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51~60
(51)メロンパンの君
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夏休み。補習。茹るような暑さ。学校の屋上で昼食をとろうとしたら、先客がいて……。
明るいメロンパン厨×クール(天然)。
最初はひと夏のブロマンス寄り青春ストーリーだけど、最後はバッドエンド寄りのメリバ。
爽やかな話で終わるはずだったんですけど……ノスタルジー的な哀愁が好きです!
いつのまに~の先生がちょろっと出てます。オチを思うと、彼の胃が心配ですね……。
夕張 理雨(ゆうばり りう)
メロンパンの君。弓立の前では明るく元気。
名前の由来は夕張 瓜。つまりはメロン。
弓立 秋(ゆだち あき)
無愛想。天然くん。自分では無愛想で嫌われていると思っているが、女子からは遠巻きにきゃっきゃ言われている。
名前の由来は立秋(8月)
ーーーーーーーーーーーーーーーー
教室に響く鉛筆の音。外から聞こえる野球部の声。一際耳障りな蝉の声。
ああ。去年と全く変わらない夏だ。
『終了!』
教師の声を皮切りに、張り詰めた空気が緩み出す。
『回答用紙を後ろから回せ~。あと、今から配る分は明日までの宿題な~!』
『え~、イツセン宿題多すぎ~!』
『テストだったんだし、今日くらい休ませてよ~!』
『ばーか。全然多くねえだろ。テストも簡単なやつだし。3年になったらこんなもんじゃないぞ~』
『せっかくの夏休みなのに、補習なんて!』
『嘆くな嘆くな。しょうがないだろう。仮にも進学校なんだから』
教師とクラスメイトのやりとりをぼんやりと聞きながら、筆記用具を鞄にしまう。
まぁ俺も、まさかここまで高校の夏休みに自由がないとは思っていなかった。
毎朝通常通りに起きて学校へ赴き、小テストとその解説と自習のローテーション。昼前には解放されるのだが、逆にそれがまた虚しい。
『はぁ~。今から部活とかだる~!』
『うげ、廊下あぢ~! ファミレスで飯食って涼んで帰ろうぜ~』
『カラオケ行こうよ~』
『駅前のケーキ屋が~』
部活のある者は、このまま学校に残り、部活のない者たちは、各々若者らしく放課後を満喫するらしい。
少しだけ羨ましく思いながらも、楽しげな彼らに続いて教室を出る。
ぶわり。
クーラーの入っていた教室から出た途端、息が詰まりそうな程の熱気が肌を襲う。
『そういえば、メロンパンの君が来てたらしいよ』
『えっ、マジ?』
『え~! 久々にお顔を拝んで帰りたい~!』
メロンパンのきみ?
聞きなれない単語に首を傾げながら、前を歩く女子を見つめる。
暑さにも負けず、きゃっきゃとはしゃぎ合う彼女たち。まるで俺とは違う生き物のように元気だ。開け放たれた窓からじりじりと、頭に響く蝉の声が聞こえてくる。
ああ。まったく騒がしい。
そのまま空を仰ぐと、鬱陶しいほどに明るい入道雲が真っ青な空を支配していた。
どうにも暑さに参ってしまった俺は、日がもう少し落ちるまで学校で過ごすことにした。
こんな炎天下を歩いて帰るなんて、考えただけで余計に暑くなる。
丁度、今日中に夏休みの宿題を片付けてしまいたかったところだ。普段なら家で一人、ゆっくりとやるのが好きなのだが、仕方がない。軽く昼食を摂って図書室へ行こう。
思い立ったが早々に、俺は購買部へと足を向ける。
『メロンパンの君、やっぱ購買部行ったのかな』
『見に行こうよ』
メロンパン、か。
目の前の女子の話に、耳を傾けながら心の中で呟く。
前に食べたのはいつだっただろうか……。
蘇りそうになる余計な記憶に首を振り、蓋をする。
いや、それより『メロンパンの君』って恥ずかしいな。察するにイケメンか何かの愛称らしいけど……。
結局、購買部にメロンパンの君はいなかったようで。
女子たちが落胆して、せめてもとメロンパンを買ってゆく。
その様子をなんとなく眺めながら、俺も適当なパンを手に取り会計へ並ぶ。
『あっ、弓立くんもパン買いに来たんだ?』
「ん。ああ。残って課題を片付けようと思って」
会計を済ませたクラスメイトが、すれ違いざまに言葉をかけてくる。
『そっか~。偉いなぁ。ええと、それじゃあ、頑張ってね!』
「ありがとう」
短い会話。それは、俺が今日初めて発した言葉だった。
暑い。
窓は開けられてはいるが全く風の吹いていない今日は、空気が籠っていてとにかく気持ちの悪い暑さだ。
すっかり誰もいなくなってしまった階段を登ってゆく。
さっきまでの喧騒が嘘のように孤独を感じさせる静寂。
……さっきの女子たち、よそよそしかったな。
やはり、俺が冷たいからだろうか。無愛想で無口だし、つり目だし。
そのせいか周りから何かと距離を取られ、自然と一人でいるのが当たり前になってしまった。
虐められているとかではないが、何とも寂しい気持ちになる時はある。
現に今もその虚しさが暑さと共に襲いかかって……。
ぱちり。
己の頬を両側から軽く叩く。
そんなことを考えても仕方がない。今はとにかく腹ごしらえだ。
校庭は運動部が休憩中らしく、和気藹々と弁当を食べていた。
教室は熱気が酷くて食欲が失われる。
図書室は飲食禁止だし。
というわけで、行く当てをなくした俺は一縷の望みをかけて屋上の扉に手をかける。
開いてはいないだろうが、それでも一度は確かめてみたかったその場所。
夏休みなのもあってか少しの好奇心が疼き、ドアノブを回す手に力が入る。
かちり。
ドアノブが回転する。
「あ」
向こうに押し出すと、ドアはぎしりと音を立てて開き――。
「あ~、んっ?」
視界が開け、心地よい風が顔に当たる。
眩しさに慣れた目が映し出した、まぬけな声の発生源。
今まさにメロンパンに齧り付こうと、大きな口を開けた少年がこちらを向いて。
ばちり。
目がかち合う。
「……」
ぱたん。
とっさに扉を閉める。
あ~、先客がいたか。仕方がない、どこか他をあたろう。
うんうんと一人頷き、何事もなかったかのように階段を下りていると……。
「ちょっと、どうして閉めるのさ~!」
「わっ」
背後からいきなり声を掛けられ、小さく悲鳴を上げてしまう。
「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
「別に、驚いてない」
本当は驚いた。コイツ、ドアの音も階段を下りてくる気配もしなかったぞ。
「あ、もしかしてご飯食べるためにここに来た感じ?」
「ん、いや……」
手に提げた袋を隠そうとするが一歩遅く。
「丁度オレも今から食べるとこだったんだよ。一緒に食べよ?」
「いや、俺は……」
ぐいぐいと意外と強く手を引っ張られ、行く宛もない俺は仕方なくコイツと昼食を共にすることになった。
「ん~、やっぱ屋上で食べるご飯は格別だよね~!」
ふにゃりとした笑顔でメロンパンに齧り付く彼。
促されるがまま、ペントハウスを背もたれにして彼の横に座る。影が出来ているため、地面は思ったよりも熱くない。それに、吹きつける風が心地よくて。
「さっきまでは風吹いてなかったのに、キミってばラッキーボーイだよ」
あっという間に一つ目のメロンパンを平らげた彼は、2つ目に手を伸ばす。
あの袋、メロンパンだらけじゃないか?
