ヒキアズ創作BL短編集

ヒキアズ

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(118)セイレーンとメンヘラお嬢様に気に入られた青年

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 メンヘラから逃げるために森に身を隠すことにしたデュセス。底なし沼に足を踏み入れてしまった彼を救ったのは……?

デュセス=オーツ:メイラに気に入られた商人。あまりのメンヘラっぷりに脱走を決意する。ネーミングはオデュッセウス。
セレン:自称木こり。魔物の巣食う森で一人暮らしている。人間ではないようだが……? ネーミングはセイレーン。
メイラ:デュセスに一目ぼれしたメンヘラお嬢様。ネーミングはメンヘラ。

 命の恩人だけど親の仇なので殺すマン×自己否定自殺願望セイレーン。
 愛の逃避行エンドが好きです!

 セイレーン(神話生物)については都合のいいようにオプション付け足し解釈してます。性別無し設定だけど、人間の姿が男なのでBLです。あと、前に書いた話とセレン名前被りしてるじゃ~ん(なんか人魚のやつ)。
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 あるところに貴族の娘と、彼女に気に入られた青年がいました。
「なあ、メイラ。今日こそはちゃんと話を聞いてくれ」
「デュセス、やめて。ほら、紅茶が冷めちゃうわ。このスコーンも。とっても美味しいのよ?」
 メイラと呼ばれた娘はとても我儘で、皆が止めるのも聞かず、一目惚れしたからという理由で、港で商人をしていたデュセスを無理やり屋敷に連れ込み、囲いました。
 デュセスも、初めの内は豪華な暮らしを楽しんでいましたが、次第にメイラの執着心が異様なものだと気づき、恐れました。
 そして、何度も「帰りたい」「別れたい」と訴えたのですが、メイラはそれを許してくれませんでした。
「ねえ、デュセスはアタシを裏切ったりしないわよね?」
「メイラ、いい加減にしてくれ。頼むから、もう僕に構わないでくれ。疲れて、おかしくなってしまいそうだ」
「デュセス……。アタシは一途なの。アナタを愛していたいだけ。この美しい愛を、どうして疲れるなんて言葉で片付けようとするの? アナタはいつになったらアタシに同じだけの愛を返してくれるの? ねえ、おかしくなってしまうと言うなら、それでもいいわ。そうしたら、アタシはずっとアナタの面倒を看れるんだもの。なんだ、それっていいことじゃない! ああ、デュセス。だったら早くおかしくなって頂戴!」
「……頼むから、もう自由にさせてくれ」
「いいえ、デュセス。アタシは絶対にアナタを離さないわ」
 デュセスは、そんな粘着質な彼女の態度にほとほと疲れ、精神の限界が来る前に屋敷を抜け出すことにしました。

「どうか、見つかりませんように」
 誰もが寝静まった真夜中を、デュセスは一人ひた走り、やがて森の中へと入ってゆきました。
「どうせ朝までに港へ着くのは無理だ。それならこの森でやり過ごして、また夜になったら海へ行こう」
 デュセスは、メイラから逃げるために船で遠くまで行くつもりでした。そうでもしなければきっとメイラはデュセスを諦めないでしょうから。
 しかし、真夜中の森の中は想像以上に静かで暗く、デュセスも闇雲に進む内に、不安を募らせてゆきました。
 そして。
「あっ……」
 一歩踏み出してから、デュセスは地面の感触がおかしいことに気づきました。
「底なし沼か……、クソ……!」
 沈んでゆく足を慌てて引き抜こうとしましたが、恐ろしい速さで足は沈んでゆき……。
「掴まって!」
「ッ!」
 泥を掻く手が引っ張られたかと思うと、デュセスはそのまま上に引き摺り上げられ、ようやく沼から脱出できました。
「死ぬかと思った……。びっくりした……」
「それはこっちの台詞ですよ……。どうしてこんなところへ人が……」
 肩で息をしながら、デュセスは恩人の顔を見つめました。
 うわ、綺麗な人だ……。
 立ち上がり、ランプを拾い上げた男は、息を飲むほど美しかったのです。
 地面につきそうなほど長い藍色の髪は波のように揺れ、真っ白で細い手足は闇の中でひと際目を引き、切れ長の緑とも青ともつかない瞳は海のように神秘的で……。
「あの、大丈夫ですか……?」
「声も、すごく綺麗だ……」
「はい?」
 不思議そうに首を傾げた男に、デュセスは慌てて顔を真っ赤にしながら首を振りました。
「あ、いえ! その……。実は僕、厄介な女性に追われてまして……。それで、明日の夜までこの森でやり過ごそうと思ったのですが……」
「ええと。この森、結構物騒ですよ? 獣たちは平気で人間を食べたがるので」
「えっ。そんな……!」
「ほら、今も。茂みの奥からこちらを伺っていますよ。わかります?」
 言われてから注意して見ると、確かに妖しく光る瞳が複数。その不穏な視線は、どれも僕に向けられていて……。
「貴方は、大丈夫なんですか……?」
「私は彼らの舌に合わないようなので。ここに住んでいても何ら心配ありません」
 困ったように笑った男に、デュセスは思わず見惚れてしまいました。
 やっぱり、人間じゃないんだな……。
「貴方は一体……」
「私は……、ただの木こりです。貴方に危害を加えるつもりはありません。彼らも、私が傍に居る限り、手を出しては来ないでしょう」
 そう言って男が獣たちの潜む茂みを見つめた途端、獣たちは怯えたように立ち去りました。どうやら、獣たちは男を恐れているようです。
「ええと。こんな辺鄙なところに一人でお住まいに?」
「ええ。慣れれば案外暮らしやすいんですよ。それより、私は貴方の方が気になりますがね」
「失礼。僕はデュセス。先程も説明しましたが、メイラという令嬢にどうにも気に入られてしまって――」

