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025 無人島生活7日目
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視界がクリアになった時、そこに広がっていたのは――。
「晴れたぁあああああ!
雨が止み風の落ち着いた世界だった。
「朝から元気だなぁ雅人君はぁ……って晴れているじゃん!」
伊織は「うおおおおお!」と飛び起きた。
「平和が帰ってきたぞー!」
「やったー!」
家から出て全裸で飛び跳ねる俺たち。
勢い余って裸足で出たため、足の裏が泥で汚れてしまう。
雨は止んでも足下のぬかるみは残っていた。
「昨日はどうなるかと思ったが……これで再び活動できるな!」
「うん!」
島からの脱出を目指す生活の再開だ。
◇
まずは食料調達を行った。
南の森に行き、これでもかと果物を詰める。
今日も今日とて暑いため半裸だ。
日焼け止めがほしい今日この頃である。
また、伊織も上はブラのみだった。
中途半端に脱いでいるほうがそそられるのは内緒だ。
「ウキィ!」
欲張りな俺たちを威嚇してくる猿。
だが、それは毎度のことなので慣れていた。
「うるせー! 俺たち人間は食いしん坊なんだよ!」
言葉が通じているとは思えないが、雰囲気で伝わるのだろう。
猿はなにくそとばかりに吠え返してくる。
「ごめんね、ちょっとだけ分けてもらうね」
「ウキキィ♪」
伊織が割って入ると、猿はあっさり落ち着いた。
ここの猿どもは俺と伊織で態度が大違いだ。
近づいてくるのがオスばかりだからだろう。
学校一の美少女は人のみならず猿までメロメロにさせるのだ。
「それにしても今日は動物が多いな」
「雨が上がるのを待っていたのは私たちだけじゃなかったんだね」
「そのようだ」
南の森はいつになく賑わっていた。
どの木を見渡しても小動物がいて、食事を堪能している。
「見ろよ伊織、シマリスが水分補給をしているぜ」
俺はすぐ傍の木を指した。
可愛らしいシマリスが葉に滴る水をチロチロと舐めている。
「きゃわいい!」
伊織も大興奮だ。
「お?」
足下に目を向けるとアナグマがいた。
地面を顔で突くようにしながらウロウロしている。
エサを探しているようだ。
「ジュルリ……!」
アナグマを見ていると涎が出てきた。
前にオオカミからもらったご馳走を思い出す。
「この島で食べた何よりも美味しかったよねー」
伊織も口の端に涎を垂らしていた。
「よし捕獲しよう」
「えぇ! アナグマを!?」
「だってそこにご馳走がいるんだぜ!」
「でも雅人君、あんな可愛い動物を殺せるの……?」
俺は再びアナグマを見た。
背中が痒いのかクルリンと前転を披露していた。
うり坊のようにも見える可愛らしい顔付きで。
「…………」
俺は何も言わずに凝視し、それから答えた。
「余裕だな! 迷わず捌けるぜ!」
やはりご馳走には代えがたい。
この世は弱肉強食だ。
「鬼ね」
伊織は眉間に皺を寄せた。
◇
結局、アナグマを捕獲することはなかった。
伊織が「人でなしの所業だぞ」と喚いたから――とかではない。
むしろ彼女も食べたがっていて、「私は手伝わないけど食べるから」などと自己中極まりないことをぬかしていた。
それでも捕獲しなかったのは逃げられたからに過ぎない。
いざ捕まえようとした時、アナグマはスッと巣穴に逃げ込んだ
近くの木の根っこ付近にあった穴が奴の根城だった。
「あーあ、雅人君のせいでご馳走を食べ損ねたよ!」
「汚い仕事を俺に押しつけておいて酷い言い草だぜ」
家に戻った俺たちは、脱出に向けてパドルの製作を行っていた。
昨日までに作ったパドルは1本だけなので、最低でもあと3本は欲しい。
