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015 休日
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たった3人のPTでブラックライオンを倒す。本来ならそれは騒がれて然るべきことだったが、ギルドでそのことを話題にする者はいなかった。
龍斗たちが誰にも話さなかったからだ。だから、彼らの活躍を知っているのは受付嬢のみである。その受付嬢も守秘義務の関係で他言できなかった。
何度目かのブラックライオンを狩ったある日、ギルドを出たところで仁美が言った。
「ここに居る人の大半が私たち以下なんだよね、レベルも稼ぎも」
「まぁそうだろうな。周辺に高レベルの魔物が全くいないし、レベルの高い冒険者は別のギルドで活動しているはずだ。ここの連中は細く長くのらりくらりと稼ぐタイプが主流さ。だからラクスルーのメンバーが多い」
「私は太く短くがいいけどなぁ」
「ポポロもなのです! 人生は一度きり、色々なことに挑戦したいのです!」
「エルフの平均寿命って950歳とかだろ? それでそんなこと言うとか、ポポロは貪欲だな」
「えへへなのです」
そこで会話が止まる。駐車場に到着したからだ。
「それじゃ、私はポポロを送ってから帰るね」
「了解。念の為に言っておくけど、明日と明後日は休みだからな」
「そっか、明日って土曜日なんだ」
「そういうこと。だから二人もしっかり休暇を満喫しておいてくれ」
「ほいほい。で、龍斗はどう過ごす予定なの? なんだったらお姉さんとデートする?」
「そうしたいのは山々だが……」
「山々なんだ!? 別にいいけど」
仁美の頬がポッと赤くなる。
それに気づかないまま、龍斗は続きを言った。
「生憎ながら俺は大阪に行くんだ」
「大阪? 本場の凄腕冒険者を見たいとか?」
冒険者稼業が最も賑わっている場所――それが大阪だ。仁美のような短期間でがっつり稼いでやると意気込む者が多く、若者の半数以上が冒険者として活動した経験を持っている。
「そんなところかな。ただ、普通に旅行がてら行ってみたいって気持ちもあるんだ。実は群馬以外に旅行したことがないから」
前世で住んでいた場所を旅行先と偽る龍斗。流石に「今は二度目の人生なんです」と言っても信じてもらえないから仕方なかった。
「なるほどねー。一緒に行く?」
「いいや、今回は一人旅にするよ。そういう気分なんだ」
「りょーかい。そんじゃ、私とポポロにお土産よろしくねー!」
◇
翌日、龍斗は10時発の新幹線に搭乗した。
「やっぱ新幹線だよなー、飛行機なんてドラゴンが怖くて乗れないよ」
大阪に想いを馳せる龍斗の後ろで、おっさんが何やら言っている。誰かと話しているのかなと思って龍斗が振り向くと、驚くことに独り言だった。
(そういえば新幹線って魔物に襲われたことがないんだっけか)
新幹線の線路は魔物の棲息地を避けるように引かれている。線路上を警備会社が巡回しているということもあり、新幹線では魔物に関する事故が一度も起きていなかった。
「次は京都ー」
外の景色を楽しんでいるとアナウンスが流れた。
「降りないとな」
龍斗の切符は京都までだ。大阪へ行く前に京都にも寄り道しておこうと思った。行きたいところがある。
「これが京都駅……すごいな」
初めての京都駅に感動する龍斗。その姿は年相応の男子であり、とてもブラックライオンをソロで倒せる人間とは思えなかった。
「これから二日間は魔物のことを忘れて楽しむぞー!」
龍斗が両手を挙げてそう言った時だった。
ファーンファーンと強烈なサイレンが駅構内に響く。
「京都駅に魔物の軍勢が向かっています。直ちに避難を開始してください。繰り返します。京都駅に魔物の軍勢が向かっています」
同様のアナウンスが京都駅に響き渡る。
魔物の襲来だ。
戦う術を持たない連中が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。今しがたまで人で溢れかえっていた京都駅が、瞬く間に過疎地へと変貌した。
