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016 起死回生の閃き
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「問題は何を作るかだな」
ルシアスは顎を右手で摘まみながら考える。
彼の前では、ミオが必死に屋台を組み立てていた。
「料理で勝負するんですよね?」
「そう啖呵を切っちまったからな」
「いいじゃないですか。私、料理の腕には自信がありますよ!」
「そうなんだけどなぁ」
たしかにミオの料理はレベルが高い。
手際もいいので、プロと言っても通用しそうだ。
そのことはルシアスも認めている。
「だが立地の差をひっくり返すのはきついぜ。それに祭りは基本的に食べ歩きだ。手の込んだ料理を作ってもウケないだろ。サクッと作る必要がある」
「それもそうですね……」
ルシアスは絶望したが、勝負を投げてはいなかった。
彼には心の拠り所――スマホがあるからだ。
この神アイテムを駆使すればどうにかなるかもしれない。
諦めるのはまだ早いと思っていた。
「できましたー!」
とりあえず屋台が完成した。
「あそこ、もう完成したのか」
「さっき組み立て始めたばかりだろ」
「なんでもう仕上がっているんだ」
「それにえらく綺麗な屋台だな」
それを見た周囲の出店者がざわつく。
ミオがサクッと屋台を組み立てたからだ。
この屋台も〈ショッピング〉で買ったものである。
他所に比べて設営が楽だった。
通常、屋台はレンタルで済ませるものだ。
自前の屋台を持っている人間はそれほど多くない。
そのため、大半の店が始まる前から年季の入った風格を漂わせていた。
「どうですかルシアス君、私一人で屋台を完成させましたよ!」
「やっぱりクレープが一番いいよなぁ」
ルシアスはミオの話を聞いていなかった。
屋台で何を売るか考えるので必死だったからだ。
ミオは「むぅ」と拗ねるも、次の瞬間には笑みを浮かべる。
ルシアスが真面目に屋台のことを考えているのが嬉しかった。
それに、こうして一緒にお店を出せることも幸せだ。
「クレープ、作ってみましょうか?」
「ああ、頼むよ」
ルシアスは〈ショッピング〉を使って必要な道具を揃えた。
瞬く間に彼らの屋台がクレープ専門店と化す。
「よーし、作りますよー!」
ミオが鼻歌を口ずさみながら調理を始める。
慣れた手つきですいすいっとクレープを完成させた。
「できましたー!」
声を弾ませるミオ。
しかし、ルシアスは首を振った。
「ダメだな、クレープは却下だ」
「えええええ! どうしてですか!?」
「時間が掛かりすぎる。これでは効率良く回せない」
「あー、そっかぁ、短時間で量産できないとダメなんですね」
「そういうことだ」
ミオのクレープを売れば間違いなくヒットする。
しかし、一等地に店を構えるイカの串焼きとは戦えない。
なにせ串焼きはタレにつけて焼くだけで済む。
その前段階に当たる諸々の作業は今日中に終わっている。
太刀打ちするには同レベルの回転率が求められた。
「なら私たちもなにかの丸焼きで対抗しますか?」
「なにかって?」
「そうですねー……鮎の塩焼きとか!」
「悪くないが、それだと個性がないな。わざわざこんな僻地で買おうとは思わないだろ。それに、鮎の塩焼きをやっている店は他にもある」
「たしかに……」
「クレープは悪くない線を突いていると思うんだよ、俺」
ルシアスはこの世界にない料理で戦うつもりだ。
立地の差を覆すには他に手がない。
奇抜さで客を呼び込み、味をもって人気を爆発させる。
「じゃあ、お好み焼きとかどうですか?」
「お好み焼き? なんだそれは」
「ほら、一昨日食べたじゃないですか。ルシアス君が『なんかグチャグチャした塊にソースとマヨネーズをかけだけなのになんでこんなに美味いんだぁ!』とか言っていたやつですよ」
「ああ、アレか」
「お好み焼きも屋台の料理でしたよね、たしか」
「えっ、そうなの?」
ルシアスが首を傾げる。
ミオは「そうですよ!」と語気を強めた。
「私はよく覚えていますよ! だってお好み焼きが登場したDVDは、ルシアス君にアポロ祭を意識させるために私が選んだものですから! タイトルはたしか〈関西のお祭り大特集 令和最新版〉だったはずです!」
「ああ、そういえばそうだったな。あのクソつまんねぇDVDが――ハッ!」
その時、ルシアスに電流が流れた。
全身を突き抜けるような衝撃に襲われる。
それは完璧と言わざるを得ない閃きだった。
「そうか、その手があったんだ」
思わず不気味な笑い声がこぼれる。
