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2巻 行き遅れ姫の謀
2-1
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一章
パンパンと木と木のぶつかり合う軽快な音が響き渡る。
激しく響いては、消え、また激しく響く。
幾度となく耳にしており、泰誠にとってはもはや生活の一部といえる音だ。
その音を聞きながら、泰誠はゆっくりと瞳を開いた。見つめる先には、しっかりとした体躯の男――自身の主である冬隼と……
「だーかーらー! 手加減するなって言っているじゃないの‼」
最近馴染みになりつつある、小柄な女――冬隼の妻である翠玉がいた。
彼女はもどかしいのだろう。手合わせをしている冬隼に対して、先程から苛立ちを露わにしている。
「病み上がりの人間に本気など出せるわけがないだろう」
冬隼がヒョイと肩に木刀を乗せる。ひとまず休憩といった合図だ。
「病み上がりだろうが何だろうが、手加減されるのが腹立つのよ~」
対する翠玉は、不満だらけだと言わんばかりに木刀をブンブン振り回す。彼女はまだやる気のようだ。
「休憩だ! 少し休め、体がもたん」
そんな翠玉を相手にせず冬隼は勝手に一礼すると、スタスタと泰誠の方へ向かってくる。
「じゃあ手加減しないで! 冬隼さっきから、いつもの半分の力も出してないでしょ。それくらい分かるんだから!」
諦めたように翠玉も軽く一礼すると、パタパタと冬隼の後を追ってくる。不満げな表情は変わらない。
翠玉の言葉を受けて、冬隼の眉間にシワが寄った。
あぁ、これは始まるぞ……。そう思った直後。
「うるさい‼ 少しは俺の言う事を聞け! とりあえず俺は疲れた。少し休憩したら再開するからお前も休め」
案の定、強い口調で言い捨てた冬隼が、逃げるようにドカドカと乱暴な足取りで稽古場を出て行った。
そんな二人をやれやれと眺めて、しかしこんな姿が見られるようになった事を心の底では喜ばしく思う。
敵国同士の皇女と皇弟である二人――清劉国の皇女である劉翠玉と、湖紅国皇帝の弟であり禁軍将軍を務める紅冬隼が、政略結婚で不本意ながら祝言を上げてから、二つ目の季節を迎えようとしている。
堅物で真面目が取り柄の冬隼と、祖国でないがしろにされながらも、たくましく生きて来た跳ねっ返りの翠玉。
はじめこそ反発し合った二人だが、お互い武を極める者として関わる中で、泰誠が……否、他の誰もが予想しなかったほど、認め合うようになっているのだ。
あの、「祝言なんぞ出ない!」「嫁などいらん!」と祝言当日までごねていた冬隼が……そう遠くない出来事を思い出して、つい顔をほころばせていると……
「もう! 腹立つ~」
置いていかれた翠玉が悔しそうに言いながら、消えて行く夫の背中を睨めつけて唇を噛んでいる。
「まぁまぁ奥方様。殿下も出ていかれた事だし、少し落ち着きましょう。休憩も大事な事です」
仕方なくなだめて、隣に腰掛けた翠玉に水桶につけてあった手拭いを渡してやる。
彼女が就寝中に冬隼と共に刺客の襲撃を受け、毒を負って昏睡状態となったのはひと月と少し前の事だ。
あの頃を思えば、翠玉は随分と回復して、動けるようになっている。
しかし万全の体調に戻っているとはいい難い状態であるのも事実で……
「ありがとう……」
不貞腐れながらも、翠玉は渡された手拭いを素直に受け取って、額に当てて息を大きく吐いている。
何だかんだ言いながら、先ほどの打ち合いでかなり体力を消耗しているのだろう。冬隼が休憩をと言ったのは、彼女の状態を把握していたからに違いない。
全く、病み上がりで体力が落ちているから心配だと言ってやればいいものを。素直じゃない。
怒りながら出て行った冬隼の心情を思うも、しかし彼が素直にそんな事を告げられるような器用な質でもない事を思い出す。
