無人島ほのぼのサバイバル ~最強の高校生、S級美少女達と無人島に遭難したので本気出す~

絢乃

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005 ライフラフトの強化

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 俺たちは海に近づいた。
 先ほど見つけた川に劣らぬ綺麗な透き通った海だ。

 靴とソックスを脱ぎ、海の中を歩いていく。
 足首が浸かったところで止まった。

「鍋として使うのはアレだ」

 改めて指す。
 それは、とても大きくて立派な――。

「貝じゃん!」

 ――そう、貝である。
 とんでもなく大きな殻を持つ貝だ。

「シャコガイといってな、アイツの貝殻が鍋として使える」

 シャコガイは浅海に棲息している。
 その中でも間抜けな個体が打ち上げられていた。
 俺はそれを回収し、強引に貝殻を開き、打製石器で身をほじくり出す。
 身に興味はないので、ぐちゃぐちゃになろうが知ったことではない。

「新鮮なシャコガイなら身も食えるが、コイツは品質に不安があるからポイだ」

 身を捨てて貝殻だけ回収した。
 貝殻の付け根をパカッと折れば完了だ。
 即席の鍋が2つも手に入った。

「これに水を溜めて火にかければ煮沸できる。鍋がない時はこんな感じで自然由来のものを鍋の代わりにするのが基本だ」

「すごっ! 刹那って何者だよ!?」

「なんか同じ高校生とは思えないんだけど」と笑う陽葵。

「本気で神に抗おうとしている人間は強いってことだ」

 ライフラフトの前に戻るなりシャコガイを火にかけた。
 貝殻が大きすぎて、2枚を同時に熱することはできない。
 片方の貝殻は予備に取っておこう。

「沸騰してきたよ」

 凛が貝殻を指す。
 殻に溜めた水が沸々と煮えている。

「これで安全な水の完成だ」

 火傷しないよう、慎重に貝殻を火から離す。
 沸騰が落ち着いても、湯気の勢いは凄まじいままだ。

「水ってかお湯じゃん! 冷ましてもぬるま湯だよ!」

 沙耶が不満そうに唇を尖らす。

「仕方ない、冷蔵庫はないからな」

「やーだー! 冷たい水が飲みたーい!」

「安全を考えたら仕方ないよ」

 そう凛に言われて、沙耶は「むむぅ」と唸った。

「冷たい水は体を冷やすし、ぬるいくらいでちょうどいいぜ」

 俺は貝殻の水をラッパ飲みする。
 十分に冷めたと思ったが、そんなことはなかった。
 想像以上に熱くて口の皮がめくれそうになる。

「どう? いい感じ?」

 そこに凛が尋ねてきたので、

「実にいい感じだ。程よく冷めている。ただ、素人には少し熱すぎるかもな」

 と答えておいた。
 俺は素人だ。

 ◇

 シイタケを食べて、煮沸した水で水分を補給する。
 それらが終わったのは午前10時を過ぎた頃だ。

 俺たちはライフラフトの中でくつろいでいた。

「これからどうするー? どうしちゃうよー?」と沙耶。

「食料調達かな?」

 凛が俺を見る。

「いや、それはまだ早い」

 俺は肩をゴキゴキ鳴らしながらラフトを出た。
 ラフト内は甘い香りが充満していて危険だ。ムラムラする。

「シイタケはすぐ近くに生えているから急ぐ必要がないし、ペットボトルが埋まっているから追加の水も不要だ」

 美少女たちの視線が俺に集まる。
 その顔には「それでそれで?」と書いていた。
 俺は森に目を向ける。

「だからライフラフトを強化しよう」

「強化!? ゲームみたいにレベルアップでもするの?」

 沙耶が茶化す。

「そうできればありがたいのだがな」

 と笑みを浮かべ、俺は答えを言った。

「ラフトの周囲を木で囲むんだよ。今のままだと何かと都合が悪い」

「そうなの?」

「昼は日光のせいで蒸し風呂になりかねないし、夜は獣に破られる危険がある。もしもラフトに穴があこうものなら、中のガスが抜けてペタンコになってしまう。だから木で囲って日よけ&防壁にしようって考えだ」

