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028 初めてのセーフエリア
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問題なく9階をクリアしたルシアスたち。
そして二人は、最初のセーフエリアに辿り着いた。
セーフエリアは、唯一、塔の中だと実感できる場所だ。
壁と天井があるから。
これまでの階層はとても塔内とは思えなかった。
「セーフエリアはマジで共用なんだな」
「たくさんいますねー!」
10階は冒険者で埋め尽くされていた。
本来なら何もないはずのだだっ広いエリアが人で溢れかえっている。
その数――約6000人。
テントが乱立しており、活き活きした声があちこちから聞こえてきた。
「ほう、お前如きがここまで辿り着けたのか」
ルシアスを見つけるなり近づいてきたのはフリッツだ。
彼のPTは一足先に到着していた。
「お前はよほど運がいいらしいな、ルシアス」
「運がいい? どういうことだ?」
「塔の難易度はPTによって違う。お前みたいな凡愚がここまで来られたということは、よほど簡単なエリアを引き当てたのだろう。羨ましいぜ」
これに対し、ルシアスは「そうなのかもしらん」と認める。
「なんだ? えらく素直じゃないか」
拍子抜けのフリッツ。
「ぶっちゃけよく分かってないからな、塔のこと」
ルシアスの塔に関する知識は無知といえるほどだった。
PTごとに難易度が違うというのも、今まで知らなかったくらいだ。
てっきり他のPTも同じような環境を突破してきたのだと思っていた。
「ふん、つまらん」
ルシアスが言い返さないことで興ざめのフリッツ。
彼はルシアスに背を向け、適当な捨て台詞を吐いて消えていった。
「なぁ、ちょっといいかい?」
ルシアスは近くにいたおっさん冒険者に話しかける。
おっさんが「どうした?」と相手をしてくれるので尋ねた。
「塔はPTごとに難易度が違うって聞いたんだが」
「あぁ、そうだな、違うよ」
「あんたはどんな内容だったんだ?」
「乱獲系が多かったかな。ゴブリンとかスライムみたいな」
「なるほど」
自分たちと同じだな、とルシアスは思った。
彼らも基本的にはザコの乱獲だった。
「おたくはどんな内容だったんだ?」
「俺も同じようなものだけど、5階だけ少し違ったな」
「ほう」
「場所は雪原で、吹雪の中でシルバーフォックスと戦わされたよ」
「本当か!?」
驚くおっさん。
「嘘を言ってどうする」と真顔のルシアス。
「いやぁ、それはとんだ災難だったなー」
「災難?」
「あいつは一番のハズレだ。熟練の冒険者でも怪我をすることが多い。よく突破できたなぁ。だいぶきつかったんじゃないか?」
「いや、俺たちは偶然にも相性が良くてな」
戦闘内容の詳細については伏せるルシアス。
たこ焼き器の一件で懲りていた。
異世界の装備についてはあまり触れないつもりだ。
「その変な武器のおかげってわけか」
おっさんがルシアスの装備しているアサルトライフルを眺める。
ルシアスは「まぁね」とだけ言って話を切り上げた。
そして、ミオと共に11階のゲートを目指す。
10階は人が多すぎるので早々に立ち去りたかった。
「私たち大変なエリアを引いていたんですねー」
「でも相性が良かったから苦労はしなかったな」
ゲートの前に辿り着く。
すぐにはゲートをくぐらず、まずは水分補給だ。
二人は共に1リットルのペットボトルを手に持つ。
中にはスポーツドリンクが入っていた。
それをグビッと飲み干し、「ぷはぁ」と息を吐いた。
「味はコーラに劣るけど、戦闘のあとはスポドリに限るな!」
「ですねー! 疲れが吹っ飛びましたよ!」
空のペットボトルを〈吸収〉すると、今度は小腹を満たす。
食べるのはフィルムで個別包装されたおにぎりだ。
「このおにぎり、いつ見てもすごいですよね!」
「1、2、3と番号に沿って袋を開けていけば美味しいおにぎりが完成するからな。楽しい上に美味い、それでいて安い最高の逸品だ」
「海苔はパリパリだし、中の具が色々あるのもいいですね!」
二人は上機嫌でおにぎりを貪る。
味もさることながらフィルムを開けること自体も楽しんでいた。
「さて、準備万端だ」
ルシアスは口の端に付着した海苔をペロリと舐める。