彼の隣に置かれた大きなレジ袋から覗くのは、メロンパンメロンパン、そしてメロンパン。
「あれ、君もしかしてご飯それだけ?!」
三つ目のメロンパンに取り掛かろうとした彼が手を止める。
目線の先にあるのは、俺が買ったタマゴサンド。
「烏龍茶もあるぞ」
袋から烏龍茶を取り出して彼に見せる。
「いやいやいや、飲み物の心配してんじゃなくてね」
「何だ違うのか」
「男子高生たるもの、食べなきゃ損損成長せんせんだよ!」
「お前とそう変わんないと思うが」
「変わるよ! ガリガリだよ! 骨と皮だよ!」
「身長のことじゃないのか。というか、そこまで痩せてないし」
「身長は、オレのがちょっと高いっしょ! ほい!」
「ん?」
ふいに目の前に寄越されたメロンパン。
「それ、食べていいよ。特別ね!」
どういう意図か考えあぐねていると、夏によく映える明るい髪をなびかせた彼が笑う。
その笑顔は、夏の日差しに負けないくらい眩しくて……。
「いや、いらん」
「は、え?」
きっぱりと断る俺に、断られることを想定していなかったと見える彼が、ぽかんとしたアホ面を晒す。
「悪いが俺、メロンパンは嫌いなんだ」
「え、ええ~。この流れで~?」
がっくりと肩を落とした彼に、ハッとする。
ああ、またやってしまった……。
俺、夕立 秋は、とにかく人の気持ちが汲めない男だった。他人が何を考えていて、自分に何を求めているのか、てんでわからない。どこか人とズレているらしい。
普段は言葉を濁し、簡潔に答え、他人との衝突を避けているのだが。目の前の強引過ぎる少年には、どうにも調子が狂ってしまう。
「メロンパンの何が嫌いなのさ~!」
「……メロンパンって結局クッキーが食べたいだけだろ。中身のパン、スッカスカで味しないし美味しくないんだよ」
子どもの頃に食べた味が、舌の上に蘇る。ねちょねちょとしたクッキー部分と、パサパサした固い中身。噛めば噛むほどうんざりする。あれはお世辞にも美味しいとは言い難い。
ああ、でも。これでコイツにも嫌われたかな。答えてしまってから、そっとため息を吐く。友人を作るチャンスだったのにな……。
「なんだ、そんなことか。んじゃ、ほい」
「?」
おもむろにレジ袋に手を突っ込むメロンパンの君。その姿はまるで、四次元ポケットを漁る猫型ロボットみたいで面白い。
「じゃーん! これならきっと、おいしいよ!」
自信満々な顔で四次元ポケット……じゃなく、レジ袋から取り出されたそれは、やはりメロンパン。
「いや、だから。メロンパンは好きじゃないって言って……」
「まぁまぁ、そう言わず。騙されたと思って食べてみてよ」
「騙されないし、いらな……」
「むむっ、隙ありっ!」
「は……? むぐっ!」
いきなり大きな声を出す少年。その声に驚いた隙に、素早く開封されたメロンパンが口に突っ込まれる。
「ね、おいしいでしょ?」
「う、甘い……」
口に入ってきた分を何とか噛み千切り、飲み込む。が、やはりクッキー生地の部分が甘すぎる。
「え~、当たり前じゃん。菓子パンなんだから」
「菓子パンを食事として摂るのはどうかと思うが?」
「それは確かに言えてるねぇ。菓子パンじゃ栄養バランス悪いし」
ま、タマゴサンドも栄養偏ってるけどね、と棘を突き刺した少年をひと睨みするが、彼は全く知らん顔。
「それより、もっと食べ進めてみてよ~!」
「む、むぐ……!」
そして、言葉を発する隙もなく、再びメロンパンが押し込まれる。
口の中が、パサつく……。これが嫌なんだって言ったの、に……って、あれ?
「えへへ。気づいた?」
嫌々ながら咀嚼していると、急に口の中が滑らかになる。
「これ、生地の中にメロンクリームが入ってる……」
「正解! これで味単調パサパサ問題も解決でしょ?」
「いや、でも……。ゲロ甘すぎる……」
「え~! 甘くなきゃメロンパンじゃないよ!」
久々に味わったそれは、歳のせいか酷く甘ったるくて。
「じゃあ、やっぱメロンパン自体無理だ」
「……」
俺の呟きのせいで俯いて黙り込んでしまった彼に、再びハッとする。
しまった。また俺は空気も読めずに……。
数分前と全く同じ失敗を悔いても後の祭り。さすがの彼も愛想が尽きたらしい。これは相当怒っているぞ……。
むんずと肩を掴まれたところで、覚悟を決めて目を瞑る。そして。
「……っから」
「え?」
勢い余ってつっかえたような物言いに思わず目を開け、聞き返す。それは、憎悪を含んだ負の音ではなく。
高揚した息遣い、紅潮した頬、そして輝かんばかりの瞳は真っ直ぐ俺に向けられていて。
「だからッ! 絶ッ対、キミにメロンパンのおいしさを認めて貰うから……!」
「は、はぁ?」
てっきり罵声の一つでも貰うのだろうと思っていたのに、飛んできたのはとんでもなくプラス思考な大宣言。
若く純粋な力に満ちた、向日葵のように微笑む彼はまるで……。
「メロンパンの君」
「え?」
「って、お前のことだよな」
「ぷ、あはは、ほんと脈絡ないねキミ。そうそう。オレってばこの通り、メロンパンばっか食べてるからさ、いつの間にかそう呼ばれちゃって」
ぽかんとした後、少年は、弾けるように笑い声を立てる。
女子たちが一目見たいと言っていた意味もわかる気がした。なるほどこの屈託のない笑顔は、人を癒す力を持っていそうだ。
「ぴったりなあだ名じゃないか」
「そうかな~?」
「幸せとメロンパンを配り歩く、おとぎ話の王子様みたいだ」
そう呟いた途端、彼は目を見開いて、こちらを凝視する。
「あ、いや。ものの例えっていうか、そんな絵本があった気がしたから……!」
言い訳した後、急に恥ずかしくなって、慌てて烏龍茶に手を伸ばす。
我ながら臭いことを言った。でも、王子様という言葉は彼にしっくりくるよなぁ。
なんて考えながら、喉の渇きを潤すためにペットボトルの蓋をひねる。そして、口をつけようとしたその時、突然、彼が覆い被ってきて……。
ぺろり。
「っえ?」
口の端を舐められ、流石に呆然とする。
「ああ。ゆだっちの口にクリームがついてたから」
「ついてたって……。お前がメロンパン押し付けたから、だろ」
「あはは」
「ていうか、『ゆだっち』って何だよ」
「うん。弓立だからゆだっち。可愛いっしょ?」
「なんで、名前知って……」
「なんでもなにも、オレたちクラスメイトだし」
「え……」
そうだったのか。全く知らなかった。
「ま、オレも休みがちだったから、忘れられてても仕方ないけど」
