94 / 234
第8章 絆
第310話 甘い時
しおりを挟むゆっくりと、寝台に降ろされると共に、口付けが落ちてきた。
それは、最初から深いもので、直ぐに口内に厚い舌が侵入してきた。
絡めて吸われて、口蓋をなぞられて、ぞくりと翠玉は震える。
以前にもこうした口付けはあったが、今日のは以前に増して熱くて、ねっとりとまとわりつくように感じるのは気のせいではないだろう。
「っは…ぁ」
唇が離れ、空気を取り入れようとして、思いがけず、湿っぽい声が出てしまい、恥ずかしくて目を背ける。
そんな様子をクスッと笑って見下ろした冬隼は、ギシッと音を立てて、寝台に体重をかける
そのままもう一度口づけられて、彼の唇がゆっくりと、頬へこめかみへそして熱い息とともに耳朶を甘噛みされて、はぅっと声を上げて身を縮める。
「ここ弱いな」
「うぅ……くすぐったい~」
甘く抗議してギュッと彼の服を握れば。冬隼がはぁっと大きく息を吐いた。
「こんな段階から、煽るな。自制が効かなくなる」
「煽ってなんて!んン!」
抗議しようとした唇をまた強制的に奪われる。
煽るも何も、経験値がないのだ、どうしたらいいのか分からないのが正直なところだ。
「無意識が一番たちが悪いな」
唇が離れて、とろんとした瞳ではぁはぁと湿っぽい息を漏らしていると、冬隼が苦しげに呟く。
「無理をさせないようにゆっくりするつもりだ。だが持たんかもしれん、すまない」
ゆっくりする?持たないってどういう事?
彼の言っている意味の大半が実際にはどういう事を指すのか分からないが、ぼんやりとした頭の中では深く考えられなくて、小さく頷いて、彼の身体にキュッと身を寄せる。
「大丈夫。我慢出来るわ」
「我慢?」
冬隼が身体を離して見下ろしてくる。
「痛みよ。あの時はびっくりしたけど、今はもう分かってるから平気」
肩を竦め、苦笑する。
たしかにあの痛みをまた経験するのかと思うと少し気が滅入るが、それでも今はそれを我慢してもいいと思えた。
何を思ったのか、冬隼の瞳が揺れて、眉間にシワが寄る。
辛い時の彼の顔だ。
もしかして、変なこと言ってしまったのだろうか
不安になって冬隼の頬に片手を伸ばすと、その手をゆっくり握り込まれてそして甲に軽く口づけらる。
大切に慈しむように恭しく。
そして唇を離して、開いた彼の瞳は強い意志を秘めたように真っ直ぐに翠玉を見つめた。
「痛いなんて、言わせるものか」
------------------------------------------
いつも応援いただきありがとうございます。
やっとここまできましたよこの二人、、、300話以上使いました。
ジレジレ、ヤキモキさせてしまった読者の皆様、二人を見捨てる事なく、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
さて次話ですが、、、いよいよ冬隼の名誉挽回のお話になります。
しかしながら、この物語を最初に投稿する時に、あまり深く考えずにカテゴリーをR制限無しで登録してしまっておりまして、、、
おそらくこのカテゴリーをR18に変えてしまうと、今まで楽しんで頂いていた18歳未満の方々に物語自体が見えなくなってしまうのではないだろうか?という懸念があります。(実際どうなるのかはわかりませんが)
そのため、R18のお話は新たに『「後宮の棘」R18のお話』というページを作りそこに投稿させていただきました。
(お手間ですが私の作品ページからご確認ください)
もちろんR18のお話を読まれない方でも、前後のお話が繋がるようにはさせて頂きますので、ご心配なさらないでくださいね。
私の計画性の無さから、ご不便をおかけして申し訳ありません。
引き続きお楽しみいただけたら幸いです。
1
お気に入りに追加
4,402
あなたにおすすめの小説
皇太子殿下は刺客に恋煩う
香月みまり
キャラ文芸
「この子だけは、何としても外の世に!」
刺客の郷を出奔した霜苓は、決死の思いで脚を動かす。
迫り来る追手に、傷口から身体を蝕む毒。もはや倒れるのが早いか、捕まるのが早いのか……。
腕に抱いた我が子を生かすために選んだ道は、初手から挫かれる事となるのだろうか。
遠く意識の中で差し伸べられた温かな手は、敵なのか味方なのか、もしくはあの時の──
真面目な刺客育ちのヒロインとその子どもを、必死に囲おうとする、少々不憫なヒーローのお話です。
戦闘シーン、過激表現がどの程度になるか分からないのでR18で置いておきます。
「後宮の棘」R18のお話
香月みまり
恋愛
『「後宮の棘」〜行き遅れ姫の嫁入り〜』
のR18のみのお話を格納したページになります。
本編は作品一覧からご覧ください。
とりあえず、ジレジレストレスから解放された作者が開放感と衝動で書いてます。
普段に比べて糖度は高くなる、、、ハズ?
暖かい気持ちで読んでいただけたら幸いです。
R18作品のため、自己責任でお願いいたします。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。