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004 治安維持活動

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「「戦争!?」」

「ちょっと大袈裟な言い方をしたが、平たく言えばそうだ」

「かなり大袈裟じゃん! 何するつもりなの!?」

 チナツが尋ねてきた。

「近くに生息している獰猛な動物を手当たり次第に攻撃していく」

「なんでそんなことするの? 危ないじゃん」

「今のままだともっと危ないぜ」

「なんで?」

「野生の動物は常に相手と自分の力を天秤にかけているんだ。もし自分が人間よりも強いと思ったら遠慮なく襲ってくる」

「だから『人間様のほうが強いんだぞ!』って思い知らせるわけだ?」

「そういうことだ」

「よく考えているねー、ハヤト!」

「でしょー! ハヤト君はサバイバルの達人なんだよー!」

 何故か誇らしげに胸を張るユキノ。

「でもさ、そんなに危険な動物なんているの? 私、ずっと草原を歩いていたから分からないんだよね」

「たくさんいるぜ。イノシシにピューマ、あとチンパンジーもそうだな。イノシシなんかは草原まで出張ってくるぞ」

「うへぇ! やばいじゃん!」

「だから治安維持活動をするわけだ。いつ救助が来るか分からない以上、ここで何日も過ごす可能性を考慮しなくちゃいけないからな」

「なるほど! そういうことなら私も協力するよ!」

 ユキノが「私も!」と続く。

「なら二人には弓矢の製作をしてもらおう」

「弓矢? そういえばハヤト、カッチョイイやつ持ってるね!」

「同じ物を作れるようになってもらう」

「え、それ自作なの!? すごっ!」

「でしょー!」と、俺ではなくユキノが言う。

 竹で弓矢を作る技術は、サバイバルのイロハが詰まっている。
 例えば、弦を張る際に製糸の基礎が身につく。
 矢羽根を装着では、樹脂が接着剤の代用になることを学べる。
 こういうことの積み重ねがサバイバル生活で輝く。