「頑張って20階を目指しましょう!」
「おうよ」
10階のセーフエリアからルシアスたちの姿が消えた。
そして二人は、最初のセーフエリアに辿り着いた。
セーフエリアは、唯一、塔の中だと実感できる場所だ。
壁と天井があるから。
これまでの階層はとても塔内とは思えなかった。
「セーフエリアはマジで共用なんだな」
「たくさんいますねー!」
10階は冒険者で埋め尽くされていた。
本来なら何もないはずのだだっ広いエリアが人で溢れかえっている。
その数――約6000人。
テントが乱立しており、活き活きした声があちこちから聞こえてきた。
「ほう、お前如きがここまで辿り着けたのか」
ルシアスを見つけるなり近づいてきたのはフリッツだ。
彼のPTは一足先に到着していた。
「お前はよほど運がいいらしいな、ルシアス」
「運がいい? どういうことだ?」
「塔の難易度はPTによって違う。お前みたいな凡愚がここまで来られたということは、よほど簡単なエリアを引き当てたのだろう。羨ましいぜ」
これに対し、ルシアスは「そうなのかもしらん」と認める。
「なんだ? えらく素直じゃないか」
拍子抜けのフリッツ。
「ぶっちゃけよく分かってないからな、塔のこと」
ルシアスの塔に関する知識は無知といえるほどだった。
PTごとに難易度が違うというのも、今まで知らなかったくらいだ。
てっきり他のPTも同じような環境を突破してきたのだと思っていた。
「ふん、つまらん」
ルシアスが言い返さないことで興ざめのフリッツ。
彼はルシアスに背を向け、適当な捨て台詞を吐いて消えていった。
「なぁ、ちょっといいかい?」
ルシアスは近くにいたおっさん冒険者に話しかける。
おっさんが「どうした?」と相手をしてくれるので尋ねた。
「塔はPTごとに難易度が違うって聞いたんだが」
「あぁ、そうだな、違うよ」
「あんたはどんな内容だったんだ?」
「乱獲系が多かったかな。ゴブリンとかスライムみたいな」
「なるほど」
自分たちと同じだな、とルシアスは思った。
彼らも基本的にはザコの乱獲だった。
「おたくはどんな内容だったんだ?」
「俺も同じようなものだけど、5階だけ少し違ったな」
「ほう」
「場所は雪原で、吹雪の中でシルバーフォックスと戦わされたよ」
「本当か!?」
驚くおっさん。
「嘘を言ってどうする」と真顔のルシアス。
「いやぁ、それはとんだ災難だったなー」
「災難?」
「あいつは一番のハズレだ。熟練の冒険者でも怪我をすることが多い。よく突破できたなぁ。だいぶきつかったんじゃないか?」
「いや、俺たちは偶然にも相性が良くてな」
戦闘内容の詳細については伏せるルシアス。
たこ焼き器の一件で懲りていた。
異世界の装備についてはあまり触れないつもりだ。
「その変な武器のおかげってわけか」
おっさんがルシアスの装備しているアサルトライフルを眺める。
ルシアスは「まぁね」とだけ言って話を切り上げた。
そして、ミオと共に11階のゲートを目指す。
10階は人が多すぎるので早々に立ち去りたかった。
「私たち大変なエリアを引いていたんですねー」
「でも相性が良かったから苦労はしなかったな」
ゲートの前に辿り着く。
すぐにはゲートをくぐらず、まずは水分補給だ。
二人は共に1リットルのペットボトルを手に持つ。
中にはスポーツドリンクが入っていた。
それをグビッと飲み干し、「ぷはぁ」と息を吐いた。
「味はコーラに劣るけど、戦闘のあとはスポドリに限るな!」
「ですねー! 疲れが吹っ飛びましたよ!」
空のペットボトルを〈吸収〉すると、今度は小腹を満たす。
食べるのはフィルムで個別包装されたおにぎりだ。
「このおにぎり、いつ見てもすごいですよね!」
「1、2、3と番号に沿って袋を開けていけば美味しいおにぎりが完成するからな。楽しい上に美味い、それでいて安い最高の逸品だ」
「海苔はパリパリだし、中の具が色々あるのもいいですね!」
二人は上機嫌でおにぎりを貪る。
味もさることながらフィルムを開けること自体も楽しんでいた。
「さて、準備万端だ」
ルシアスは口の端に付着した海苔をペロリと舐める。
「頑張って20階を目指しましょう!」
「おうよ」
10階のセーフエリアからルシアスたちの姿が消えた。
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