「なるほど。苦労されているのですね」
 一通り愚痴を交えた説明をしている内に、デュセスは男が住む山小屋に辿り着きました。
「こんなボロ小屋に住んでいるのですか?」
「ふふ。正直な方。ですが、これも心配ありません。私は人より頑丈ですので」
 やっぱり困ったように笑う男は、どちらかといえば儚く思えます。
「あの、貴方は……」
「ああ、可哀想に。顔に疲れが滲んでいる。どうかこれを飲んでここでひと眠りしていってください」
「これは?」
 言葉を遮るようにして差し出されたお茶を見つめ、デュセスは問いました。
「ただのハーブティーですよ。本当に。生憎私は飲めませんが……」
「そうですか。ありがとうございます。頂きます」
「え、あの……。もう少し疑った方が……」
「疑わなくてはいけないような物が入っているんですか?」
「入ってません、けど……」
「とても美味しいです、コレ。気分が落ち着く。優しい味だ」
「……お口に合ったなら、良かったです」
 デュセスの笑顔から視線を逸らした男は、何とかそれだけ言ってティーポットを机に置きました。
「うん。最近寝不足だったけど、今ならよく眠れそうです」
「あ、ええと。そこのベッド、良ければお使いください」
「ですが、貴方は何処で眠るんです?」
「私は……眠らなくても平気なので。手仕事でもしながら見張っておきます」
「あ、もしかしてそこにたくさん並べてある木彫りの動物?」
「はい……。その、すみません……」
「どうして謝るんです?」
「いえ、こんなくだらないことに時間をかけているのが、申し訳なくて……」
「……よく出来てる。くだらなくなんかない。きっと良い値で売れる」
「こんな呪いの籠った物、人の手に渡らせてはいけませんよ」
 ぽつりとギリギリ聞こえるぐらいの小声で呟いた男は、デュセスからウサギの置物を奪い、優しく撫でました。
「呪いを籠めたんですか?」
「ええ。だから、安易に触ってはいけませんよ」
「ケチ」
「何とでも。さあ、お休みください。貴方の旅路はこれからでしょう?」
「……そうですね。じゃあ、お言葉に甘えて今夜は眠ります」
「はい。おやすみなさい」
 デュセスがベッドに潜り、目を閉じたのを確認すると、男は机で木を彫り始めました。
「静かだ……。虫の声と、フクロウの声と、貴方が木を削る音だけが響いて心地よい……」
「いいものでしょう? 人がいないというのも」
「ええ。最近は本当にメイラが煩わしかったから、尚更そう感じます。それに……。貴方といると妙に安らぐ……。僕は、貴方の声がとても好きだ……」
「それは……、どうも」
「ああ、その澄んだ声で歌を歌って貰えたならば、きっと最高によく眠れるんでしょうね」
「あ、いえ。その、ごめんなさい……。私は、歌が下手なのです……」
 どこかぎこちない返事を不審に思ったデュセスは、微睡む目を開き、男を見つめました。その顔は、酷く青ざめていて……。
「すみません。強要した訳じゃないんです。ただ、本当に貴方の声が綺麗だから……。いえ、もう寝ます。これ以上余計なことを言って、恩人である貴方を傷つけたくない」
「……ごめんなさい」
 震える声で呟いた男は、それから全てを遮断するようにして再び木を彫り始めました。
 ああ、彼はこんなに静かな森で夜も眠れずに、ただ毎日木を彫り続けているんだろうな……。それがきっと、彼の精神の支えであり、呪いと称した理由なんだろうな……。
 深い眠りの波に誘われるまで、デュセスはその音を聞き、彼に想いを寄せました。