使うのは各1本の計2本だが、予備としてさらに2本ほど必要だ。
航海中にパドルを落としても大丈夫なように。
「それにしても今日は調子いいな」
「だねー! もうできちゃったよ! 2本目のパドル! これで残り2本!」
2時間ほどで本日最初のパドルが完成した。
明らかに前回よりも作業効率が向上している。
丸1日休んだおかげで体力が回復したのだろう。
あと、大工道具の扱いに慣れてきたのも関係していそうだ。
その後の作業では、さらに効率が上がった。
3本目は約1時間45分、4本目は1時間半ほどで完成したのだ。
全て俺たちの体感時間――感覚での話だが、おおむね合っているはず。
「パドル製作しゅーりょー!」
「お疲れさん!」
そんなこんなで、今日の作業が終了した。
家の前で伊織とハイタッチを行う。
「ちょっと時間が余ったねー」
「たぶん16時くらいだよな、今」
「だと思う!」
俺たちの体内時計は驚くほど正確だ。
島で暮らしている内におのずとそうなっていた。
太陽の位置や陽射しの強さから無意識に判断しているのだろう。
例えば今は、少し前に比べて明らかに陽射しが弱まっている。
そういったことから「1日のピークが過ぎたな」と分かるわけだ。
わざわざ日時計を作って確認するまでもなかった。
「この空いた時間で何をしようか」
「舟でも作っちゃう?」
「いや、それは明日以降にしよう。パドルの製作で疲労している。それに、舟は海の近くで作りたい」
「そっか、ここで作ったら運搬が大変だもんね」
「他にも色々と運ぶことになるしな」
船出の際は大量の食糧を持っていく。
特に飲み水は飲み水は相当な量が必要になる。
「じゃあ昨日に引き続き○×ゲームでもする?」
伊織がニヤリと笑う。
俺は即座に「嫌だよ」と苦笑いで返した。
「別にこのまま家で休んでもいいけど、一刻も早く島を脱出したいからもう少しだけ頑張って働こう。ちょうどいい軽めの作業がある」
「ちょうどいいのって?」
「アレだ」
俺は家の西側に見える竹林を指した。
「晴れたぁあああああ!
雨が止み風の落ち着いた世界だった。
「朝から元気だなぁ雅人君はぁ……って晴れているじゃん!」
伊織は「うおおおおお!」と飛び起きた。
「平和が帰ってきたぞー!」
「やったー!」
家から出て全裸で飛び跳ねる俺たち。
勢い余って裸足で出たため、足の裏が泥で汚れてしまう。
雨は止んでも足下のぬかるみは残っていた。
「昨日はどうなるかと思ったが……これで再び活動できるな!」
「うん!」
島からの脱出を目指す生活の再開だ。
◇
まずは食料調達を行った。
南の森に行き、これでもかと果物を詰める。
今日も今日とて暑いため半裸だ。
日焼け止めがほしい今日この頃である。
また、伊織も上はブラのみだった。
中途半端に脱いでいるほうがそそられるのは内緒だ。
「ウキィ!」
欲張りな俺たちを威嚇してくる猿。
だが、それは毎度のことなので慣れていた。
「うるせー! 俺たち人間は食いしん坊なんだよ!」
言葉が通じているとは思えないが、雰囲気で伝わるのだろう。
猿はなにくそとばかりに吠え返してくる。
「ごめんね、ちょっとだけ分けてもらうね」
「ウキキィ♪」
伊織が割って入ると、猿はあっさり落ち着いた。
ここの猿どもは俺と伊織で態度が大違いだ。
近づいてくるのがオスばかりだからだろう。
学校一の美少女は人のみならず猿までメロメロにさせるのだ。
「それにしても今日は動物が多いな」
「雨が上がるのを待っていたのは私たちだけじゃなかったんだね」
「そのようだ」
南の森はいつになく賑わっていた。
どの木を見渡しても小動物がいて、食事を堪能している。
「見ろよ伊織、シマリスが水分補給をしているぜ」
俺はすぐ傍の木を指した。
可愛らしいシマリスが葉に滴る水をチロチロと舐めている。
