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005 バックパックとペットボトル
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「やっぱりそうだ」
銃を乱射するミオの後ろでスマホを眺めていて、ルシアスは気づいた。
「どうしたのですか?」
魔石を回収しながら振り返るミオ。
「ミオが魔物を殺してもポイントがチャージされるようだ」
ルシアスにとって、これは嬉しい誤算だった。
もしもミオの攻撃がポイントに繋がらない場合、節約が必要だ。
彼女には極力攻撃させず、自分の力だけで敵を倒さなくてはならない。
そうしなければポイント不足に陥る可能性が高いからだ。
ルシアスはそのつもりでいた。
ミオの銃はあくまで緊急時のみの使用に限定しよう、と。
しかし、ミオが倒してもポイントがチャージされるなら話は別だ。
「ミオ、予備の弾倉だ。持っていろ。ガンガン敵を倒すぞ」
「はいー!」
二人は適度な距離を保ちつつ、森の中を暴れ回った。
◇
約4時間の戦闘を経て、本日の狩りが終わった。
ルシアスとミオはバックパックを魔石でいっぱいにして帰路に就く。
「このバックパック、たくさん入って便利ですねー!」
「そこらの店に売ってる物より丈夫だし肩も痛くならないな」
二人の背負っているバックパックはスマホで買ったものだ。
そのため、バックパックの両サイドにはドリンクホルダーが付いていた。
「なんですかね? このポケットは」
ミオはドリンクホルダーを手で触る。
「どうやら飲み物を入れるようだ」
スマホの商品説明を見ながらルシアスは答えた。
「飲み物?」
「ペットボトルってのを入れられるらしい」
「なんですか? それ」
「試しに買ってみよう」
ルシアスは飲料水の入ったペットボトルを買ってみた。
「こっちか? 違うな、こっち側に捻るのか……よし、開いたぞ」
手間取りながらもペットボトルの蓋を開ける。
それから水をガバガバと飲んだ。
「すっげー冷たい! 美味い!」
「本当ですか!?」
「飲んでみろ!」
ルシアスはペットボトルをミオに渡す。
ミオはそれを両手で持ち、グビグビと水を飲む。
「冷たくて美味しいです!」
「だろー?」
「それで、この変わった容器がペットボトルですか?」
「どうやらそうみたいだ」
「でも、こんなに大きな物、入らなくないですか?」
「たしかに」
二人はペットボトルをホルダーに入れようとして苦戦する。
しばらく頑張ったが、どうしても入れることができなかった。
その原因はルシアスの買ったペットボトルにある。
容量が2リットルだったのだ。
当然、ドリンクホルダーには大きすぎて収まらない。
「もういい! やめだ!」
結局、ルシアスたちは諦めた。
中の水を飲み干すと、空の容器をバックパックに突っ込んだ。
◇
「クエスト達成おめでとうございます。こちらがクエスト報酬と魔石の買い取り額を合わせたものとなっております」
二人は報酬を受け取り、懐に収める。
「本当に半分も貰っていいのですか?」
「そりゃいいに決まってるだろ。一緒に戦ったんだから」
「でも私、ルシアス君の武器に頼りきりでしたよ」
「そんなの関係ないよ」
「優しいですね、ルシアス君は」
「別に普通のことを言っただけだ。それより明日以降も一緒に組まないか?」
「固定PTのお誘いってことですか?」
「そうだ。今日限りの野良PTで終わるなんて勿体ない。気も合うし固定PTとして今後もやっていこうぜ」
「私でよければ是非!」
こうしてルシアスとミオは末永く共に活動していくことが決まった。
「そうと決まれば今から酒場で祝勝会といこうじゃないか!」
「おー!」
