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002 プロローグ②
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ヤスヒコが「可愛い」と食いついた女子高生レイナ。
彼女はテレビでも活躍しており、番組の企画で全国の高校を回っていた。
その一環で選ばれたのが、ヤスヒコも通う大阪の私立校だ。
(そろそろか……!)
授業中、ヤスヒコは壁に掛かっている時計を何度も確認していた。
教師からの事前説明で、レイナが来るのは11時過ぎだと判明している。
その時が待ち遠しかった。
キーンコーン、カーンコーン。
11時05分になり、三時間目の授業が終了。
ヤスヒコだけでなく他の生徒もレイナを心待ちにしていた。
『全校生徒の皆さん、武器はロッカーにしまいましょう。テレビ局の方々が来た時に武器を出していた生徒は停学処分となりますのでご注意ください』
放送が流れる。
既に大半の生徒がロッカーに収納済みだ。
ただし――。
(やべっ)
ヤスヒコは忘れていた。
腰に装備している鉈を慌ててロッカーにぶち込む。
それが終わって一息ついていると、廊下から歓声が上がった。
「レイナだ!」
誰かが叫んだ。
その声によって、皆が廊下に飛び出す。
ヤスヒコも一目見ようと続いた。
(クソッ、見えねぇ)
動き出しが遅かったヤスヒコは窓に近づくことすらできなかった。
168センチの身長では、生徒の頭越しに見ることもできない。
『全校生徒の皆さん、これよりテレビ番組の撮影を開始しますので、速やかに教室へ戻り、席について待機してください』
放送が流れると担任の教師がやってきて、放送内容と同じセリフを言う。
ヤスヒコたちは興奮冷めやらぬ様子で席に着いた。
「この学校では冒険者の育成に力を入れているということで、武器を所持して登校することが認められています!」
女の声が廊下に響く。
複数の生徒が「レイナの声だ」と大興奮。
それでヤスヒコにも誰の声か分かった。
「そしてここが教室です! えーっと、二年三組ですね! 入ってみましょうか!」
レイナの言葉に、ヤスヒコのクラスは割れんばかりの声を上げた。
二年三組は彼の所属するクラスなのだ。
「失礼しまーす!」
扉が開き、マイクを持ったレイナが姿を現す。
純白のワンピース姿で、動画と同じく艶やかな髪をしている。
「「「レイナだああああああああ!」」」
男子が叫ぶ。
「可愛すぎる!」
「本当に私らと同じ高二!?」
「顔の大きさがウチらと違い過ぎない!?」
女子もキャーキャーと騒ぐ。
そんな中、ヤスヒコはというと。
(動画を軽く超えてきた……!)
レイナの可愛さに声を失っていた。
ユウイチの言う「無加工」とは本当だったのだ。
同じ次元に存在する生き物とは思えないほどだった。
「こんにちは、皆さん! レイナです!」
レイナが教壇に立って挨拶する。
それに対して、生徒たちは興奮して好き好きに叫ぶ。
動物園で盛っている猿よりもうるさい有様だった。
「すごい勢いですね!」
カメラに向かって「あはは」と笑うレイナ。
そんな彼女に、カメラマンの後ろにいる男がカンペを見せる。
カンペには『インタビュー。生放送なので無難な子で』と書いてあった。
「それでは! 生徒の方にインタビューをしたいと思います!」
レイナは教室内を見回し、誰に声を掛けようか考える。
理想は最低限の返答だけしてくれる地味なタイプだ。
興奮して長話をされたり、緊張して無言になられたりすると面倒くさい。
イジメられているタイプもダメだ。
(あの男子が良さそう!)