全く、手がかかるなぁ、もう。
「殿下自身も迷っているんですよ。また奥方様を巻き込んでいいものかと」
こうして剣を握れば、いずれまた翠玉は生死を彷徨うかもしれない。翠玉の事を好きだと自覚してしまったがゆえに、冬隼はそんな相手を戦に出してもいいものかと迷いが出ているのであろう。
たとえ本人が望んでいる事だとしても。男として、理解できない心情ではない。
「は? 今更? 冬隼が何と言おうと、私は剣を捨てる事なんてないわよ? 武を捨てろと言うなら離縁していただくわ」
しかし肝心の翠玉には、冬隼の思う所などは全く理解できていない。頼むからそんな事、冗談でも今の殿下の前では言ってくれるなよ。
心の中で泰誠は切に願った。
「早く体力も元に戻さなきゃ。すぐに戦が始まるんですもの。足手まといにはなりたくないわ!」
首元を拭き取った手拭いを手の中で強く握りしめ、翠玉は口惜しそうに呟く。彼女も彼女で焦りがあるのだろう。
確かに、病み上がりの翠玉は以前に比べて精彩を欠いている。
仕方がない。何日も寝込んだ上、ここまで体を動かす事ができるようになったのも、つい最近の事だ。それでも、手加減されているとはいえ冬隼との打ち合いに付いていけるのだ。普通の女の枠からは外れている。
そこまで考えた所で、泰誠は自分をじっと見つめる熱い視線に気づいた。
瞬間、嫌な汗が流れる。
「ねぇ、泰誠。あなたは冬隼と互角にやり合うのよね? 手加減なしで、手合わせ願いたいわ!」
気がついた時にはすでに、翠玉に裾を掴まれていた。
「いやいやいやいや。殿下に休憩と言われたものを、私が勝手に覆すわけには」
慌てて、逃げようと体をよじるが、すでに遅かった。いったいこの華奢な体のどこにそんな力があるのだろうか、翠玉に掴まれた裾はびくともしない。
「だって、冬隼ったら何だかおかしいんだもの。何かに怯えてるみたいに打ち込んでくる時があるのはなぜ?」
あなたも気づいているのでしょう? とじっと強い視線で見つめられる。
そういえばこの人は、思った以上に相手の事をよく見ているのだ。それは自身の夫だけでなく部下である泰誠の事も、である。
どう答えるべきかと一瞬思案する。まともに答えてしまえば、彼女が冬隼の気持ちに気づいてしまいかねない。流石に、それは泰誠がするべき事ではない。
思案が長く続かなかったのは、泰誠の視界の中にある翠玉の姿がぐらりと揺れたからだ。
「奥方様!?」
咄嗟に体が受け止める体勢をとる。しかしそこに受け止めるべきものは落ちて来なかった。すんでのところで、堪えたらしく、手をついて体重を支えている。
「大丈夫ですか?」
慌てて顔を覗き込もうとするが……
「ごめん。ちょっとした目眩だから。運動不足のせいよね、時々あるの」
一拍早く顔を上げた翠玉の顔色は、いつも通りだった。
「きっと水分不足ね。私も水飲んでくる」
翠玉は、本当に大丈夫なのかと心配になるくらい素早く立ち上がり、泰誠に背を向けると、そのままパタパタと出て行ってしまった。
◆
「体を動かしてみてどうだ?」
冬隼は帰宅後、自身の部屋に入ろうとする翠玉に声をかけた。
昼に泰誠から少し気になる様子を聞いていたため、尋ねてみたのだが……
「まぁ、まだ少し重いわね。こればかりは仕方ないわ。ひたすら動かしていくしかないもの。打ち合い、付き合ってくれてありがとう!」
翠玉からは簡単な言葉と、気まずげな笑みが返ってきただけだった。振り切るように部屋に入る翠玉の後ろ姿を、黙って見送る。
泰誠が翠玉の体調が気になると耳打ちしてきたのは今日の午後の事だ。稽古を終えて、翠玉が訓練を付けている隊の様子を確認しようと、泰誠と共に見物に行った時の事だった。
それから冬隼は、注意深く彼女を観察していたが、特段気になる様子はなかった。泰誠が見たのは、たまたまだったのか。それとも翠玉が巧妙に隠し通しているのか……冬隼には全く読めなかった。