「デュセスさん、起きてください。もう朝です。朝食を準備しましたよ」
「ん、わ、すごい。美味しそう……!」
「味の保証はできませんが」
 デュセスが起き上がると、机の上にはパン、サラダ、ベーコンエッグと定番の朝食が乗っていました。
「あれ、でもこれ一人分じゃ……?」
「私は食べませんので」
「そう……」
「あ、別にこれも怪しい物が入っているわけではなく。ええと、ちゃんと町から調達してきた物で……」
「ごめんなさい、僕のために。ありがとうございます」
 どういう風に調達してきたのかはわからないけれど、デュセスは男の優しさを感じて素直に頭を下げました。
「あ、いえ。そんな……。こちらこそ、それでよかったのかわからなくて……」
「大丈夫。美味しいです……! それに、昨日は本当に久々によく寝たので、いつもより体が軽い」
「そうですか……」
 安心したように息を吐いた男に、デュセスは微笑みました。彼が何者であろうが、その不器用な優しさに癒されてしまうのです。

「さあ、食べ終わりましたね。それではお別れです」
「待ってください。その前に、どうか貴方のお名前を聞かせてください」
 デュセスは、男の手を取り、真剣な顔でそう告げました。
「……セレン、です」
「セレン……。ありがとうございます。助けてくださった恩は、きっと返します」
 しかし、男は困った顔をして、デュセスの手を剥がしました。
「そういう気遣いは結構です。それよりも、約束してください。もうこの森に近づかないと」
「どうして?」
「ここには人間を喰らう悪魔が住んでいるのです」
「そんな森に住んでいて貴方は怖くないんですか?」
「ええ。勿論。どうしてかは、わかりますよね?」
 男はデュセスをしっかりと見据え、その目を妖しく光らせました。
「……僕は生きては帰れないのかな?」
「いいえ。貴方はまだ引き返せる。でも、私のことは二度と思い出してはいけない。二度目はありませんから」
 デュセスは尚も男に問おうとしましたが、途中で瞼が重くなり、気を失ってしまいました。
「安心してください。きっとすぐに目が覚めますから」
 眠りに落ちる前に聞いた男の声は、やはりとても綺麗で。デュセスは、彼が何者なのか、どうしてこの森にいるのか、何故その瞳が悲しそうに揺れていたのかを知りたくなってしまいました。



