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1章
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しおりを挟むしばらくジェイドの胸で子供のように泣きじゃくった私は、少し冷静になって現状を把握して来ると、あまりの自分の醜態に赤面した。
だって、失恋を他の男の胸で癒すなんで、私とした事がどれだけ節操がなくて破廉恥な振る舞いを!
どうしよう、顔が挙げられない!!
ジェイドの腕の中で半ば硬直してしまった。
しかも、ジェイドの手が慰めるように私の背を撫でている。
そういえば下着つけてない!それどころか今の私の格好は閨のための脱がせやすいガウン一枚だ
布一枚隔て動く彼の手が途端にすごく官能的なものに感じてしまい、私は慌てて顔を上げた。
「ごめん、ありがとう」
泣いたあとの私はとんでもなくみっともない顔をしていただろうけど、そんな事はどうでもいい。早くこの危険な手から逃れたかった。
「なんだ、もう復活したのか?やっぱりお前はしぶといやつだなぁ」
するりと私から手を離したジェイドは、少しふざけた様子を見せながらそれでも、優しく私の頬に残っていたらしい涙を拭ってくれた。
「これでも今日から王妃なのよ!そこらの小娘みたいにいつまでもメソメソしてられないの!」
「それはそれは、素晴らしいお心持ちで、大変関心だな」
どこか少し不満気な彼はそう言うと、じっと私を見つめた。
「ユーリの事はそうすぐには忘れられないと思う。だが、もし忘れる事ができて、お前の心が落ち着いたら、次は俺のことを見てくれないか?」
そう言って、少し目を細めて
「俺はいつまでも待つから」と私の額に、口づけを落とした。
唖然とする私を寝台に残して、ジェイドはさっさとリビングへ続く扉へ向かうと「終わったぞ」とあちら側にいる陛下に声をかけた。
程なくしてやっていきた陛下が明らかに泣いた後であろう私の顔を見て、非難めいた視線をジェイドに向けたが
「泣いたのはお前のせいだ!変な事はしてない」と、弟の言葉を聞いて。
本当なのか?とこちらに視線をよこしたので、私は困ったような曖昧な笑顔を作って頷いた。
「とりあえず、今夜の所はこんな感じだけど、アルマ寝られるかな?」
心配そうに聞く陛下が、なんなら一緒に寝るよ?どうせ閨の儀をしていることになっているのだしね!と言われて、私はブンブンと首を振る。
いくら同性でもこんな美しい顔が近くにあったら落ち着いて寝られるはずがない。
というより、まだ私の中ではユーリ様は男性という認識が強すぎる。
ただでさえ整理したいことがありすぎるのに、そんなことをしたら徹夜確定だ。
明日もまだ婚姻行事は続くのだ。
寝不足は美容の大敵である。
「そうか、じゃあ我々は失礼しようか、、、とその前にジェイド頼むよ」
腰を浮かせかけた陛下が、傍で立ったままだった弟を見る。
「あぁ、」
心得たと頷いたジェイドは、徐に腰に携えていた短剣を抜き取ると
指の腹を軽くなぞる。
「血!」
驚いて腰を浮かせた私に、陛下が「大丈夫だよ」と声をかけて押し留める。
ジェイドの指の腹に、ぷつぷつと小さなルビーのような血の玉が浮き上がるのを、私と陛下は静かに見守った。
「この辺でいいか、、、」
彼がそう言うと、私が座る寝台に近づいて、真っ白なシーツの上に指の腹を擦り付けた。
そこで私は、彼が何をしたのかを理解して、顔が熱くなるのを感じた。
そんな私を他所に、陛下は悪戯そうな笑みを浮かべて彼にグラスの水を渡す。
「ついでにこの水も少し垂らしておけ!」
なんで水を垂らす必要があるのだろう?不思議に思いながらも私は口をつぐんだ。
聞いてはだめな気がする。
(と言うより陛下はどうしてそんな知識があるの!?)
「とりあえず表向きはこれでいいだろう」
満足そうに寝台から腰を上げられた。
彼等が言わんとしていた事は、とりあえずお妃教育の中で習った事と関係している事は理解出来たので、私は黙っておくことにした。
閨完遂の状況を整えた2人はこれで退室していくのだろうと思った、
そう思ったのだ、が
「いや、、、ひとつだけ」
ジェイドがポツリとつぶやいた。
そして寝台にかけていた足を下ろすと、私の前に跪くような形になる。
私を見上げる彼の瞳はどこか静かな光を放っていて。
「アルマ、少し辛抱してくれ」
そう言った彼が、少々乱暴に私の体を引き寄せると、今夜一度も乱れた事がなかった私のナイトガウンに手をかけた
「ひやぁ!」
「あらあらあら」
私と陛下、それぞれが声を上げた。
あろう事か彼は私のガウンの左側の胸元だけを少し引っ張ってはだけさせると、胸の膨らみのすごく際どい部分に唇を這わせた。
チリっとした痛みを感じて、私はわずかに息を飲んで肩を揺らす。
恥ずかしくて直視する事が出来なかった。
息を吐く頃には、すでにジェイドの唇が離れて襟元も簡単に戻されていた。
「な、にを、、、!」
慌てて胸に手を当てて彼から距離を取ると、ジェイドは小さく息を吐いて私から離れた。
「長年の思いを叶えて結ばれた妻と一夜を共にして、痕をつけない男なんていないからな。そこなら明日のドレスには響んだろう?」
淡々と言い捨てて彼は踵を返した。
慣れた手つきで、隠し扉を開けて
「おやすみ」と一声かけて、穴の中に消えていく。
その一連の流れを私と陛下は唖然と見送った。
「まぁ、男心はわたしにもよくわからないから、アイツが言うならそういうことなんだろうね」
まだパクパクと口を開けている私を見た陛下がそう言って苦笑していたが。
「まぁ深く考えなくていいよ」
とフォローされて、とりあえず私はこの事を忘れることにした。
そうして陛下が退室されて1人になった私は、今日起こった目まぐるしいことを整理しながら、図太くもそのまま眠りに落ちたのである。
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