万能転校生の異世界生存記~学校転移で無人島に飛ばされたけど、なんだかんだで活躍して気づいたらハーレムを築いていました~

絢乃

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009 休み時間

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 悠人と美優は本館に入った。
 彼らが抜け出す前と違って男子生徒の数が少ない。
 周辺の探索に駆り出されているからだ。

「あ、いた! 西村さんと、えっと……霧島君!」

 廊下を歩く二人に、担任教師の真紀が声を駆け寄ってきた。
 Eカップの胸がブラウスの奥で揺れている。

(美優も小さくないが、先生のほうが大きいな)

 悠人は真紀と美優の胸を見比べる。

「その視線やめれ」

 美優が呆れ顔で言う。
 男子の視線は分かりやすいが、悠人は特に酷かった。
 チラ見ではなくがっつりと顔を動かして見比べていたのだ。

「二人ともどこに行っていたの!」

 真紀が強い口調で言った。
 怒っているのではなく心配している。
 顔を見れば明らかであり、悠人と美優にも分かった。

「ごめん先生! 悠人と二人で抜け出してた!」

 美優は顔の前で手を合わせて謝る。
 抜け出してどこに行ったのかは答えなかった。
 言うと怒られるからだ。

「すみませんでした」

 悠人は素直に頭を下げる。

「ま、まぁ、無事ならかまわないわ。でも、今度から勝手に消えたらダメよ。集会のあと、どこにもいなくてびっくりしたんだから」

「はーい、気をつけまーす!」

 美優は軽い調子で答える。
 それから「ところで」と話を変えた。

「先生、さっき部室棟の近くで井上に会ったけど、先生のことを探していたよ」

 もちろんウソだ。
 これ以上の追及や叱責を避ける美優のテクニックである。
 そしてそれは見事に決まった。

「井上君が? 何の用かしら?」

「さぁ? そこまでは聞いていないよ!」

「そう。分かったわ。ありがとう、西村さん。いつも気が利くわね」

「でしょー! 性別を問わず誰からも人気のある女! それが私!」

 真紀は「ふふ」と笑い、「またあとでね」と去っていった。

「どんなもんよ! 悠人がサバイバルのプロなら私はコミュニケーションのプロだよ!」

「すごいな美優、驚くほど滑らかなウソだったぞ。詐欺師の才能がある」

「まぁ将来は詐欺師を目指しているからねー……って、んなわけあるかーい!」

 上機嫌でノリツッコミを決める美優。
 しかし――。

「………………」

 悠人は何も言わなかった。
 否、どう反応すればいいか分からなかったのだ。

「なんとか言わんかーい!」

「そう言われてもな……」

 美優は「かぁ!」とおっさんみたいに唸った。

「まぁいいや! どこか人のいない教室に隠れて休も! 目立つところにいたらあれこれ作業をさせられそうだし!」

 悠人は「そうだな」と了承した。

 ◇

 日が暮れると、男子生徒に課せられた探索任務が終了した。
 それに合わせて悠人と美優も休憩を終えた。
 拝借した包丁と弓、金属バットをこっそり返却しておく。

「不思議だよな」

 本館の一階にある冷水器で喉を潤す悠人。

「何が不思議なの?」

 悠人に続いて美優も水を飲む。
 冷たくて美味しい。
 喉にこびりついていた精液が流れてすっきりした。

「インフラだよ。電気も水道も生きている。食堂で晩ご飯を作っているらしいからガスも使えるわけだ」

「ほんとだ! 言われるまで気にしていなかった!」

「普通は気にすると思うが」

「私は細かいことにこだわらないタイプなの!」

「ともかく常識的に考えるとありえないことだ。インフラが生きているのは」

「つまりラッキーってことね!」

「そうとも言えるが、こうとも言える――いつインフラが機能停止に陥るか分からない」

「ええええええ!」