「あれ、僕は一体……」
「デュセス!」
「……ッ、メイラ……」
 デュセスが起きると、そこはメイラの屋敷でした。
「酷いわ! デュセス! アタシから逃れようなんて! 船に乗るなんて! 乗客の一人がアナタを知っていて、アタシに知らせてくれたから止められたものの! あのまま誰も気づかなかったら、アタシは一生アナタを見つけられなかったかもしれないのよ?! ああ! 考えただけで眩暈が!」
「え、待って。僕は船に乗っていたのか?」
 甲高い声で喚くメイラを遮って問うと、彼女は眉を上げて瞳を煌めかせました。
「まあ! もしかして、あれはデュセスの意思じゃないということなの?!」
「僕は確か、森で迷って……。それで……」
 そこまで思い出して、デュセスはあの男がわざわざ自分を船に乗せてくれたのだと思い当たりました。
「まさか! あの森に入ったの?! ああ、デュセス! 惑わされないで! 誰か彼を縛り付けて頂戴!」
「ちょっと待ってくれ、メイラ。どうか落ち着いて。僕は惑わされてなんかない」
「でも!」
「何のことだかわからない。説明をしてくれないか、メイラ」
 彼女の両肩を掴み、しっかりと瞳を見てやると、ほんの少し落ち着きを取り戻した彼女がやはり甲高い声で叫びました。
「あの森にはセイレーンが住み着いているの!」
「セイレーン? それって海に棲んでいる魔物のことだろう?」
 セイレーンの伝説なら、デュセスにも嫌というほど馴染みがありました。
「そうよ。それがどういう訳だか森に棲んでいるのよ! その歌声を聞いた人間は魅了され、セイレーンの元へ行こうとするの! そして、喰われるの! ねえ、だから早く耳を塞いで! セイレーンの元へ行かないよう縛り付けてあげるから!」
「待ってよメイラ。僕はそんな歌聴いてないんだ。だから魅了もされていない。セイレーンと会ってないんだよ」
「……本当に?」
「ああ。勿論本当だとも。ほら、至って普通だろう?」
 手を広げてそう言ったデュセスは確かに狂ったように見えません。
「ああ、良かった……。ごめんなさい、少し、取り乱したわ……。あのね、デュセス。アタシ、実は、前にセイレーンに奪われてしまったのよ、恋人を……。あ、勿論数年前の話なんだけどね……。アタシと彼は、ピクニック気分であの森に入ってしまったの……。そのときは、セイレーンが棲んでいるなんて知らなかった。当たり前よね。海に居る魔物が森にいるなんて。誰もわからないわよ。でも、歌声が聞こえてきて……。それがセイレーンの声だと気づいたの。アタシは女だからか、どうもなかったんだけど。彼は、導かれるようにセイレーンの元へ行ってしまって……。そして、食べられてしまったの! ああ、あああ! 今思い出しても悍ましい! 許せない! あああああ! アタシがちゃんと止められていたら……!」
「メイラ」
 デュセスは、恐怖に取りつかれたメイラを抱き、落ち着かせました。
「ごめんなさい。ハァ。アタシ、怖くて……。だから、デュセスのことはちゃんと見張っておかなきゃって思ってたのに……。デュセスが逃げ出すから……」
「僕こそごめん。君にそんなトラウマがあるなんて知らなかったんだ。でも、もう大丈夫。僕は絶対セイレーンに食べられたりしないから」
 メイラは、デュセスの瞳が自分と同じ怒りに燃えていることに気づき、安堵しました。彼は確かにセイレーンに敵意を持っているのです。
「大丈夫。心配することなんてないよ、メイラ。君は眠れていないんだろう? 目の隈が酷い。心配させて悪かった。ほら、安心してお休み」
 デュセスは、子どもを寝かしつけるのと同じ要領でメイラをベッドへ誘導し、子守唄を歌って眠らせました。



「セイレーン。いるんだろう?」
「……二度目はないと言ったはずですが?」
 森の小屋をノックしてしばらく。出てきた男は、鋭い瞳でデュセスを睨みました。
「どうしても、“恩返し”がしたくなってしまってね」
「……そうですか」
「お前は本当にあのセイレーンなのか?」
「ええ。海に棲み、船乗りたちを食べる魔物。それが私の正体です。分かりやすい名前を教えていたでしょう? 私たちに個別の名前なんてないから。咄嗟に思いつかなくて」
 デュセスには、どうして彼が悲しそうに微笑むのかわかりませんでした。でも、些細な変化など気にしている余裕はありません。だって、デュセスは今、過去の怒りを燃え滾らせているのですから。
「お前が、僕の父さんを殺した魔物か?」
「……ええ。きっとそうでしょうね。すぐ近くの海に棲むセイレーンは、私一人でしたから」
「そうか。じゃあ死ね」
「……ッ」
 デュセスは、迷うことなくセイレーンの胸にナイフを突き立てました。
 しかし。
「そんなんじゃ、私は、死ねませんよ」
 セイレーンが呟き、ナイフを抜き取ると、その傷はみるみるうちに再生してゆき、元通りになりました。
「化け物め」
「そう。私は化け物なんです。だから、いくら傷つけられても死なないんですよ」
「そんなはず……」
 ない、とデュセスが言う前に、セイレーンは自分の手首にナイフを突き立ててみせました。
「ね?」
 無表情で同意を求めたセイレーンがナイフを引き抜くと、やはり傷口はあり得ない早さで塞がってゆくのです。
「貴方は、正しい方法で私を殺さなければいけない」
「正しい方法……?」
「ええ。私たちは、歌を聴いた人間が無事でいたら死ぬんです。だから、森の入り口辺りで、身動きが取れないよう縛り付けて貰っていてください。そうしたら、今夜私は、貴方を呼ぶ歌を歌いましょう」
「僕が縛られている内に殺す算段か?」
「ふふ。私が本当に貴方を殺したいのなら、そんなまどろっこしいことをしなくとも、今この瞬間にでも歌って虜にしていますよ。……心配でしたら、耳栓をした護衛を傍に置いてください。私自身は戦闘に不向きですので」
「……まるで殺してほしいと言っているみたいじゃないか」
「みたい、じゃないんです。私は、貴方の手で殺されたいんですよ」
「やっぱり、何か企んでいるのか?」
「いいえ。本心ですよ。私は、セイレーンであることに疲れたんです。海に還りたい。……私たちの最期は、泡になって海に溶けてしまうらしいんです。だから、その……。もう楽になりたいな、なんて……。ただ、それだけ。だから、どうか私の言う通りにしてください」
「……そんなことを言って、逃げるつもりじゃないのか?」
「私はどこにも逃げません。デュセス、貴方が私を殺すんです」
 風が凪ぎ、セイレーンの美しい髪が視界いっぱいに揺れた瞬間、デュセスはその儚い笑顔に海で出会った人魚の面影を重ねました。
「……そんな訳ない」
「え?」
「いや。何でもない。……わかった。お前の話に乗ってやろう。明日の夜、僕は森の入り口に縛ってもらう。それでいいんだろう?」
「ええ。大丈夫です」
 セイレーンは、海のある方を見つめ、耐えがたい空腹感に必死に抗いながら、静かに頷きました。そう。セイレーンは、デュセスを食い殺してしまいたい気持ちをずっと抑えていたのです。

