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(91)薬屋の弟子×トラウマ持ち剣士
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薬屋の弟子が常連のトラウマ持ち剣士にちょっかいをかける話。弟子×剣士。剣士は死んだ元恋人(女)のことを引き摺ってます。ネーミングは何の関係もないんだけど何故だかUMAです。物分かりのいい爺さんが好きです!(?)
ユマ:過去のトラウマにより古傷の痛みが癒えない剣士。ネーミングはUMA。
チーノ:カブラ爺に弟子入りした不思議くん。ネーミングはツチノコ。
カブラ:薬屋のじいさん。ネーミングはチュパカブラ。
ロネス:ユマの元恋人。魔物に殺された。ネーミングはネス湖。
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『ユマ、アナタは強く生きて。間違っても、今日のことを後悔しては駄目よ?』
腕の中で血を流しながら微笑んだロネスは、そう言い残して息を引き取った。
「ああ、ロネス……。どうして、どうして……!」
私は余りにも無力だった。最愛の女を救うことも、その仇を取ることも叶わなかった。
憎き魔物につけられた肩の傷が燃えるように痛い。痛くて、熱くて、死んでしまった方がマシだと思うくらいに辛くて――。
「じいさん、いつもの薬を頼む……」
『なんじゃ。もう使い切ってしまったのかお前さん』
行きつけの薬屋でいつものように古傷の痛み止めをせびると、そこの店主であるカブラ爺があからさまに嫌な顔をする。
『あのなあユマ。何度も言っておるが、この薬は体によくはない。使いすぎると危険なんじゃ。そうバカスカ飲むなといつも言って……』
「金は前回の倍払うから……」
『む、むむ……。じゃがな……』
金貨の入った袋を目の前で振ると、じいさんの顔に葛藤が浮かぶ。
「頼む。何なら三倍でも構わな」『乗った!』
指を三本立てた途端、良心との葛藤を横にぶん投げたじいさんが興奮気味に言葉を被せる。全く現金なじいさんだ。
『少し待っていてくれ。今、調合したやつを持ってくるでな』
「ああ。なるべく早く頼む」
店の奥に入っていくじいさんの背中を見守ってから、痛む肩に手を乗せる。その傷ができて早一年が経とうとしているというのに、それは受けた当時と変わることなく私を苛み続けている。
ああ、ロネス。後悔するなというのは無理だ。私は未だに強くはなれない。きっと時間が解決してくれるとばかり思っていたのに。私の肩はあの日と変わらず痛み続けている。薬に頼るばかりでは駄目だとわかっているさ。だけど、大きなきっかけでもない限り、この痛みは――。
「どりゃー!」
「……何者だ?」
「痛って!」
背後から勢いよく放られた液体を避け、その犯人を取り押さえる。
「なんで避けちゃうかな! 今の! 実験失敗! 反射神経良すぎ!」
取り押さえられて尚、じたばたと元気よく暴れる少年に見覚えはない。
「敵か?」
床にぶちまけられた緑色の液体は余りにも怪しすぎる。
『ああ! 待っとくれユマ。そいつはワシの弟子なんじゃよ』
腰の剣に手を掛けた瞬間、再び店頭に現れたじいさんが慌てた声でそう告げる。
「弟子……? この少年が?」
『ああ。ワシとて何度も断ったんじゃがな。頼み込まれて仕方なく……』
「金積んだら折れたんだよ。このじいさん」
『馬鹿、お前、そりゃあワシとて老後の資金が欲しいんじゃわい!』
「おいおい」
相変わらずガメついじいさんに呆れつつも少年を解放してやる。
『だが、どうも選択を間違えたらしい』
「む……」
じいさんの目線を追うと、店の中にはおびただしい数の試験管が転がっていた。前に来た時はなかったものだ。
『こいつは狂っとる。研究熱心といえば聞こえはいいが。薬のことしか頭にない、立派なマッドサイエンティストだ』
「失礼だな~。ま、言ってること自体は合ってるけどさ~」
「大体の事情は分かったが、私にとってはどうでもいい話だ。じいさん、早くしてくれ。私は薬を貰いに来ただけだ。世間話に付き合っている暇はない」
『は~。お前も相変わらず愛想がないのう。全く。ほれ』
「ん、確かに」
「え~!? お兄さんもう帰っちゃうわけ? もっと俺の実験に付き合ってよ~!」
「私は忙しいんだ。遊びならじいさんとやれ」
「ケチ! もうどうなっても知らねーぞ!」
