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2章

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夜、ユーリ様に誘われて共有スペースに向かえば、テーブルには、私が所望したモンシェールのベリーのタルトとショコラがきちんと用意されていた。


「ジェイドは少し遅れるから先に食べいていいそうだよ?モンシェールのケーキなんて久しぶりだなぁ」


いつもの如く、艶かしい寝巻き姿の陛下も、目を輝かせている。

殿下も昔からモンシェールのケーキは大好きで、確か、、、

彼女の皿を見れば、木の実のタルトとフランボワーズフレーズ。彼女が昔から好んで食べていたものがきちんと用意されている。

「アルマのおかげで私も得しちゃった!」

弾むようにソファに座ると、彼女は皿を取ってヒョイと木の実のタルトを持ち上げるとそのままかじりついた。

「う~ん!最高!ワインが欲しい」

満足そうな彼女に誘われるように、私も向かいのソファに腰掛けると、皿を取る。


ユーリ様に習ってベリーのタルトにかじりつく。

幼い頃、こんな姿を母達に見られると、「はしたない」とよく咎められた。だから私たちはよく母達の目を盗んで、こんな食べ方をしていた。

ユーリ様もそれを思い出したのだろう。彼女の顔が、悪戯な笑みをうかべている。
多分私も同じ顔をしている。


「こうして堂々食べられるのは最高だね!」

「ふふ、本当に。やっぱりタルトはこの食べ方が一番美味しいと思います」

私の言葉にユーリ様がパチリとウインクをして私に微笑む。


「同感だよ。これからたまにはオヤツに用意させようか」

「まぁ、嬉しいです」

素敵な提案に、ぴょんと跳ねて、身を乗り出す。


「それは、まさか俺にと言うわけではないだろうなぁ?」

突然、ユーリ様のお部屋の戸口から、呆れたようなバリトンボイスが聞こえて、私とユーリ様は声の主を振り返る。

「ジェイド、お疲れ様。ケーキをありがとう」

「先にいただいているよ!もちろんまた次も頼むよ!軍司令殿!あとワインが有ればありがたいんだけど、君のワインセラーにちょうど良さそうなものはないかな?」


仕事を終えて、ジャケットを脱いだだけのジェイドは、苦虫を噛み潰したような顔で、立っている。

「ケーキの次は、ワインかよユーリ。昨日も散々飲んだだろうが」

「あんなの寝酒にもならないよ!」

さらりと言って除ける姉に、弟は呆れたように息を吐いた。

「少し待っていろ、、」

そう言って踵を返して出て行ってしまった。


「国境線は葡萄の産地で有名だからね。アイツあっちに行ってワインの味を覚えたらしくて、ずいぶんいいものをコレクションしてるんだ。」

ふふふっとユーリ様はそれはそれは楽しそうに笑った。


「一人で飲むより、みんなで飲んだ方が楽しいじゃない?アルマも遠慮なく飲んだらいいよ、寝てしまったらジェイドが寝台まで運んでくれるし。昨夜は無事だった?」

私は途端に、顔が熱くなった。

「ぶ、無事に決まってます!」

慌てて首を横に振って、残りのタルトを口に放り込んだ。まさかジェイドのシャツを奪っていたなんて事は言えない。

「そうなの!?(チッ、あの意気地なし)」

ユーリ様は驚きながら、何かブツブツ言って、背もたれに身体を預けた。

そのタイミングで、例によってパカリと床板が外れてそこから、ジェイドが顔を出す。

最初こそ驚いたものの、そろそろ見慣れてきた。

「貴腐ワインにしてみた。」

ジェイドはそう言ってワインをユーリ様に渡すと、私の横に腰掛けた。

「流石、分かってるねぇ~。これならアルマも飲めるしね」

ジェイドから受け取ったボトルのラベルを眺めて、ユーリ様は満足そうだ。

どこにあったのかすかさずオープナーを取り出して、意気揚々と開けている。

その間にジェイドは、自身の脇に設られているチェストからワイングラスを3人分出している。


あ、私が飲むのも決定事項なのね。

今日こそは、ジェイドに迷惑をかけないようにしなくては。


そうして始まった深夜のスイーツ&お酒タイムは私たちの日課になって行ったのだった。

そして私は毎夜のように、眠ってしまうか、フラフラになってジェイドにベッドまで送られるという醜態を晒す事になっていた。

だって2人とも強すぎるのだ。

そして私が弱い事を知りながら、、、彼等は飲ませるのだ、、、。本当にひどい。
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