「だって、もうこれ以上化け物になりたくないから――」
 だから、大丈夫。きっと上手くいく。きっと泡になった方が今より楽だ。
 デュセスが去った後、セイレーンは落ちていたナイフを拾い、そっと手首に当てて引きました。ぷつり、と血が溢れ出たのも束の間。やはり傷口はすぐに治り、元通りの綺麗な肌になるのです。
「やっぱり、デュセスに殺してもらうのが一番だ」



 十数年前の話。私は人間を誘き寄せて食べることになんの疑問も持たず、怪物として生きていた。その日も、まんまと私の住処にやってきた船乗りの男を躊躇いもなく食らった。
 しかし、それからしばらく。
 私は、海に漂う瓶に入った手紙を拾った。時々人間がこういうくだらないことをして海を汚すのは知っていた。陸に投げ返そうとも思ったが、暇潰しにはなるかと思い、手紙を取り出し、読んでみた。
 それは、奇しくも私に宛てられた恨言だった。
 辿々しい字で書かれたそれは、この前殺した船乗りの男の幼い息子が書いたものだった。
 それを読み、私はようやく己の罪に気づいた。
 人間はただの餌だと思っていた。だけど、考えてみれば確かに彼らにも家族がいて、感情がある。彼らの悲しみや苦しみと引き換えに生きる価値が、果たして私にあるのだろうか。……彼らの犠牲の上に生きる意味が、私には見出せなかった。私は、人間たちにとっての悪だと、今更ながら気づいたのだ。
 そして、私は人間をこれ以上傷つけないよう、自ら森に篭った。
 魔物の巣食う森に人間は来ない。飢えて死ぬつもりだった。
 が、結局魔物としての本能がそれを許さず、腹が減るたびに無意識に口が動き、歌い始め、森の近くにいる男を引き摺り込んで、食らってしまった。
 情けなかった。セイレーンの癖に、怪物の癖に餌に同情してしまった自分が。人間を食べないと決意したにも関わらず、やはり本能には逆らえない自分が。どうしようもなく中途半端で、生きている意味に疑問を持ってしまった自分が。
 私は、ただ自問自答を繰り返し、無駄に時間を浪費し、精神を病んでいった。
 そんな鈍間な私を見兼ねた神の仕業なのだろう。デュセスがこの森に来てしまったのも。彼の名を聞いた時、本当に驚いた。そして、悟った。罪を償う時が来たのだと。
 一度目は、私の正体がわかっていないようだったから、そのまま睡眠薬を食事に盛って彼を帰した。土壇場になって、彼に正体を知られたくないと思ってしまったのだ。
 あの心根の優しい青年に、死ねと言われるのが怖かった。憎悪を真正面からぶつけられるのが怖かった。それだけの罪を犯している癖に。今更。
「だけど、結局はバレた。殺意を向けられた。ついに私も終わりだ」
 約束の夜。月明りが照らす濁った沼の中で、セイレーンは歌いました。その美しい声に森の獣たちは怯え、ただそれが終わるのをじっと待ちました。



