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3章

44 愁蓮視点

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自室に戻ると、執務机に両肘をついて、その間に首を垂れた。

紅凛の前から逃げるように戻ったはいいものの、頭の中は依然として混乱状態で。


今すぐ順流を呼んで、紅凛の告白と事実を照らし合わせるべきか・・・いや、しかし紅凛は兄は何も知らないと言っていた。

もしそれが本当ならば、自分達が罪深い関係となってしまっている事を、彼にも知られる事になってしまうだろう。

まだこの段階で、これを知る人間は、増やさないほうがいいだろう。

瞳をきつく閉じて、額を卓につける。

脳裏に思い出したのは、鈴円様の手に抱かれた幼い赤子の姿だ。彼女よりも鮮やかな赤毛をしたあの赤子・・・あれが紅凛だったのだ。

そりゃあ紅凛が鈴円様と似ているはずだ、親子だったのだから。


ゆっくり顔を上げて、手のひらを開く。すぐに思い出せる、柔らかい紅凛の肌の感触。

紅凛は、一人でどれだけ苦しんだのだろうか。
少なくとも数か月、彼女はずっと1人であの小さくて華奢な身体に、こんな抱えきれないような大きな問題を抱えていたのだ。


その間、自分は舞い上がっていて、なんなら紅凛が懐妊したかもしれないと期待をしたりもしたのだ。

兄妹だと知りながら、兄の子を孕ったかもしれないと思った彼女はどれだけ怖かっただろう。

おそらくすぐに言い出せなかったのも、そのせいもあったのではないだろうか。


それでも、彼女はその後も自分を受け入れてくれていた。皇帝の夜伽を妃の立場で拒むことは難しい。しかしそれ以上に、彼女が拒めないほどに自分のことを必要としてくれていた事は、不謹慎にも嬉しくはあった。

だからこそ、この事実がとてつもなく残酷なものでもあるのだが・・・。

これからも自分が彼女をそばに置く以上、彼女は自分が皇帝の妹である事実を知られないように怯えて行かねばならないのだ。


紅凛を・・・解放してやるべきなのだろうか。


しかし、この手からあの娘がいなくなる事を考えると、身を切られるような苦しみが容易に想像できる。


手放したくない

でも、解放してやりたい


複雑な思いがせめぎ合い

ダンっと音を立てて卓を叩く。

一層のこと出合わなければ・・・否お互いに気づかなければ良かったのだ。
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