「な、何を閃いたのですか!?」
食いつくミオ。
ルシアスはニヤリと笑った。
「祭りでフリッツたちに勝つ方法さ」
ルシアスは顎を右手で摘まみながら考える。
彼の前では、ミオが必死に屋台を組み立てていた。
「料理で勝負するんですよね?」
「そう啖呵を切っちまったからな」
「いいじゃないですか。私、料理の腕には自信がありますよ!」
「そうなんだけどなぁ」
たしかにミオの料理はレベルが高い。
手際もいいので、プロと言っても通用しそうだ。
そのことはルシアスも認めている。
「だが立地の差をひっくり返すのはきついぜ。それに祭りは基本的に食べ歩きだ。手の込んだ料理を作ってもウケないだろ。サクッと作る必要がある」
「それもそうですね……」
ルシアスは絶望したが、勝負を投げてはいなかった。
彼には心の拠り所――スマホがあるからだ。
この神アイテムを駆使すればどうにかなるかもしれない。
諦めるのはまだ早いと思っていた。
「できましたー!」
とりあえず屋台が完成した。
「あそこ、もう完成したのか」
「さっき組み立て始めたばかりだろ」
「なんでもう仕上がっているんだ」
「それにえらく綺麗な屋台だな」
それを見た周囲の出店者がざわつく。
ミオがサクッと屋台を組み立てたからだ。
この屋台も〈ショッピング〉で買ったものである。
他所に比べて設営が楽だった。
通常、屋台はレンタルで済ませるものだ。
自前の屋台を持っている人間はそれほど多くない。
そのため、大半の店が始まる前から年季の入った風格を漂わせていた。
「どうですかルシアス君、私一人で屋台を完成させましたよ!」
「やっぱりクレープが一番いいよなぁ」
ルシアスはミオの話を聞いていなかった。
屋台で何を売るか考えるので必死だったからだ。
ミオは「むぅ」と拗ねるも、次の瞬間には笑みを浮かべる。
ルシアスが真面目に屋台のことを考えているのが嬉しかった。
それに、こうして一緒にお店を出せることも幸せだ。
「クレープ、作ってみましょうか?」
「ああ、頼むよ」
ルシアスは〈ショッピング〉を使って必要な道具を揃えた。
瞬く間に彼らの屋台がクレープ専門店と化す。
「よーし、作りますよー!」
ミオが鼻歌を口ずさみながら調理を始める。
慣れた手つきですいすいっとクレープを完成させた。
「できましたー!」
声を弾ませるミオ。
しかし、ルシアスは首を振った。
「ダメだな、クレープは却下だ」
「えええええ! どうしてですか!?」
「時間が掛かりすぎる。これでは効率良く回せない」
「あー、そっかぁ、短時間で量産できないとダメなんですね」
「そういうことだ」
ミオのクレープを売れば間違いなくヒットする。
しかし、一等地に店を構えるイカの串焼きとは戦えない。
なにせ串焼きはタレにつけて焼くだけで済む。
その前段階に当たる諸々の作業は今日中に終わっている。
太刀打ちするには同レベルの回転率が求められた。
「なら私たちもなにかの丸焼きで対抗しますか?」
「なにかって?」
「そうですねー……鮎の塩焼きとか!」
「悪くないが、それだと個性がないな。わざわざこんな僻地で買おうとは思わないだろ。それに、鮎の塩焼きをやっている店は他にもある」
「たしかに……」
「クレープは悪くない線を突いていると思うんだよ、俺」
ルシアスはこの世界にない料理で戦うつもりだ。
立地の差を覆すには他に手がない。
奇抜さで客を呼び込み、味をもって人気を爆発させる。
「じゃあ、お好み焼きとかどうですか?」
「お好み焼き? なんだそれは」
「ほら、一昨日食べたじゃないですか。ルシアス君が『なんかグチャグチャした塊にソースとマヨネーズをかけだけなのになんでこんなに美味いんだぁ!』とか言っていたやつですよ」
「ああ、アレか」
「お好み焼きも屋台の料理でしたよね、たしか」
「えっ、そうなの?」
ルシアスが首を傾げる。
ミオは「そうですよ!」と語気を強めた。
「私はよく覚えていますよ! だってお好み焼きが登場したDVDは、ルシアス君にアポロ祭を意識させるために私が選んだものですから! タイトルはたしか〈関西のお祭り大特集 令和最新版〉だったはずです!」
「ああ、そういえばそうだったな。あのクソつまんねぇDVDが――ハッ!」
その時、ルシアスに電流が流れた。
全身を突き抜けるような衝撃に襲われる。
それは完璧と言わざるを得ない閃きだった。
「そうか、その手があったんだ」
思わず不気味な笑い声がこぼれる。
「な、何を閃いたのですか!?」
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