万能転校生の異世界生存記~学校転移で無人島に飛ばされたけど、なんだかんだで活躍して気づいたらハーレムを築いていました~

絢乃

文字の大きさ
上 下
36 / 46

037 論破

しおりを挟む
 食堂にやってきた悠人と葵。
 セックスを中断させてまで彼女が見せたかったものは――。

「学校の中からあれこれ命令するだけの奴が偉そうにすんなって言ってんだよ! このハゲ!」

「ハゲとはなんだハゲとは! それが教師に対する口の利き方か!」

 ――男子生徒と教頭の口論だった。
 多くの生徒が二人を囲むようにして立っている。

「え、これを見せるために俺を呼んだの?」

 悠人の顔が露骨に歪んだ。
 かつてないほど不機嫌な表情をしている。
 今すぐこの場で葵を滅茶苦茶にしたいと思っていた。

「ゆうくんがイラッとする気持ちは分かるよ。でも、このままだとエスカレートすると思う。だからあの争いを終わらせてくれない?」

「なんで俺なんだ? 教師か誰か適当な奴がやればいいじゃないか」

「それで終わらなかったからゆうくんを呼びに行ったの。あとね、ゆうくん、一刻も早くあの争いを終わらせてくれないと、私はきっとすごく怒ると思う」

 葵が真剣な表情で悠人を見る。

「怒るって……俺に?」

「ううん、あそこで揉めている人たちに。だってここは食堂で、料理は私や家庭科部の子らが作ったの。皆で美味しく楽しく食べてもらいたくて頑張ったのに、こんなのってあんまりじゃない?」

 悠人は怒った葵がどうなるか知っている。
 思い出すだけで彼のペニスは極限まで小さくなった。

「よし、食堂に平和をもたらせよう」

「ほんと!?」

「性奴隷もといセックスパートナー、すなわち『セフレ』のメンタルケアをするのは快適な性行為に必要なことだからな」

「じゃあお願い!」と、嬉しそうに笑う葵。

「任せておけ」

 悠人は人だかりを掻き分けて争いの中心に向かう。

「だからなぁ、このハゲ、お前マジでいい加減に――」

「ちょっと待ったァ!」

 大きな声で注目を集める悠人。

「む? 君は……霧島君じゃないか!」

「出禁にした相手の名前くらいは覚えていたか」

「ぐっ……」

 バツの悪そうな顔をする教頭。
 一方、教頭と言い争っていた男子は顔を明るくした。

「霧島! いいところに来た!」

「ちょっと待ってくれ。お前の顔には見覚えがある」

 男子の顔を凝視する悠人。

「俺だよ! 阿古屋あこやだ!」

「いや、その名前には聞き覚えがない」

「そうか、前の時は名乗れなかったんだった。頭が二つあるライオンに襲われていた俺たちを助けてくれたのは覚えているか? 初日だ」

「ああ」

 悠人は思い出した。
 あの時に助けた男子の一人が彼――三年の阿古屋だったのだ。

「それで阿古屋先輩、そのハゲと何を言い争っているんだ?」

「誰がハゲだ!」

 教頭が悠人に向かって怒鳴る。

「うるせーなぁ、ハゲがよぉ。こっちはセックスを妨害されてイライラしてんだ。黙ってろよ」

 悠人が睨むと、教頭は口を閉ざした。
 野次馬たちも「こえー」とビビっている。
 今の悠人からは人を殺しかねないオーラが漂っていた。

「霧島、俺のことは呼び捨てでいいよ。それで何があったかって言うと、そこのハゲがさぁ――」

 阿古屋は教頭を睨みながら話し始めた。

 口論のきっかけは全くもってくだらないことだ。
 食事中の阿古屋に対し、教頭が座り方を注意したという。

 普段なら「へいへい、すんません」で終わる話だ。
 だが、この時の阿古屋はそうもいかなかった。
 日中に行った食料の調達で親友が命を落としたからだ。

『偉そうなことを言うならお前だって外に出てメシを集めてこいよ!』

 阿古屋は席を立ち、教頭に向かって怒鳴った。
 それをきっかけに変わらぬやり取りを一時間以上も繰り広げて今に至る。

「もう何度も言ったけど、何で男子だけが外回りなんだよ。その時点でクソだ。でも、それはまぁいいとしよう。女子だって学校で頑張ってくれているからな。だがよ、あんたら教師はどうだ? 違うだろ! 偉そうにしているだけで働きしやしねぇ!」