これが、情を交わした相手であれば分かったのだろうか。翠玉と幼い頃から共にいた昔の恋人ならば、彼女の少しの変化に気づいたのか。もしかしたら、翠玉自身が不調を打ち明けていたのではないだろうか……
「何だそれは……」
嘲笑が漏れる。最近の自分はどこか女々しい。そんな事を考えている場合ではないのだ。
翠玉が作戦を立て、その身を削ってまで参加しようとしている隣国との戦は、もう目前に迫っている。戦況が不利になれば、その分彼女の負担が大きくなるだろう。
必ずや……作戦を成功させなければならない。
自室に戻るために向けた足を止めると、そのまま通路を戻り、執務室へ向かう。
今までの戦で経験したことのないような焦りと、言い知れぬ不安が日に日に強くなっている事には、気づいている。
自分ではない誰かの命を案じる事が、これほどこたえるものなのだと驚かされている。
以前の自分ならば、そのような煩わしい感情は不要だと、おそらく根源である翠玉を遠ざけただろう。
しかし……今の自分にそんな考えは欠片もなく、いかに彼女と、彼女の策を活かしてやれるか……それだけしか頭にないのだ。
「俺はどうしたのだろうな……」
一人ぽつりと呟いて、息を吐く。
自分自身が変わった理由が何なのか、その答えなど分かっている。
分かっているからこそ、自分でも思いもよらなかった自らの思考と行動の変化に、少しおかしくなって、冬隼は珍しく頬を緩めた。
◆
「お元気になられて、ほんに良うございました」
「皇后陛下にはご心配をおかけしました」
華々しく飾られた卓を挟み、翠玉と向かい合った皇后はやはりいつも通り、凛とした気高さをまとっていた。
「このような厳重な警戒の中、翠玉殿をお招きしていいものかと迷うておりましたが、お元気な顔を見られて安心いたしました」
「お気遣いありがとうございます。自邸に戻って以降、どういうわけか周囲を探る気配もなくなりましたので、まだ警戒はしておりますが、少し安心しているところです」
賊に襲われた後、療養するために滞在していた高蝶妃の元から戻ってきてから数日は、まだ邸内を探るような不穏な気配はあったものの……ひと月が経った今、彼らは手法を変えたのか標的を変えたのか、なりを潜めているのだ。
諦めたのか、それとも……
「それは、この間皇帝陛下より命があった戦と関係はないのかしら?」
察しのいい皇后の言葉に、翠玉はゆっくり頷く。
「おっしゃる通り、気配がなくなったのは、先日皇帝陛下より禁軍に戦の命が正式に出た途端でございました。今私達、特に夫に何かあれば、戦の勝敗にも影響いたしますからね。相手もそこは冷静なようです」
そして……と翠玉は話を続ける。これによって明確になった事があるのだ。
「これではっきりした事が一つあります。相手は我ら夫婦に怨恨を抱いている以外に、どうやら、我が国の主権にもこだわりがあるという事。私達に手が出せない分、今後、後宮内で事が起こる可能性がございます。皆が戦に目を向けている分、後宮内には隙も生まれるでしょうから」
翠玉の言葉に皇后も大きく頷く。
「おそらくそうでしょう。泉妃と燗皇子は皇后宮にて厳重な警戒のもとに生活していますし、他の皇子と妃達の宮にも警護を十分につけてあります。翠玉殿の件を受けて毒味役も増やしました」
皇后は後宮を統べる役割もある。よもやこの人に手落ちはないだろうと、翠玉は思っている。
「お側でお力になれず申し訳ありません」
「これしきの事、心配無用です。それよりご自身の体調と、ご武運をお祈りいたします」
二人で視線を交わし、頷き合う。場所や立場は違えども、共に同じ者に立ち向かう戦友である事には変わりない。
泉妃や燗皇子が心配ではあるが、この皇后であれば必ずや二人を守ってくれる事だろう。そう自身の胸に言い聞かせ、翠玉は日暮れ前のまだ明るい時間に皇后宮を後にした。
◇
