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016 武器の新調

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 その日、珍しいことにヤスヒコは待つ側だった。
 PT仲間であるメグたちの到着を。
 距離の都合により、普段のヤスヒコは待たせる側だ。

「待っている間に新しい武器を買っておくか」

 武器を新調するにあたり、ヤスヒコは既存の武器を売ることにした。
 アイスブレードは全魔力を使用するため、新しい武器との併用ができない。

 武器を売る方法は二つある。
 一つはギルド内の買取専門店で業者に売る。
 もう一つは〈ハンターズ〉等のアプリを使って個人間で取引する。

 高く売れるのは後者だ。
 物にもよるが、概ね店売りの倍近い価格になる。
 ただし時間がかかるため、ヤスヒコは店で売ることにした。

「これだと1万8000円だね」

 買取店の店主は1分もかけずに査定を済ませた。
 初心者用の武器は毎日買い取っているため見飽きている。

「1万8000円か……分かりました。ならそれで」

 ヤスヒコのアイスブレードは8万円で買った物。
 しかしそれはセール価格であり、定価は10万円だ。
 買取額は定価の20%にも満たなかった。

 魔力100の武器は不評なので査定額が安くなるためだ。
 これが魔力70の武器であれば、定価の20%は確実だった。

 ◇

 ヤスヒコは武器を二つ買うことにした。
 サナの戦闘を見ていて二刀流に興味を持ったのだ。

 しかし、ゲームと違って二刀流には欠点があった。

 防具を装備できないことだ。
 ダンジョン武器の【魔力】の下限が50と決まっているから。

 必然的に、二刀流では魔力50の武器を二つ装備することになる。
 この時点で魔力の合計値が100に達する。
 どう足掻いても防具を装備する余裕がなくなるのだ。

 無論、魔力の合計値を無視して防具を装備してもかまわない。
 ただ、そんなことをすると装備の効果が大幅に落ちてしまう。
 武器はなまくらになり、防具はガラス細工のように柔らかくなる。

 それでも、ヤスヒコは二刀流でいくことにした。
 防具の恩恵を全く理解していなかったからだ。
 回避するから防具は必要ない……そうヤスヒコは考えていた。

「以上2点で125万円になります」

「115万に値下げしてもらえませんか?」

「120万であれば……」

「ならそれで」

 こうして、ヤスヒコはDランクの武器を二つ購入した。
 光属性の弓と雷属性のサーベルだ。

 前回とは異なる店で購入した。
 武器の専門店で、Dランクまでの幅広い武器を取り扱っている。
 先日、サナに「ヤスヒコ君の性格に合うと思う」とオススメされた店だ。

 実際、この店はヤスヒコの性格に合っていた。
 何がというと、武器の名前が非常に分かりやすいのだ。

 例えばヤスヒコの買った弓の名前は「光の弓D50」である。
 もちろんサーベルの名前は「雷のサーベルD50」だ。
 なんと武器名に【属性】【ランク】【魔力】が記載されている。
 いちいち性能表を見なくてもいい親切設計なのだ。

 ピロロン♪

 スマホで決済を行っていると、メグからメッセージが届いた。

『ロビーに着いたけどヤスヒコいないじゃん! どこ!?』

 ヤスヒコは購入した武器を装備してから返信した。

『武器を買っていた。今から向かう』

『じゃあスタバでコーヒー買ってきて! 私のはフラペチーノね!』

『いいよ。ところでスタバってどこにあるの?』

『いや冗談だから! 何も買わずに早く来て!』

『ほい』

 ヤスヒコは言われた通り駆け足で向かった。
 素直な男である。

 ◇

「遅いよヤスヒコ!」

 ヤスヒコがロビーに着くなり、メグが声を上げた。
 小さく跳ねて大きな胸をわざとらしく揺らしている。
 周囲の男子はスケベな顔でチラチラ見ていた。
 もちろんヤスヒコもにんまりしている。

「むぅ」

 嫉妬したサナが負けじと飛び跳ねる。
 メグには劣るが、彼女の胸もEカップと大きい。
 なのでボインボインと揺れていた。

「すまん、待たせることになるとは思わなかった」

 ヤスヒコは合流すると、女性陣を一人ずつ見た。
 ニィと笑うメグに、プクッと頬を膨らますサナ。
 そして――。

「君が噂のヤスヒコか!」

 三人目の女。
 メグやサナより少しだけ背が高く、髪は赤のミディアムショート。
 胸は控え目で、顔はメグやサナと違って美人系だ。

「はじめまして、アキだ!」

 アキはヤスヒコに手を差し伸べた。
 メグと同じガントレットを着けている。
 脚には脛当てレガースを装備していた。

「どうも」

 ヤスヒコはアキと握手を交わす。
 その際、彼はアキの両脇にある武器を見た。
 先端が半月状の刃になっているナックルだ。

「メグの言っていた通り武闘家タイプなんだな」

「自分で言うのもなんだけど、私……強いよ?」

 ヤスヒコは「だろうな」と真顔で答えた。

「刀剣を使える環境の中でナックルを使うのは腕に自信がある証拠だ」

「その通り! 二人が褒めまくるだけあって分かってるね!」

 アキは嬉しそうに笑った。

「まーまー、二人とも、顔合わせも済んだしダンジョンに行こうよ! 喋るのは狩りながらでも大丈夫っしょ! 人数が増えた分たくさん稼がないとダメなんだからさ!」

 メグがパニックロッドを振り回す。
 ヤスヒコとアキは「だな」と同意した。

「それでは、レベル14のダンジョンにしゅっぱーつ! ガンガン倒してガンガン稼ぐぞー! 高校卒業と同時にFIREだー!」

「戦うのは俺だけどな」

 先頭を歩くメグ。
 その後ろに他の三人が続く。

「今日は私もいるから安心していいぞヤスヒコ!」

 アキは嬉しそうにナックルを装備した。
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