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2章
5(ジェラルド視点)
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戦争自体は2年ほどで片がついた。結果我が軍の勝利に終わったものの、それでも治安の回復や国境線の強化、残党の抵抗など様々な事情を抱えて、なかなか帰都できず、歳を重ねた。
そんな中ユーリから手紙が送られてきて、彼女の即位式に戻ってくるよう命じられた。
ここ数年、父が体調を崩しがちなのは聞いていたから驚きはしなかった。
しかし未婚のままの即位は珍しく、即位の後にはすぐに王妃の選定が始まるだろう。
アルマもまだその候補の中に残っている
結局自分が彼女を手に入れるには、彼女がユーリと結婚するのが一番良いのではないかと、諦めた。そばにいられたのならば、何とか模索もしただろうが、こう長い事離れてしまっては、他の男の物にならないだけ上等というところだ。
アルマの心をつなぎとめたユーリに感謝したくらいだ。
即位式には婚約者候補である彼女も参列するはずだ。どんなに美しくなっているだろうか。
もう、昔みたいな子供ではない。
きちんと紳士的に振る舞おう。
戦場に身を置いて数年、こちらに来て随分と背も伸びた。毎日極限の中に置かれてトレーニングをしたせいか身体も随分と引き締まり、中性的だった顔は男らしい顔つきになった。
少しは男として、意識してくれるだろうか?
アルマに会える日を楽しみに、帰都の予定を立てていた。
しかしそれは叶わなかった。
新国王の即位に際して、国境付近に潜伏する残党達が活発に動き出した。
そんな状況でそこを離れるわけにはいかなかった。
折角、アルマに会えると思ったのに、このクソッタレども!!
怒りをぶつけるように、今まで以上に容赦なく残党狩を決行した。
これが功を奏した。
長い間、頭を悩まされていた残党共の殲滅に成功したのだ。
結果として、本格的な帰都が早まる形になった。
流石に即位式には間に合わなくて、何とか時間を作り王都に一時的に戻れたのは即位式から2週間後の事だった。
久しぶりに会ったユーリは、美しさに磨きがかり、黄金に輝く美丈夫と巷で謳われるのも頷けた。
「今ね、アルマがメルリースに会いに来てるんだよ!覗いて見ない?」
顔を見るなり、ユーリが楽しそうに笑って俺を中庭に引っ張って行く。
メルリースは、俺とユーリの妹で17になる。昨年隣国に嫁いだのだが、兄の即位式に参加するためにしばらくこちらにいるらしい。
今回、都合できた時間は短くて、アルマに会える時間なんてないと思っていたから、それは嬉しい誘いだったが、、、
覚悟していなかった俺は、何故かそこで怖気付いた。
「中庭を散歩してるみたいだから、少しだけ覗いてみるだけ、、な?」
敏感にそれを察したユーリが仕方ないなぁ、と笑いながら提案してくれて、俺たちは2人で中庭を散歩する妹とアルマを観察する事にした。
久しぶりにみたアルマは、想像以上に美しくなっていた。
長い睫毛に、大きなアメジストを思わせる薄紫のつり目がちの瞳は、相変わらずキラキラと美しく輝き、朱を指したピンク色の唇で可愛らしく笑っていた。
背も伸びていて、白魚のような、ほっそりとしながらも柔らかそうな手足。
ふっくらと膨らんだ胸に、しまったウエスト。
アップスタイルにした髪の下から覗く白くてしなやかな頸。
女の子から、大人の女性に変貌を遂げた彼女の姿に、しばらく言葉を失った。
「すごくいい女になったと思わない?」
にまりと、隣で笑ったユーリに言葉も発せずコクコクと頷いた。
そのまま、ぼんやりと見惚れていると、妹とアルマは中庭の中ほどにある東屋に入り、お茶をし始めた。
「ここまでだね。戻ろう」
ユーリに促されて、執務室に戻るまで、俺の頭の中は彼女一色だった。
「お前がその様子だと、妃に迎えるのは彼女で、良さそうだな?」
執務室に着くなり、ユーリは人払いをしてそう言った。
今回の帰都の目的はこの話を進めるためでもあった。
この時ばかりは、惚けていた俺も神妙な顔で頷いた。
「異論はない。むしろ強く希望する」
「いいのか?彼女は、私に惚れてるよ?真実を知ったら彼女がどう反応するかはわからない。他の候補者、、、トレーズモンド公爵のところのエミリアなんかは、政略結婚と割り切っているだろうしお前が苦労する事もないと思うけど?」
心配そうなユーリの言葉に、首を振る。
「俺はアルマがいい」
キッパリといえば、彼女は苦笑する。
「アルマを妻に娶る、、、って考えはないのか?」
「いずれ他の女を抱かねばならん事を分かっていて、彼女を妻にはしたくない。俺は彼女意外の女を抱くつもりはない。それに、ユーリも側に置くならアルマがいいのだろ?俺たちの進む道は険しい。アルマなら、お前の疲れも渇きも癒してくれると思っている」
どさりと勢いよくソファに腰掛けると、ユーリを見つめる。
目のあったユーリは、困ったような、申し訳無さそうな顔をしていた。
「そうだね。アルマは昔から私たちの癒しだ。側にいてくれたらそれほど嬉しい事はない。でもだからこそ巻き込みたくは無かった、、、すまない。お前に全て背負わせるような言葉だったな」
「それでいい!ただでさえユーリは大きな我慢を強いられてるんだ!これは俺のわがままだと思っておけばいい」
それからしばらくして、若くて美しい国王陛下がついに王妃を決めたというニュースが国中を駆け巡った。
そんな中ユーリから手紙が送られてきて、彼女の即位式に戻ってくるよう命じられた。
ここ数年、父が体調を崩しがちなのは聞いていたから驚きはしなかった。
しかし未婚のままの即位は珍しく、即位の後にはすぐに王妃の選定が始まるだろう。
アルマもまだその候補の中に残っている
結局自分が彼女を手に入れるには、彼女がユーリと結婚するのが一番良いのではないかと、諦めた。そばにいられたのならば、何とか模索もしただろうが、こう長い事離れてしまっては、他の男の物にならないだけ上等というところだ。
アルマの心をつなぎとめたユーリに感謝したくらいだ。
即位式には婚約者候補である彼女も参列するはずだ。どんなに美しくなっているだろうか。
もう、昔みたいな子供ではない。
きちんと紳士的に振る舞おう。
戦場に身を置いて数年、こちらに来て随分と背も伸びた。毎日極限の中に置かれてトレーニングをしたせいか身体も随分と引き締まり、中性的だった顔は男らしい顔つきになった。
少しは男として、意識してくれるだろうか?