あっかんべーと舌を出す少年に白けた視線をくれてやる。生憎だがガキに構っている余裕はない。己のことでこちとら手一杯なのだ。
『ぎいいいいいいいいい!』
どしり、と音を立てて斬られた魔物が地面に倒れる。
「は……。やはり調子が悪い。早めに薬を貰って正解だったな」
剣の血を払い、先ほど貰ったばかりの薬を口に投げ込む。
少し前までは、魔物を倒している間だけは痛みを忘れることができた。
なのに。最近じゃ、自らを騙す方法もついに薬だけとなってしまって……。
「あ……?」
ドク。心臓が変な音を立て、視界が歪む。
「なんか、変だ……。ぐ、まさか……」
飲んだ薬と同じものを観察し、舌を打つ。
ほんの少しだが、いつもより錠剤の色がくすんでいる。
「やられた」
少年の捨て台詞を思い出し、頭を抱える。全く、あのじいさんめ。とんだ弟子を取りやがったな。
「おい少年! お前、まさか私の薬を入れ替えたんじゃあるまいな?」
「あ、意外と早かったね~。感心感心」
「貴様……」
「ああ、貴様じゃなくて。俺の名前はチーノっていうんだ。お兄さんさあ、自己紹介する間もなく帰っちゃうんだもん。悲しかったな~」
「言いたいことはそれだけか?」
悪びれる様子もなくつらつらと語る少年に、泣く子も黙る睨みを利かせてやる。
「そんな怖い顔しないでよ~! 俺はただ、老いぼれじゃない実験台が欲しいだけなんだって!」
「他でやれ」
「え~。でも俺、お兄さんじゃなきゃヤダな~」
「殺されても文句はないみたいだな」
「怖いな~。でも。お兄さんはさ、今、頭がすっご~く痛いでしょ?」
「ッ!」
少年が指を弾いた途端、頭が割れるように痛む。
「ハイ、コレさっきの薬の効果ね。暗示がかけやすくなる薬。うん、成功したみたいだ。んじゃ、お次はコレで!」
「ふざ、けるな……、っは」
まともな抗議をする暇もなく、試験管の中の液体をかけられる。慌てて拭おうとするが既に遅く、へなへなとその場に座り込む。
「体の力が抜けて動けないでしょ? これも成功だね」
「っ……」
「ああ、助けを呼ぼうったって駄目ですよ。カブラ爺は遠いとこまで買い出し中だし、知っての通りこんな森の中じゃ誰も助けに来ない。お客さんだって滅多に来ないしね」
にこりと笑ってみせた少年の手がシャツを引っ張り、無理やり肩の傷を晒す。
「なにを……」
「ああ、やっぱりそうだ。この傷。俺がつけたやつだ」
「え?」
思いもしなかった台詞を吐いた少年を凝視する。しかし、その瞳には嘘を吐いている様子はない。
「とっくに治ってるくせに、ことあるごとに思い出しちゃって痛むんでしょ? トラウマなんでしょう? だから精神安定剤って。ふふ、あはは。随分と可愛いもんだ!」
「おい、お前は、さっきからなにを言って……」
「分かるでしょ? 俺はアンタの女を殺した怪物だよ」
「は……?」
目の前にいる少年からは魔物の気配など感じない。正真正銘人間だというのに、何故か彼の言葉が否定しきれない。
ああ、そうだ。あの目だ。あの燃えるように赤い瞳。あれは全く一緒じゃないか!
「あの女、俺に呪いをかけて死んだんだ。そのせいで、俺は人間になってしまった。この俺が、非力な人間に!」
「まさか」
いや、あり得ない話ではない。ロネスは私と共に魔物を倒すため立ち上がった魔術師だった。負けん気の強い彼女が、ただで死ぬはずがない。
「困ったことにこの呪い、掛けた本人にしか解けないという最悪なオプション付きだ。流石の俺も絶望したよ」
「ああ、まさか。私はお前を逃がしてしまったことを後悔していたというのに。ロネスはやり遂げていたというのか……」
「いやあ本当に憎らしいね。俺はアンタの比でない程この一年、己の不甲斐なさを呪い苦しんだよ。だけど、だからこそ、俺にはどうしても成し遂げなければいけないことがあった。何だと思う?」
少年の赤い瞳がぎょろりとこちらを睨みつける。その奥底に潜む感情を私は知っている。なんせ、それは私自身がこの一年持ち続けてきたものだったから。
「復讐……」
「そう。お前を殺すことだ。そうすればあの女もあの世で悔しがることだろうよ。俺はそれだけを糧にしてこの非力な体で薬学を学び、今この瞬間のために生きてきた」
「災厄の魔物と謳われたお前が随分と情けないな」
「五月蠅いな。こうでもしなきゃ腹の虫が治まらない。勿論、ただ殺すだけじゃ飽き足らないがな!」
「!」
