無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~

絢乃

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013 夜の海

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「まぁ誰かを選ばなくてはならないって言うなら――」

 女性陣が唾を飲み込む。
 静かな夜にゴクリという音が響いた。

 俺は素早く彼女らの顔を一瞥する。
 三者三様だが、例外なく文句なしの美少女だ。
 容姿で差別化することは難しい。
 となれば……。

「――凛、かな」

「「「えっ」」」

 俺の回答に驚く3人。

「あたし、てっきり陽葵が選ばれるかと思ったよ」

「私も」

 沙耶と凛が言う。

「私は沙耶かなって」と陽葵。

 どうやら凛が選ばれることは予想外だったようだ。

「えっと……どうして、私?」

 凛の顔が赤くなっていた。
 沙耶と陽葵が前のめりになって耳を傾ける。

「だって他の2人は勘違いしちゃいそうじゃん」

「勘違い?」

「俺が空気を読んだってことに気づかないってことだよ」

「えーっと、どゆこと?」

 沙耶が眉間に皺を寄せる。
 俺の言っている意味が分からないようだ。

「質問に答えなかったら白けるだろ? だから誰かを選ぶ必要がある。だが、俺からすると全員同じくらいに魅力的で、誰か1人を決めるのは無理だ。だからって『みんなを選ぶ!』なんて答えたら白けるはず。そこで、3人の中で最も俺の心中を察してくれそうな凛を選んだってわけだ」

 我ながら合理的な判断だ。
 俺は文句なしの回答に大満足する。
 しかし、女性陣は違っていた。

「そっか、そうだよね」と凛。

「それってなんか違うくない?」と陽葵。

「そこは『顔が好み』とかなんとかあるだろー! 楽しみにしていた映画のネタバレを食らったような気分だよ! 今のあたしは!」

 沙耶の喩えがよく分からない。
 いや、もっと言えば、女子たちの反応が理解不能だった。

 しかし、これだけはハッキリしている。
 先ほどの回答は女性陣にはウケなかったということだ。
 予想していた「流石は刹那、天才!」という反応は得られない。
 むしろ不快な気持ちにさせた可能性すらある。

「ご、ごめん……!」

 とりあえず謝る俺。

「刹那が滑り倒したから終了ねー」

 沙耶がカードを回収して箱に戻す。

「じゃ、おやすみー! またねー!」

 あっという間にお開きとなって就寝時間だ。
 まさに終わり良ければ全て良しの反対である。
 終わり悪くて全て最悪だ。

 そんなわけで横になっているのだが、俺は眠れないでいた。

(微妙な空気で終わっちまったよ……)

 コミュニケーション能力の低さを痛感した。
 自分の回答がどうしてダメだったかを何度も検討する。

 そんな時、ラフト内で動きがあった。
 悶々とする俺の隣で眠る沙耶――の隣の凛が体を起こしたのだ。

「ごめんね、ブタ君。ちょっと通るよ」

 凛はラフトのドアを開け、ブタ君の背中に手を当てながら外へ出る。
 音を立てないよう慎重に動いていた。俺たちに配慮しているのだろう。
 ブタ君は気持ちよさそうに「ブピー、ブピー」と寝息を立てている。

(小便か? でも、こんな時間に危険だぞ)

 夜行性の猛獣が徘徊している時間帯だ。
 海辺といえども安全とは限らない。

(もし小便だったら怒られそうだが……やむを得ない)

 俺は凛のあとを追うことにした。

 ◇

「こんな時間にラフトから出るのは危険だぜ」

 背後から声を掛けると、凛は素早く振り返った。

「もしかして起こしちゃった?」

「いや、起きてた。トランプの最後の質問で凛を選んだ理由について、よく分からないけどみんなを白けさせちゃったみたいだからな。同じ轍を踏まないよう振り返っていたんだ」

 凛が口元に手を当てて小さく笑う。

「あれは質問が悪かったから気にしなくていいよ」

 そう言って凛は海に向かう。
 彼女のすぐ隣を歩きつつ、周囲に対する警戒を忘れない。

「たしかに顔や性格が好みって答えるのが無難だけど、刹那がそういう回答をするとは思えない。だから、質問を考えた沙耶や理由を訊いた私の方が悪かったよ。無茶ぶりってやつ。ごめんね」

「とんでもない。俺のほうこそコミュ障ですまんな」

 凛が砂浜に腰を下ろす。俺も座った。
 目の前に広がる夜の海は、月光に照らされていて神秘的だ。
 波打ち際で青い光を放つ夜光虫も雰囲気を良くしていた。

「綺麗だね、この海」

 俺は「だな」と頷き、尋ねる。

「この海を見るためにラフトを抜け出したのか?」

「うん。波の音を聴きながら海を眺めたくてね。夜光虫は予想外だったけど」

 そこで俺たちの会話は途切れた。
 互いに無言でぼんやりと海に視線を向けている。

(そろそろ眠くなってきたな……)

 夜風に頬を撫でられていると微睡まどろんできた。
 そろそろ凛に戻らないか提案しよう。

「凛、そろ――」

「別に私が一番ってわけじゃないのは分かっているけど、それでも私は選んでもらえて嬉しかったよ」

 俺と凛の言葉が被る。
 俺は発言を止め、凛は最後まで言い切った。

「じゃ、戻ろっか? 刹那も今、そう言おうとしていたよね」

「あ、ああ、そうだ」

 凛は立ち上がり、こちらに手を伸ばす。
 俺はその手を掴んで立ち上がった。

「明日も朝から大変なのに付き合ってくれてありがとうね」

「勝手についてきただけさ」

「いつか本当の一番になれるよう頑張るよ」

「えっ? それって、つまり……」

「じゃ、おやすみ」

 凛は俺に背を向けて歩きだす。
 彼女がラフトの中に消えていくまで、俺はその場に佇んでいた。

「もしかして今のって告白か!? ――って、そんなわけないな」

 スクールカースト最上位の凛が俺に告白するはずない。
 逆ならまだしも。

 おそらく「罰ゲームのことは気にするな」という意味なのだろう。
 そう考えると辻褄が合った。

「危ない危ない、誤解するところだったぜ。俺みたいな雑魚はすぐに勘違いして暴走するから気をつけないとな」

 俺もラフトに戻り、眠りに就いた。
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