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第一章
まずは腹ごしらえです
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「お嬢様、お仕度が終わりましたら朝食の時間でございます。そしてその後に、旦那様からお話があるかと思います」
さもいつもの朝のように、リーナが予定を告げる。違うのは、これが今後に関わると言う事。
もしもお父様のお話に、流されてしまったら。そんな事を考えて、頭を左右に振る。
それだけはなんとしてでも避けなくては、待ち受ける未来は断罪だ。
「リーナ、絶対に破棄となるように頑張るわ!」
リーナの返事にも力が入って、一人じゃないと感じる。
物語の中ではルーベルト伯爵も一人じゃなかった、カイトという仲間がいた。カイトもルーベルト伯爵に仕える執事で、最後まで一緒だった。私がルーベルト伯爵なら、リーナはさながらカイトね。
「お嬢様、戻ってきてください」
そんな私の頭の中でも分かるかのように、リーナが冷たい声で言う。
こんなところもカイトにそっくりだわ、なんて言ったら怒るかしら。
そんな事を考えてる間にもお仕度は終わるもので、気づけばしっかり整っていた。
「今日の朝食はしっかり頂いて、その後に備えなくてはいけないわね」
「そうですね。ただお嬢様は、いつも通りで大丈夫かと思いますが」
「いつも通りでは、その後に闘えないわ」
朝食を頂くために移動する時は、決まってリーナと言葉を交わす。
毎朝の日課の様なものだけれど、今日はちょっと気合が違います。リーナもだと思うのだけれど、冷たい反応だわ。
確かにいつもサーシャの倍は食べる私に、リーナが冷ややかな目を向けていたことは知っている。
「リーナは私に冷たいわ」
「優しすぎるぐらいだと自負しております」
いじける様に言ってみせれば、さらりと返されてしまった。こんなところもリーナの良いところだとは思うけれど、最近は全く勝てそうにないわ。
「サーシャ、おはよう」
先に席に着いているサーシャに挨拶をすれば、心配そうな顔に変わる。何故かしら。
「おはようございます。お姉様、体調は大丈夫ですか?」
挨拶もそこそこに、体調を心配される。昨日も元気だったと思うのだけれど、顔色でも悪いのかしら。
でも顔色が悪いなら、リーナに指摘されているはずだわ。
「変わりないわ、どうして?」
分からないのなら、本人に聞くのが一番でしょう。
「朝食の時間に、お姉様が私よりも後に来るなんて…」
後ろからリーナの笑ってる雰囲気が伝わって、目の前で可愛い顔を心配そうに歪めるサーシャが、少しだけ憎らしい。
「ふふふ、少しだけゆっくりしすぎたかしら?」
席に着こうとしたところ、後から入ってきたお父様とお母様にも同じ反応をされてしまいました。ひどいものです。
「リディア、昨日は何が採れたの?」
「昨日も色々と採れて、今は暑いからゴーウリやトメトがたくさんです」
「そう、でもそろそろダンスのレッスンを優先してほしいのだけど」
お食事を取りながら言葉を交わすのは、領民の方々を初代公爵が真似たものだと聞いた気がする。
元々は他の貴族の方々と同じく、言葉少なにお食事を頂いていたそうですが、領民の方々のスタイルを気に入った初代が取り入れて、ハウス家ではお食事の時間にたくさん喋る。もちろん品を保って、というのが頭につくけれど。
「リディア、聞こえてるのは分かっていますよ」
他に意識を向けようと思いましたが、お母様には通用しませんね。
「お母様、私はハウス家の娘ですよ?」
「そうですよ?」
「であれば、作物を育てることにも注力すべきではないですか?」
「それは貴女でなくても出来ることよ」
お母様は引き下がる気はないようがですが、私もです。
ある時を境に、お母様とはこんな会話が増えた気がします。
「リディア、お母様のお話はこれからの為だよ」
お父様にまで言われては、流石に小さく返事をするほかない。
「ではお母様、ダンスのレッスンも作物を育てる事も頑張ります!」
「そうね、リディアはそうよね」
なんだか腑に落ちない、そんなお母様に元気に返事をした。お母様は溜め息をついているけれど、分かってくれたのだと思います。
「お姉様は作物を育てることにも長けていて、私も見習わなくてはいけませんね」
「あら、サーシャはそんな私に代わって、社交界で活躍しているでしょう?」
「そんな活躍だなんて」
頬を赤らめるサーシャはとても可愛らしくて、殿下が見初めるのも理解できます。
容姿も私とはあまり似てなく、お父様とお母様にそっくりなサーシャは、誰がどう見ても可愛い。
それなのにどこか自信がなく、謙虚なのです。そうなれば私がサーシャに勝てるところなど、ほぼないでしょう。
殿下は見る目があるお方だと、嬉しく思います。
「ごちそうさまでした」
お食事を頂いて、料理長に感謝を伝えて自室に戻る。いつもと変わらないようで、内心はビクビクしてます。
「お嬢様、少し気になることがございます」
扉を閉めた瞬間、リーナの表情は神妙な面持ちへと変わる。何か良くないことでもあったのかと、自然と表情が強張る。
「小説と現実では微妙にですが、色々と異なるのです」