悩んだ末に彼女が目を付けた相手は――ヤスヒコだった。
ジッとレイナを見ているが、他の生徒と違って静かにしている。
イジメられているような雰囲気でもない。
窓際の最前列に座っているのもポイントが高い。
視聴者から「一番前の席にいるから選んだ」と思われるから。
「お話を伺ってもいいですかー?」
レイナはヤスヒコに近づいた。
「もちろん」
マイクを向けられたヤスヒコは無表情で答えた。
「この学校では冒険者の育成に力を入れているとのことですが、何か特別な授業は行われているのでしょうか?」
レイナは答えを知っていて聞いていた。
ヤスヒコの学校では戦闘訓練という特別な授業がある。
しかし、ヤスヒコの答えは彼女の予想だにしないものだった。
「冒険者って?」
ヤスヒコは冒険者が何か知らなかったのだ。
なので純粋な質問だったが、レイナは振りだと捉えた。
(高齢の視聴者にも分かるよう振ってくれたのね! 気が利くじゃない!)
ヤスヒコを選んで良かったと思いつつ、レイナは答えた。
「冒険者とは、ダンジョンに棲息する魔物を倒し、持ち帰った魔石の売却によって生計を立てている方のことです! この10年くらいで法整備がされて、今では人気の高い職業になっています!」
「なるほど。それを冒険者と言うんだ」
「はい! こちらの学校では冒険者の育成に力を入れているとのことですが、何か特別な授業などをされているのであれば教えていただけませんか?」
改めて質問するレイナ。
「戦闘訓練という授業があるよ」
ヤスヒコはレイナの求めていた回答をした。
「戦闘訓練!? それってどんなことをするのですか!?」
予め考えていた反応をするレイナ。
周りの生徒は羨ましそうにヤスヒコを見ている。
「ごめん、俺には分からない」
「え?」
「自由参加だからいつも休んでいるんだ」
「なるほど……」
最後の最後で、ヤスヒコの回答はレイナの思惑と違っていた。
とはいえ、既に問題ないところまで話を進められている。
あとは担任の教師から戦闘訓練について聞けば終わりだ。
「それでは戦闘訓練については先生に――」
「その前に一ついいかな?」
離れようとするレイナをヤスヒコが止めた。
「どうしたのですか?」
レイナは心の中で舌打ちした。
生放送中に面倒くさいことは起こさないでよ、と祈る。
しかし、彼女の祈りは通じなかった。
「君に一目惚れしてしまった。俺と付き合ってほしい」
なんとヤスヒコ、生放送中にも関わらず告白したのだ。
彼女はテレビでも活躍しており、番組の企画で全国の高校を回っていた。
その一環で選ばれたのが、ヤスヒコも通う大阪の私立校だ。
(そろそろか……!)
授業中、ヤスヒコは壁に掛かっている時計を何度も確認していた。
教師からの事前説明で、レイナが来るのは11時過ぎだと判明している。
その時が待ち遠しかった。
キーンコーン、カーンコーン。
11時05分になり、三時間目の授業が終了。
ヤスヒコだけでなく他の生徒もレイナを心待ちにしていた。
『全校生徒の皆さん、武器はロッカーにしまいましょう。テレビ局の方々が来た時に武器を出していた生徒は停学処分となりますのでご注意ください』
放送が流れる。
既に大半の生徒がロッカーに収納済みだ。
ただし――。
(やべっ)
ヤスヒコは忘れていた。
腰に装備している鉈を慌ててロッカーにぶち込む。
それが終わって一息ついていると、廊下から歓声が上がった。
「レイナだ!」
誰かが叫んだ。
その声によって、皆が廊下に飛び出す。
ヤスヒコも一目見ようと続いた。
(クソッ、見えねぇ)
動き出しが遅かったヤスヒコは窓に近づくことすらできなかった。
168センチの身長では、生徒の頭越しに見ることもできない。
『全校生徒の皆さん、これよりテレビ番組の撮影を開始しますので、速やかに教室へ戻り、席について待機してください』
放送が流れると担任の教師がやってきて、放送内容と同じセリフを言う。
ヤスヒコたちは興奮冷めやらぬ様子で席に着いた。
「この学校では冒険者の育成に力を入れているということで、武器を所持して登校することが認められています!」
女の声が廊下に響く。
複数の生徒が「レイナの声だ」と大興奮。
それでヤスヒコにも誰の声か分かった。
「そしてここが教室です! えーっと、二年三組ですね! 入ってみましょうか!」
レイナの言葉に、ヤスヒコのクラスは割れんばかりの声を上げた。
二年三組は彼の所属するクラスなのだ。
「失礼しまーす!」
扉が開き、マイクを持ったレイナが姿を現す。
純白のワンピース姿で、動画と同じく艶やかな髪をしている。
「「「レイナだああああああああ!」」」
男子が叫ぶ。
「可愛すぎる!」
「本当に私らと同じ高二!?」
「顔の大きさがウチらと違い過ぎない!?」
女子もキャーキャーと騒ぐ。
そんな中、ヤスヒコはというと。
(動画を軽く超えてきた……!)