「もう大丈夫。解いてくれ」
 歌声が止んだ後、デュセスは自分を縛り上げたメイラの護衛に、縄を解くよう指示しました。
「デュセス、どこにいくの……?」
「セイレーンの死体を持ってくるよ。きっと高く売れる」
「いけないわ!」
 メイラは短く叫ぶと、自由になったデュセスに抱きつきました。お金のために万が一があっては、今度こそ自分はおかしくなってしまう、とメイラは思いました。でも。
「やらせてくれ。君への愛の証として」
「デュセス……」
 デュセスの甘い言葉と甘い微笑みを前にして、彼を否定する言葉はすっかり萎んでしまいました。だって、メイラが彼の口から愛を聞いたのは初めてだったのですから。
「ね、メイラ。お願いだ。行かせてくれ」
「……わかったわ。デュセス。アタシはアナタを信じるわ」
「ありがとう、メイラ」
 デュセスが妖艶な笑みを浮かべると、メイラは頬を染めて顔を覆いました。何だか、いつにも増して彼が魅力的に見えたのです。
「ああ、やっとアタシは幸せになれるんだわ……! 憎いセイレーンは死んだし、デュセスはようやく愛に気づいてくれた……。こんな幸せなことってないわ……!」
 メイラは、嬉しさのあまり早口で呟いてから胸の前で手を組み幸せを噛みしめました。お蔭で、デュセスがぼそりと呟いた謝罪の言葉を聞き逃してしまいました。



 セイレーンは、自分の足が泡になるのを黙って見つめました。不思議と心は凪いでいました。自分という存在が水に溶けてゆく感覚は、どこか懐かしさすらありました。
 海に溶けないのは残念だけど、私にはこの沼の方が似合いだろう。
 そう思いながら、セイレーンは目を閉じました。しかし。
「へぇ。本当に死ぬつもりなんだ」
「な……、どうして、貴方がここに?!」
 声がして目を開くと、デュセスがいました。
「どうしてだと思う?」
「自分が何をしているのか、わかっているんですか……? 早く、逃げてください……! でないと……、私は……」
 セイレーンは喉を押さえてデュセスから目を逸らしました。
「逃げる必要なんてないでしょ?」
「死にたいんですか……?」
「僕が死ぬの?」
「あ、ぐ……。今、は私が、抑えているから、いいものの……。ホントに、もう……、逃げ、て……」
 セイレーンの目に映ったデュセスはとても美味しそうでした。今まで抑えてきた衝動がはち切れそうになるのを、セイレーンは歯を食いしばって止めました。でも、体の震えは増すばかり。どう足掻いても本能には逆らえないのです。
「あ、あああ……。駄目、私は、化け物、だから……! 早く、逃げて、もう、殺したくない、私は、ああ、頼むから……、もう、私を、殺して――ァァ!」
 耳を劈くような高音を発した後、セイレーンの口は勝手に美しい旋律を奏で始めました。
 ぼんやりとする意識の中で、デュセスがその音に酔い近づいてくるのを眺めてから、セイレーンは我に返り、後退ろうとしました。が、溶けかけた足は思うように動かなくて。
「……ァ、駄目、食べたくない……、デュセスだけは、食べたくないッ……!」
 全身を震わせながらやっとの思いで叫んだセイレーンの声に、デュセスは足を止めました。あと一歩でその足は沼に踏み入れてしまうところでした。
「……本能に逆らうつもり?」
「うぅ……、アァ……、早く、逃げて……」
「本当に。貴方は一体何なんですか?」
「私、は……。もう、化け物で、いたくない……! 早く、殺して……」
「……厄介な人」
「ぅ、あ……?! げほっ、かはっ、うう……」
 唐突に腕を引っ張られて、沼から体を引き上げられたセイレーンは、変に噴き出す汗に体力を奪われ、その場で酷く咳き込みました。
「貴方が僕を沼に引き摺り込んだ瞬間、この護符が発動して、全てを浄化するはずだったんです。それなのに、貴方ときたら……。さあ、口を開けて。今度こそ終わりにしてあげますから」
 デュセスは、セイレーンの濡れた長い髪を掻きわけて、頬をそっと撫でました。そして、反対の手に持った錠剤を唇に近づけました。
「……ァ」
 セイレーンは、朦朧としながら大人しく口を開きました。早くこの悪夢が終わることを信じて。
「ん……。は、何、これ、あ……、え……?」
 薬を飲んだ途端、セイレーンの体は熱を持ち、その形を変えてゆきました。
「成功だ」
「え、これ、まさか……」
 セイレーンは、泡になりかけていた己の尾びれが、人の足になっているのをぼんやり見つめてから、恐る恐る触れました。それは、間違いなく自分の足でした。
「海の魔女と取引したんだ。メイラから勝手に拝借したお高い宝石を対価に、ね。だからこれはね、君が魔女にもらった一時的な変化の薬じゃない。完全に人間になる薬だ」
「どうして……。私をその護符で、焼いてくれるんじゃ……」
「そうして欲しかった? ごめんね」
「……」
 デュセスは、セイレーンの目の前で護符を引き千切って捨てました。そして、セイレーンの足をゆっくりと撫で、笑いました。
「人間ってさ、結構頑丈なんだよね。ちょっと傷つけたくらいじゃ死なないんだよね」
「……ッ」
 セイレーンは、デュセスの仄暗い声音に震えました。きっと、この先自分はひどい拷問を受けるのだろうと思い、楽に死のうとした自分を愚かしく思いました。
「そう。簡単には殺してあげないからね」
 セイレーンは、デュセスの復讐を受け入れようと腹を括りました。ただ、彼の気が済むまで自分の体が持ってくれることを祈りながら――。



