ヒキアズ創作BL短編集

ヒキアズ

文字の大きさ
上 下
46 / 132
41~50

(43)作家×作家

しおりを挟む
売れっ子官能小説家×売れない推理小説家。
売れない方が、腹いせに誹謗中傷の手紙を書いたり、嘘ついたりするけど、全部お見通しされてる。それを知らずに優しくされて良心の呵責に苛まれる感じの受けと、急にしおらしくされると面白くない攻め……が好きです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『先生の書くお話は大変下品で稚拙です。これが未来ある若者たちの目に触れているのだと思うと、私は貴方をとても許せない。貴方は今すぐに筆を折るべきなのです。貴方のような者が世間で天才作家などと呼ばれる度、私は貴方に殺意を向け、呪いをかけているのです。』
 手紙の擦れる音と共に、男はほうとため息をつく。
「ほんと馬鹿だなぁ。精神安定のためにやってんだろうなぁ。このアロマみたいな香り。柚子かな? ふふ。筆跡を覚えてるのもだけど。バレバレだよ」
 緩んだ口元を隠すように手紙をそっと口に当てた男は、愛おしそうに淵をなぞる。
「ふふ。犯罪紛いのことするくらい、僕のことが妬ましいんだね」
 手紙の封筒に入っている数枚の替え刃。それを取り出した男は、やはり愛おしそうに刃を撫でる。
 男の指が裂け、赤く染まる。
「本当に。君だけだよ。こんな世界で、僕を楽しませてくれるのは」
 ゆったりと微笑んだ男が、自分の指を舐め、机に向かう。
 きっと今日もこうして名作が生まれるのだ。



「どうして俺がアンタと食事に行かなきゃならないんです?」
 目の前の男、大芽 翠理(おおめ すいり)が唸るような声を上げて、こちらを睨む。
「どうしてって。君が僕の隣に住んでいて、いつでも暇そうにしているからだろう?」
「暇じゃありませんよ! 俺だって〆切ってもんがあるんですから」
「それを言うなら僕にだって。売れない推理作家の君なんかよりもずっとだ」
「世間に媚びへつらう薄汚い変態作家め」
「何か言いました?」
「いえ、特には」
 この口汚い子猫ちゃんは、聞いての通り。僕こと菅野 藍蓮(かんの あいれん)の隣人であり作家仲間。
 彼は僕をやっかんでいて、何かとつっかかってくる。僕にはどうもそれが面白い。
 このそこそこ値の張るマンションに住んでいるのだって、低所得の彼にとっては辛いはずだ。それでも見栄を張るためだけに、食費を切り詰めている彼を見ると、無償に構い倒したくなる。
 小説がますます売れるようになった今、僕はもっと良い物件に住むこともできた。けれど、そうしないのは、彼のせいだ。
 彼が僕を妬む姿を見て、優越感に浸るのが気持ち良くてやめられないのだ。
「とにかく。君だって外で食べるつもりで家を出たんだろう?」
「それは……」
「だったら問題ないはずだ。飯代だって僕が出す」
「結構です。俺は適当に弁当でも買って食べますから」
「寿司はどうだ?」
「いりません」
「じゃあ肉。焼肉なんてどうだろう」
「い、いりません……」
「それならステーキ。確か有名な店が近くにあったろう?」
「いや、でも。あそこは結構……」
 彼は俯き、言葉を切る。その目はいかにも気まずそうに宙を泳ぐ。
 評判通り、そこの料理は格別に美味い。しかし、誰もが気軽に行けるかというとそうではない。厳選された国産素材。こだわりの調味料。なんかよくわからないブランド。とにかくその店はお高く、近所に住んでいるからと気軽に行ける場所ではない。彼なんか、一度も行ったことがないだろう。
「行かないの?」
「でも……。俺はアンタと食事してる暇なんて……」
 彼の瞳が、心の動きと共に揺れる。
 馬鹿だなぁ。
 心の中で暴言を吐きながら、可愛い欲と戦う彼に目を細める。
「一番高いやつ頼んでいいよ」
「う……。でも、俺はですね……」
「頼むよ。一人で飯なんて寂しいじゃないか」
「あ~。ごほん。そ、そこまで言うんでしたら……」
 わざとらしく咳ばらいをした彼が、完全に食欲に負ける。
 プライドが高いのも大変だな。