口に当てられた布から逃げようとするが、すぐに意識が朦朧とする。甘い香りがして、体が痺れて……。
「あ、熱い……」
体の奥底から欲が湧き上がって止まらない。
「最後の実験も成功みたいだね」
「は……、あ……ッ!」
触られてから初めて、己のそれが窮屈そうにズボンを押し上げていることに気づく。
「はは! こんなにおっ勃てちゃってカワイソー。あ、ちょっと。撫でただけで勝手に気持ちよくならないでよ」
「ッう、く……。さわ、るな……」
少年の手から少しでも逃げようと体をずらすが、腕を掴まれ、そのまま抱き上げられる。
「店先でやるのもよくないし、ちょっと興が乗ったから奥のベッドに連れてったげるよ、ユマ」
「は……? や、待っ……」
少年はその華奢な見た目とは裏腹に軽々しく私を持ち上げ、ベッドに降ろす。短期間で薬学をマスターしていることといい、やはり完全に平凡な人間に変わったとは言い難い。それを本人が自覚しているかどうかはわからないにせよ、だ。
「この日のためにた~くさん色んな薬を用意したんだ。今からぜ~んぶ試してあげるからさ、ちゃ~んと天国にも聞こえるように喘いでよね? ユマ」
「ッ……」
最低な挑発に少年を睨む。だけど、彼が首筋に口づけた途端、怒りは欲に支配されて……。
「あっ、イく、もう、ッ~!!」
「は、もう何回目だっけ。はは、ここ、すごい俺のでぐちゃぐちゃだ」
「ん、あ……。ふ、掻き混ぜるなって……ああっ!」
「イったばっかですぐ気持ち良くなっちゃうんだから、人間ってほんと欲深いんだね」
「これ、絶対、薬のせい……、はあッ、あ、言った傍から、薬、足すなって……、あああッ!!」
どろどろの液体を中に擦り込まれた途端、快感が強まり、目の前がチカチカする。
「うわ。エロい顔。はは、アンタさあ、自分の女を殺した怪物の下でまんまと騙されて腰振ってるんだよ? わかってる?」
「ん、あ、もっと、奥、ああ、そこ、駄目、指じゃ、足りない、もっと……」
「っ……。ほんとに、わかってないでしょ。自分がどんな顔して誘ってるか。勘弁してくれよ。こんなの、卑怯だ……」
「は、あ……。も、焦らすな……。頼むから……。欲しい……」
「ぐっ……。あ~、もう! なんだよこれ! なんで俺がこんな……!」
「チーノ、も、イかせて、くれ……」
欲に侵された体中が熱い。頬が火照って仕方がない。勝手に流れる涙が止まらない。
「くそ! ああもう! これだから人間は嫌なんだ!」
欲に押し潰された赤い瞳が私を捉える。その鋭い視線に全身が悦びに打ち震える。
ああ、そういえば。いつの間にか肩の痛みが嘘みたいに消えている。
「おい、いい加減起きろ。じいさんが帰ってきちまうぞ」
「ん……」
重たい頭を振るい、ベッドの上で起き上がる。窓から差し込む陽の光に目を細めながら、蘇りつつある記憶を整理する。
「ええと、あれからどれほど経った?」
「二日。死んだように眠ってたんだよ、アンタ。流石に薬を盛り過ぎたみたいだ。……心配した」
「心配?」
「そんな目で見るな。とりあえず、これを飲め。お前、酷い声してる」
「誰のせいだと……」
カップを受け取り、口をつける。不思議な色をしたそれは、乾いた喉に心地よい清涼感をもたらしてゆく。
「アンタさ、あれだけ酷い目に遭っといて警戒とかしないわけ?」
「今更だろ。それに、今のお前からは邪悪なものを感じ取れない」
「……体も痛むだろ? 薬を調合しといたから、食後に飲め」
「お前は俺のことを殺すんじゃなかったか?」
「アンタこそ。今殺ろうと思えば殺れるはずだ」
そう言って挑発するような瞳を向けた彼は、驚くほどに無防備だった。だが。
「別に。彼女はきっとそれを望んじゃいない。お前を見ていたらそう思えた」
「人間はよくわからないな」
「お前も人間だろう?」
彼の赤い瞳は揺れていた。魔物だった彼は、人間としての感情を得て変わろうとしているのだ。
「俺は、わからない。今までは何をやっても満たされなかったんだ。人間たちをどれだけ殺めても、だ。だが……」
「何だ?」
意味ありげにこちらを見つめる彼に首を傾げる。が、その奥に潜む欲に気づき、納得する。
「アンタを抱いたら、不思議と心にぽっかり空いた穴が埋まった。こんな気持ちは初めてなんだ」
「寂しかったんだろう」
「なあユマ。こんなことを言えばきっとアンタは俺を軽蔑するだろう。でも……」
「それは言わない方がいい。きっとお前は後悔する」
