後宮の棘

香月みまり

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第8章 絆

第310話 甘い時

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ゆっくりと、寝台に降ろされると共に、口付けが落ちてきた。

それは、最初から深いもので、直ぐに口内に厚い舌が侵入してきた。

 絡めて吸われて、口蓋をなぞられて、ぞくりと翠玉は震える。

以前にもこうした口付けはあったが、今日のは以前に増して熱くて、ねっとりとまとわりつくように感じるのは気のせいではないだろう。

「っは…ぁ」
唇が離れ、空気を取り入れようとして、思いがけず、湿っぽい声が出てしまい、恥ずかしくて目を背ける。

そんな様子をクスッと笑って見下ろした冬隼は、ギシッと音を立てて、寝台に体重をかける

そのままもう一度口づけられて、彼の唇がゆっくりと、頬へこめかみへそして熱い息とともに耳朶を甘噛みされて、はぅっと声を上げて身を縮める。

「ここ弱いな」

「うぅ……くすぐったい~」

甘く抗議してギュッと彼の服を握れば。冬隼がはぁっと大きく息を吐いた。


「こんな段階から、煽るな。自制が効かなくなる」

「煽ってなんて!んン!」

抗議しようとした唇をまた強制的に奪われる。

煽るも何も、経験値がないのだ、どうしたらいいのか分からないのが正直なところだ。

「無意識が一番たちが悪いな」

唇が離れて、とろんとした瞳ではぁはぁと湿っぽい息を漏らしていると、冬隼が苦しげに呟く。

「無理をさせないようにゆっくりするつもりだ。だが持たんかもしれん、すまない」

ゆっくりする?持たないってどういう事?

彼の言っている意味の大半が実際にはどういう事を指すのか分からないが、ぼんやりとした頭の中では深く考えられなくて、小さく頷いて、彼の身体にキュッと身を寄せる。


「大丈夫。我慢出来るわ」

「我慢?」

冬隼が身体を離して見下ろしてくる。


「痛みよ。あの時はびっくりしたけど、今はもう分かってるから平気」

肩を竦め、苦笑する。

たしかにあの痛みをまた経験するのかと思うと少し気が滅入るが、それでも今はそれを我慢してもいいと思えた。


何を思ったのか、冬隼の瞳が揺れて、眉間にシワが寄る。

辛い時の彼の顔だ。

もしかして、変なこと言ってしまったのだろうか

不安になって冬隼の頬に片手を伸ばすと、その手をゆっくり握り込まれてそして甲に軽く口づけらる。
大切に慈しむように恭しく。

そして唇を離して、開いた彼の瞳は強い意志を秘めたように真っ直ぐに翠玉を見つめた。


「痛いなんて、言わせるものか」









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いつも応援いただきありがとうございます。

やっとここまできましたよこの二人、、、300話以上使いました。

ジレジレ、ヤキモキさせてしまった読者の皆様、二人を見捨てる事なく、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

さて次話ですが、、、いよいよ冬隼の名誉挽回のお話になります。

しかしながら、この物語を最初に投稿する時に、あまり深く考えずにカテゴリーをR制限無しで登録してしまっておりまして、、、


おそらくこのカテゴリーをR18に変えてしまうと、今まで楽しんで頂いていた18歳未満の方々に物語自体が見えなくなってしまうのではないだろうか?という懸念があります。(実際どうなるのかはわかりませんが)

そのため、R18のお話は新たに『「後宮の棘」R18のお話』というページを作りそこに投稿させていただきました。
(お手間ですが私の作品ページからご確認ください)

もちろんR18のお話を読まれない方でも、前後のお話が繋がるようにはさせて頂きますので、ご心配なさらないでくださいね。


私の計画性の無さから、ご不便をおかけして申し訳ありません。
引き続きお楽しみいただけたら幸いです。
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