「いや~。高いだけあっておいしいな」
 肉を頬張る彼に語りかけると、プライドのプの字も忘れた純朴な表情で彼はこくこくと頷く。
「あ。でも家族連れもいるんだ。お金持ちだね」
 離れたテーブルの、いかにも高そうな服に身を包んだ家族に視線を移す。
「あんな小さい頃からこんなものを食べてたら、食べるものがなくなりそうだ」
 幼い男の子を横目で見た彼は、呆れたようにそう呟く。
「でも、いいなぁ。家族で外食なんてさ」
「そう、ですか?」
「うん。僕は一度もなかったからさ。僕の両親は仕事ばかりでさぁ。貧乏だし。不仲だったせいもあって、家族みんなで過ごすなんてことなんてほとんどなかったんだから」
「……てっきり、アンタの幼少期は幸せなんだと思ってました」
「はは。幸せな家庭で育ってたら、こんな捻くれた性格してないよ」
「確かに」
「しみじみと同意しないでくれよ。そういう君は確か、母君が財閥の娘さんで、父君も大手会社の社長さんなんだよね」
「え、ええ」
「幸せだったんだろうねぇ」
「……まぁ」
「いいなぁ。でも。今は僕もこうして幸せになれたんだし。結局はとんとんだね」
「っ……」
 急に閉ざされた彼の口。握りしめた拳。それらは気持ちを押さえつけるように固く結ばれ、閉じ込めきれなかったものが震えとして体に現れる。
 彼は僕の作品を良く思っていない。官能小説で儲けるのは外道だそうだ。もちろん、彼が直接そう言ったわけじゃない。けれど僕には筒抜けだ。
 そんな金で幸せそうに肉を頬張る彼に、少しばかりの意地悪をしたくなったのは言うまでもない。

『ママ~! 今の見た~?!』
『ええ。見てたわよ。すごいわね~!』
『はは。パパはすっかり負けちゃったよ』
 腹ごなしに散歩していた草むらで、どこにでもいそうな家族が野球の真似事をして幸せそうに笑い合う。
「いいなあ。ああいうの。僕はすごく憧れるよ」
「別に。あんな野球ごっこ、つまらないですよ。わざと父親に負けて貰ってるとも知らないで」
 優しい球を投げる父親。それを打って嬉しそうにはしゃぐ子ども。それを見て嬉しそうに微笑む母親。確かにくだらない。
 でも。翠理くんのつまらなさそうな顔は良い。ああ、君は心の底では僻んでいるんだね。きっと自分でもそんな醜い嫉妬に気づいていない。
「ねぇ、翠理くん。君は幼少期、家族とどんな風に過ごしたんだい?」
「……別に。普通ですよ。母と買い物に行って。父と野球やゲームをして。家族で笑って。それで……」
「それは、羨ましいな」
「……そうでしょうか?」
「じゃあさ、体験させてよ」
「は?」
 怪訝な眼差しを向ける彼に、そこらに転がっていたボールを放る。
「うわ。汚っ」
「落ちてたやつだし、しょうがないだろう。パパ」
「誰がパパですか。こんな子どもいたら嫌ですよ」
「はは。確かに。こんなパパはちょっと嫌だな!」
「あのねぇ……」
「ほら。投げてよ。食後の腹ごなしだよ」
「俺は原稿が……」
「たまには運動しないと。ただでさえ君は顔色がいつも悪いんだから」
「う、余計なお世話ですよっ!」
 彼の投げたボールが、よろよろと僕の方に向かう。
「うわ。下手だなぁ」
「っ……。今のは手加減したんですよっ!」
「ふ~ん?」
 会話と共に、ボールが僕たちの間を行き来する。
 それだけのことなのに、何だかとても楽しかった。久しぶりに、時間のことを気にせずに過ごせた。

「いや~。楽しかった。キャッチボールがこんなに面白いとは知らなかったよ」
「うん」
「君はいいね。幼い頃にこれを味わっていたなんて」
「ええと……」
 彼の表情が曇り、会話が途切れる。その姿を見ているうちに、楽しかった気持ちがすっと覚めてゆく。
「あのさ。俺、本当は……!」
「翠理くん。陽も落ちたし。そろそろ帰ろうか」
 顔を上げ、何かを決意した彼を制してにこりと笑ってみせる。
「……」
 何も言えなくなった彼は、行き場を失った決意を萎ませて俯く。
「今日はありがとね」
 狡いとは思っている。でも、彼には素直になってほしくない。
 君は嘘をついているままでいいんだ。
 罪悪感に駆られたままに、僕に劣等感を抱いて、自己嫌悪に陥って……。
「藍蓮っ!」
 名前を初めて呼ばれた衝撃で思わず立ち止まる。
 ……いや、呼ばれたぐらいで何故立ち止まらなくてはいけないのか。
「どうかした?」
「あ、い、いや。なんでも、ないです」
 くるくると表情を変えながら落ち込んでゆく彼。それでいい。
 彼にはもっと気高く惨めでいて貰わないと。