後宮の回廊を歩く途中、反対側の回廊に劉妃――翠玉の異母姉の一団が歩く姿を見た。
この一連の件に……彼女が関わっていない事を願う。もし劉妃が裏で手を引いていたならば、それが暴かれた時、幼い皇子の運命は決まっている。そして祖国と、この国の関係は崩れる。
母違いとはいえ、同じ皇室の出である翠玉にだって影響がないわけはない。命を奪われる事はないにせよ。国外追放はあり得る。
今の生活を奪われるのは避けたい。翠玉にとってここでの暮らしは大切なものなのだ。
幸いにも少数で歩く翠玉の一団に劉妃が気づくことはなかったようだ。すんなりと後宮を出て、馬車に乗り込む。
門前には翠玉の乗ってきた馬車以外にもう一台、皇族の紋章がついた馬車が停まっていた。蓮の紋章。
「雪稜殿が戻ってみえたのね」
鵜州に行っているはずの、冬隼の兄――雪稜の家のものだ。鵜州の政の調整が終わり、今度は戦に備えて中央の政を治めるために戻されたのだろう。着々と戦の準備が整ってきているという事だ。
ふうっと大きく息をつく。
正面と、隣に座る双子――楽と樂が視線をよこすが、二人とも口は開かなかった。
自分は、このまま戦に行けるのだろうか。日に日に戦の色が濃くなるこの場所にいると、自分の体が思うように動かない事に焦りが強くなる。こんな腕で役に立つのだろうか。むしろ足手まといなのではないか。
冬隼も泰誠も、翠玉の様子がおかしい事には気づいているだろう。近頃突然、目眩に襲われる事があるのだ。ひどい時は吐き気も伴う。ほとんどが体を動かした後だが、平気な時もある。
せっかく手に入れた役割を取り上げられたくない。もう、何の目的もなくただ生きるのは嫌なのだ。
時間が経てば、自然に解決するはずだ。だから大丈夫。戦までには随分とましになるはずだ。そう心の中で言い聞かせて、体から力を抜き、背もたれに体重を預ける。
邸まではまだ少し距離がある。そう考えて、瞳を閉じかけた時だった……
ガタン。
突如、馬車が停まった。
慌てて体を立てて、すぐさま外を窺おうとする双子を制する。突如として現れた、この痛いほどピリピリした空気と殺気。外を見ずとも理解ができた。
「囲まれてる」
小さな声で二人に伝えたのと、「何者だ!」と馬車の外から護衛達の緊迫した声が聞こえたのは同時だった。
翠玉の体調を思ってか、護衛は随分と多めについている。その数に立ち向かってくるという事は、多勢、もしくは精鋭だ。
ほどなくして、金属が擦れる音や叫び声が聞こえて来る。
始まった……
喧騒を聞き、外に出ようとする双子を引き止める。
「楽! あなたは、適当な馬を奪って、助けを呼びに行きなさい。ここからなら、邸の方が近いわ!」
「承知しました!」
「樂。危険になったら、床から脱出するから、合図を頂戴」
「御意!」
指示を聞くと、息を合わせたように、二人が馬車の外に飛び出して行った。
喧騒はなおも続いている。
窓の御簾越しに人の影がチラチラ動くが、正確に何が起こっているのかは、中からは分からない。しかし音や聞こえる声を総合すると、形成が不利な事は分かる。
その中で……
「女が一人逃げたぞ!」
「護衛だ! 構うな!」
楽が上手く逃げ果せたことだけは分かった。
あとは……時間を稼ぐしかない。
邪魔な頭の装飾を取り外し、ヒラヒラとした宮廷用の衣装の裾を縛り上げる。腰に差した剣に手をかけて神経を集中する。
馬車の間近で抗戦している気配がある。よもやここまで迫られているのか……
ゆっくりと身を沈めて、床板の留め具を外す。
飛沫が、馬車の側面にかかった音がする。護衛が切られたらしい。
まさか樂ではなかろうかと一瞬不安になるが、樂の声は少し馬車から離れた場所で聞こえた。普段寡黙な彼が、自分が生きている事を、声を出して翠玉に伝えてくれている。
まだ、合図はない。しかし状況からその時が近い事は、なんとなく分かった。
体を低くして、その時をじっと待つ。