ウキウキで受付カウンターから離れようとする二人。
だがそこへ、とあるPTがやってきた。
「えらく上機嫌じゃねぇか、ルシアス」
そう言って下卑た笑みを浮かべるのはフリッツだ。
かつてルシアスと同じPTだった男である。
「可愛い女の子とPTを組んで上機嫌ってか? 落ちこぼれのくせに」
「わざわざそんな嫌味を言う必要はないだろ。同じ冒険者なんだしさ」
この発言がフリッツの癇に障った。
「同じ冒険者だぁ? ふざけんなよ、てめぇ!」
ルシアスの胸ぐらを掴むフリッツ。
ミオは「あわわわわ」とパニック状態。
「お前みたいなやる気のねぇカスと一緒にしてんじゃねぇよ。俺たちは真面目に冒険者やってんだ。最上位ランクのA級や特殊な功績を挙げた奴だけに認められるS級を目指してな」
フリッツは「まぁいい」とルシアスを突き放す。
「お前は可愛い女の前で雑魚モンスターを相手に格好をつけておけばいい。その間に俺たちは上のランクへ行くからよ。じゃあな、落ちこぼれ野郎」
去っていくフリッツたち。
「待てよ、フリッツ」
ルシアスが呼び止める。
「なんだよ、落ちこぼれ」
「俺を追放してから調子はどうだ?」
「言うまでもなく最高だぜ。今日も複数のクエを回したところだ」
「なるほどな」
ルシアスは「ふっ」と笑い、それからフリッツを睨む。
「見てな、今に追い抜いてやるよ」
「はぁ?」
「落ちこぼれに負ける気分を教えてやるって言ってんだよ」
次の瞬間、フリッツたちは盛大に笑い転げた。
「女の前だからって吹かすのもほどほどにしろよ、落ちこぼれ野郎」
「そんな風に言えるのも今の内だぜ。たしかにお前らには才能があるけれど、俺たちには運がある。お前らの想像が及ばない力でねじ伏せてやるよ」
「ほざいてろ」
フリッツたちは笑いながら歩きだす。
彼らが消えたあと、ルシアスはミオに言った。
「そんなわけだから、明日からはクエストを徹底的にこなすぞ!」
「はい! 頑張りましょう! あんな人らに負けませんよ!」
銃を乱射するミオの後ろでスマホを眺めていて、ルシアスは気づいた。
「どうしたのですか?」
魔石を回収しながら振り返るミオ。
「ミオが魔物を殺してもポイントがチャージされるようだ」
ルシアスにとって、これは嬉しい誤算だった。
もしもミオの攻撃がポイントに繋がらない場合、節約が必要だ。
彼女には極力攻撃させず、自分の力だけで敵を倒さなくてはならない。
そうしなければポイント不足に陥る可能性が高いからだ。
ルシアスはそのつもりでいた。
ミオの銃はあくまで緊急時のみの使用に限定しよう、と。
しかし、ミオが倒してもポイントがチャージされるなら話は別だ。
「ミオ、予備の弾倉だ。持っていろ。ガンガン敵を倒すぞ」
「はいー!」
二人は適度な距離を保ちつつ、森の中を暴れ回った。
◇
約4時間の戦闘を経て、本日の狩りが終わった。
ルシアスとミオはバックパックを魔石でいっぱいにして帰路に就く。
「このバックパック、たくさん入って便利ですねー!」
「そこらの店に売ってる物より丈夫だし肩も痛くならないな」
二人の背負っているバックパックはスマホで買ったものだ。
そのため、バックパックの両サイドにはドリンクホルダーが付いていた。
「なんですかね? このポケットは」
ミオはドリンクホルダーを手で触る。
「どうやら飲み物を入れるようだ」
スマホの商品説明を見ながらルシアスは答えた。
「飲み物?」
「ペットボトルってのを入れられるらしい」
「なんですか? それ」
「試しに買ってみよう」
ルシアスは飲料水の入ったペットボトルを買ってみた。
「こっちか? 違うな、こっち側に捻るのか……よし、開いたぞ」
手間取りながらもペットボトルの蓋を開ける。
それから水をガバガバと飲んだ。
「すっげー冷たい! 美味い!」