『私は裕福とは言いがたい家で育ちました。母親は精神の病にかかり、父は家を出ていってしまいました。
 私は母の気の狂った悪口をずっと聞いて耐えて生きていました。そのせいか、私はとても歪んだ人間になってしまいました。
 だから、私は幸せなんかじゃないです。だから、売れている先生のことが妬ましくなって、嫌がらせの手紙を送りました。
 今更こんな意味のわからない手紙を送ってしまって、すみません。でも、どうしても先生に伝えたくて。』
 鼻をくすぐる柚子の匂い。何遍読んでも愛おしい手紙を、大切に読み返す。
「君はどうしてそんなに綺麗なのか」
『私が綺麗だなんて。先生は変なことをおっしゃるのですね。私は先生が思うような女性ではありません。ただ、文を書く者とだけ。相も変わらずに先生の書く文章は私には合いません。』
「それでも、僕は君の手紙が支えになる」
『先生はやはり狂っています。罵られて支えになるとは如何なる心境なのでしょう。私にはわかり兼ねます。』

「やあ。菅野先生。何を読んでいるんです?」
「やあ。翠理くん。いやね、ファンレターを読んでいるのさ」
「ファンレター。それにしては暴言が見えますが」
「この子にはよく励まされているんだ」
「へぇ。まさかとは思いますが。先生、恋なんてした訳じゃあないですよね?」
 にやにや笑いながら、彼が手紙の淵をなぞる。
「そうだったら、どうする?」
「……!」
 その手を捕まえて、手紙を口に寄せてみせると、彼の頬が真っ赤に染まる。
 あれ。てっきり勝ち誇ったような顔をするのかと。絶好のスクープだし……。
「かく言う君はどうなんだい? 好きな人くらいいるのだろう?」
「な、僕は小説一筋でそんなことしている場合じゃあ……」
 目を逸らす彼の腰を抱き寄せて、唇を重ねる。
「え?」
「今度、同性愛を取り入れた作品を書こうと思っているんだよ」
 呆然とする彼をよそに、僕の口は流暢に嘘を吐く。
「そ、それは……。なんとも奇っ怪なアンタらしいですね……」
 しどろもどろになりながら、何とかそれだけ絞り出した彼が、僕の視線から逃げるように踵を返す。
 失敗した。
 顔に手を当て、しゃがみ込む。
 彼の前では何とか平静を装ったが、今になってどっと汗が噴き出してくる。
 まさか翠理くんがあんな顔をするなんて。それを見て、こんなに脈拍が上がるなんて。聞いていない。僕は彼を嘲笑うのが楽しかっただけなのに。
「原稿、ちゃんと書けるだろうか……」


 進捗は思った通り芳しくなかった。
「初めて〆切ギリギリで書き終わったぞ……」
 原稿を書いている間、事あるごとに彼のことが思い出されて、幾度となく中断した。
 そして、ぐったりとした今このときでさえも、彼の顔が思い浮かんでくるものだから、どうしようもない。
「そういえば……。今日は翠理くん、外に出てないなぁ」
 原稿が終わるまで彼と会わないようにしていたが、隣同士なものだから、彼の生活音は嫌でも聞こえる。
 いや、待てよ。確か昨日もドアを開ける音が聞こえなかった。
 彼は自炊をしない。だからいつも、昼に出て行って二つ弁当を買ってくるはず。
「お~い。翠理くん?」
 呼びかけても返事がないので、部屋の前に行き、ドアを叩く。
 反応はない。ドアノブに手を掛けて回すと、あっさりと扉が開く。
 不用心だな。彼らしくもない。
「翠理くん。入るよ?」
 爽やかな柚子の香りに包まれた部屋は、そこかしこに物が散らばっている。
 そして、その中で倒れた彼が視界に入った瞬間、頭が真っ白になる。
「おいっ……!」
「ん……。あ、あれ……。藍蓮……?」
「び、びっくりさせないでくれよ……」
 起き上がった彼に、胸を撫で下ろす。
「それは、俺の、台詞……」
 僕を見て、力なく話す彼の額に手を当てる。
「熱がある。結構酷いじゃないか……」
「いや、これくらい、大丈夫……」
 そう言って立ち上がろうとする彼の焦点は合っていない。
「もういいから、目ぇ閉じて」
「ん……」
 大人しく目を閉じた彼に驚きつつ、抱き上げて布団へ連れていく。
「大丈夫?」
「……すみません」
 苦しそうに呟く彼の額をなぞり、汗を掬い取る。
 これは相当参っているな。素直過ぎて怖い。
「病院は行ったのか?」
「……行きたくない、です」
「薬飲まないと治んないだろ」
「休んでたら、よくなる、から……」
「下手したら死ぬぞ。翠理くん」
「そんときはそれで……」
「いいわけあるか馬鹿。ちょっと待ってろ」