異なると困る事があるのか、リーナに尋ねたらまた溜息を返されるのかしら。そう思うのと同時に、自然に口から言葉が出ていた。
「何か困る事があるのかしら?」
さもいつもの朝のように、リーナが予定を告げる。違うのは、これが今後に関わると言う事。
もしもお父様のお話に、流されてしまったら。そんな事を考えて、頭を左右に振る。
それだけはなんとしてでも避けなくては、待ち受ける未来は断罪だ。
「リーナ、絶対に破棄となるように頑張るわ!」
リーナの返事にも力が入って、一人じゃないと感じる。
物語の中ではルーベルト伯爵も一人じゃなかった、カイトという仲間がいた。カイトもルーベルト伯爵に仕える執事で、最後まで一緒だった。私がルーベルト伯爵なら、リーナはさながらカイトね。
「お嬢様、戻ってきてください」
そんな私の頭の中でも分かるかのように、リーナが冷たい声で言う。
こんなところもカイトにそっくりだわ、なんて言ったら怒るかしら。
そんな事を考えてる間にもお仕度は終わるもので、気づけばしっかり整っていた。
「今日の朝食はしっかり頂いて、その後に備えなくてはいけないわね」
「そうですね。ただお嬢様は、いつも通りで大丈夫かと思いますが」
「いつも通りでは、その後に闘えないわ」
朝食を頂くために移動する時は、決まってリーナと言葉を交わす。
毎朝の日課の様なものだけれど、今日はちょっと気合が違います。リーナもだと思うのだけれど、冷たい反応だわ。
確かにいつもサーシャの倍は食べる私に、リーナが冷ややかな目を向けていたことは知っている。
「リーナは私に冷たいわ」
「優しすぎるぐらいだと自負しております」
いじける様に言ってみせれば、さらりと返されてしまった。こんなところもリーナの良いところだとは思うけれど、最近は全く勝てそうにないわ。
「サーシャ、おはよう」
先に席に着いているサーシャに挨拶をすれば、心配そうな顔に変わる。何故かしら。
「おはようございます。お姉様、体調は大丈夫ですか?」
挨拶もそこそこに、体調を心配される。昨日も元気だったと思うのだけれど、顔色でも悪いのかしら。
でも顔色が悪いなら、リーナに指摘されているはずだわ。
「変わりないわ、どうして?」
分からないのなら、本人に聞くのが一番でしょう。
「朝食の時間に、お姉様が私よりも後に来るなんて…」
後ろからリーナの笑ってる雰囲気が伝わって、目の前で可愛い顔を心配そうに歪めるサーシャが、少しだけ憎らしい。
「ふふふ、少しだけゆっくりしすぎたかしら?」
席に着こうとしたところ、後から入ってきたお父様とお母様にも同じ反応をされてしまいました。ひどいものです。
「リディア、昨日は何が採れたの?」
「昨日も色々と採れて、今は暑いからゴーウリやトメトがたくさんです」
「そう、でもそろそろダンスのレッスンを優先してほしいのだけど」
お食事を取りながら言葉を交わすのは、領民の方々を初代公爵が真似たものだと聞いた気がする。
元々は他の貴族の方々と同じく、言葉少なにお食事を頂いていたそうですが、領民の方々のスタイルを気に入った初代が取り入れて、ハウス家ではお食事の時間にたくさん喋る。もちろん品を保って、というのが頭につくけれど。
「リディア、聞こえてるのは分かっていますよ」
他に意識を向けようと思いましたが、お母様には通用しませんね。
「お母様、私はハウス家の娘ですよ?」
「そうですよ?」
「であれば、作物を育てることにも注力すべきではないですか?」
「それは貴女でなくても出来ることよ」
お母様は引き下がる気はないようがですが、私もです。
ある時を境に、お母様とはこんな会話が増えた気がします。
「リディア、お母様のお話はこれからの為だよ」
お父様にまで言われては、流石に小さく返事をするほかない。
「ではお母様、ダンスのレッスンも作物を育てる事も頑張ります!」
「そうね、リディアはそうよね」
なんだか腑に落ちない、そんなお母様に元気に返事をした。お母様は溜め息をついているけれど、分かってくれたのだと思います。
「お姉様は作物を育てることにも長けていて、私も見習わなくてはいけませんね」
「あら、サーシャはそんな私に代わって、社交界で活躍しているでしょう?」
「そんな活躍だなんて」
頬を赤らめるサーシャはとても可愛らしくて、殿下が見初めるのも理解できます。
容姿も私とはあまり似てなく、お父様とお母様にそっくりなサーシャは、誰がどう見ても可愛い。
それなのにどこか自信がなく、謙虚なのです。そうなれば私がサーシャに勝てるところなど、ほぼないでしょう。
殿下は見る目があるお方だと、嬉しく思います。
「ごちそうさまでした」
お食事を頂いて、料理長に感謝を伝えて自室に戻る。いつもと変わらないようで、内心はビクビクしてます。
「お嬢様、少し気になることがございます」
扉を閉めた瞬間、リーナの表情は神妙な面持ちへと変わる。何か良くないことでもあったのかと、自然と表情が強張る。
「小説と現実では微妙にですが、色々と異なるのです」
異なると困る事があるのか、リーナに尋ねたらまた溜息を返されるのかしら。そう思うのと同時に、自然に口から言葉が出ていた。
「何か困る事があるのかしら?」
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