「いいや。言わない方が後悔すると思うからこそ言わせてくれ。ユマ、俺はアンタが好きになった。アンタが俺に自害しろというならば今すぐそうしてしまうほどに、だ」
取られた腕が燃えるように熱い。きっと顔も見て分かるほどに赤く染まってしまっていることだろう。薬の効果か、はたまた情事を思い出してしまったせいか。それとも。
「私はお前を許してはいない。ロネスを殺され、私の体も弄ばれた」
「じゃあ、どうしてそんな顔をするんだ。望みがないと言うのならば、一思いに殺してくれ」
「それは……」
わからない。肩の古傷を擦ってみたが、やはりそれに痛みはない。
あれだけ憎かったというのに。あれだけ酷いことをされたというのに。どうして、何故。私は目の前の仇に剣を振るうことができないのか。
『おおい。チーノ。帰ったぞ。お前が留守番をしてくれたおかげで、良い素材が入ったわい』
「あ……」
タイムリミットを悟った彼が、窓枠に手を掛ける。
「待て。どこへ行くつもりだ」
「どこって。そりゃ……」
「何も言わずにここを出る気か? じいさんが悲しむぞ?」
「別に。俺にはもう関係な……」
『おおい、チーノ! いるんだろ! 荷物が重い! 手伝っとくれ! お前の為の生活用品も買ったらすっかり重くなってしもうたわ!』
「カブラじいさん、ああ見えてお前のこと結構気に入ってるみたいだぞ? 初めて弟子が出来たもんだから嬉しいんだろうな」
「でも、俺はここに居るわけには……」
「私が居ろと言っても、か?」
「……正気か?」
「さあ。何しろあれだけ薬漬けにされたからな。狂ってしまったのかもしれん。でも。だったら正気に戻るまで、お前を泳がせておくのも悪くはない」
「自由に泳がせてたら、またアンタに食いついちまうかもしれないぞ?」
「無理やりやるような真似はもうしないだろう?」
「はあ? どうしてそう思う?」
呆れたように不貞腐れるチーノを見て、思わず笑う。
「そりゃだって。そんだけしおらしくされれば、そう信じたくもなるもんだ」
『おおい! 聞こえとるのか~!』
「あ~、もう! ハイハイ行きますよ! 行けばいいんでしょっ!」
考えることをやめたチーノは、こちらにあっかんべーと舌を出してから、店先へとどすどす歩いてゆく。
『あ? ユマじゃないか。なんでお前さんがここにいるんだ?』
「さあ、なんでかな」
『……チーノ、お前さん、中々趣味が悪いな』
「おい! アンタが意味ありげな視線でこっち見るから! 即バレしただろうが!」
「はっ。せいぜい困れ。大いに困れ。そんで毎日ロネスに謝れ。人間として徳を積め」
「……そしたら、アンタは許してくれるのか?」
「さあな。でも、私の気は晴れるかもな」
「じゃあやるよ。なんせ、俺はアンタにベタベタに惚れちまったからな」
『あ~。よくわからんが、お祝いでもするか?』
困惑しながら、買ってきたばかりの酒を手に取ったじいさんが笑う。
「祝うには早いけど、飯は食わせてもらおうか。何しろ馬鹿弟子のせいで、まともに動けないんだからな」
「薬で和らいでるはずだ!」
「私だって一人で飯を食うのは寂しいんだ」
『え~っと。ユマもここで暮らし始めるか?』
「は?!」
「ふふ」
冗談とも本気ともつかないじいさんの台詞にチーノが大げさなくらい動揺してみせる。
それを見ているだけで、なんだか心が馬鹿みたいに軽くなるのだ。
なあ、ロネス。人間というのは本当にどうしようもない。私は、お前がいなくてどれだけ寂しい思いをしたことか。それなのに。いや、だからこそ、だ。私はいつかお前を忘れてしまうかもしれない。どうか私を恨んでほしい。だけど、どうか許してほしい。
「ユマ?」
「何でもないよ」
隠し持っていた彼女の写真をごみ箱へと捨て、彼に向かって微笑む。
「……ユマ、ごめん」
「お前、透視能力でもあるのか?」
「ううん。でも、ユマが悲しそうな顔するからさ」
「そりゃごめん」
「俺、頑張るから。絶対アンタの傷、塞ぐから。だから……」
肩の傷に優しく口づけた後、抱きしめられる。
ああ、やっぱり私は許されないだろう。でも。それでも。
「ああ、頑張ってくれ。もう後悔しないように、な」
『ほほ。若い若い。とりあえずケーキでも焼くかな。あとはチキンと……』
「だ~! 俺も手伝うぞ、じいさん!」
「それなら私も……」
『お前さんは』「寝といていいから!」
「ふふ。本当に孫と爺さんだな」
息ぴったりな気遣いをみせる二人を見て笑う。
『お前さんも孫に認定してやろうか?』