そういえば、一つ前の席、いつも空いてたような気がする。きっとそれだ。
「それに、ゆだっちってば他人に興味なさそうだもんね」
「うっ」
率直な意見が、ぐさりと胸に刺さる。彼の言う通り俺は周りのことがわからない。現に一学期を終えてなお、クラスメイトの名前と顔が一致しない。いや、一致しないどころか、顔も名前も全くと言っていいほど覚えてすらない。自分でも嫌になるほど他人に興味が湧かないのだ。かといって、自分大好きナルシストなわけでもないが。
「まぁ、オレも他人になんか興味ないんだけどね」
「え?」
「オレとゆだっちは似てるのかもね」
彼はにこりと笑い、手に持ったままだったメロンパンを俺の手から奪う。
俺とコイツが似てる? まさか。正反対だ。光と闇。炎と氷。カラスと太陽くらいの差がある。
「でも。ゆだっちは別」
「別……?」
「そ。特別。やっと会えた、運命の人」
食べかけのメロンパンに躊躇いもせず、齧り付く彼を見つめる。よくもそんなに臭い台詞が吐けるものだ。
「あ、食べるんだった?」
「いや、これ以上は食べたくない」
「ちぇ~」
半分以上残っていたメロンパンは、あっという間に彼の胃袋へ消える。
「よく食べるな」
「そりゃメロンパンの君だからね。それに」
「?」
「ゆだっちとの間接チューだもん。ぺろりと食べちゃうさ」
「それ何か味違うのか?」
「ずこー! そこは照れたり気持ち悪がったりするとこっしょ?!」
「ずこーってなんだ?」
「転けた音だよ! 効果音だよ! 転けるの嫌だから口で言ったんだよ!」
「そういうものなのか?」
初めて聞く擬音に首を傾げると、少年は笑い出す。
「ふふ、ゆだっちってさ、ほんと可愛いっていうか……!」
「ああ、さっきもそんなこと言ってたな。だが、俺にその可愛いあだ名は馴染まないと思うんだが?」
「ぶ、ぶは、あだ名のことね!!! 確かにさっき可愛いでしょって言ったもんね! げ、げほっ」
「テンション高いな」
「お、おかげさまでね! あ~、ほんともう……」
隣で目に涙を溜めながら笑い転げる少年。それを不思議に思いながら、俺はタマゴサンドを一気に口に押し込む。メロンパン以外なら、腹を満たせりゃそれでいい。
「盛り上がってるとこ悪いんだが。食べ終わったし、そろそろ行くわ」
「え~っ、もう帰るの?」
「いや、図書室で宿題をしようと思っているんだ」
「そっか。ゆだっちはやっぱり偉いんだね」
にこりと微笑むメロンパンの君。その後ろに広がる真っ青な空。気が遠くなるような白さの入道雲に目を細める。じわじわと鳴く蝉の声が、一瞬どこか懐かしい記憶を掠めてゆく。
あれは、なんだったっけ……。前にも、こんなことがあったような……? 気のせい……? 夢……?
「っち、ゆだっち!」
「んわっ!」
白昼夢の糸を辿っている途中で、肩を揺さぶられ、思考が霧散する。至近距離で覗き込む彼を遠ざけ、いつの間にか掻いていた額の汗を拭う。
「大丈夫?」
「ん、ああ。熱いせいかな。ぼーっとしてた。それじゃあ今度こそ、失礼するよ」
「あ、待って。オレの名前、夕張 理雨。次、会うときまで覚えといてよね?」
ひらひらと片手を振ってくる彼に、振り返すことなく背を向け、ドアを閉める。
あの袋に入った残りのメロンパンは一人で食べきれる量なのだろうか。ぼんやりとメロンパンの君……夕張 理雨を思い浮かべながら階段を下りてゆく。
なんか、あの顔だけは忘れそうにないな。きらきらしていて、いつまでも見ていたくなるような笑顔。あんな風に笑えたら人生どんなに楽しいだろうか。
あ、場所を使わせて貰ったのにお礼を忘れてしまったな。それに、自分勝手に切り上げてしまったし。愛想も全くない返答をしてしまった。はぁ。久々に人と会話できたのに。テストだったら零点だ。
「……ゆだっち、か」
校舎内のむわりとした空気が体を包み込む。舌の上には、まだあの甘ったるいメロンクリームの味が残っていて不快感を更に強める。そういえば、俺にメロンパンを認めさせるのこうの言っていたな。ま、次なんてないと思うけど。
ふと彼がメロンパンに齧り付く顔が目に浮かぶ。それだけで、おいしいものを食べたような満たされた気持ちになって、不快感はいつの間にか夏の空にかき消されてしまった。
幼い頃、オレは入院してた。難しい病気で、ずっと病室から出られないまま幼少期が過ぎていった。
そして今。高校生になったオレ、夕張 理雨は何とか学校に通えるまで症状は良くなりつつあった。
だが、やはり今でも病院通い。しかも、今年は特に発作が酷くて学校を休みがちで。イライラしていた。自分が不甲斐なかった。そんな気持ちを吹き飛ばすため、病状も落ち着いた夏休みのある日、オレは屋上で一人、昔の記憶に想いを馳せながら、メロンパンを頬張ろうとしていた。
するとどうだろう。奇跡が起きた。運命が回り始めた。
あれは、まだオレが小学校低学年ぐらいの話。
幼い頃からずっと病室に閉じ込められていたオレは、限界だった。同じ年ごろの子たちは、もう小学校に通っているというのに、オレは全く外を知らなかった。小学校のグラウンドで、暗くなるまで走り回って遊べたら、どんなに楽しいことだろう。普通の子どもみたいにランドセルを背負って歩きたかった。病室の窓から、元気に走り回る子どもたちを見る度、気が狂いそうだった。
そんなやきもきした気持ちの中、変わらない毎日を過ごしていたある日。何の前触れもなく、オレの病室に見知らぬ少年が入ってきた。ランドセルを背負ったその子を見たとき、正直オレはとても嫌な気持ちになった。
しかし、こっちの気も知らない少年は、今にも泣きだしそうなくらい顔を引きつらせて、オレの顔を見て言った。
「お母さん、知らない……?」
どうやら、母親を探していたら迷子になったらしい。弱々しく呟かれた言葉に、オレは無情にも首を振る。
「お母さん、病院で働いてて、いつも会えないんだ。だから、俺が、会いに来たんだけど……。ううっ……」
ついに目から涙が溢れ出した彼を見て、ぎょっとする。涙を拭う真っ白いその腕は、大きいランドセルに対してあまりにも細すぎる。入院しているオレなんかよりもよっぽど不健康なように見えた。
「迷子になったくらいで泣くなよ泣き虫! 男だろ!? 男、だよな……?」
「おとっ、男だよっ……。う、うう」