「奥方様ぁ‼」
一際大きな樂の声が響き渡る。
今だ‼
パンパンと木と木のぶつかり合う軽快な音が響き渡る。
激しく響いては、消え、また激しく響く。
幾度となく耳にしており、泰誠にとってはもはや生活の一部といえる音だ。
その音を聞きながら、泰誠はゆっくりと瞳を開いた。見つめる先には、しっかりとした体躯の男――自身の主である冬隼と……
「だーかーらー! 手加減するなって言っているじゃないの‼」
最近馴染みになりつつある、小柄な女――冬隼の妻である翠玉がいた。
彼女はもどかしいのだろう。手合わせをしている冬隼に対して、先程から苛立ちを露わにしている。
「病み上がりの人間に本気など出せるわけがないだろう」
冬隼がヒョイと肩に木刀を乗せる。ひとまず休憩といった合図だ。
「病み上がりだろうが何だろうが、手加減されるのが腹立つのよ~」
対する翠玉は、不満だらけだと言わんばかりに木刀をブンブン振り回す。彼女はまだやる気のようだ。
「休憩だ! 少し休め、体がもたん」
そんな翠玉を相手にせず冬隼は勝手に一礼すると、スタスタと泰誠の方へ向かってくる。
「じゃあ手加減しないで! 冬隼さっきから、いつもの半分の力も出してないでしょ。それくらい分かるんだから!」
諦めたように翠玉も軽く一礼すると、パタパタと冬隼の後を追ってくる。不満げな表情は変わらない。
翠玉の言葉を受けて、冬隼の眉間にシワが寄った。
あぁ、これは始まるぞ……。そう思った直後。
「うるさい‼ 少しは俺の言う事を聞け! とりあえず俺は疲れた。少し休憩したら再開するからお前も休め」
案の定、強い口調で言い捨てた冬隼が、逃げるようにドカドカと乱暴な足取りで稽古場を出て行った。
そんな二人をやれやれと眺めて、しかしこんな姿が見られるようになった事を心の底では喜ばしく思う。
敵国同士の皇女と皇弟である二人――清劉国の皇女である劉翠玉と、湖紅国皇帝の弟であり禁軍将軍を務める紅冬隼が、政略結婚で不本意ながら祝言を上げてから、二つ目の季節を迎えようとしている。
堅物で真面目が取り柄の冬隼と、祖国でないがしろにされながらも、たくましく生きて来た跳ねっ返りの翠玉。
はじめこそ反発し合った二人だが、お互い武を極める者として関わる中で、泰誠が……否、他の誰もが予想しなかったほど、認め合うようになっているのだ。
あの、「祝言なんぞ出ない!」「嫁などいらん!」と祝言当日までごねていた冬隼が……そう遠くない出来事を思い出して、つい顔をほころばせていると……
「もう! 腹立つ~」
置いていかれた翠玉が悔しそうに言いながら、消えて行く夫の背中を睨めつけて唇を噛んでいる。
「まぁまぁ奥方様。殿下も出ていかれた事だし、少し落ち着きましょう。休憩も大事な事です」
仕方なくなだめて、隣に腰掛けた翠玉に水桶につけてあった手拭いを渡してやる。
彼女が就寝中に冬隼と共に刺客の襲撃を受け、毒を負って昏睡状態となったのはひと月と少し前の事だ。
あの頃を思えば、翠玉は随分と回復して、動けるようになっている。
しかし万全の体調に戻っているとはいい難い状態であるのも事実で……
「ありがとう……」
不貞腐れながらも、翠玉は渡された手拭いを素直に受け取って、額に当てて息を大きく吐いている。
何だかんだ言いながら、先ほどの打ち合いでかなり体力を消耗しているのだろう。冬隼が休憩をと言ったのは、彼女の状態を把握していたからに違いない。
全く、病み上がりで体力が落ちているから心配だと言ってやればいいものを。素直じゃない。
怒りながら出て行った冬隼の心情を思うも、しかし彼が素直にそんな事を告げられるような器用な質でもない事を思い出す。
全く、手がかかるなぁ、もう。
「殿下自身も迷っているんですよ。また奥方様を巻き込んでいいものかと」