「で、私はいつ殺されるのですか?」
「いつだと思う?」
「……わかりません。貴方の命令全てが不可解です」
 人間になったセイレーンは、デュセスに従い、海を越え、遠い遠い小さな町に住み始めました。
 セイレーンは、デュセスに言われるがまま木彫りの動物を作りました。その高い技術とデュセスの商才のお陰で、それはたちどころに売れました。
「ね、言ったでしょう? セレンの腕は確かだ」
「……こんな呪いの籠った物を買う人間の気が知れません」
「セレンも立派な人間だよ。呪いなんか掛けられやしないさ」
「……私がどんな気でいるかも知らないで」
「どんな気なのか教えて欲しいな」
「……早く殺してください。私の願いはそれだけです。こんな生活、気が狂ってしまいそうです」
「そんなに殺して欲しい?」
「ええ。私は罰されるべき存在です。こんな風に人間ごっこをしていていいはずがない」
「ほんと、君は真面目だね。でもね、僕は君と末永く暮らしたいと思ってる」
「趣味が悪い。ぬるま湯に浸からせておいて、これから酷い拷問でもするつもりなんですね? 緩急をつけて永遠に私を苦しめ続けたいと」
「しないよ、そんな真似。可愛い君を傷つけたりするもんか」
「……そうですか」
「信じてない? まあ無理もないか。でも、僕は君を愛しているんだよ」
「よく親の仇に向かってそんな嘘がつけますね」
「うん。でも嘘じゃない。嘘でこんなこと言えないよ」
「嘘じゃないと言うには無理があります。貴方が私を愛する理由がない」
「理由ね。しいて言うなら一目惚れ、だったのかな。ずっと昔のことだけどね」
「昔……?」
 眉を顰めたセレンにデュセスは頷き、大切な思い出を語り始めました。
「あのね、僕がまだ幼かった頃、綺麗な人魚がこっそりと岩場で一人泣いているところを見たんだ」
「……人魚が?」
 話の展開が読めないセレンは、益々眉間にしわを寄せ、そして、思い当たって蒼褪めました。
「そう。僕はあの時、あれは人魚だろうと思い込んでいた。悪い魔物であるセイレーンが泣くはずないと思ってたから……。でも、あれは君だったんだろう? 僕の手紙を見て泣いていたのはセレン、君なんだろう?」
「……」
 あの時の姿が見られていたことを知ったセレンは羞恥と罪悪感に駆られ、慌てて首を振りました。しかし、デュセスは動じません。
「心優しい人魚が涙を流すその姿があまりにも美しくて……。まだ幼かった僕は、長いことその綺麗な人魚に恋をしていたんだよ。うん。思えばあれが僕の初恋だったなあ」
「あ……、違い、ます……。それは、私じゃない……」
 まだ幼かったデュセスを結果的に騙してしまったことを知り、貴重な初恋を最悪な思い出にしてしまった罪悪感に駆られ、セレンはますます顔を青くしながら首を振りました。
「本当に?」
「へ?」
 ふいに、デュセスの手がセレンの長い髪を優しく撫でつけ、耳に掛けました。
「このピアス。あの時見たやつと同じなんだけどな」
「そ、れは……。私が偶然同じ物をつけているだけで……」
 顔を近づけてきたデュセスから目を逸らしながら、セレンは何とか答えました。ですが、やはりデュセスは動じません。
「それ、魔力が込められてるよね? 独特な光を放っていたから、印象に残ってたんだ」
 セレンのその真っ赤なピアスは、確かに普通の宝石にはない不思議な輝きを放っていました。
「ええ、まあその。海の魔女から買った特別な物なので……。でも、海の魔女は人魚たちにも色々売っているわけで……。決して私だけがこれを持っているというわけでは……」
「いいや。こんなものを自分から進んでつけるのは君ぐらいだ。これ、本当は持ち主の魔力を吸い取るピアスでしょう?」
「……」
「君は、自分の力を少しでも抑えようと魔女に頼んだ。違う?」
「海の魔女に、聞いたんですか……?」
 これ以上の言い訳は無駄だと悟り、セレンはそっとため息を吐き、地面に目を落としました。
「薬を貰うついでにね。魔女は認めてくれたよ。そんなピアスを作ったのは1回きりだって」