「おい、馬鹿、泣くなってば! お前は自由に歩けるんだろうが! オレなんか、ここから出ちゃいけないんだぞ!?」
「……なんで?」
渾身の自虐。八つ当たりと慰めが混じった言葉に、首を傾げた少年が、濡れた瞳で真っすぐ見つめてくる。
「病気が治んないからだ。ずっと寝てなきゃいけないなんて馬鹿みたいだろ? 美味しいもんも食えやしない」
「でも……。病院のご飯、あるだろ……?」
「あんなもん。味気なくて病気が悪化しそうだよ」
「……じゃあ、これ、やる」
そう言って、涙を拭いた少年がランドセルから取り出したのは……。
「メロンパン?」
「うん。俺、飽き飽きしてんだ」
「いいなぁ。そんなに菓子パン食べれて」
「よくないよ。いっつもこれがご飯の代わりなんだぞ? こっちの方がよっぽど病気になるっての」
「お前の母さん、飯作ってくんないの?」
「うん。忙しいって。いっつも俺のことほったらかしててさ。離婚してるから父さんもいない。兄弟もいないしさ。自由に歩けたって、俺の方がよっぽどつまんないよ」
少年がふいに俯く。きっと涙を堪えているのだろう。その姿が、何だかすごく切なくて。守ってあげたくなるような……。
「じゃあさ、お前、時々でいいからさ、ここに来いよ。飯交換しようぜ。んでもってその後遊んでくれよ」
気づいたら、そんなことを提案していた。
「えっ。いいの?」
それを聞いた少年の顔が、きらきらと輝きだす。綺麗だな、と思った。何かを見て、こんなに心が躍るのは初めてだった。
それから、オレたちは秘密の友達になった。彼がくれるメロンパンは正直、味は全く美味しくなかったはずだ。でも、そのメロンパンは、まるで魔法が掛かったみたいに美味しかった。彼と過ごす日々は楽しかった。彼の宿題を手伝ったり、一緒にテレビを見たり、手作りの絵本を読んだり。
でも、そんな夢みたいな時間は長く続かなかった。ある時を境に、彼がぱったりと来なくなったのだ。
遠くで鳴く蝉の声。窓の外の真っ青な空。入道雲に負けないぐらい真っ白な室内。クーラーの効いた部屋の中で、オレはいつまでも待っていた。あの可愛らしい白昼夢を。
「運命だと思ったんだ」
「夕張……?」
夏休み。補習終わりの屋上で、オレたちは何度目かの昼食をとりながら見つめ合う。
「ねぇ、思い出してよ。オレのこと」
忘れている彼に、思い出して貰わなくては。そうでなくては、この夏は一生終わらない。
「思い出してって……。なに、言ってんだよ……。俺とお前は、この前会ったばっかりで……」
「違う。違うんだよ。ゆだっちにはもうわかってるはずだよ。オレはね、病院で過ごしたあの夏が一番好きだったよ。ゆだっちに会えてよかった」
「病院って……。確かに、俺は、昔、名前も知らない男の子と、病院で遊んでた。でも……」
「やっぱり。あれは、ゆだっちだったんだね。ねえ。でもさあ。どうして来るの止めちゃったんだよ。オレは寂しかったんだよ? 君が……アキくんが来てくれなくなって。オレは……」
「違う! あの子がお前なわけないだろ?!」
「オレだよ。オレは君に会うために、頑張って退院して、それで……」
「そんなわけないんだよ。だって、あの子は、もう……」
「なに……?」
蝉の声。あまりにも煩いその声は、脳を揺らし、視界をも揺らす。
「あの子は……。リウくんは、もう死んだんだ。さよならしたんだよ。だから、俺は、病院に行かなくなって……」
「嘘だ」
汗が流れ落ちる。額を拭うオレを見て、彼が震えながら指を差す。
「お前、手が、透けて……!」
指を差された手のひらを、空に翳すとなるほど透けていた。
「オレは、生きてるよ? 今でも病院に通ってるし、メロンパンも食べてる。みんなからも、メロンパンの君って呼ばれていて……」
「メロンパンの王子様」
「え?」
「あの絵本の中でお前は、王子の魔法が掛かったメロンパンを食べるんだ」
「……」
「そして、メロンパンを食べたお前は、退院して、無事に高校生になって。病院に通いながらも、俺と楽しく学生生活を送るんだ。みんなから、メロンパンの君って呼ばれて、それで……」
「だから何?」
彼が述べたストーリー。それは、オレが入院していた頃に描いた絵本のものだった。だから何だ。そう問いながらも、オレは目を瞑った。
「だから、お前は、死んだはずなのに、絵本通りに生きていて、それで、だから……」
「オレは幽霊なの?」
「こっちが聞きたい」
「……多分そうだろうね」
夢から覚めるとなんてことはない。全部、オレの妄想の中の話だったんだ。
再び目を開いたときには、あれだけうるさかった蝉の声も聞こえなくなっていた。
「でも、それならどうして。俺はお前に触れるし、お前のくれたメロンパンは確かに味がした。それに、俺以外のみんなだって、お前のことを知っているみたいだし」
「うん。それじゃあさ。こう考えたらどうかな」
「?」
「この世界自体が嘘なんだって」
「は?」
「キミは起きなければいけないよ」
「起きる?」
「あのね。夢の中でも、オレはキミと会えてよかった。オレは、キミのことが大好きだったよ……」
「ま、待て!」
追い縋る彼の手が、オレの体を虚しくすり抜ける。
本当はわかっていた。自分が死んだことも。彼の夢に呼ばれただけだったことも。あのまま夢の中でずっと過ごせていたら。どんなに幸せだっただろうか。でも。それはいけない。
目の前の少年を、現実世界へと突き落とす。
二度と出会うことのない彼の幸せを願いながら。
*
目が覚めると病院のベッドだった。
「俺は……?」
聞けば母親に捨てられた後、俺は自殺を図ったらしい。母親は、忙しかった仕事を止め、男に溺れるようになった。そして、俺のことが邪魔になったらしい。結局、俺は誰からも必要とされていなかったんだ。
俺の居場所は結局、彼と過ごしたあの夏の病室だけだった。ああ。彼が生きていたのならば……。そう思いながら自殺を図った俺は、夢を見ていたらしい。
もう少し見ていたかった。成長した彼は、太陽みたいに輝いていた。あれは、俺だけの太陽だ。
だから。
「会いに行かなくちゃ」
病院の屋上から見つめる地面の陽炎が揺らめく度に、思考が茹ってゆく。ああ、蝉の声が聞こえる。暑いなあ。でも、君がいる世界なら、ずっと夏でも構わない。
明るい空が、俺を拒絶するかのようにじりじりと肌を焦がす。俺はそっと目を閉じ、足を踏み外して、呪いのようなその眩しさを煽ぐ。
なぁ、今度こそメロンパンを克服させてくれよ?