こうして剣を握れば、いずれまた翠玉は生死を彷徨うかもしれない。翠玉の事を好きだと自覚してしまったがゆえに、冬隼はそんな相手を戦に出してもいいものかと迷いが出ているのであろう。
たとえ本人が望んでいる事だとしても。男として、理解できない心情ではない。
「は? 今更? 冬隼が何と言おうと、私は剣を捨てる事なんてないわよ? 武を捨てろと言うなら離縁していただくわ」
しかし肝心の翠玉には、冬隼の思う所などは全く理解できていない。頼むからそんな事、冗談でも今の殿下の前では言ってくれるなよ。
心の中で泰誠は切に願った。
「早く体力も元に戻さなきゃ。すぐに戦が始まるんですもの。足手まといにはなりたくないわ!」
首元を拭き取った手拭いを手の中で強く握りしめ、翠玉は口惜しそうに呟く。彼女も彼女で焦りがあるのだろう。
確かに、病み上がりの翠玉は以前に比べて精彩を欠いている。
仕方がない。何日も寝込んだ上、ここまで体を動かす事ができるようになったのも、つい最近の事だ。それでも、手加減されているとはいえ冬隼との打ち合いに付いていけるのだ。普通の女の枠からは外れている。
そこまで考えた所で、泰誠は自分をじっと見つめる熱い視線に気づいた。
瞬間、嫌な汗が流れる。
「ねぇ、泰誠。あなたは冬隼と互角にやり合うのよね? 手加減なしで、手合わせ願いたいわ!」
気がついた時にはすでに、翠玉に裾を掴まれていた。
「いやいやいやいや。殿下に休憩と言われたものを、私が勝手に覆すわけには」
慌てて、逃げようと体をよじるが、すでに遅かった。いったいこの華奢な体のどこにそんな力があるのだろうか、翠玉に掴まれた裾はびくともしない。
「だって、冬隼ったら何だかおかしいんだもの。何かに怯えてるみたいに打ち込んでくる時があるのはなぜ?」
あなたも気づいているのでしょう? とじっと強い視線で見つめられる。
そういえばこの人は、思った以上に相手の事をよく見ているのだ。それは自身の夫だけでなく部下である泰誠の事も、である。
どう答えるべきかと一瞬思案する。まともに答えてしまえば、彼女が冬隼の気持ちに気づいてしまいかねない。流石に、それは泰誠がするべき事ではない。
思案が長く続かなかったのは、泰誠の視界の中にある翠玉の姿がぐらりと揺れたからだ。
「奥方様!?」
咄嗟に体が受け止める体勢をとる。しかしそこに受け止めるべきものは落ちて来なかった。すんでのところで、堪えたらしく、手をついて体重を支えている。
「大丈夫ですか?」
慌てて顔を覗き込もうとするが……
「ごめん。ちょっとした目眩だから。運動不足のせいよね、時々あるの」
一拍早く顔を上げた翠玉の顔色は、いつも通りだった。
「きっと水分不足ね。私も水飲んでくる」
翠玉は、本当に大丈夫なのかと心配になるくらい素早く立ち上がり、泰誠に背を向けると、そのままパタパタと出て行ってしまった。
◆
「体を動かしてみてどうだ?」
冬隼は帰宅後、自身の部屋に入ろうとする翠玉に声をかけた。
昼に泰誠から少し気になる様子を聞いていたため、尋ねてみたのだが……
「まぁ、まだ少し重いわね。こればかりは仕方ないわ。ひたすら動かしていくしかないもの。打ち合い、付き合ってくれてありがとう!」
翠玉からは簡単な言葉と、気まずげな笑みが返ってきただけだった。振り切るように部屋に入る翠玉の後ろ姿を、黙って見送る。
泰誠が翠玉の体調が気になると耳打ちしてきたのは今日の午後の事だ。稽古を終えて、翠玉が訓練を付けている隊の様子を確認しようと、泰誠と共に見物に行った時の事だった。
それから冬隼は、注意深く彼女を観察していたが、特段気になる様子はなかった。泰誠が見たのは、たまたまだったのか。それとも翠玉が巧妙に隠し通しているのか……冬隼には全く読めなかった。
これが、情を交わした相手であれば分かったのだろうか。翠玉と幼い頃から共にいた昔の恋人ならば、彼女の少しの変化に気づいたのか。もしかしたら、翠玉自身が不調を打ち明けていたのではないだろうか……