「全く長生きするよこの爺さんは」
「はは!」
狡い私は願ってしまう。この幸せが少しでも長く続きますように、と。今日という日を後悔することがありませんように、と――。
ユマ:過去のトラウマにより古傷の痛みが癒えない剣士。ネーミングはUMA。
チーノ:カブラ爺に弟子入りした不思議くん。ネーミングはツチノコ。
カブラ:薬屋のじいさん。ネーミングはチュパカブラ。
ロネス:ユマの元恋人。魔物に殺された。ネーミングはネス湖。
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『ユマ、アナタは強く生きて。間違っても、今日のことを後悔しては駄目よ?』
腕の中で血を流しながら微笑んだロネスは、そう言い残して息を引き取った。
「ああ、ロネス……。どうして、どうして……!」
私は余りにも無力だった。最愛の女を救うことも、その仇を取ることも叶わなかった。
憎き魔物につけられた肩の傷が燃えるように痛い。痛くて、熱くて、死んでしまった方がマシだと思うくらいに辛くて――。
「じいさん、いつもの薬を頼む……」
『なんじゃ。もう使い切ってしまったのかお前さん』
行きつけの薬屋でいつものように古傷の痛み止めをせびると、そこの店主であるカブラ爺があからさまに嫌な顔をする。
『あのなあユマ。何度も言っておるが、この薬は体によくはない。使いすぎると危険なんじゃ。そうバカスカ飲むなといつも言って……』
「金は前回の倍払うから……」
『む、むむ……。じゃがな……』
金貨の入った袋を目の前で振ると、じいさんの顔に葛藤が浮かぶ。
「頼む。何なら三倍でも構わな」『乗った!』
指を三本立てた途端、良心との葛藤を横にぶん投げたじいさんが興奮気味に言葉を被せる。全く現金なじいさんだ。
『少し待っていてくれ。今、調合したやつを持ってくるでな』
「ああ。なるべく早く頼む」
店の奥に入っていくじいさんの背中を見守ってから、痛む肩に手を乗せる。その傷ができて早一年が経とうとしているというのに、それは受けた当時と変わることなく私を苛み続けている。
ああ、ロネス。後悔するなというのは無理だ。私は未だに強くはなれない。きっと時間が解決してくれるとばかり思っていたのに。私の肩はあの日と変わらず痛み続けている。薬に頼るばかりでは駄目だとわかっているさ。だけど、大きなきっかけでもない限り、この痛みは――。
「どりゃー!」
「……何者だ?」
「痛って!」
背後から勢いよく放られた液体を避け、その犯人を取り押さえる。
「なんで避けちゃうかな! 今の! 実験失敗! 反射神経良すぎ!」
取り押さえられて尚、じたばたと元気よく暴れる少年に見覚えはない。
「敵か?」
床にぶちまけられた緑色の液体は余りにも怪しすぎる。
『ああ! 待っとくれユマ。そいつはワシの弟子なんじゃよ』
腰の剣に手を掛けた瞬間、再び店頭に現れたじいさんが慌てた声でそう告げる。
「弟子……? この少年が?」
『ああ。ワシとて何度も断ったんじゃがな。頼み込まれて仕方なく……』
「金積んだら折れたんだよ。このじいさん」
『馬鹿、お前、そりゃあワシとて老後の資金が欲しいんじゃわい!』
「おいおい」
相変わらずガメついじいさんに呆れつつも少年を解放してやる。
『だが、どうも選択を間違えたらしい』
「む……」
じいさんの目線を追うと、店の中にはおびただしい数の試験管が転がっていた。前に来た時はなかったものだ。
『こいつは狂っとる。研究熱心といえば聞こえはいいが。薬のことしか頭にない、立派なマッドサイエンティストだ』
「失礼だな~。ま、言ってること自体は合ってるけどさ~」
「大体の事情は分かったが、私にとってはどうでもいい話だ。じいさん、早くしてくれ。私は薬を貰いに来ただけだ。世間話に付き合っている暇はない」
『は~。お前も相変わらず愛想がないのう。全く。ほれ』
「ん、確かに」
「え~!? お兄さんもう帰っちゃうわけ? もっと俺の実験に付き合ってよ~!」
「私は忙しいんだ。遊びならじいさんとやれ」
「ケチ! もうどうなっても知らねーぞ!」
あっかんべーと舌を出す少年に白けた視線をくれてやる。生憎だがガキに構っている余裕はない。己のことでこちとら手一杯なのだ。
『ぎいいいいいいいいい!』
どしり、と音を立てて斬られた魔物が地面に倒れる。
「は……。やはり調子が悪い。早めに薬を貰って正解だったな」