明るいメロンパン厨×クール(天然)。
最初はひと夏のブロマンス寄り青春ストーリーだけど、最後はバッドエンド寄りのメリバ。
爽やかな話で終わるはずだったんですけど……ノスタルジー的な哀愁が好きです!
いつのまに~の先生がちょろっと出てます。オチを思うと、彼の胃が心配ですね……。
夕張 理雨(ゆうばり りう)
メロンパンの君。弓立の前では明るく元気。
名前の由来は夕張 瓜。つまりはメロン。
弓立 秋(ゆだち あき)
無愛想。天然くん。自分では無愛想で嫌われていると思っているが、女子からは遠巻きにきゃっきゃ言われている。
名前の由来は立秋(8月)
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教室に響く鉛筆の音。外から聞こえる野球部の声。一際耳障りな蝉の声。
ああ。去年と全く変わらない夏だ。
『終了!』
教師の声を皮切りに、張り詰めた空気が緩み出す。
『回答用紙を後ろから回せ~。あと、今から配る分は明日までの宿題な~!』
『え~、イツセン宿題多すぎ~!』
『テストだったんだし、今日くらい休ませてよ~!』
『ばーか。全然多くねえだろ。テストも簡単なやつだし。3年になったらこんなもんじゃないぞ~』
『せっかくの夏休みなのに、補習なんて!』
『嘆くな嘆くな。しょうがないだろう。仮にも進学校なんだから』
教師とクラスメイトのやりとりをぼんやりと聞きながら、筆記用具を鞄にしまう。
まぁ俺も、まさかここまで高校の夏休みに自由がないとは思っていなかった。
毎朝通常通りに起きて学校へ赴き、小テストとその解説と自習のローテーション。昼前には解放されるのだが、逆にそれがまた虚しい。
『はぁ~。今から部活とかだる~!』
『うげ、廊下あぢ~! ファミレスで飯食って涼んで帰ろうぜ~』
『カラオケ行こうよ~』
『駅前のケーキ屋が~』
部活のある者は、このまま学校に残り、部活のない者たちは、各々若者らしく放課後を満喫するらしい。
少しだけ羨ましく思いながらも、楽しげな彼らに続いて教室を出る。
ぶわり。
クーラーの入っていた教室から出た途端、息が詰まりそうな程の熱気が肌を襲う。
『そういえば、メロンパンの君が来てたらしいよ』
『えっ、マジ?』
『え~! 久々にお顔を拝んで帰りたい~!』
メロンパンのきみ?
聞きなれない単語に首を傾げながら、前を歩く女子を見つめる。
暑さにも負けず、きゃっきゃとはしゃぎ合う彼女たち。まるで俺とは違う生き物のように元気だ。開け放たれた窓からじりじりと、頭に響く蝉の声が聞こえてくる。
ああ。まったく騒がしい。
そのまま空を仰ぐと、鬱陶しいほどに明るい入道雲が真っ青な空を支配していた。
どうにも暑さに参ってしまった俺は、日がもう少し落ちるまで学校で過ごすことにした。
こんな炎天下を歩いて帰るなんて、考えただけで余計に暑くなる。
丁度、今日中に夏休みの宿題を片付けてしまいたかったところだ。普段なら家で一人、ゆっくりとやるのが好きなのだが、仕方がない。軽く昼食を摂って図書室へ行こう。
思い立ったが早々に、俺は購買部へと足を向ける。
『メロンパンの君、やっぱ購買部行ったのかな』
『見に行こうよ』
メロンパン、か。
目の前の女子の話に、耳を傾けながら心の中で呟く。
前に食べたのはいつだっただろうか……。
蘇りそうになる余計な記憶に首を振り、蓋をする。
いや、それより『メロンパンの君』って恥ずかしいな。察するにイケメンか何かの愛称らしいけど……。
結局、購買部にメロンパンの君はいなかったようで。
女子たちが落胆して、せめてもとメロンパンを買ってゆく。
その様子をなんとなく眺めながら、俺も適当なパンを手に取り会計へ並ぶ。
『あっ、弓立くんもパン買いに来たんだ?』
「ん。ああ。残って課題を片付けようと思って」
会計を済ませたクラスメイトが、すれ違いざまに言葉をかけてくる。
『そっか~。偉いなぁ。ええと、それじゃあ、頑張ってね!』
「ありがとう」
短い会話。それは、俺が今日初めて発した言葉だった。
暑い。
窓は開けられてはいるが全く風の吹いていない今日は、空気が籠っていてとにかく気持ちの悪い暑さだ。
すっかり誰もいなくなってしまった階段を登ってゆく。
さっきまでの喧騒が嘘のように孤独を感じさせる静寂。
……さっきの女子たち、よそよそしかったな。
やはり、俺が冷たいからだろうか。無愛想で無口だし、つり目だし。
そのせいか周りから何かと距離を取られ、自然と一人でいるのが当たり前になってしまった。
虐められているとかではないが、何とも寂しい気持ちになる時はある。
現に今もその虚しさが暑さと共に襲いかかって……。
ぱちり。
己の頬を両側から軽く叩く。
そんなことを考えても仕方がない。今はとにかく腹ごしらえだ。
校庭は運動部が休憩中らしく、和気藹々と弁当を食べていた。
教室は熱気が酷くて食欲が失われる。
図書室は飲食禁止だし。
というわけで、行く当てをなくした俺は一縷の望みをかけて屋上の扉に手をかける。
開いてはいないだろうが、それでも一度は確かめてみたかったその場所。
夏休みなのもあってか少しの好奇心が疼き、ドアノブを回す手に力が入る。
かちり。
ドアノブが回転する。
「あ」
向こうに押し出すと、ドアはぎしりと音を立てて開き――。
「あ~、んっ?」
視界が開け、心地よい風が顔に当たる。
眩しさに慣れた目が映し出した、まぬけな声の発生源。
今まさにメロンパンに齧り付こうと、大きな口を開けた少年がこちらを向いて。
ばちり。
目がかち合う。
「……」
ぱたん。
とっさに扉を閉める。
あ~、先客がいたか。仕方がない、どこか他をあたろう。
うんうんと一人頷き、何事もなかったかのように階段を下りていると……。
「ちょっと、どうして閉めるのさ~!」
「わっ」
背後からいきなり声を掛けられ、小さく悲鳴を上げてしまう。
「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
「別に、驚いてない」
本当は驚いた。コイツ、ドアの音も階段を下りてくる気配もしなかったぞ。
「あ、もしかしてご飯食べるためにここに来た感じ?」
「ん、いや……」
手に提げた袋を隠そうとするが一歩遅く。
「丁度オレも今から食べるとこだったんだよ。一緒に食べよ?」
「いや、俺は……」
ぐいぐいと意外と強く手を引っ張られ、行く宛もない俺は仕方なくコイツと昼食を共にすることになった。
「ん~、やっぱ屋上で食べるご飯は格別だよね~!」
ふにゃりとした笑顔でメロンパンに齧り付く彼。
促されるがまま、ペントハウスを背もたれにして彼の横に座る。影が出来ているため、地面は思ったよりも熱くない。それに、吹きつける風が心地よくて。
「さっきまでは風吹いてなかったのに、キミってばラッキーボーイだよ」
あっという間に一つ目のメロンパンを平らげた彼は、2つ目に手を伸ばす。
あの袋、メロンパンだらけじゃないか?