「では竹林に行こう。ついてきてくれ」

「「ラジャー!」」

 俺は二人を連れて竹林に向かった。

 ◇

 弓矢の作り方を教え終わると、実際に作ってもらう。
 そこでユキノとチナツの能力が見えてきた。

「あー、肩が凝る! 面倒っちぃなぁ!」

 チナツは製糸の段階で苛ついている。
 植物の茎から繊維を抽出する作業が苦手なのだ。
 その後の撚り合わせるところでもイライラしていた。

「私は好きだけどなー」

 一方、ユキノはこういった作業を得意にしている。
 手先も器用で、何の苦もなくサクサク矢を量産していた。
 完成した矢のクオリティも俺に匹敵するレベルだ。

「よし、役割を分担するぞ。材料の調達はチナツにしてもらって、ユキノには矢を作ってもらおう」

「そうしてくれー! 茎の皮剥きなんてもうしたくない!」

「チナツは細かい作業が苦手だもんねー」

「だって肩が凝るんだもん! ユキノはよく平気でやってられるね」

「私は得意だからねー、こういう作業!」

「肩とか首とか凝らないの? スイカみたいなおっぱいをぶら下げているのにさ」

「ちょっとは凝るよー」

「どれどれ、ならば揉んでやろう」

「やだー! セクハラー!」

「減るもんでもないしええじゃろー! ほれほれー!」

「きゃー! やーだー!」

 可愛い女たちがきゃっきゃしている。
 目の保養になるので眺めていたいところだが、今は治安維持活動が先だ。

「矢は何本あっても困らない。あとは頼んだぞ」

 二人をその場に残し、俺は竹林をあとにした。

 ◇

 森に入ったらパーティータイムだ。

「ウウゥー! ウウゥー!」

「ガルゥゥ! ガルァ!」

 チンパンジーとピューマの喧嘩に参戦する。
 迷うことなく矢を射かけた。

「ウホゥ! ウホゥ!」

 まずはひときわ大きなチンパンジーの手を射抜く。
 恐怖を与えることが目的なので殺しはしない。

「「「ウゥゥゥー!」」」

 ボスがやられて怒ったのか、子分どもが襲いかかってきた。
 汚い歯を剥き出しにしているが全く怖くない。

「命知らずの愚か者どもめ」

 飛びかかってくるチンパンジーをことごとく殴り飛ばした。
 本当はナイフで刺したかったが、あいにく今は持っていない。
 護身用も兼ねてユキノに渡していた。

「ほら、逃げないと殺すぞー!」

 子分のチンパンジーどもに矢をお見舞いする。
 肩や脚、背中などに突き刺さった。

「ウゥゥ! ウホゥ! ウゥゥ!」

 甲高い声で鳴きながら逃げていく。

「次はお前らだな」

 付近の樹上に陣取っているピューマを見る。
 10頭が別々の木から俺を睨んでいた。

 これは非常に珍しいことだ。
 一般的なピューマは単独で行動する。

「どうした? かかってこないのか?」

「ガルルゥ……!」

 ピューマは威嚇するだけで襲ってこない。
 ライバルのチンパンジーがやられて警戒しているようだ。

「ならこちらからいかせてもらうぜ」

 問答無用で射かける。
 しかし、軽快なジャンプで回避された。
 問題ない、想定通りだ。

「その判断は失敗だったな」

 宙に浮いた状態では避けられない。
 俺は二本目の矢でピューマの腹部を射抜いた。

「ガァ……」

 地面に落下するピューマ。
 矢の命中箇所からは黒い血が流れている。
 肝臓を射抜いてしまったようだ。

「当たり所がわるかったな。その傷ではじきに死ぬだろう」

「「「ガゥ!」」」

 他のピューマは血相を変えて逃げていった。
 手負いの個体もフラフラしながら去っていく。

「よしよし、順調だ」

 その後も付近の森林で暴れた。
 人を襲いそうな動物は手当たり次第に攻撃していく。
 最後のほうになると、友好的な動物以外は近づかなくなった。

「これである程度は安全になっただろう」

 獣の血で染まった矢を回収して家に戻った。

 ◇

「あ、ハヤト君だー!」

「おかえりハヤトー!」

「あの人がハヤトね」

「別のクラスだから見覚えがないなぁ……」

 戻ったら女子の数が四人に増えていた。
 秋山モミジと春日サツキが合流したのだ。

「ハルト君、紹介するね! 友達のモミジとサツキだよ!」

 俺のことを知らないと言う女がモミジだ。
 ウェーブがかった赤のミディアムヘアに美容師の本気を感じる。
 身長はチナツより低くてユキノより高いから150半ばくらいか。
 ユキノには劣るがご立派な胸をしている。

 その隣に立っている緑のセミロングがサツキだ。
 こちらは他の三人より明確に背が高い。160半ばはあるだろう。
 胸もモミジと同じくらい大きくて、理想的なボンキュッボンだ。

 チナツ以外はおっぱいが大きい!

「神座ハヤトだ、よろしく」

 名乗ったら握手を交わす。
 その際、「獣の血で汚れていてすまんな」と謝っておいた。

「治安維持活動は上手くいったかい?」

 チナツは竹の床に大の字で寝転んでいる。
 こちらに足を向けているのでスカートの中が見えそうだ。

「ある程度は効果があると思う」

「やるぅ!」

「ハヤト君、これからどうすればいいかな?」

 ユキノはチナツの傍に座った。
 それを見てモミジとサツキも腰を下ろす。

「そうだなぁ」

 腕を組んで考える。
 食糧や寝床、害獣の問題は概ね解決した。

「家具や土器を作って生活を向上させたいところだが……」

「そんなことできるの!?」

「すごっ」

 モミジとサツキが驚いている。

「ハヤト君は最強なのです!」

 もはやユキノが代わりにドヤッても気にならない。
 俺は笑みを浮かべて話を続けた。

「それらをする前に地形の把握だな。近くに海がないか調べたい」

 俺は遠目に見える木々を指した。
 周囲の植物に比べて明らかに背が高い。
 おおむね70メートル以上の樹高を誇っている。
 その名は――セコイア。

「あの木は世界で最も高い。登れば周囲の様子がよく見えるはずだ」

「当たり前のように言っているけど、ハヤトは木登りできるの? あの木、明らかに幹が太いから手でしがみつくのなんて無理だよ」

 サツキが冷ややかな目で俺を見る。
 登れないと思っているのだろう。

「大丈夫だ。大きな木を登る方法なら熟知している」

「ハヤト君は暴対法の関係で何でも知っているから大丈夫だよ!」

「暴対法って何ー?」とモミジ。

 一方、サツキは眉間に皺を寄せた。

「暴対法ってヤクザに関する法律だけど?」

 その言葉に三人の女子が「えっ」と固まる。
 俺は「さぁ行くぞ!」と声を張り上げて誤魔化した。
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