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2章
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逃げるように川辺に向かって大股で下っていく。
周と明芽がいなくなってから、そう時間も経過していないので急げば二人を待たせることなく身を清めることはできるだろう。
そう思って人の歩いた形跡のある場所の草をかき分けて、、、、そして苓は硬直した。
草を分けたその先、、、苓の視界に入ってきたのは半裸状態で睦み合う若い男女の姿だった。
まぎれもなくそれは周と明芽で、上半身の衣類をはだけさせた周の上に、それはそれは豊満で見事な胸を剥き出して彼に突き出すようにしている明芽が跨っているのだ。
「ひっ!!」
当然苓には男女のそんな光景に免疫なんてない。
のどの奥から出てきたのは、恐怖を含んだ短い悲鳴で、数秒の後に踵を返した。
「苓!まて!」
慌てた周の声が、草越しに呼び止めるのが聞こえたが、そんなことで止まれるほど苓は冷静ではなかった。
混乱状態の苓は、どこを走っているかも分からないまま、草をかき分け、走った。とにかく少しでも早くあの忌まわしい光景から離れたかった。
脳裏には先ほどの、密着した二人の光景がしっかりと残っていて。
気づかぬうちに涙がこぼれていた。
そうしてどこまで来たか分からない場所で、岩場に辿り着いてその先に進めなくなり足を止めるとその場にうずくまった。
周にとっては、苓は妹みたいなもので、、、そして明芽はそういう事をする対象の相手だったのだ。
勝手に明芽も苓と同じように妹と同じ年頃で放って置けないだけなのだと思っていたのに、そこには随分と差があったらしい。
「なんでっ、、、別にいいじゃない」
最初から苓は彼の妹の代わりのようなものだと分かっていたはずなのだ、それ以上に望むべきものもないはずなのに、、、なぜこんなにがっかりしているのだろう。
苓の中で周に対する、特別な気持ちが生まれているからなのだろう。
先ほど陸と話していて、気づきたくないと思ってしまった事が何だったのか、、、ここまで来てしまっては、気づかざるを得ない。
「うぅ、このタイミングってのが最悪」
一人でうなって膝を抱える。
空を見上げれば薄紫の雲が流れていく、もうしばらくすると、日が暮れて、辺りは真っ暗になるのだろう。
とにかくあんな光景を目の当たりにしてしまった以上、このまま周と明芽と共に行くのは無理だ。
ここまで周と陸には随分と良くしてもらったし、ここからは大きな街が続く。人に聞きながら歩いて行けば葡葉にはたどり着けると、、、思う。
とにかく今夜はここで野宿をして、明日明るくなってから動こう。
正直自分がどう走ってきたのかも、ここが陸のいる野営地からどれだけ離れているのかも分からない。
ただ一つ分かるのは、動かない方がいいという事だ。
以前、周に脅されたようにクマや、トラ、蛇なんかもいるのだろうが。
正直今の苓は自暴自棄になってしまって、そんなことはどうでもよくなってしまっていた。
「あぁ、消えたい。でもお腹すいた」
膝を抱えて空を見上げ、呆然と呟いた。
日が暮れて、辺りが暗くなると苓は樹の幹に身を寄せて、眠ることにした。
朝になり辺りが明るくなり始めたら出発しようと決めていた。
とにかく苓は明日は明るい内に街道に出なければならない。方向音痴の彼女が来た道を戻るには随分と時間を要すに決まっているのだ。
明るい時間を少しでも活用しなければと、自分の方向音痴を呪いながらも現実的に考えた。
そうして、横になり、少しうとうととし始めた頃、ガサリとどこかで物音がした気もしたのだが、全速力で走った疲れと、いろいろ考えすぎた疲れが重なりそのまま吸い込まれるように眠りについてしまったのだ。
周と明芽がいなくなってから、そう時間も経過していないので急げば二人を待たせることなく身を清めることはできるだろう。
そう思って人の歩いた形跡のある場所の草をかき分けて、、、、そして苓は硬直した。
草を分けたその先、、、苓の視界に入ってきたのは半裸状態で睦み合う若い男女の姿だった。
まぎれもなくそれは周と明芽で、上半身の衣類をはだけさせた周の上に、それはそれは豊満で見事な胸を剥き出して彼に突き出すようにしている明芽が跨っているのだ。
「ひっ!!」
当然苓には男女のそんな光景に免疫なんてない。
のどの奥から出てきたのは、恐怖を含んだ短い悲鳴で、数秒の後に踵を返した。
「苓!まて!」
慌てた周の声が、草越しに呼び止めるのが聞こえたが、そんなことで止まれるほど苓は冷静ではなかった。
混乱状態の苓は、どこを走っているかも分からないまま、草をかき分け、走った。とにかく少しでも早くあの忌まわしい光景から離れたかった。
脳裏には先ほどの、密着した二人の光景がしっかりと残っていて。
気づかぬうちに涙がこぼれていた。
そうしてどこまで来たか分からない場所で、岩場に辿り着いてその先に進めなくなり足を止めるとその場にうずくまった。
周にとっては、苓は妹みたいなもので、、、そして明芽はそういう事をする対象の相手だったのだ。
勝手に明芽も苓と同じように妹と同じ年頃で放って置けないだけなのだと思っていたのに、そこには随分と差があったらしい。
「なんでっ、、、別にいいじゃない」
最初から苓は彼の妹の代わりのようなものだと分かっていたはずなのだ、それ以上に望むべきものもないはずなのに、、、なぜこんなにがっかりしているのだろう。
苓の中で周に対する、特別な気持ちが生まれているからなのだろう。
先ほど陸と話していて、気づきたくないと思ってしまった事が何だったのか、、、ここまで来てしまっては、気づかざるを得ない。
「うぅ、このタイミングってのが最悪」
一人でうなって膝を抱える。
空を見上げれば薄紫の雲が流れていく、もうしばらくすると、日が暮れて、辺りは真っ暗になるのだろう。
とにかくあんな光景を目の当たりにしてしまった以上、このまま周と明芽と共に行くのは無理だ。
ここまで周と陸には随分と良くしてもらったし、ここからは大きな街が続く。人に聞きながら歩いて行けば葡葉にはたどり着けると、、、思う。
とにかく今夜はここで野宿をして、明日明るくなってから動こう。
正直自分がどう走ってきたのかも、ここが陸のいる野営地からどれだけ離れているのかも分からない。
ただ一つ分かるのは、動かない方がいいという事だ。
以前、周に脅されたようにクマや、トラ、蛇なんかもいるのだろうが。
正直今の苓は自暴自棄になってしまって、そんなことはどうでもよくなってしまっていた。
「あぁ、消えたい。でもお腹すいた」
膝を抱えて空を見上げ、呆然と呟いた。
日が暮れて、辺りが暗くなると苓は樹の幹に身を寄せて、眠ることにした。
朝になり辺りが明るくなり始めたら出発しようと決めていた。
とにかく苓は明日は明るい内に街道に出なければならない。方向音痴の彼女が来た道を戻るには随分と時間を要すに決まっているのだ。
明るい時間を少しでも活用しなければと、自分の方向音痴を呪いながらも現実的に考えた。
そうして、横になり、少しうとうととし始めた頃、ガサリとどこかで物音がした気もしたのだが、全速力で走った疲れと、いろいろ考えすぎた疲れが重なりそのまま吸い込まれるように眠りについてしまったのだ。
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