「「「おー」」」

 なぜか感心された。

「では作業に取りかかろう。俺が木を伐採してくるから、3人は適当にツルを回収しておいてくれ。木を縛るための紐として使う。想像しているより強度があると思うから、打製石器でギコギコして切るといいよ」

「オッケー、あたしらは蔓で刹那は木の伐採ね……って、おかしいでしょ!」

「素晴らしいノリツッコミだ。沙耶はコメディアンの素質があるな」

「そりゃノリツッコミもしちゃうよ!」

「で、俺はなにかおかしなことを言ったか?」

「言ったよ! どうやって伐採するのさ!?」

 凛と陽葵がウンウンと頷いている。

「なんだ、そんなことか」

「刹那君ならきっと裏技で解決するんだよ! シャコガイを鍋の代わりに使ったみたいに!」

「いいや、違うよ陽葵」

「えっ」

 俺は細身の木に近づき、正拳突きを繰り出す。
 木はポキッと折れた。

「こんな感じで普通に殴ってへし折るだけだ。裏技なんてない」

 口をポカンとする陽葵と沙耶。

「普通に殴って折れるほど柔らかくないよ、木って」

 凛が呆れ顔で言う。

「そういうものか。ま、そんなわけだから問題ないさ」

 俺と彼女らの“普通”に差があろうとも関係ない。
 俺は木の伐採を始めた。

 ◇

『円錐状に組んだ木で、ライフラフトのドアがない面を囲む』

 言葉にするとそれだけだが、実際の作業は時間がかかった。
 食事休憩や水分補給を挟んだこともあり、終わった頃には19時だ。
 既に日が暮れており、夜が深まりつつあった。

「これだけ暗いと狼煙が気づかれることはないだろうな」

 ラフトから少し離れた砂浜で狼煙を上げている。
 燃料になっているのは伐採した木の葉っぱだ。
 針葉樹の葉なので、燃やすことで大量の煙が発生している。

「どうにか今日中に完成させることができたな」

 ラフトの傍に作った焚き火でディナーにありつく俺たち。
 内容はこれまでと変わらず焼いたキノコだ。
 あと、近くの木に生えていた大きな果物も。
 名前は分からないが、真っ白な果肉は甘くて美味しい。

「もうヘトヘトだー!」

 焼いたキノコを頬張る沙耶。

「どれだけ洗っても手に緑の臭いが染みついて嫌だなぁ」

 陽葵は指先をクンクン嗅いでは顔を歪ませていた。

「思ったんだけど、こうして木で囲むなら、別にライフラフトがなくても住居に困らなかったんじゃない?」

 凛が訊いてくる。
 沙耶と陽葵が「たしかに」と頷いた。
 しかし、俺は「それでもないよ」と否定する。

「砂の上で寝るのとラフトの中で寝るのとでは快適さが段違いだ。それに、ラフトだったらドアを閉めることである程度の虫除けになる。この島は蚊が全くいないけど、小さな虫は他にもたくさんいるからな」

「なるほど」

「特に雨の日なんかはラフトだと快適で――って、おや?」

 話している最中のことだった。
 月の光を反射する神秘的な海から何かがやってくるのだ。

 それは最初、人の乗った小舟に見えた。
 しかし、近づいてくるにつれて違うと分かった。

「刹那、アレって、もしかして……」

 凛が顔を強張らせる。

「ああ、イノシシだ」

 猛スピードで向かってきているのは巨大イノシシだった。
 朝方に俺が回し蹴りで吹き飛ばした奴だ。
 驚くことに海を泳いで戻ってきやがった。

「なんと執念深い奴だ。いいだろう、神の鉄槌を下してやる。審判の時だ!」

「刹那、中二病、中二病」

 凛に指摘されたので、神の鉄槌云々を「成敗してやる」に修正した。

「かかってこい!」

 ファイティングポーズで構える俺。
 一目散に突っ込んでくる巨大イノシシ。
 そして俺たちは激しく激突する――はずだった。

「「「「えっ」」」」

 誰もが驚く。
 俺ですらも驚いた。

 なんと巨大イノシシが俺たちの前でひっくり返ったのだ。
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