剣の血を払い、先ほど貰ったばかりの薬を口に投げ込む。
少し前までは、魔物を倒している間だけは痛みを忘れることができた。
なのに。最近じゃ、自らを騙す方法もついに薬だけとなってしまって……。
「あ……?」
ドク。心臓が変な音を立て、視界が歪む。
「なんか、変だ……。ぐ、まさか……」
飲んだ薬と同じものを観察し、舌を打つ。
ほんの少しだが、いつもより錠剤の色がくすんでいる。
「やられた」
少年の捨て台詞を思い出し、頭を抱える。全く、あのじいさんめ。とんだ弟子を取りやがったな。
「おい少年! お前、まさか私の薬を入れ替えたんじゃあるまいな?」
「あ、意外と早かったね~。感心感心」
「貴様……」
「ああ、貴様じゃなくて。俺の名前はチーノっていうんだ。お兄さんさあ、自己紹介する間もなく帰っちゃうんだもん。悲しかったな~」
「言いたいことはそれだけか?」
悪びれる様子もなくつらつらと語る少年に、泣く子も黙る睨みを利かせてやる。
「そんな怖い顔しないでよ~! 俺はただ、老いぼれじゃない実験台が欲しいだけなんだって!」
「他でやれ」
「え~。でも俺、お兄さんじゃなきゃヤダな~」
「殺されても文句はないみたいだな」
「怖いな~。でも。お兄さんはさ、今、頭がすっご~く痛いでしょ?」
「ッ!」
少年が指を弾いた途端、頭が割れるように痛む。
「ハイ、コレさっきの薬の効果ね。暗示がかけやすくなる薬。うん、成功したみたいだ。んじゃ、お次はコレで!」
「ふざ、けるな……、っは」
まともな抗議をする暇もなく、試験管の中の液体をかけられる。慌てて拭おうとするが既に遅く、へなへなとその場に座り込む。
「体の力が抜けて動けないでしょ? これも成功だね」
「っ……」
「ああ、助けを呼ぼうったって駄目ですよ。カブラ爺は遠いとこまで買い出し中だし、知っての通りこんな森の中じゃ誰も助けに来ない。お客さんだって滅多に来ないしね」
にこりと笑ってみせた少年の手がシャツを引っ張り、無理やり肩の傷を晒す。
「なにを……」
「ああ、やっぱりそうだ。この傷。俺がつけたやつだ」
「え?」
思いもしなかった台詞を吐いた少年を凝視する。しかし、その瞳には嘘を吐いている様子はない。
「とっくに治ってるくせに、ことあるごとに思い出しちゃって痛むんでしょ? トラウマなんでしょう? だから精神安定剤って。ふふ、あはは。随分と可愛いもんだ!」
「おい、お前は、さっきからなにを言って……」
「分かるでしょ? 俺はアンタの女を殺した怪物だよ」
「は……?」
目の前にいる少年からは魔物の気配など感じない。正真正銘人間だというのに、何故か彼の言葉が否定しきれない。
ああ、そうだ。あの目だ。あの燃えるように赤い瞳。あれは全く一緒じゃないか!
「あの女、俺に呪いをかけて死んだんだ。そのせいで、俺は人間になってしまった。この俺が、非力な人間に!」
「まさか」
いや、あり得ない話ではない。ロネスは私と共に魔物を倒すため立ち上がった魔術師だった。負けん気の強い彼女が、ただで死ぬはずがない。
「困ったことにこの呪い、掛けた本人にしか解けないという最悪なオプション付きだ。流石の俺も絶望したよ」
「ああ、まさか。私はお前を逃がしてしまったことを後悔していたというのに。ロネスはやり遂げていたというのか……」
「いやあ本当に憎らしいね。俺はアンタの比でない程この一年、己の不甲斐なさを呪い苦しんだよ。だけど、だからこそ、俺にはどうしても成し遂げなければいけないことがあった。何だと思う?」
少年の赤い瞳がぎょろりとこちらを睨みつける。その奥底に潜む感情を私は知っている。なんせ、それは私自身がこの一年持ち続けてきたものだったから。
「復讐……」
「そう。お前を殺すことだ。そうすればあの女もあの世で悔しがることだろうよ。俺はそれだけを糧にしてこの非力な体で薬学を学び、今この瞬間のために生きてきた」
「災厄の魔物と謳われたお前が随分と情けないな」
「五月蠅いな。こうでもしなきゃ腹の虫が治まらない。勿論、ただ殺すだけじゃ飽き足らないがな!」
「!」
口に当てられた布から逃げようとするが、すぐに意識が朦朧とする。甘い香りがして、体が痺れて……。
「あ、熱い……」
体の奥底から欲が湧き上がって止まらない。
「最後の実験も成功みたいだね」
「は……、あ……ッ!」
触られてから初めて、己のそれが窮屈そうにズボンを押し上げていることに気づく。