「んん……」
 いったん部屋に戻り、取ってきたタオルを水で濡らして、彼の頭に乗せてやる。
「ほら。これ飲んでゆっくり休め」
「なに……?」
「風邪薬だよ。わかんだろ」
「はは。アンタん家にも風邪薬なんてもん、置いてあるんですね……」
「逆になんでお前は置いてないんだ、馬鹿」
「だって、薬なんてものは人間が作り出したもので、自然の摂理に反して延命するのは、どう考えても主義じゃないんです……」
「古臭い考え方だ。とても僕と同い年だとは思えない」
「それは、同感ですよ……」
「ああ、もうわかった。いいから飲め」
「いりませんってば……」
「飲まないってんなら、口移しで無理やり飲ませる」
「本気ですか?」
「本気」
「……わかりましたよ。変態には敵わない」
 ごくり、と喉を鳴らして薬が飲み下される。汗ばんだ彼の首筋は、やけに目を引く。
「ほら、飲んだらさっさと横になって……」
「ありがとうございます。でも僕、締め切りがあるから」
 コップを受け取り、彼を寝かそうと手を伸ばす。しかし彼はそれを制して、布団を抜け出し、床を這う。
「は……? 君、その体で仕事するつもりか?」
「今回は、中々筆が乗らなくて、遅くなったから……」
「いや、編集に締め切り遅らせてもらいなよ」
「俺は、アンタと違って、売れてない……。だから、そんなことできないんだよ、クソが……」
 おいおい。本性が出てるぞ。全く。
「じゃあ僕から言う」
「は……?」
 ぽかんとしている彼を他所に、編集に電話をかける。
「もしもし。突然で申し訳ないんですけど、翠理くんの〆切を伸ばしてもらえません?」
『えっ。どうして菅野先生が?』
「彼、今体調が優れなくて」
『ええと。ですが、これは前々から決められていたことですし……。菅野先生ならまだしも、大芽先生じゃあ、代わりもゴロゴロといますし……』
「あっそう。君がそう言うのなら、僕はしばらく執筆を休むよ」
『は……? ご冗談を』
「冗談じゃない。僕の代わりなんてゴロゴロいるさ」
『えっ。ま、待ってください! 先生の代わりなんて……! 先生はウチの看板作家なんですから! 先生の作品を待っているファンが、悲しみますよ?!』
「そうだよね。僕の代わりは誰もいない。僕の文は僕のものだ。そして、翠理くんの文も彼のもの。ファンだって、ここにいる」
『は……。あの、べ、別に大芽先生のことを悪く言いたいわけじゃなくてですね……』
「ねえ。どっち。〆切を伸ばしてもらえるのかな。それともさ……」
『わっ。わかりました! の、伸ばします! だから、先生、どうかその……』
「君が思ったよりも賢くてよかったよ。安心して。次回作は完ぺきに書いてあげるさ」
 ぷつり、と電話を切る。僕も少し本性が出てしまったかな。
「アンタ、無茶苦茶過ぎですよ……」
 ぼんやりとこちらを見つめる彼の目に、少し安堵の色が浮かぶ。
「そう?」
「でも……。その。ありがとう、ございました……」
 熱で浮かされた頬が、更に赤く恥じらいを灯す。その危なっかしい姿から視線を逸らして、できるだけ丁寧に彼を寝かせて布団を被せる。
「ほら、せっかく休みを貰ったんだ。しっかり寝てくれよ?」
「わかりましたから。菅野先生は、早く帰って執筆した方が……」
「いや、もうしばらくここにいるよ、君を放ってはおけない」
「っ……。執筆遅れても知りませんからね」
「どっかの遅筆君と違って、もう大体は纏まっているからご心配なく」
「優しいと思って損したよ」
「君には充分、優しくしてるでしょ?」
 優しく髪を撫でてやるが、彼はすぐにその手を掴んで放り投げる。
「また、作品の材料に使うつもりですか……?」
「ふふ。そうかもね」
 冗談交じりに、くったりとした髪に口づける。
「やっぱり変態だ」
「これしきの事でそう言われると、君の純情さが恐ろしくなる」
「俺はアンタの思考回路が恐ろしいです」