 阿古屋は「教師」と言っているが、正しくは「教職員」である。
 事務員も含まれているからだ。

「だから私だって何度も言っているだろ! こういった環境においては統率者の存在が不可欠だ。統率者がいなければ組織は瞬く間に崩壊する。では誰が統率者を務めるべきか? そんなものは大人、すなわち我々に決まっている。学内の秩序を守るためにも、我々は学校にいなければならない!」

 教頭が言い終えると、葵がスッとやってきて悠人に耳打ちする。

「ずっとこの調子なの」

 悠人は「やれやれ」と大きなため息をついた。
 それから私見を述べる。

「どう考えても阿古屋が正しい」

「だろ!?」

 阿古屋の目が輝く。

「霧島君、きみ――」

「まぁ待て教頭。俺の話には続きがある」

「続きだぁ?」

 悠人は「おう」と頷いた。

「あんたの言い分も分かるよ。統率者は必要だ。そしてその役目は大人が担うべきだというあんたの考えは間違っていない」

「そうだろう、そうだろう」

 今度は教頭が笑みを浮かべる。

「だがな、統率者が男の教職員である必要はない。そうだろ?」

「へ?」

「編入時に渡された冊子によると、この学校には校長を含めて19人の女性教師が在籍している。最高責任者の校長を抜いて18人とし、それらを各学年へ均等に配置した場合、1学年につき6人が割り当てられる。事務員も含めたらさらに増えるだろう。そいつらが統率者となればいい」

「んがっ…………! んがががっ……!」

 何も言い返せない教頭。

「で、あんたら男の教職員は、男子生徒と同じく外回りを担当する。そうすればあんたの言う大人の統率者もいるし、阿古屋の言い分である男性の教職員による外回りも実現される」

「霧島の言う通りだ!」

 いの一番に賛同する阿古屋。

「そうだ! そうしろ! そうしろよ!」

「俺も賛成!」

 周囲の野次馬も盛り上がる。
 だが――。

「ふざけたことを言うなぁああああ!」

 教頭が吠えた。
 すぐ傍のテーブルを両手で叩く。

「私は校長先生から全権を与えられているんだ! その私が! 決めたこと! それが絶対に正しいんだ! 生徒が意見するなどおこがましい!」

 首筋に血管を浮かばせ、鼻息を荒くして喚く教頭。
 悠人は呆れ顔で笑った。

「今のではっきりしたな。つまるところテメェは自分が安全圏にいたいだけだ。統率者だ何だというのはそのための建前に過ぎない。とんだクソ野郎だぜ」

「そうだそうだ!」

「失せろこのハゲ!」

「死ねやハゲ!」

 ブーイングの嵐が巻き起こる。

「うるさいうるさいうるさい! 黙れ! ガキども!」

 教頭はテーブルを蹴飛ばすと食堂から出て行った。

「ああいう大人にはなりたくねぇな」

 悠人は苦笑いで呟いた。

「霧島、助かったぜ! お前すげーな! 強いだけじゃなくて論破能力もたけーじゃん!」

 阿古屋は大興奮。

「教頭のあの引きつった顔ったらたまらなかったな!」

 他の生徒も盛り上がっている。

「――とまぁ、こんな感じになったけど大丈夫だったか?」

 悠人は葵に尋ねた。

「うん! ありがとー、ゆうくん! 助かったよ!」

 葵は悠人に抱きついてキスした。
 衆目の中なのに堂々としている。
 ――と、思いきや。

「あ、えと、ごめん、ちょっと、勢い余っちゃった」

 顔を真っ赤にして逃げ出してしまった。
 見られていることをすっかり忘れていたのだ。

「わー! 部長がキスした!」

「さっきの部長、女の顔になってたよね!」

「うんうん! なんか青春って感じー!」

 家庭科部の女子たちは初めて見る葵の姿に大はしゃぎ。

「霧島が宮藤をモノにしたって話はマジだったんだな……」

「俺、実は宮藤のことが好きだったんだよな……」

「俺もだ……! 辛いぜ……!」

「でもちょっと……勃起したよな……」

「だな……なんかエロいキスだった……」

 葵に惚れている男子たちは悲しんでいた。

(とりあえず、これで一件落着だな。早く戻ってセックスの続きだ)

 悠人は安堵の息を吐くと食堂から出る。
 そしていよいよ明日は他の種族を求めて冒険の旅に。
 ――となるはずだったが、そうはらなかった。

 阿古屋たちの教師に対する恨みは、悠人が思うより根深かったのだ。
 翌日、悠人はそれを知ることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

処理中です...