「……ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「貴方は、怒っているんでしょう? 親を殺した私に初恋まで奪われてしまったことを……。だから、しょうもない嘘を吐いて、私を陥れようとしているんだ……。まんまと絆されそうになっている私を見て、貴方は心の底で笑っているんでしょう……?」
 セレンは、震える手でデュセスを押しのけ、縋るようにピアスを掴みました。己の感情の昂りを抑えてくれることを祈って。
「ねぇ。そのピアス、今も外さないのはどうして? 今の君には要らないはずだ」
「やめてください! 怖いんです……。化け物の力がまだ残っていて、貴方を殺してしまうんじゃないかって……!」
 デュセスの手が再びセレンの耳に触れるより先に、セレンは叫び、怯えました。
「大丈夫だよ。ほら見て。ピアスの赤い色が薄くなっているでしょう?」
「?!」
 震えるセレンを抱きしめたデュセスは、優しく口づけを落としました。
「今、何して……」
「ほら。ね?」
「!」
 デュセスの手に乗ったピアスを見て、セレンは慌てて己の耳に触れました。が、当然その耳にはピアスがありません。
「油断させるためにキ……するなんて……」
「ごめんね。でも、これで証明出来たはずだ。君には僕に抵抗する力も残ってない」
 確かに、ピアスの色はとても薄く、セレンが魔力のない人間になった証明としては十分でした。でも、抵抗できなかったのは、他にも原因がありそうです。
「デュセス、貴方は本当に変わってる。いくら復讐のためとはいえ……。これ以上私に時間を費やしていたら、貴方の人生が台無しになる。言えた立場じゃないが、私のことなど早く殺して忘れてしまうべきだ。そうでなければ私は……」
「言ってよ。ちゃんとセレンの気持ちを聞かせてほしい」
「……私は、この幸せな人間ごっこから抜け出せなくなってしまう。すっかり騙され、絆されたところで、きっと私は殺される……。そんなの、そんなのは……。貴方が望んだ通り、私にこれ以上ない苦しみを与えるんでしょうね……」
 力なく笑ったセレンは、諦めたように首を振りました。それを見たデュセスは、セレンの体をそっと抱き寄せ、もう一度口づけを落としました。
「あのさ。正直、君への恨みはもう無いんだ。君を刺したとき、自分の中の揺らぎを感じたんだ。僕は、君を殺すべきなのかわからなくなった。いや、殺したくなくなってしまったんだよ。だって、君は化け物じゃなかった。セイレーンの癖に、自分の行いを悔いて、己の生に逆らって……。だから、僕は賭けた。歌を歌うと言ったあの晩、もし君が僕を殺さなかったら、君を信じると。あの初恋の人魚だと認めると。君を死なせやしないと。そう思ったから、海の魔女に金を積んで、人間になる薬を持ってきたんだよ。セレン、改めて僕と一緒に人間として生きて欲しい。これは嘘なんかじゃない。本当に、僕はセレンを愛している。愛おしいほどに純粋な君を、幸せにしてやりたいと思ったんだ」
「それも、嘘なんでしょう……?」
「嘘だと思う?」
 デュセスの真剣な眼差しに、セレンは首を振りました。
「わかりません。信じてしまえば、裏切られた時が辛い。だから、私はきっといつまでも怯えてその時を待つのでしょう……」
「僕が君をどんなに甘やかしても、その呪縛は解けない?」
「ええ、恐らく。私は傷つくための準備を止められないのでしょう」
「……難儀な人だ」
「ええ。だからこんなことは無駄なんです。貴方は私に時間をかけるべきではない」
「そう。でも、僕はそれでも君を選ぶよ。君が僕を信じてくれるまで愛することをやめない」
「貴方の方がよっぽど難儀な人だ」
「そうかもしれないね」
 二人は静かに微笑み、それぞれ未来に想いを馳せながら海を見つめました。穏やかな波の音は二人の心に染み渡り、いつまでも優しく響くのでした。
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