 意外だった。あの藍蓮が俺のためにここまでするなんて。
「ん……」
 頭の上に乗ったタオルを掴むと、すっかり温かくなっていた。
 どれくらい眠っていたのだろうか。辺りは真っ暗で何も見えない。
 手探りで枕元の灯りをつけ、部屋を照らすと……。
「び……っくりした」
 ベッドの横の椅子に、座りながら寝ている藍蓮が浮かび上がる。
 こうして近くで見ると本当に綺麗な顔をしてるのがわかる。文才に恵まれ、容姿にも恵まれ。おまけに外面は良いときた。
 これは女の人が放っておくわけがない。
 性格だって、僕が一方的に僻んでいるだけで。本当はこうして商売敵の看病をしてくれるぐらい優しい男なのかもしれない。
「まぁ、俺なんかじゃ敵にも認められてないか」
 ぷに、と人差し指で彼の頬をつついてみる。
 ああ。そういえば俺はこいつとキスしたんだっけ。
 あまりにも突然で、さらっとしたものだった。だから、意識しないようにしていたが。
「はぁ~。あれが俺の初めてだったんだけど……」
 そっと彼の唇をなぞってみる。まぁ、あんなものは数に入らないだろうけどさあ……。
「翠理くん」
「えっ?」
 唇から手を離した瞬間に、名前を呼ばれる。そして腕を取られ、手首に口づけが落とされ……。
 どくり。
 触れられた脈を伝って血液が熱くなる錯覚に陥る。
「寝込みを襲うとは、なかなか君も油断できない」
「な、どっちが。アンタのがよっぽど恐い」
「そうだね。僕は君の初めてを奪ってしまったんだもんね」
「……寝てなかったんですか?」
「君を前にして眠れる訳がないだろう?」
 芝居染みた台詞。愁いを潜めた瞳。
 揶揄われているとわかっていても、その瞳に目を奪われてしまう。
「ほんと熱心なことで」
 全身から火が出るほどの羞恥心をなんとか押し込めてそれだけ言うと、目を細めた彼がくすくすと笑う。
「ほら。熱が上がってきてる。しっかり休んでくれないと」
「わ、わかってますよ! アンタはとっとと帰ってください。さもなきゃ風邪を移しますよ!」
「僕の心配をしてくれるんだ?」
「うるさいって言ってるんです。俺はもう寝ますから」
「はい。おやすみ」


「で。翠理くん。調子はどうだい?」
「ええ。おかげ様ですっかりよくなりました」
「そう。それはよかった。ごほごほ……」
「ええ。先生には感謝してます」
「それで翠理くん。君の原稿は終わったのかな?」
「ええ。先週、死ぬ気で頑張りましたからね」
「それはよかった」
「よくないですよ」
「ん?」
 自室のベッドの中でふにゃりと微笑む彼の顔は赤く染まり、潤んだ瞳はどこか虚ろ。……まるで官能小説のワンシーンみたいな破壊力だが、そうじゃない。そうじゃなくて!
「なんで俺が執筆してる間に、アンタが風邪ひいてるんです?!」
「あはは」
 楽しそうに笑う彼の額に、べちりと勢いよくタオルを乗っけてやる。
「全く。いいですか! 大人しく寝ててくださいよ?!」
「え~」

