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5章
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しおりを挟む翌日の新聞には、ジェイドの婚約のお相手の名前や馴れ初めまで、随分と詳しい情報が、掲載された。
お相手の名前は、シェリン・タイナー。軍人家系のマルドリール伯爵家の御令嬢でご自身も軍に所属されていて、ジェイドとは5年以上の付き合いで、戦争中も行動を共にしていたらしい。
戦争後は互いに立場は変わったものの、同じ王都にいる事から空いた時間を使って交流を重ねていた。
随分と前から彼女との結婚を意識していたジェラルド殿下は、彼女が人々の好奇の目に晒されないよう、随分と注意深くその存在を秘めてきたのだ。それほどに大切にされた気高き女騎士は我々にどのような王子妃の姿を見せてくれるのだろう。
そんなふうに締め括られた記事に一通り目を通して、私は大きなため息を吐いた。
目の前ではユーリ様が、私の反応をみて困ったように眉を下げていた。
シェリン・タイナー嬢。
噂には聞いた事がある。貴族の御令嬢ながら男顔負けの麗しい女剣士で、剣術、馬術、仁戦術、すべてに秀でて、その美しさと強さから一部の令嬢達が、男装の麗人、下手な男に嫁ぐくらいなら一生を親衛隊として彼女を愛でて過ごしたいと言う者もいるらしい、と。
紙面に載っている最近の彼女の社交界での姿だという白黒の写真は、すらりと背が高く、美しいながら凛々しいお顔立ちの方だ。
同じく背が高いジェイドと、隣に並び合えば、それはそれはとても見栄えがしてお似合いな2人となるだろう。
その二人を想像するだけで、喉が重たくなって涙が込み上げて来そうになって、私は慌てて顔を上げた。
そしてその翌日の新聞記事にはジェイドのプロポーズの詳細までが載り、なんだかとてつもなく情熱的に思いあった婚約者だと言う筋書きになっているのだ。
「まぁ新聞ですから、、、」
記事に一通り目を通したジフロードが、苦笑しながらも、宥めるように言うので、私も同じように苦笑する
「そうね。なんだか出来すぎてる気もするし、、、まぁいい気はしないけど」
「しかしどこから出たんだこれ?軍関係者と出てるぞ?機密に厳しい軍関係者から出てくるとは思えないのだけど」
ジフロードから新聞を受け取って、もう一度見返しながら、ユーリ様は眉を寄せて唸る。
「とにかくここまで出されて、流石に議会でも何も説明出来ないのは辛い。議員の中にも娘をジェイドの嫁にと思っていた者は多いから、連日問い詰められて参っているんだ」
ユーリ様は疲れたように言って新聞を投げた。
このところ、毎日投下される爆弾のようなこの情報に私も感情を左右されてすぎていささか疲れて来た。
なんならこんな記事読むのはやめて、ジェイドが戻るまで目にしない方がいいのではないかとさえ思う。
しかし、やはり朝になれば気になって、そうして結局読んでしまって鬱々と1日を過ごす事になるのだ。
翌日の新聞には、視察先で二人で並んで歩く姿の写真が載せられていて。
今も一緒にいるのだと思うと、泣きたくなるし、ジェイドの事を信じていたいと思っても、、、何故話してくれなかったのだろうかと、そんな苛立ちのような寂しさも生まれてきた。
そうして、ジェイドがあと2日で戻る予定となっていたその日
唐突にジェイドの婚約者とされているシェリン・タイナー嬢が王宮へやって来たのだ。
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