アルマに会える日を楽しみに、帰都の予定を立てていた。
しかしそれは叶わなかった。
新国王の即位に際して、国境付近に潜伏する残党達が活発に動き出した。
そんな状況でそこを離れるわけにはいかなかった。
折角、アルマに会えると思ったのに、このクソッタレども!!
怒りをぶつけるように、今まで以上に容赦なく残党狩を決行した。
これが功を奏した。
長い間、頭を悩まされていた残党共の殲滅に成功したのだ。
結果として、本格的な帰都が早まる形になった。
流石に即位式には間に合わなくて、何とか時間を作り王都に一時的に戻れたのは即位式から2週間後の事だった。
久しぶりに会ったユーリは、美しさに磨きがかり、黄金に輝く美丈夫と巷で謳われるのも頷けた。
「今ね、アルマがメルリースに会いに来てるんだよ!覗いて見ない?」
顔を見るなり、ユーリが楽しそうに笑って俺を中庭に引っ張って行く。
メルリースは、俺とユーリの妹で17になる。昨年隣国に嫁いだのだが、兄の即位式に参加するためにしばらくこちらにいるらしい。
今回、都合できた時間は短くて、アルマに会える時間なんてないと思っていたから、それは嬉しい誘いだったが、、、
覚悟していなかった俺は、何故かそこで怖気付いた。
「中庭を散歩してるみたいだから、少しだけ覗いてみるだけ、、な?」
敏感にそれを察したユーリが仕方ないなぁ、と笑いながら提案してくれて、俺たちは2人で中庭を散歩する妹とアルマを観察する事にした。
久しぶりにみたアルマは、想像以上に美しくなっていた。
長い睫毛に、大きなアメジストを思わせる薄紫のつり目がちの瞳は、相変わらずキラキラと美しく輝き、朱を指したピンク色の唇で可愛らしく笑っていた。
背も伸びていて、白魚のような、ほっそりとしながらも柔らかそうな手足。
ふっくらと膨らんだ胸に、しまったウエスト。
アップスタイルにした髪の下から覗く白くてしなやかな頸。
女の子から、大人の女性に変貌を遂げた彼女の姿に、しばらく言葉を失った。
「すごくいい女になったと思わない?」
にまりと、隣で笑ったユーリに言葉も発せずコクコクと頷いた。
そのまま、ぼんやりと見惚れていると、妹とアルマは中庭の中ほどにある東屋に入り、お茶をし始めた。
「ここまでだね。戻ろう」
ユーリに促されて、執務室に戻るまで、俺の頭の中は彼女一色だった。
「お前がその様子だと、妃に迎えるのは彼女で、良さそうだな?」
執務室に着くなり、ユーリは人払いをしてそう言った。
今回の帰都の目的はこの話を進めるためでもあった。
この時ばかりは、惚けていた俺も神妙な顔で頷いた。
「異論はない。むしろ強く希望する」
「いいのか?彼女は、私に惚れてるよ?真実を知ったら彼女がどう反応するかはわからない。他の候補者、、、トレーズモンド公爵のところのエミリアなんかは、政略結婚と割り切っているだろうしお前が苦労する事もないと思うけど?」
心配そうなユーリの言葉に、首を振る。
「俺はアルマがいい」
キッパリといえば、彼女は苦笑する。
「アルマを妻に娶る、、、って考えはないのか?」
「いずれ他の女を抱かねばならん事を分かっていて、彼女を妻にはしたくない。俺は彼女意外の女を抱くつもりはない。それに、ユーリも側に置くならアルマがいいのだろ?俺たちの進む道は険しい。アルマなら、お前の疲れも渇きも癒してくれると思っている」
どさりと勢いよくソファに腰掛けると、ユーリを見つめる。
目のあったユーリは、困ったような、申し訳無さそうな顔をしていた。
「そうだね。アルマは昔から私たちの癒しだ。側にいてくれたらそれほど嬉しい事はない。でもだからこそ巻き込みたくは無かった、、、すまない。お前に全て背負わせるような言葉だったな」
「それでいい!ただでさえユーリは大きな我慢を強いられてるんだ!これは俺のわがままだと思っておけばいい」
それからしばらくして、若くて美しい国王陛下がついに王妃を決めたというニュースが国中を駆け巡った。
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