「本当ですか!?」
「飲んでみろ!」
ルシアスはペットボトルをミオに渡す。
ミオはそれを両手で持ち、グビグビと水を飲む。
「冷たくて美味しいです!」
「だろー?」
「それで、この変わった容器がペットボトルですか?」
「どうやらそうみたいだ」
「でも、こんなに大きな物、入らなくないですか?」
「たしかに」
二人はペットボトルをホルダーに入れようとして苦戦する。
しばらく頑張ったが、どうしても入れることができなかった。
その原因はルシアスの買ったペットボトルにある。
容量が2リットルだったのだ。
当然、ドリンクホルダーには大きすぎて収まらない。
「もういい! やめだ!」
結局、ルシアスたちは諦めた。
中の水を飲み干すと、空の容器をバックパックに突っ込んだ。
◇
「クエスト達成おめでとうございます。こちらがクエスト報酬と魔石の買い取り額を合わせたものとなっております」
二人は報酬を受け取り、懐に収める。
「本当に半分も貰っていいのですか?」
「そりゃいいに決まってるだろ。一緒に戦ったんだから」
「でも私、ルシアス君の武器に頼りきりでしたよ」
「そんなの関係ないよ」
「優しいですね、ルシアス君は」
「別に普通のことを言っただけだ。それより明日以降も一緒に組まないか?」
「固定PTのお誘いってことですか?」
「そうだ。今日限りの野良PTで終わるなんて勿体ない。気も合うし固定PTとして今後もやっていこうぜ」
「私でよければ是非!」
こうしてルシアスとミオは末永く共に活動していくことが決まった。
「そうと決まれば今から酒場で祝勝会といこうじゃないか!」
「おー!」
ウキウキで受付カウンターから離れようとする二人。
だがそこへ、とあるPTがやってきた。
「えらく上機嫌じゃねぇか、ルシアス」
そう言って下卑た笑みを浮かべるのはフリッツだ。
かつてルシアスと同じPTだった男である。
「可愛い女の子とPTを組んで上機嫌ってか? 落ちこぼれのくせに」
「わざわざそんな嫌味を言う必要はないだろ。同じ冒険者なんだしさ」
この発言がフリッツの癇に障った。
「同じ冒険者だぁ? ふざけんなよ、てめぇ!」
ルシアスの胸ぐらを掴むフリッツ。
ミオは「あわわわわ」とパニック状態。
「お前みたいなやる気のねぇカスと一緒にしてんじゃねぇよ。俺たちは真面目に冒険者やってんだ。最上位ランクのA級や特殊な功績を挙げた奴だけに認められるS級を目指してな」
フリッツは「まぁいい」とルシアスを突き放す。
「お前は可愛い女の前で雑魚モンスターを相手に格好をつけておけばいい。その間に俺たちは上のランクへ行くからよ。じゃあな、落ちこぼれ野郎」
去っていくフリッツたち。
「待てよ、フリッツ」
ルシアスが呼び止める。
「なんだよ、落ちこぼれ」
「俺を追放してから調子はどうだ?」
「言うまでもなく最高だぜ。今日も複数のクエを回したところだ」
「なるほどな」
ルシアスは「ふっ」と笑い、それからフリッツを睨む。
「見てな、今に追い抜いてやるよ」
「はぁ?」
「落ちこぼれに負ける気分を教えてやるって言ってんだよ」
次の瞬間、フリッツたちは盛大に笑い転げた。
「女の前だからって吹かすのもほどほどにしろよ、落ちこぼれ野郎」
「そんな風に言えるのも今の内だぜ。たしかにお前らには才能があるけれど、俺たちには運がある。お前らの想像が及ばない力でねじ伏せてやるよ」
「ほざいてろ」
フリッツたちは笑いながら歩きだす。
彼らが消えたあと、ルシアスはミオに言った。
「そんなわけだから、明日からはクエストを徹底的にこなすぞ!」
「はい! 頑張りましょう! あんな人らに負けませんよ!」
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