レイナの可愛さに声を失っていた。
ユウイチの言う「無加工」とは本当だったのだ。
同じ次元に存在する生き物とは思えないほどだった。
「こんにちは、皆さん! レイナです!」
レイナが教壇に立って挨拶する。
それに対して、生徒たちは興奮して好き好きに叫ぶ。
動物園で盛っている猿よりもうるさい有様だった。
「すごい勢いですね!」
カメラに向かって「あはは」と笑うレイナ。
そんな彼女に、カメラマンの後ろにいる男がカンペを見せる。
カンペには『インタビュー。生放送なので無難な子で』と書いてあった。
「それでは! 生徒の方にインタビューをしたいと思います!」
レイナは教室内を見回し、誰に声を掛けようか考える。
理想は最低限の返答だけしてくれる地味なタイプだ。
興奮して長話をされたり、緊張して無言になられたりすると面倒くさい。
イジメられているタイプもダメだ。
(あの男子が良さそう!)
悩んだ末に彼女が目を付けた相手は――ヤスヒコだった。
ジッとレイナを見ているが、他の生徒と違って静かにしている。
イジメられているような雰囲気でもない。
窓際の最前列に座っているのもポイントが高い。
視聴者から「一番前の席にいるから選んだ」と思われるから。
「お話を伺ってもいいですかー?」
レイナはヤスヒコに近づいた。
「もちろん」
マイクを向けられたヤスヒコは無表情で答えた。
「この学校では冒険者の育成に力を入れているとのことですが、何か特別な授業は行われているのでしょうか?」
レイナは答えを知っていて聞いていた。
ヤスヒコの学校では戦闘訓練という特別な授業がある。
しかし、ヤスヒコの答えは彼女の予想だにしないものだった。
「冒険者って?」
ヤスヒコは冒険者が何か知らなかったのだ。
なので純粋な質問だったが、レイナは振りだと捉えた。
(高齢の視聴者にも分かるよう振ってくれたのね! 気が利くじゃない!)
ヤスヒコを選んで良かったと思いつつ、レイナは答えた。
「冒険者とは、ダンジョンに棲息する魔物を倒し、持ち帰った魔石の売却によって生計を立てている方のことです! この10年くらいで法整備がされて、今では人気の高い職業になっています!」
「なるほど。それを冒険者と言うんだ」
「はい! こちらの学校では冒険者の育成に力を入れているとのことですが、何か特別な授業などをされているのであれば教えていただけませんか?」
改めて質問するレイナ。
「戦闘訓練という授業があるよ」
ヤスヒコはレイナの求めていた回答をした。
「戦闘訓練!? それってどんなことをするのですか!?」
予め考えていた反応をするレイナ。
周りの生徒は羨ましそうにヤスヒコを見ている。
「ごめん、俺には分からない」
「え?」
「自由参加だからいつも休んでいるんだ」
「なるほど……」
最後の最後で、ヤスヒコの回答はレイナの思惑と違っていた。
とはいえ、既に問題ないところまで話を進められている。
あとは担任の教師から戦闘訓練について聞けば終わりだ。
「それでは戦闘訓練については先生に――」
「その前に一ついいかな?」
離れようとするレイナをヤスヒコが止めた。
「どうしたのですか?」
レイナは心の中で舌打ちした。
生放送中に面倒くさいことは起こさないでよ、と祈る。
しかし、彼女の祈りは通じなかった。
「君に一目惚れしてしまった。俺と付き合ってほしい」
なんとヤスヒコ、生放送中にも関わらず告白したのだ。
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