「はは! こんなにおっ勃てちゃってカワイソー。あ、ちょっと。撫でただけで勝手に気持ちよくならないでよ」
「ッう、く……。さわ、るな……」
少年の手から少しでも逃げようと体をずらすが、腕を掴まれ、そのまま抱き上げられる。
「店先でやるのもよくないし、ちょっと興が乗ったから奥のベッドに連れてったげるよ、ユマ」
「は……? や、待っ……」
少年はその華奢な見た目とは裏腹に軽々しく私を持ち上げ、ベッドに降ろす。短期間で薬学をマスターしていることといい、やはり完全に平凡な人間に変わったとは言い難い。それを本人が自覚しているかどうかはわからないにせよ、だ。
「この日のためにた~くさん色んな薬を用意したんだ。今からぜ~んぶ試してあげるからさ、ちゃ~んと天国にも聞こえるように喘いでよね? ユマ」
「ッ……」
最低な挑発に少年を睨む。だけど、彼が首筋に口づけた途端、怒りは欲に支配されて……。
「あっ、イく、もう、ッ~!!」
「は、もう何回目だっけ。はは、ここ、すごい俺のでぐちゃぐちゃだ」
「ん、あ……。ふ、掻き混ぜるなって……ああっ!」
「イったばっかですぐ気持ち良くなっちゃうんだから、人間ってほんと欲深いんだね」
「これ、絶対、薬のせい……、はあッ、あ、言った傍から、薬、足すなって……、あああッ!!」
どろどろの液体を中に擦り込まれた途端、快感が強まり、目の前がチカチカする。
「うわ。エロい顔。はは、アンタさあ、自分の女を殺した怪物の下でまんまと騙されて腰振ってるんだよ? わかってる?」
「ん、あ、もっと、奥、ああ、そこ、駄目、指じゃ、足りない、もっと……」
「っ……。ほんとに、わかってないでしょ。自分がどんな顔して誘ってるか。勘弁してくれよ。こんなの、卑怯だ……」
「は、あ……。も、焦らすな……。頼むから……。欲しい……」
「ぐっ……。あ~、もう! なんだよこれ! なんで俺がこんな……!」
「チーノ、も、イかせて、くれ……」
欲に侵された体中が熱い。頬が火照って仕方がない。勝手に流れる涙が止まらない。
「くそ! ああもう! これだから人間は嫌なんだ!」
欲に押し潰された赤い瞳が私を捉える。その鋭い視線に全身が悦びに打ち震える。
ああ、そういえば。いつの間にか肩の痛みが嘘みたいに消えている。
「おい、いい加減起きろ。じいさんが帰ってきちまうぞ」
「ん……」
重たい頭を振るい、ベッドの上で起き上がる。窓から差し込む陽の光に目を細めながら、蘇りつつある記憶を整理する。
「ええと、あれからどれほど経った?」
「二日。死んだように眠ってたんだよ、アンタ。流石に薬を盛り過ぎたみたいだ。……心配した」
「心配?」
「そんな目で見るな。とりあえず、これを飲め。お前、酷い声してる」
「誰のせいだと……」
カップを受け取り、口をつける。不思議な色をしたそれは、乾いた喉に心地よい清涼感をもたらしてゆく。
「アンタさ、あれだけ酷い目に遭っといて警戒とかしないわけ?」
「今更だろ。それに、今のお前からは邪悪なものを感じ取れない」
「……体も痛むだろ? 薬を調合しといたから、食後に飲め」
「お前は俺のことを殺すんじゃなかったか?」
「アンタこそ。今殺ろうと思えば殺れるはずだ」
そう言って挑発するような瞳を向けた彼は、驚くほどに無防備だった。だが。
「別に。彼女はきっとそれを望んじゃいない。お前を見ていたらそう思えた」
「人間はよくわからないな」
「お前も人間だろう?」
彼の赤い瞳は揺れていた。魔物だった彼は、人間としての感情を得て変わろうとしているのだ。
「俺は、わからない。今までは何をやっても満たされなかったんだ。人間たちをどれだけ殺めても、だ。だが……」
「何だ?」
意味ありげにこちらを見つめる彼に首を傾げる。が、その奥に潜む欲に気づき、納得する。
「アンタを抱いたら、不思議と心にぽっかり空いた穴が埋まった。こんな気持ちは初めてなんだ」
「寂しかったんだろう」
「なあユマ。こんなことを言えばきっとアンタは俺を軽蔑するだろう。でも……」
「それは言わない方がいい。きっとお前は後悔する」
「いいや。言わない方が後悔すると思うからこそ言わせてくれ。ユマ、俺はアンタが好きになった。アンタが俺に自害しろというならば今すぐそうしてしまうほどに、だ」
取られた腕が燃えるように熱い。きっと顔も見て分かるほどに赤く染まってしまっていることだろう。薬の効果か、はたまた情事を思い出してしまったせいか。それとも。