 俺の風邪がすっかり良くなった頃、今度は彼が熱を出した。
 看病してもらった恩を返さないわけにはいかない。
 彼がしてくれたように……とまではいかないけれど、不慣れながらなんとかお粥を作り上げて。薬を飲ませて。ようやく一息ついたところた。
「にしても。本当に片付いているなあ」
 彼の部屋は、男の一人暮らしとは思えないほど整頓がなされていて、俺の部屋とは大違いだった。
「あ。これ、もしかして俺の書いた手紙か……?」
 許可も遠慮もなしに、適当に引き出しを開けてみると、綺麗な箱の中に俺が出した手紙だけが入れられていた。
「まさか。本当に恋しているんじゃないだろうな……」
 この前に見た彼の表情。大事そうに、愛おしそうに手紙をなぞる指。
 あれは、紛れもなくそういう感情を含んでいた。
 怖い。
 震え出しそうになる唇を噛みしめる。今すぐにでも手紙を破り捨てたい衝動を飲み込む。
「いや。きっと勘違いだ」
 俺は彼を騙している? そんなつもりで手紙を書いたんじゃない。
 彼は『彼女』を愛している? まさか。誹謗中傷から始まった手紙なのに。
 『彼女』に恋をした彼は、どうなる? どうにもならない。彼女はただの幻だ。
「なのに。どうして。どうして俺は喜んでいる……?」
 自分の気持ちをかき消すように、急いで手紙を仕舞い、他の引き出しを開ける。
「ああ。ほら。これなんか。書きかけの原稿か?」
 気を紛らわすためにも、手に取ったそれを躊躇うことなく読み進める。が。
「なんだよ……。これ」

 そこに綴ってあったのは読んだことのない物語だった。恐らくは彼の未発表の原稿。
 彼の文にしては珍しい。主人公の心情が細やかに書いてある。いや、それよりも。
「この話……。まさか」
 読み進めていくにつれて、全身から汗が滲みだす。
 主人公の売れっ子作家。隣に住んでいる貧乏作家。そして、送られてくるファンからの手紙。
『ほんと馬鹿だなぁ。精神安定のためにやってんだろうなぁ。このアロマみたいな香り。柚子かな? ふふ。筆跡を覚えてるのもだけど。バレバレだよ』
「っ……」
 主人公の台詞に、思わず自分の袖を手繰り寄せ、匂いを嗅ぐ。
 確かにリラックスできるよう、柚子のお香を部屋でたいている。
「だからって、まさか。これはただの偶然で……」

「翠理くん……?」
「あ、藍蓮……」
「って。それ!」
 ぼーっとした顔で近づいてきた彼が、俺の手にある原稿を見てぎょっとする。
「これって、なんの話ですか?」
「それは……」
 彼の狼狽える表情を見て、確信する。
「知ってたのかよ。俺が手紙書いてたの。俺が嘘ついてたこと。さぞ面白かったことだろうな……!」
「君、最後まで読んでないのか……?」
「読むまでもない。どうせ俺のことを馬鹿にしたラストなんだろう? いい趣味してる」
「……そうか。そうだな、まぁ……そんなところさ」
「アンタが官能小説以外も書くなんてな。間違っても世間に公表しないでくれよ?」
「ああ。それは……。僕の趣味で書いたものだから。日記みたいなもので……」
「なんだかんだ言って、アンタはいい奴なのかもって思い始めたところだったのに。アンタは結局、俺をおちょくってただけなんだな」


 看病を放棄して、自室に逃げ帰る。
「なんで……」
 なんでこんなに苦しい?
 震える声を押し殺しながら、床に座り込む。
 信じかけていたのに。許しかけていたのに。それなのに、あっちは俺を揶揄っていただけだったなんて。
 彼の狼狽えた表情を思い出す。慌てて俺の手から原稿を取ったということは、罪の意識が少なからずあったからだろうか。
「あれ。でも……」
 そういえば、最後まで読んでいないと言った瞬間に、やけにほっとした顔をしてたな……。
「あのときの安堵は、なんだ?」
 それに気づいた途端、何か喉を掻きむしりたいような焦燥に駆られた。
 そもそも、あんなに焦っているアイツは今まで見たことなかった。
 最後になにか、特別なことでも書いてあるのだろうか。アイツが隠したいと思った何かが。
 そう思うと、ますます続きが気になる。
「いや。でも、思い過ごしかもしれない。もっと酷いことが書いてあるのかもわからない」
 それでも。ただ純粋に彼の文章の続きを読みたい。そんな衝動に駆られてしまえば、もう駄目だ。元から彼の文章自体は好きなのだから。
 アイツは前に、自分の書いたものは捨てられないと言っていた。だからまだあるかもしれない。
「よし……」