「もしかしたらこのあとすぐにそうなるかもしれないし、そうなったって別におかしな話ではない。だろ?」

「たしかに……」

「だから、このラッキーが続く間に準備を整えておくべきだ」

「悠人って先のことまでしっかり考えているんだねー」

「俺は細かいことにこだわるタイプだからな」

 美優は「うるせー」と笑った。

「ま、そういうことは先生たちも考えているっしょ! 私らはテキトーに言われた通り頑張りゃいい!」

 悠人は「だな」と答えた。
 だが、彼と美優では意味が違っていた。

 美優が教師に従うのは、そうすれば上手くいくと思っているからだ。

 一方、悠人は――。

(いざとなったら美優以外を切り捨てりゃどうにでもなるしな)

 ――教師の能力など欠片ほども信用していなかった。

 ◇

 夜になると食事の配給が始まった。
 一度に全生徒が食堂に行くと収容力が足りずにパンクする。
 ということで、複数回に分けることになった。
 公平性を期すため各学年にひとクラスずつ呼ばれる。

「野菜だらけの味噌汁に果物の盛り合わせか」

 悠人は受け取った食事の献立を呟くと、配給担当の女子生徒に尋ねた。

「これらの食材はこの世界で調達したもの?」

「そうよ」

「安全面は大丈夫なのか? 見た目は問題なさそうだが」

「たぶんね。化学の先生が調べた限り日本の物と同じみたい。でも、不安なら食べなくてもいいわよ。どの食材も男子が命懸けで手に入れてくれたものなんだから」

 不快感を露わにする女子生徒。

「気を悪くさせてすまない。気になったから訊いただけだ。ありがたくいただくよ。もちろん残さない」

 悠人は一礼するとその場を離れ、美優のいるテーブルへ。
 彼女の向かいに座った。

「悠人さぁ、もうちょっと配慮しなよ」

 呆れる美優。

「何のことだ?」

「さっきのやり取りだよ。あんなこと言ったら怒られるに決まってるじゃん。食べられるだけありがたいんだし」

「その通りだな」

 悠人は反論することなく受け入れた。
 だが、反省はしていない。
 同じ展開になれば、きっと同じ質問をするだろう。

「美優じゃん! なになに? 彼氏と一緒?」

「男に興味がないフリをしていたのにちゃっかりしてんねー!」

 二人の女子が悠人たちの傍に来る。
 ダンス部の三年生だ。

「違いますってば! そんなんじゃないですって!」

 美優は恥ずかしそうに否定する。

「君、二年生? 名前は?」

「美優と付き合ってないなら私とかどう? てかヤる?」

「ちょっとトモコ、それは言い過ぎだってー!」

「きゃはは」

 二人は悠人の返事を待つことなく去っていった。

「俺は霧島悠人。二年。てかヤりたい」

「いやもう先輩たちいないし! あとヤりたいとか言うなし!」

 美優がツッコミを入れると、悠人は満足気な笑みを浮かべた。
 彼なりのボケだったのだ。

「チッ」

 ざわつく食堂内で誰かが舌打ちをした。
 ほぼ全員が気づいていないけれど、悠人は気づいていた。
 誰がしたのかも分かっている。

(あれは三年の……東谷だっけか?)

 東谷は食堂の入口付近から悠人を睨んでいた。
 だが、目が合うと出ていった。

(明らかに目を付けられているな)

 悠人は「トラブルの時は近いな」と思った。

「ねー、悠人? 聞いてる?」

 美優が指でテーブルを叩く。

「聞いてるよ。小屋でシたことをまたあとでシてくれるって話だろ?」

「そうそう、またあの時みたいに口で……って違うから! こんなところで何言ってんの! 変態が!」

「ははは。で、どうした?」

「だからぁ」

 美優が改めて他愛もない話をしようとする。
 だが、そこへ――。

「私も混ぜてもらっていいかしら?」

 エプロン姿の女子がやってきた。
 茶色の長い髪とシャツをぶち破りそうな巨乳が特徴的だ。
 悠人は彼女に見覚えがあった。
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