「何だそれは……」
嘲笑が漏れる。最近の自分はどこか女々しい。そんな事を考えている場合ではないのだ。
翠玉が作戦を立て、その身を削ってまで参加しようとしている隣国との戦は、もう目前に迫っている。戦況が不利になれば、その分彼女の負担が大きくなるだろう。
必ずや……作戦を成功させなければならない。
自室に戻るために向けた足を止めると、そのまま通路を戻り、執務室へ向かう。
今までの戦で経験したことのないような焦りと、言い知れぬ不安が日に日に強くなっている事には、気づいている。
自分ではない誰かの命を案じる事が、これほどこたえるものなのだと驚かされている。
以前の自分ならば、そのような煩わしい感情は不要だと、おそらく根源である翠玉を遠ざけただろう。
しかし……今の自分にそんな考えは欠片もなく、いかに彼女と、彼女の策を活かしてやれるか……それだけしか頭にないのだ。
「俺はどうしたのだろうな……」
一人ぽつりと呟いて、息を吐く。
自分自身が変わった理由が何なのか、その答えなど分かっている。
分かっているからこそ、自分でも思いもよらなかった自らの思考と行動の変化に、少しおかしくなって、冬隼は珍しく頬を緩めた。
◆
「お元気になられて、ほんに良うございました」
「皇后陛下にはご心配をおかけしました」
華々しく飾られた卓を挟み、翠玉と向かい合った皇后はやはりいつも通り、凛とした気高さをまとっていた。
「このような厳重な警戒の中、翠玉殿をお招きしていいものかと迷うておりましたが、お元気な顔を見られて安心いたしました」
「お気遣いありがとうございます。自邸に戻って以降、どういうわけか周囲を探る気配もなくなりましたので、まだ警戒はしておりますが、少し安心しているところです」
賊に襲われた後、療養するために滞在していた高蝶妃の元から戻ってきてから数日は、まだ邸内を探るような不穏な気配はあったものの……ひと月が経った今、彼らは手法を変えたのか標的を変えたのか、なりを潜めているのだ。
諦めたのか、それとも……
「それは、この間皇帝陛下より命があった戦と関係はないのかしら?」
察しのいい皇后の言葉に、翠玉はゆっくり頷く。
「おっしゃる通り、気配がなくなったのは、先日皇帝陛下より禁軍に戦の命が正式に出た途端でございました。今私達、特に夫に何かあれば、戦の勝敗にも影響いたしますからね。相手もそこは冷静なようです」
そして……と翠玉は話を続ける。これによって明確になった事があるのだ。
「これではっきりした事が一つあります。相手は我ら夫婦に怨恨を抱いている以外に、どうやら、我が国の主権にもこだわりがあるという事。私達に手が出せない分、今後、後宮内で事が起こる可能性がございます。皆が戦に目を向けている分、後宮内には隙も生まれるでしょうから」
翠玉の言葉に皇后も大きく頷く。
「おそらくそうでしょう。泉妃と燗皇子は皇后宮にて厳重な警戒のもとに生活していますし、他の皇子と妃達の宮にも警護を十分につけてあります。翠玉殿の件を受けて毒味役も増やしました」
皇后は後宮を統べる役割もある。よもやこの人に手落ちはないだろうと、翠玉は思っている。
「お側でお力になれず申し訳ありません」
「これしきの事、心配無用です。それよりご自身の体調と、ご武運をお祈りいたします」
二人で視線を交わし、頷き合う。場所や立場は違えども、共に同じ者に立ち向かう戦友である事には変わりない。
泉妃や燗皇子が心配ではあるが、この皇后であれば必ずや二人を守ってくれる事だろう。そう自身の胸に言い聞かせ、翠玉は日暮れ前のまだ明るい時間に皇后宮を後にした。
◇
後宮の回廊を歩く途中、反対側の回廊に劉妃――翠玉の異母姉の一団が歩く姿を見た。
この一連の件に……彼女が関わっていない事を願う。もし劉妃が裏で手を引いていたならば、それが暴かれた時、幼い皇子の運命は決まっている。そして祖国と、この国の関係は崩れる。