彼の隣に置かれた大きなレジ袋から覗くのは、メロンパンメロンパン、そしてメロンパン。
「あれ、君もしかしてご飯それだけ?!」
三つ目のメロンパンに取り掛かろうとした彼が手を止める。
目線の先にあるのは、俺が買ったタマゴサンド。
「烏龍茶もあるぞ」
袋から烏龍茶を取り出して彼に見せる。
「いやいやいや、飲み物の心配してんじゃなくてね」
「何だ違うのか」
「男子高生たるもの、食べなきゃ損損成長せんせんだよ!」
「お前とそう変わんないと思うが」
「変わるよ! ガリガリだよ! 骨と皮だよ!」
「身長のことじゃないのか。というか、そこまで痩せてないし」
「身長は、オレのがちょっと高いっしょ! ほい!」
「ん?」
ふいに目の前に寄越されたメロンパン。
「それ、食べていいよ。特別ね!」
どういう意図か考えあぐねていると、夏によく映える明るい髪をなびかせた彼が笑う。
その笑顔は、夏の日差しに負けないくらい眩しくて……。
「いや、いらん」
「は、え?」
きっぱりと断る俺に、断られることを想定していなかったと見える彼が、ぽかんとしたアホ面を晒す。
「悪いが俺、メロンパンは嫌いなんだ」
「え、ええ~。この流れで~?」
がっくりと肩を落とした彼に、ハッとする。
ああ、またやってしまった……。
俺、夕立 秋は、とにかく人の気持ちが汲めない男だった。他人が何を考えていて、自分に何を求めているのか、てんでわからない。どこか人とズレているらしい。
普段は言葉を濁し、簡潔に答え、他人との衝突を避けているのだが。目の前の強引過ぎる少年には、どうにも調子が狂ってしまう。
「メロンパンの何が嫌いなのさ~!」
「……メロンパンって結局クッキーが食べたいだけだろ。中身のパン、スッカスカで味しないし美味しくないんだよ」
子どもの頃に食べた味が、舌の上に蘇る。ねちょねちょとしたクッキー部分と、パサパサした固い中身。噛めば噛むほどうんざりする。あれはお世辞にも美味しいとは言い難い。
ああ、でも。これでコイツにも嫌われたかな。答えてしまってから、そっとため息を吐く。友人を作るチャンスだったのにな……。
「なんだ、そんなことか。んじゃ、ほい」
「?」
おもむろにレジ袋に手を突っ込むメロンパンの君。その姿はまるで、四次元ポケットを漁る猫型ロボットみたいで面白い。
「じゃーん! これならきっと、おいしいよ!」
自信満々な顔で四次元ポケット……じゃなく、レジ袋から取り出されたそれは、やはりメロンパン。
「いや、だから。メロンパンは好きじゃないって言って……」
「まぁまぁ、そう言わず。騙されたと思って食べてみてよ」
「騙されないし、いらな……」
「むむっ、隙ありっ!」
「は……? むぐっ!」
いきなり大きな声を出す少年。その声に驚いた隙に、素早く開封されたメロンパンが口に突っ込まれる。
「ね、おいしいでしょ?」
「う、甘い……」
口に入ってきた分を何とか噛み千切り、飲み込む。が、やはりクッキー生地の部分が甘すぎる。
「え~、当たり前じゃん。菓子パンなんだから」
「菓子パンを食事として摂るのはどうかと思うが?」
「それは確かに言えてるねぇ。菓子パンじゃ栄養バランス悪いし」
ま、タマゴサンドも栄養偏ってるけどね、と棘を突き刺した少年をひと睨みするが、彼は全く知らん顔。
「それより、もっと食べ進めてみてよ~!」
「む、むぐ……!」
そして、言葉を発する隙もなく、再びメロンパンが押し込まれる。
口の中が、パサつく……。これが嫌なんだって言ったの、に……って、あれ?
「えへへ。気づいた?」
嫌々ながら咀嚼していると、急に口の中が滑らかになる。
「これ、生地の中にメロンクリームが入ってる……」
「正解! これで味単調パサパサ問題も解決でしょ?」
「いや、でも……。ゲロ甘すぎる……」
「え~! 甘くなきゃメロンパンじゃないよ!」
久々に味わったそれは、歳のせいか酷く甘ったるくて。
「じゃあ、やっぱメロンパン自体無理だ」
「……」
俺の呟きのせいで俯いて黙り込んでしまった彼に、再びハッとする。
しまった。また俺は空気も読めずに……。
数分前と全く同じ失敗を悔いても後の祭り。さすがの彼も愛想が尽きたらしい。これは相当怒っているぞ……。
むんずと肩を掴まれたところで、覚悟を決めて目を瞑る。そして。
「……っから」
「え?」
勢い余ってつっかえたような物言いに思わず目を開け、聞き返す。それは、憎悪を含んだ負の音ではなく。
高揚した息遣い、紅潮した頬、そして輝かんばかりの瞳は真っ直ぐ俺に向けられていて。
「だからッ! 絶ッ対、キミにメロンパンのおいしさを認めて貰うから……!」
「は、はぁ?」
てっきり罵声の一つでも貰うのだろうと思っていたのに、飛んできたのはとんでもなくプラス思考な大宣言。
若く純粋な力に満ちた、向日葵のように微笑む彼はまるで……。
「メロンパンの君」
「え?」
「って、お前のことだよな」
「ぷ、あはは、ほんと脈絡ないねキミ。そうそう。オレってばこの通り、メロンパンばっか食べてるからさ、いつの間にかそう呼ばれちゃって」
ぽかんとした後、少年は、弾けるように笑い声を立てる。
女子たちが一目見たいと言っていた意味もわかる気がした。なるほどこの屈託のない笑顔は、人を癒す力を持っていそうだ。
「ぴったりなあだ名じゃないか」
「そうかな~?」
「幸せとメロンパンを配り歩く、おとぎ話の王子様みたいだ」
そう呟いた途端、彼は目を見開いて、こちらを凝視する。
「あ、いや。ものの例えっていうか、そんな絵本があった気がしたから……!」
言い訳した後、急に恥ずかしくなって、慌てて烏龍茶に手を伸ばす。
我ながら臭いことを言った。でも、王子様という言葉は彼にしっくりくるよなぁ。
なんて考えながら、喉の渇きを潤すためにペットボトルの蓋をひねる。そして、口をつけようとしたその時、突然、彼が覆い被ってきて……。
ぺろり。
「っえ?」
口の端を舐められ、流石に呆然とする。
「ああ。ゆだっちの口にクリームがついてたから」
「ついてたって……。お前がメロンパン押し付けたから、だろ」
「あはは」
「ていうか、『ゆだっち』って何だよ」
「うん。弓立だからゆだっち。可愛いっしょ?」
「なんで、名前知って……」
「なんでもなにも、オレたちクラスメイトだし」
「え……」
そうだったのか。全く知らなかった。
「ま、オレも休みがちだったから、忘れられてても仕方ないけど」