「きゃわいい!」
伊織も大興奮だ。
「お?」
足下に目を向けるとアナグマがいた。
地面を顔で突くようにしながらウロウロしている。
エサを探しているようだ。
「ジュルリ……!」
アナグマを見ていると涎が出てきた。
前にオオカミからもらったご馳走を思い出す。
「この島で食べた何よりも美味しかったよねー」
伊織も口の端に涎を垂らしていた。
「よし捕獲しよう」
「えぇ! アナグマを!?」
「だってそこにご馳走がいるんだぜ!」
「でも雅人君、あんな可愛い動物を殺せるの……?」
俺は再びアナグマを見た。
背中が痒いのかクルリンと前転を披露していた。
うり坊のようにも見える可愛らしい顔付きで。
「…………」
俺は何も言わずに凝視し、それから答えた。
「余裕だな! 迷わず捌けるぜ!」
やはりご馳走には代えがたい。
この世は弱肉強食だ。
「鬼ね」
伊織は眉間に皺を寄せた。
◇
結局、アナグマを捕獲することはなかった。
伊織が「人でなしの所業だぞ」と喚いたから――とかではない。
むしろ彼女も食べたがっていて、「私は手伝わないけど食べるから」などと自己中極まりないことをぬかしていた。
それでも捕獲しなかったのは逃げられたからに過ぎない。
いざ捕まえようとした時、アナグマはスッと巣穴に逃げ込んだ
近くの木の根っこ付近にあった穴が奴の根城だった。
「あーあ、雅人君のせいでご馳走を食べ損ねたよ!」
「汚い仕事を俺に押しつけておいて酷い言い草だぜ」
家に戻った俺たちは、脱出に向けてパドルの製作を行っていた。
昨日までに作ったパドルは1本だけなので、最低でもあと3本は欲しい。
使うのは各1本の計2本だが、予備としてさらに2本ほど必要だ。
航海中にパドルを落としても大丈夫なように。
「それにしても今日は調子いいな」
「だねー! もうできちゃったよ! 2本目のパドル! これで残り2本!」
2時間ほどで本日最初のパドルが完成した。
明らかに前回よりも作業効率が向上している。
丸1日休んだおかげで体力が回復したのだろう。
あと、大工道具の扱いに慣れてきたのも関係していそうだ。
その後の作業では、さらに効率が上がった。
3本目は約1時間45分、4本目は1時間半ほどで完成したのだ。
全て俺たちの体感時間――感覚での話だが、おおむね合っているはず。
「パドル製作しゅーりょー!」
「お疲れさん!」
そんなこんなで、今日の作業が終了した。
家の前で伊織とハイタッチを行う。
「ちょっと時間が余ったねー」
「たぶん16時くらいだよな、今」
「だと思う!」
俺たちの体内時計は驚くほど正確だ。
島で暮らしている内におのずとそうなっていた。
太陽の位置や陽射しの強さから無意識に判断しているのだろう。
例えば今は、少し前に比べて明らかに陽射しが弱まっている。
そういったことから「1日のピークが過ぎたな」と分かるわけだ。
わざわざ日時計を作って確認するまでもなかった。
「この空いた時間で何をしようか」
「舟でも作っちゃう?」
「いや、それは明日以降にしよう。パドルの製作で疲労している。それに、舟は海の近くで作りたい」
「そっか、ここで作ったら運搬が大変だもんね」
「他にも色々と運ぶことになるしな」
船出の際は大量の食糧を持っていく。
特に飲み水は飲み水は相当な量が必要になる。
「じゃあ昨日に引き続き○×ゲームでもする?」
伊織がニヤリと笑う。
俺は即座に「嫌だよ」と苦笑いで返した。
「別にこのまま家で休んでもいいけど、一刻も早く島を脱出したいからもう少しだけ頑張って働こう。ちょうどいい軽めの作業がある」
「ちょうどいいのって?」
「アレだ」
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