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004 スライムゴブリン
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F級クエストを受諾したルシアスとミオは、街を出て狩場に向かっていた。
「ルシアス君、本当に一つだけでよかったのですか?」
「なにがだ?」
「クエストですよ。私が足手まといだから遠慮して一つしか受けなかったんじゃないのですか?」
ルシアスは「馬鹿なことを」と鼻で笑う。
「俺が一つしか受けなかったのは俺のためだ。ミオと同じで俺も落ちこぼれ冒険者なんだぜ。F級のクエストなんて一つこなすだけでも大変さ」
「ならいいのですが……」
「それに今回は俺たち無能組の記念すべき初陣だ。『千里の道も一歩から』って言うように、まずは確実にクエストをこなしていこう」
「はい! ところで、千里の道も一歩からって何ですか?」
「そういうことわざがあるんだよ」
「聞いたことないですよ」
「俺も知ったばかりださ、本を読んでいてね」
ルシアスの言う本とは、アプリ〈電子書籍〉のことだ。
この世界には存在しない無数の小説や漫画をスマホで読める。
ルシアスは夜になると、よく異世界の本を読んでいた。
「ルシアス君は読書家なんですねー。私、文字を読むのは苦手です」
「俺も前まで好きじゃなかったんだけどな。スマホで読める本は面白いんだ」
そう言ってスマホをミオに見せる。
「この変な板にそんな機能があるんですねぇ。不思議だなぁ」
「そんなお間抜けなセリフが言えるのも今の間だけだぜ」
「お間抜けって!」
「見てな、今から分からせてやるよ」
ルシアスはスマホを懐にしまい、アサルトライフルを構える。
目的地の森に到着した。
30メートル級の背の高い木々が乱立する深くて不気味な森だ。
「俺が銃の使い方を教えてやるから、まずは後ろで見ておけ」
「はい!」
ミオの手にもアサルトライフルが握られている。
ルシアスが買い与えたものだ。
「その武器、大事に使えよ。35万もするんだからな」
「35万ゴールドも!?」
「ゴールドじゃない、ポイントだ」
「ポイント……?」
「スマホで買い物をする時に消費される専用の金だ」
「なんとまぁ」
ミオにはルシアスの言の意味がよく分からなかった。
ただ、ポイント=お金、ということは理解している。
それさえ分かれば大丈夫と考え適当に相槌を打った。
「出てきたぞ、敵だ!」
いよいよF級モンスターとのご対面だ。
最初の敵はスライムに跨がる緑の人型モンスター
人型のほうはゴブリンだ。
よってその名は――スライムゴブリン。
見たままである。
ただしこの敵、F級なので注意が必要だ。
実はそれなりに高い火力を誇るスライム。
そして、攻撃力は低いが好戦的なゴブリン。
その二つを併せ持っている。
「ゴブッ!」
ゴブリンが命令すると、スライムが体をプルプルさせる。
次の瞬間、青い半透明の体から液体が放たれた。
「わわわっ!」
液体がミオの胸元をかすめる。
すると、当たった部分の布がじゅわぁと溶けた。
これによって彼女の胸の谷間が露わになる。
「おほっ、いいおっぱい!」
「ちょっとルシアス君!」
「おっと、失敬」
気を取り直してルシアスの攻撃だ。
「まずは照準を敵に定める」
銃口を敵に向けるルシアス。
「それから引き金を引く」
ズドンッ!
強烈な銃声と共にスライムゴブリンが死亡。
「たったこれだけだ」
「わぁー! すんごい! 今のが銃ってやつですか!」
「そう、これがアサルトライフルさ。弓のように高度な技術がなくても、こうして遠距離から攻撃することが可能だ。しかもその火力は凄まじい。見ての通り一撃で敵を殺す」
「わ、私にも同じ事ができるのですか!?」
「もちろん可能さ、アサルトライフルがあればね」
「すごいです! すごいすごい! 私もやってみたいです!」
ミオは鼻息を荒くして興奮する。
だが、この興奮はまだ序の口だった。
ズドンッ!