 逃げ帰って数分、再び彼の部屋に行くのはどうだろうか、と思っていたが。どうやら彼は寝てしまったらしい。こっそりとドアを開けて、忍び込んでしまったが、気づく様子はない。
「よし。今のうちに」
 再び引き出しに手を掛けて、原稿を引っ張り出す。
 胸に手を当て、深呼吸。これ以上傷つきたくないはずなのに、持ち前の好奇心と文字を目の前にして追わずにはいられない虫が疼いて、震える手で頁をめくる。
 そこに綴られている文字は……。
「これ……、どういう……」
 艶めかしい文字列。幾度となく嫌悪を抱いたそれ。彼らしい物語の展開。つまり……。
「どうして、こんな……」
 それは彼お得意の官能小説だった。そうだ。彼が官能以外を書くはずがない。アイツは変態だし。だが。
「いや、だからって……。相手役……」
 普段は魅力的な女性が務めるそのポジション。それを何の冗談か、限りなく俺に似た境遇の男が請け負っている。
 なんで、俺が藍蓮にいいように抱かれて喘いでいるんだ!?
 文章から目を離そうとするのに、ぐらぐらと煮えたぎる頭が文字を読み込んでいく。
 読むな。これ以上はダメだ。
 そう思うのに。
「翠理くん。泥棒の真似事とは感心しないなあ」
「……! 藍蓮……」
 ふいに囁かれた言葉に振り返る。すぐ後ろまで接近していた彼に、驚きを隠せない。
「随分集中してたみたいだけど」
「っ……」
 ゆったりと手を重ねてきたかと思うと、彼はそのまま撫でるように原稿を奪い去る。
「言っただろ、そういうネタを探してるんだって。日常をそういう風に変換しただけ」
「はっ。さすがは変態作家。気が触れている」
「そういう君こそ。僕の文を読んでしっかり反応してるじゃないか」
「っ!」
 腕を取られて、壁に追い詰められる。その舐めるような視線から逃れようとするが。
「未完成の文章を勝手に読んじゃうなんて。翠理くんにはお仕置きが必要だよね」
「気持ち悪いこと言うな……。さ、触るな……!」
「でもほら。気持ちいいでしょ? 翠理くんはこうされたいんでしょう?」
「は……。ほんとに、やめろって」
「可愛い。本当に可愛いよ。翠理くん」
「あ……」
 抵抗しようと思えば、できたはずなのに。わざと小説になぞって指を動かし台詞を吐く彼にすっかり遊ばれて。
 その先の文章は、なんだったっけ。
 煮え切った頭で考えて、その先の快楽を期待するのがやめられない。
「ほら、君の台詞」
「い……!」
「い?」
 あ。そうだ。この先は……。
「苛つく! イカサマ! 意地が悪い! 歪な小説!」
「……いやはやいかにも異論なし」
「いつもいつでも、異様なほどに、嫌々アンタに振り回されて!」
「今更なにを。そんなことより、台詞が違……」
「言ったらアンタは一体、何て答えるつもりだったんです?」
「……」
 彼の手にある原稿がくしゃりと音を立てる。
 彼が書いていた文章最後の台詞。それは。
「“いい加減にしてください。俺はアンタを愛しちゃいない”」
 冷たい声音を作って、彼に向かって言い放つ。
「……っ」
 何か言いたそうに口を開けた彼は、やはり何も言えずに口をつぐむ。
「ここで文章は途切れていましたね。でも、そのすぐ後の行には、いくつもの跡が残っていました。何回も書いては消しを繰り返したようですね」
「……だって。思いつかないじゃないか。何て言ったらいいのかわからないじゃないか」
 そう言って力なく笑う彼の目には、いつもの悪戯っぽさがない。悲しみ苦しみに満ちた子どものような頼りなささえあった。
「天才作家のアンタでも、そんなことがあるんですね」
「茶化すなよ。わかってるんだろう?」
「……」
「正直に話そう。僕は君が好きだ。愛している」
 熱っぽく吐き出されたそれは、何の捻りもない台詞。
「アンタでも純愛らしい台詞を紡げるんだ」
「……君には負けた。最初は本当に、君のことを揶揄うだけで良かったのに。いつの間にか君が欲しくなって」
「正気ですか?」
「正気だよ。例え君が僕を嫌いだとしても、僕は君が欲しくてたまらない」
「っ……」
 耳元で甘く囁かれた言葉に、耳を塞ぐ。
 耳を通して、体の中までぞわぞわと彼の声に侵されてしまいそうで。
 本当に彼は俺のことが好きなのだろうか。あの、いつでも涼しげで、女にモテる、天才作家の彼が?
「踏み込んできたのは君だ。責任は取ってくれるんだろう?」
 手の甲に触れた彼の唇が、そのまま首筋に移り、静かに密着する。
「アンタ、本気で……」
「もう後戻りなんかできないよ。嫌だったら僕を殺してでも逃げて?」
 ぎらりと欲を灯した瞳に息を飲む。
 逃げる? そんな選択が残されているようには思えない。
 彼の指が静かに頬に触れた瞬間、熱が込み上げる。
 絡み合う視線は、次第に距離を縮めて……。