そういえば、一つ前の席、いつも空いてたような気がする。きっとそれだ。
「それに、ゆだっちってば他人に興味なさそうだもんね」
「うっ」
率直な意見が、ぐさりと胸に刺さる。彼の言う通り俺は周りのことがわからない。現に一学期を終えてなお、クラスメイトの名前と顔が一致しない。いや、一致しないどころか、顔も名前も全くと言っていいほど覚えてすらない。自分でも嫌になるほど他人に興味が湧かないのだ。かといって、自分大好きナルシストなわけでもないが。
「まぁ、オレも他人になんか興味ないんだけどね」
「え?」
「オレとゆだっちは似てるのかもね」
彼はにこりと笑い、手に持ったままだったメロンパンを俺の手から奪う。
俺とコイツが似てる? まさか。正反対だ。光と闇。炎と氷。カラスと太陽くらいの差がある。
「でも。ゆだっちは別」
「別……?」
「そ。特別。やっと会えた、運命の人」
食べかけのメロンパンに躊躇いもせず、齧り付く彼を見つめる。よくもそんなに臭い台詞が吐けるものだ。
「あ、食べるんだった?」
「いや、これ以上は食べたくない」
「ちぇ~」
半分以上残っていたメロンパンは、あっという間に彼の胃袋へ消える。
「よく食べるな」
「そりゃメロンパンの君だからね。それに」
「?」
「ゆだっちとの間接チューだもん。ぺろりと食べちゃうさ」
「それ何か味違うのか?」
「ずこー! そこは照れたり気持ち悪がったりするとこっしょ?!」
「ずこーってなんだ?」
「転けた音だよ! 効果音だよ! 転けるの嫌だから口で言ったんだよ!」
「そういうものなのか?」
初めて聞く擬音に首を傾げると、少年は笑い出す。
「ふふ、ゆだっちってさ、ほんと可愛いっていうか……!」
「ああ、さっきもそんなこと言ってたな。だが、俺にその可愛いあだ名は馴染まないと思うんだが?」
「ぶ、ぶは、あだ名のことね!!! 確かにさっき可愛いでしょって言ったもんね! げ、げほっ」
「テンション高いな」
「お、おかげさまでね! あ~、ほんともう……」
隣で目に涙を溜めながら笑い転げる少年。それを不思議に思いながら、俺はタマゴサンドを一気に口に押し込む。メロンパン以外なら、腹を満たせりゃそれでいい。
「盛り上がってるとこ悪いんだが。食べ終わったし、そろそろ行くわ」
「え~っ、もう帰るの?」
「いや、図書室で宿題をしようと思っているんだ」
「そっか。ゆだっちはやっぱり偉いんだね」
にこりと微笑むメロンパンの君。その後ろに広がる真っ青な空。気が遠くなるような白さの入道雲に目を細める。じわじわと鳴く蝉の声が、一瞬どこか懐かしい記憶を掠めてゆく。
あれは、なんだったっけ……。前にも、こんなことがあったような……? 気のせい……? 夢……?
「っち、ゆだっち!」
「んわっ!」
白昼夢の糸を辿っている途中で、肩を揺さぶられ、思考が霧散する。至近距離で覗き込む彼を遠ざけ、いつの間にか掻いていた額の汗を拭う。
「大丈夫?」
「ん、ああ。熱いせいかな。ぼーっとしてた。それじゃあ今度こそ、失礼するよ」
「あ、待って。オレの名前、夕張 理雨。次、会うときまで覚えといてよね?」
ひらひらと片手を振ってくる彼に、振り返すことなく背を向け、ドアを閉める。
あの袋に入った残りのメロンパンは一人で食べきれる量なのだろうか。ぼんやりとメロンパンの君……夕張 理雨を思い浮かべながら階段を下りてゆく。
なんか、あの顔だけは忘れそうにないな。きらきらしていて、いつまでも見ていたくなるような笑顔。あんな風に笑えたら人生どんなに楽しいだろうか。
あ、場所を使わせて貰ったのにお礼を忘れてしまったな。それに、自分勝手に切り上げてしまったし。愛想も全くない返答をしてしまった。はぁ。久々に人と会話できたのに。テストだったら零点だ。
「……ゆだっち、か」
校舎内のむわりとした空気が体を包み込む。舌の上には、まだあの甘ったるいメロンクリームの味が残っていて不快感を更に強める。そういえば、俺にメロンパンを認めさせるのこうの言っていたな。ま、次なんてないと思うけど。
ふと彼がメロンパンに齧り付く顔が目に浮かぶ。それだけで、おいしいものを食べたような満たされた気持ちになって、不快感はいつの間にか夏の空にかき消されてしまった。
幼い頃、オレは入院してた。難しい病気で、ずっと病室から出られないまま幼少期が過ぎていった。
そして今。高校生になったオレ、夕張 理雨は何とか学校に通えるまで症状は良くなりつつあった。
だが、やはり今でも病院通い。しかも、今年は特に発作が酷くて学校を休みがちで。イライラしていた。自分が不甲斐なかった。そんな気持ちを吹き飛ばすため、病状も落ち着いた夏休みのある日、オレは屋上で一人、昔の記憶に想いを馳せながら、メロンパンを頬張ろうとしていた。
するとどうだろう。奇跡が起きた。運命が回り始めた。
あれは、まだオレが小学校低学年ぐらいの話。
幼い頃からずっと病室に閉じ込められていたオレは、限界だった。同じ年ごろの子たちは、もう小学校に通っているというのに、オレは全く外を知らなかった。小学校のグラウンドで、暗くなるまで走り回って遊べたら、どんなに楽しいことだろう。普通の子どもみたいにランドセルを背負って歩きたかった。病室の窓から、元気に走り回る子どもたちを見る度、気が狂いそうだった。
そんなやきもきした気持ちの中、変わらない毎日を過ごしていたある日。何の前触れもなく、オレの病室に見知らぬ少年が入ってきた。ランドセルを背負ったその子を見たとき、正直オレはとても嫌な気持ちになった。
しかし、こっちの気も知らない少年は、今にも泣きだしそうなくらい顔を引きつらせて、オレの顔を見て言った。
「お母さん、知らない……?」
どうやら、母親を探していたら迷子になったらしい。弱々しく呟かれた言葉に、オレは無情にも首を振る。
「お母さん、病院で働いてて、いつも会えないんだ。だから、俺が、会いに来たんだけど……。ううっ……」
ついに目から涙が溢れ出した彼を見て、ぎょっとする。涙を拭う真っ白いその腕は、大きいランドセルに対してあまりにも細すぎる。入院しているオレなんかよりもよっぽど不健康なように見えた。
「迷子になったくらいで泣くなよ泣き虫! 男だろ!? 男、だよな……?」
「おとっ、男だよっ……。う、うう」
「おい、馬鹿、泣くなってば! お前は自由に歩けるんだろうが! オレなんか、ここから出ちゃいけないんだぞ!?」
「……なんで?」