「新幹線は無事でも駅はそうじゃないってか。やれやれ。だがまぁいい。突発的な戦闘は今後もあるだろうから、肩慣らしに戦っていくか」
龍斗は避難することなく戦う道を選んだ。
龍斗たちが誰にも話さなかったからだ。だから、彼らの活躍を知っているのは受付嬢のみである。その受付嬢も守秘義務の関係で他言できなかった。
何度目かのブラックライオンを狩ったある日、ギルドを出たところで仁美が言った。
「ここに居る人の大半が私たち以下なんだよね、レベルも稼ぎも」
「まぁそうだろうな。周辺に高レベルの魔物が全くいないし、レベルの高い冒険者は別のギルドで活動しているはずだ。ここの連中は細く長くのらりくらりと稼ぐタイプが主流さ。だからラクスルーのメンバーが多い」
「私は太く短くがいいけどなぁ」
「ポポロもなのです! 人生は一度きり、色々なことに挑戦したいのです!」
「エルフの平均寿命って950歳とかだろ? それでそんなこと言うとか、ポポロは貪欲だな」
「えへへなのです」
そこで会話が止まる。駐車場に到着したからだ。
「それじゃ、私はポポロを送ってから帰るね」
「了解。念の為に言っておくけど、明日と明後日は休みだからな」
「そっか、明日って土曜日なんだ」
「そういうこと。だから二人もしっかり休暇を満喫しておいてくれ」
「ほいほい。で、龍斗はどう過ごす予定なの? なんだったらお姉さんとデートする?」
「そうしたいのは山々だが……」
「山々なんだ!? 別にいいけど」
仁美の頬がポッと赤くなる。
それに気づかないまま、龍斗は続きを言った。
「生憎ながら俺は大阪に行くんだ」
「大阪? 本場の凄腕冒険者を見たいとか?」
冒険者稼業が最も賑わっている場所――それが大阪だ。仁美のような短期間でがっつり稼いでやると意気込む者が多く、若者の半数以上が冒険者として活動した経験を持っている。
「そんなところかな。ただ、普通に旅行がてら行ってみたいって気持ちもあるんだ。実は群馬以外に旅行したことがないから」
前世で住んでいた場所を旅行先と偽る龍斗。流石に「今は二度目の人生なんです」と言っても信じてもらえないから仕方なかった。
「なるほどねー。一緒に行く?」
「いいや、今回は一人旅にするよ。そういう気分なんだ」
「りょーかい。そんじゃ、私とポポロにお土産よろしくねー!」
◇
翌日、龍斗は10時発の新幹線に搭乗した。
「やっぱ新幹線だよなー、飛行機なんてドラゴンが怖くて乗れないよ」
大阪に想いを馳せる龍斗の後ろで、おっさんが何やら言っている。誰かと話しているのかなと思って龍斗が振り向くと、驚くことに独り言だった。
(そういえば新幹線って魔物に襲われたことがないんだっけか)
新幹線の線路は魔物の棲息地を避けるように引かれている。線路上を警備会社が巡回しているということもあり、新幹線では魔物に関する事故が一度も起きていなかった。
「次は京都ー」
外の景色を楽しんでいるとアナウンスが流れた。
「降りないとな」
龍斗の切符は京都までだ。大阪へ行く前に京都にも寄り道しておこうと思った。行きたいところがある。
「これが京都駅……すごいな」
初めての京都駅に感動する龍斗。その姿は年相応の男子であり、とてもブラックライオンをソロで倒せる人間とは思えなかった。
「これから二日間は魔物のことを忘れて楽しむぞー!」
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「京都駅に魔物の軍勢が向かっています。直ちに避難を開始してください。繰り返します。京都駅に魔物の軍勢が向かっています」
同様のアナウンスが京都駅に響き渡る。
魔物の襲来だ。
戦う術を持たない連中が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。今しがたまで人で溢れかえっていた京都駅が、瞬く間に過疎地へと変貌した。
「新幹線は無事でも駅はそうじゃないってか。やれやれ。だがまぁいい。突発的な戦闘は今後もあるだろうから、肩慣らしに戦っていくか」
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