母違いとはいえ、同じ皇室の出である翠玉にだって影響がないわけはない。命を奪われる事はないにせよ。国外追放はあり得る。
今の生活を奪われるのは避けたい。翠玉にとってここでの暮らしは大切なものなのだ。
幸いにも少数で歩く翠玉の一団に劉妃が気づくことはなかったようだ。すんなりと後宮を出て、馬車に乗り込む。
門前には翠玉の乗ってきた馬車以外にもう一台、皇族の紋章がついた馬車が停まっていた。蓮の紋章。
「雪稜殿が戻ってみえたのね」
鵜州に行っているはずの、冬隼の兄――雪稜の家のものだ。鵜州の政の調整が終わり、今度は戦に備えて中央の政を治めるために戻されたのだろう。着々と戦の準備が整ってきているという事だ。
ふうっと大きく息をつく。
正面と、隣に座る双子――楽と樂が視線をよこすが、二人とも口は開かなかった。
自分は、このまま戦に行けるのだろうか。日に日に戦の色が濃くなるこの場所にいると、自分の体が思うように動かない事に焦りが強くなる。こんな腕で役に立つのだろうか。むしろ足手まといなのではないか。
冬隼も泰誠も、翠玉の様子がおかしい事には気づいているだろう。近頃突然、目眩に襲われる事があるのだ。ひどい時は吐き気も伴う。ほとんどが体を動かした後だが、平気な時もある。
せっかく手に入れた役割を取り上げられたくない。もう、何の目的もなくただ生きるのは嫌なのだ。
時間が経てば、自然に解決するはずだ。だから大丈夫。戦までには随分とましになるはずだ。そう心の中で言い聞かせて、体から力を抜き、背もたれに体重を預ける。
邸まではまだ少し距離がある。そう考えて、瞳を閉じかけた時だった……
ガタン。
突如、馬車が停まった。
慌てて体を立てて、すぐさま外を窺おうとする双子を制する。突如として現れた、この痛いほどピリピリした空気と殺気。外を見ずとも理解ができた。
「囲まれてる」
小さな声で二人に伝えたのと、「何者だ!」と馬車の外から護衛達の緊迫した声が聞こえたのは同時だった。
翠玉の体調を思ってか、護衛は随分と多めについている。その数に立ち向かってくるという事は、多勢、もしくは精鋭だ。
ほどなくして、金属が擦れる音や叫び声が聞こえて来る。
始まった……
喧騒を聞き、外に出ようとする双子を引き止める。
「楽! あなたは、適当な馬を奪って、助けを呼びに行きなさい。ここからなら、邸の方が近いわ!」
「承知しました!」
「樂。危険になったら、床から脱出するから、合図を頂戴」
「御意!」
指示を聞くと、息を合わせたように、二人が馬車の外に飛び出して行った。
喧騒はなおも続いている。
窓の御簾越しに人の影がチラチラ動くが、正確に何が起こっているのかは、中からは分からない。しかし音や聞こえる声を総合すると、形成が不利な事は分かる。
その中で……
「女が一人逃げたぞ!」
「護衛だ! 構うな!」
楽が上手く逃げ果せたことだけは分かった。
あとは……時間を稼ぐしかない。
邪魔な頭の装飾を取り外し、ヒラヒラとした宮廷用の衣装の裾を縛り上げる。腰に差した剣に手をかけて神経を集中する。
馬車の間近で抗戦している気配がある。よもやここまで迫られているのか……
ゆっくりと身を沈めて、床板の留め具を外す。
飛沫が、馬車の側面にかかった音がする。護衛が切られたらしい。
まさか樂ではなかろうかと一瞬不安になるが、樂の声は少し馬車から離れた場所で聞こえた。普段寡黙な彼が、自分が生きている事を、声を出して翠玉に伝えてくれている。
まだ、合図はない。しかし状況からその時が近い事は、なんとなく分かった。
体を低くして、その時をじっと待つ。
「奥方様ぁ‼」
一際大きな樂の声が響き渡る。
今だ‼
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