渾身の自虐。八つ当たりと慰めが混じった言葉に、首を傾げた少年が、濡れた瞳で真っすぐ見つめてくる。
「病気が治んないからだ。ずっと寝てなきゃいけないなんて馬鹿みたいだろ? 美味しいもんも食えやしない」
「でも……。病院のご飯、あるだろ……?」
「あんなもん。味気なくて病気が悪化しそうだよ」
「……じゃあ、これ、やる」
そう言って、涙を拭いた少年がランドセルから取り出したのは……。
「メロンパン?」
「うん。俺、飽き飽きしてんだ」
「いいなぁ。そんなに菓子パン食べれて」
「よくないよ。いっつもこれがご飯の代わりなんだぞ? こっちの方がよっぽど病気になるっての」
「お前の母さん、飯作ってくんないの?」
「うん。忙しいって。いっつも俺のことほったらかしててさ。離婚してるから父さんもいない。兄弟もいないしさ。自由に歩けたって、俺の方がよっぽどつまんないよ」
少年がふいに俯く。きっと涙を堪えているのだろう。その姿が、何だかすごく切なくて。守ってあげたくなるような……。
「じゃあさ、お前、時々でいいからさ、ここに来いよ。飯交換しようぜ。んでもってその後遊んでくれよ」
気づいたら、そんなことを提案していた。
「えっ。いいの?」
それを聞いた少年の顔が、きらきらと輝きだす。綺麗だな、と思った。何かを見て、こんなに心が躍るのは初めてだった。
それから、オレたちは秘密の友達になった。彼がくれるメロンパンは正直、味は全く美味しくなかったはずだ。でも、そのメロンパンは、まるで魔法が掛かったみたいに美味しかった。彼と過ごす日々は楽しかった。彼の宿題を手伝ったり、一緒にテレビを見たり、手作りの絵本を読んだり。
でも、そんな夢みたいな時間は長く続かなかった。ある時を境に、彼がぱったりと来なくなったのだ。
遠くで鳴く蝉の声。窓の外の真っ青な空。入道雲に負けないぐらい真っ白な室内。クーラーの効いた部屋の中で、オレはいつまでも待っていた。あの可愛らしい白昼夢を。
「運命だと思ったんだ」
「夕張……?」
夏休み。補習終わりの屋上で、オレたちは何度目かの昼食をとりながら見つめ合う。
「ねぇ、思い出してよ。オレのこと」
忘れている彼に、思い出して貰わなくては。そうでなくては、この夏は一生終わらない。
「思い出してって……。なに、言ってんだよ……。俺とお前は、この前会ったばっかりで……」
「違う。違うんだよ。ゆだっちにはもうわかってるはずだよ。オレはね、病院で過ごしたあの夏が一番好きだったよ。ゆだっちに会えてよかった」
「病院って……。確かに、俺は、昔、名前も知らない男の子と、病院で遊んでた。でも……」
「やっぱり。あれは、ゆだっちだったんだね。ねえ。でもさあ。どうして来るの止めちゃったんだよ。オレは寂しかったんだよ? 君が……アキくんが来てくれなくなって。オレは……」
「違う! あの子がお前なわけないだろ?!」
「オレだよ。オレは君に会うために、頑張って退院して、それで……」
「そんなわけないんだよ。だって、あの子は、もう……」
「なに……?」
蝉の声。あまりにも煩いその声は、脳を揺らし、視界をも揺らす。
「あの子は……。リウくんは、もう死んだんだ。さよならしたんだよ。だから、俺は、病院に行かなくなって……」
「嘘だ」
汗が流れ落ちる。額を拭うオレを見て、彼が震えながら指を差す。
「お前、手が、透けて……!」
指を差された手のひらを、空に翳すとなるほど透けていた。
「オレは、生きてるよ? 今でも病院に通ってるし、メロンパンも食べてる。みんなからも、メロンパンの君って呼ばれていて……」
「メロンパンの王子様」
「え?」
「あの絵本の中でお前は、王子の魔法が掛かったメロンパンを食べるんだ」
「……」
「そして、メロンパンを食べたお前は、退院して、無事に高校生になって。病院に通いながらも、俺と楽しく学生生活を送るんだ。みんなから、メロンパンの君って呼ばれて、それで……」
「だから何?」
彼が述べたストーリー。それは、オレが入院していた頃に描いた絵本のものだった。だから何だ。そう問いながらも、オレは目を瞑った。
「だから、お前は、死んだはずなのに、絵本通りに生きていて、それで、だから……」
「オレは幽霊なの?」
「こっちが聞きたい」
「……多分そうだろうね」
夢から覚めるとなんてことはない。全部、オレの妄想の中の話だったんだ。
再び目を開いたときには、あれだけうるさかった蝉の声も聞こえなくなっていた。
「でも、それならどうして。俺はお前に触れるし、お前のくれたメロンパンは確かに味がした。それに、俺以外のみんなだって、お前のことを知っているみたいだし」
「うん。それじゃあさ。こう考えたらどうかな」
「?」
「この世界自体が嘘なんだって」
「は?」
「キミは起きなければいけないよ」
「起きる?」
「あのね。夢の中でも、オレはキミと会えてよかった。オレは、キミのことが大好きだったよ……」
「ま、待て!」
追い縋る彼の手が、オレの体を虚しくすり抜ける。
本当はわかっていた。自分が死んだことも。彼の夢に呼ばれただけだったことも。あのまま夢の中でずっと過ごせていたら。どんなに幸せだっただろうか。でも。それはいけない。
目の前の少年を、現実世界へと突き落とす。
二度と出会うことのない彼の幸せを願いながら。
*
目が覚めると病院のベッドだった。
「俺は……?」
聞けば母親に捨てられた後、俺は自殺を図ったらしい。母親は、忙しかった仕事を止め、男に溺れるようになった。そして、俺のことが邪魔になったらしい。結局、俺は誰からも必要とされていなかったんだ。
俺の居場所は結局、彼と過ごしたあの夏の病室だけだった。ああ。彼が生きていたのならば……。そう思いながら自殺を図った俺は、夢を見ていたらしい。
もう少し見ていたかった。成長した彼は、太陽みたいに輝いていた。あれは、俺だけの太陽だ。
だから。
「会いに行かなくちゃ」
病院の屋上から見つめる地面の陽炎が揺らめく度に、思考が茹ってゆく。ああ、蝉の声が聞こえる。暑いなあ。でも、君がいる世界なら、ずっと夏でも構わない。
明るい空が、俺を拒絶するかのようにじりじりと肌を焦がす。俺はそっと目を閉じ、足を踏み外して、呪いのようなその眩しさを煽ぐ。
なぁ、今度こそメロンパンを克服させてくれよ?
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