「私はお前を許してはいない。ロネスを殺され、私の体も弄ばれた」
「じゃあ、どうしてそんな顔をするんだ。望みがないと言うのならば、一思いに殺してくれ」
「それは……」
わからない。肩の古傷を擦ってみたが、やはりそれに痛みはない。
あれだけ憎かったというのに。あれだけ酷いことをされたというのに。どうして、何故。私は目の前の仇に剣を振るうことができないのか。
『おおい。チーノ。帰ったぞ。お前が留守番をしてくれたおかげで、良い素材が入ったわい』
「あ……」
タイムリミットを悟った彼が、窓枠に手を掛ける。
「待て。どこへ行くつもりだ」
「どこって。そりゃ……」
「何も言わずにここを出る気か? じいさんが悲しむぞ?」
「別に。俺にはもう関係な……」
『おおい、チーノ! いるんだろ! 荷物が重い! 手伝っとくれ! お前の為の生活用品も買ったらすっかり重くなってしもうたわ!』
「カブラじいさん、ああ見えてお前のこと結構気に入ってるみたいだぞ? 初めて弟子が出来たもんだから嬉しいんだろうな」
「でも、俺はここに居るわけには……」
「私が居ろと言っても、か?」
「……正気か?」
「さあ。何しろあれだけ薬漬けにされたからな。狂ってしまったのかもしれん。でも。だったら正気に戻るまで、お前を泳がせておくのも悪くはない」
「自由に泳がせてたら、またアンタに食いついちまうかもしれないぞ?」
「無理やりやるような真似はもうしないだろう?」
「はあ? どうしてそう思う?」
呆れたように不貞腐れるチーノを見て、思わず笑う。
「そりゃだって。そんだけしおらしくされれば、そう信じたくもなるもんだ」
『おおい! 聞こえとるのか~!』
「あ~、もう! ハイハイ行きますよ! 行けばいいんでしょっ!」
考えることをやめたチーノは、こちらにあっかんべーと舌を出してから、店先へとどすどす歩いてゆく。
『あ? ユマじゃないか。なんでお前さんがここにいるんだ?』
「さあ、なんでかな」
『……チーノ、お前さん、中々趣味が悪いな』
「おい! アンタが意味ありげな視線でこっち見るから! 即バレしただろうが!」
「はっ。せいぜい困れ。大いに困れ。そんで毎日ロネスに謝れ。人間として徳を積め」
「……そしたら、アンタは許してくれるのか?」
「さあな。でも、私の気は晴れるかもな」
「じゃあやるよ。なんせ、俺はアンタにベタベタに惚れちまったからな」
『あ~。よくわからんが、お祝いでもするか?』
困惑しながら、買ってきたばかりの酒を手に取ったじいさんが笑う。
「祝うには早いけど、飯は食わせてもらおうか。何しろ馬鹿弟子のせいで、まともに動けないんだからな」
「薬で和らいでるはずだ!」
「私だって一人で飯を食うのは寂しいんだ」
『え~っと。ユマもここで暮らし始めるか?』
「は?!」
「ふふ」
冗談とも本気ともつかないじいさんの台詞にチーノが大げさなくらい動揺してみせる。
それを見ているだけで、なんだか心が馬鹿みたいに軽くなるのだ。
なあ、ロネス。人間というのは本当にどうしようもない。私は、お前がいなくてどれだけ寂しい思いをしたことか。それなのに。いや、だからこそ、だ。私はいつかお前を忘れてしまうかもしれない。どうか私を恨んでほしい。だけど、どうか許してほしい。
「ユマ?」
「何でもないよ」
隠し持っていた彼女の写真をごみ箱へと捨て、彼に向かって微笑む。
「……ユマ、ごめん」
「お前、透視能力でもあるのか?」
「ううん。でも、ユマが悲しそうな顔するからさ」
「そりゃごめん」
「俺、頑張るから。絶対アンタの傷、塞ぐから。だから……」
肩の傷に優しく口づけた後、抱きしめられる。
ああ、やっぱり私は許されないだろう。でも。それでも。
「ああ、頑張ってくれ。もう後悔しないように、な」
『ほほ。若い若い。とりあえずケーキでも焼くかな。あとはチキンと……』
「だ~! 俺も手伝うぞ、じいさん!」
「それなら私も……」
『お前さんは』「寝といていいから!」
「ふふ。本当に孫と爺さんだな」
息ぴったりな気遣いをみせる二人を見て笑う。
『お前さんも孫に認定してやろうか?』
「全く長生きするよこの爺さんは」
「はは!」
狡い私は願ってしまう。この幸せが少しでも長く続きますように、と。今日という日を後悔することがありませんように、と――。
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