが、上がってきていたのだ。
彼女は、悲痛な声をあげると、あろう事か戸口に立つアイシャを押しのけて室内に飛び込んだのだ。
一瞬の出来事に、誰も彼女を止める事ができなかった。
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