「わああああ! 本当だ! 倒せた! 倒せましたよ! 倒しちゃった!」
実際にスライムゴブリンを射殺したあとは大興奮だ。
その場でぴょんぴょん跳びはね、くるくる回転している。
彼女の豊満な胸は遺憾なく踊り狂っていた。
「それにしてもルシアス君はすごいですね!」
「すごいのは俺じゃなくてこの武器さ」
「そうじゃなくて、F級の魔物にも怯まなかったじゃないですか!」
「あぁ、それは、まぁな」
「私だったらビビっちゃいますよー!」
「俺には銃があったからな」
たしかにアサルトライフルの存在は大きい。
しかし、ルシアスが怯まなかった理由はそれだけではなかった。
仲間が一緒だからだ。
一人ではないことの安心感が自信にも繋がっていた。
(もう二度と仲間を落胆させないぞ)
銃があれば一人前の活躍ができるはずだ。
今のルシアスは意欲に満ちていた。
「ルシアス君、本当に一つだけでよかったのですか?」
「なにがだ?」
「クエストですよ。私が足手まといだから遠慮して一つしか受けなかったんじゃないのですか?」
ルシアスは「馬鹿なことを」と鼻で笑う。
「俺が一つしか受けなかったのは俺のためだ。ミオと同じで俺も落ちこぼれ冒険者なんだぜ。F級のクエストなんて一つこなすだけでも大変さ」
「ならいいのですが……」
「それに今回は俺たち無能組の記念すべき初陣だ。『千里の道も一歩から』って言うように、まずは確実にクエストをこなしていこう」
「はい! ところで、千里の道も一歩からって何ですか?」
「そういうことわざがあるんだよ」
「聞いたことないですよ」
「俺も知ったばかりださ、本を読んでいてね」
ルシアスの言う本とは、アプリ〈電子書籍〉のことだ。
この世界には存在しない無数の小説や漫画をスマホで読める。
ルシアスは夜になると、よく異世界の本を読んでいた。
「ルシアス君は読書家なんですねー。私、文字を読むのは苦手です」
「俺も前まで好きじゃなかったんだけどな。スマホで読める本は面白いんだ」
そう言ってスマホをミオに見せる。
「この変な板にそんな機能があるんですねぇ。不思議だなぁ」
「そんなお間抜けなセリフが言えるのも今の間だけだぜ」
「お間抜けって!」
「見てな、今から分からせてやるよ」
ルシアスはスマホを懐にしまい、アサルトライフルを構える。
目的地の森に到着した。
30メートル級の背の高い木々が乱立する深くて不気味な森だ。
「俺が銃の使い方を教えてやるから、まずは後ろで見ておけ」
「はい!」
ミオの手にもアサルトライフルが握られている。
ルシアスが買い与えたものだ。
「その武器、大事に使えよ。35万もするんだからな」
「35万ゴールドも!?」
「ゴールドじゃない、ポイントだ」
「ポイント……?」
「スマホで買い物をする時に消費される専用の金だ」
「なんとまぁ」
ミオにはルシアスの言の意味がよく分からなかった。
ただ、ポイント=お金、ということは理解している。
それさえ分かれば大丈夫と考え適当に相槌を打った。
「出てきたぞ、敵だ!」
いよいよF級モンスターとのご対面だ。
最初の敵はスライムに跨がる緑の人型モンスター
人型のほうはゴブリンだ。
よってその名は――スライムゴブリン。
見たままである。
ただしこの敵、F級なので注意が必要だ。
実はそれなりに高い火力を誇るスライム。
そして、攻撃力は低いが好戦的なゴブリン。
その二つを併せ持っている。
「ゴブッ!」
ゴブリンが命令すると、スライムが体をプルプルさせる。
次の瞬間、青い半透明の体から液体が放たれた。
「わわわっ!」
液体がミオの胸元をかすめる。
すると、当たった部分の布がじゅわぁと溶けた。
これによって彼女の胸の谷間が露わになる。
「おほっ、いいおっぱい!」
「ちょっとルシアス君!」
「おっと、失敬」
気を取り直してルシアスの攻撃だ。
「まずは照準を敵に定める」
銃口を敵に向けるルシアス。
「それから引き金を引く」
ズドンッ!
強烈な銃声と共にスライムゴブリンが死亡。
「たったこれだけだ」
「わぁー! すんごい! 今のが銃ってやつですか!」
「そう、これがアサルトライフルさ。弓のように高度な技術がなくても、こうして遠距離から攻撃することが可能だ。しかもその火力は凄まじい。見ての通り一撃で敵を殺す」
「わ、私にも同じ事ができるのですか!?」
「もちろん可能さ、アサルトライフルがあればね」
「すごいです! すごいすごい! 私もやってみたいです!」
ミオは鼻息を荒くして興奮する。
だが、この興奮はまだ序の口だった。
ズドンッ!
「わああああ! 本当だ! 倒せた! 倒せましたよ! 倒しちゃった!」
実際にスライムゴブリンを射殺したあとは大興奮だ。
その場でぴょんぴょん跳びはね、くるくる回転している。
彼女の豊満な胸は遺憾なく踊り狂っていた。
「それにしてもルシアス君はすごいですね!」
「すごいのは俺じゃなくてこの武器さ」
「そうじゃなくて、F級の魔物にも怯まなかったじゃないですか!」
「あぁ、それは、まぁな」
「私だったらビビっちゃいますよー!」
「俺には銃があったからな」
たしかにアサルトライフルの存在は大きい。
しかし、ルシアスが怯まなかった理由はそれだけではなかった。
仲間が一緒だからだ。
一人ではないことの安心感が自信にも繋がっていた。
(もう二度と仲間を落胆させないぞ)
銃があれば一人前の活躍ができるはずだ。
今のルシアスは意欲に満ちていた。
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