「おはよう」
 爽やかな朝日と共に、彼の眩しい微笑みが起きがけの俺を照らす。
「よく平気な顔でいられるな」
「僕が生きてるってことは、嫌じゃなかったということでいいのかな?」
「お陰さまで完全犯罪を計画するどころじゃなかったからな」
「君が遅筆で助かった」
「くそったれ」
「まぁ、こっちの方は早かったけど、ね」
「下品な恋愛盆煩悩作家め」
「ふふ、俗っぽくしたら君の文章も幾ばくかは売れやすくなると思うけどな」
「ふん、大衆文学は目指してない」
「まぁ、君の古風な文章、好きなんだけどね」
「偉大なる大先生にお褒めの言葉を預り、恐悦至極に存じます」
「ほんとだって。好きなんだよ。君の文章も君も」
 目を細める彼に、皮肉が途切れてそっぽを向く。
「どうして俺なんだよ。だっておかしいだろ? アンタは女が黙っちゃいない完璧な男だ。それが、こんな冴えない偏屈作家の男に恋するだなんて」
「正直、僕も最初君を見たとき、いかにも陰気で卑屈そうだなって思ったなぁ」
「……」
「同じ出版の同じ時期の新人だからね。少し空いた時間で君の文章を読んでみたんだ。そしたら、なんとも心地良いんだ。君の綴る言葉は。衝撃を受けたよ」
「アンタが? 俺の文に?」
「そう。この僕が。君の言葉は飾りじゃないんだ。すうっと僕の中に入っていったんだよ。それで、君のことが気になって、ついには君の隣に住むことにしたんだ」
「そのうち君の文章だけでなく、君にも興味が湧いて。優越感に浸れる喜びもあった。揶揄いもした。でも、どうもそれだけじゃなく。本当に、初めてだった。こんな想い。まさか僕がこんなに恋い焦がれる日が来ようとは。おかげで文の参考にもなったよ」
「なんだよそれ。俺は、アンタを妬んで嫌がらせまでしたっていうのに」
「そんな歪んだ君も好きだからさ、ついそのまま手紙の件も知らないふりをしちゃったんだ。ごめんね」
「悪趣味だな、本当に」
「自己否定?」
「空想の恋愛を書き過ぎて価値観がおかしくなったんじゃないか?」
「なんとでも。ただ、これからも君を好きでいることは許してほしい」
「……そんなの勝手にすればいい」
「また君に手を出すかもしれない」
「……好きにすればいい」
「え?」
「いい加減気づけ。俺だってアンタを愛してるんだよ」
「は。まさか、そんなハッピーエンド……」
「続きをお願いしますよ。天才作家さん」
「推理作家なら、とっくに結末もお見通しだろう?」
 ひとしきり笑い合った後、二人は記されていない未来を紡ぎ出す。
 優しい風が吹いて、まっさらな原稿用紙をぺらりと捲る。
 さあ、新しい頁には何を書こうか。

 これが意地悪な僕と素直じゃない彼女の幸せの話。



「菅野先生の新刊、馬鹿みたいに売れてるそうじゃないですか」
 頬杖をつきながら、本に目を落とした推理作家が、皮肉染みた声音でぼそりと呟く。
「もしかして、君も読んだの?」
 その不愛想な男の目の前に、丁寧な手つきで麦茶を置くのは売れっ子恋愛小説家。
「アンタの文を読まないわけがないだろう?」
「君は時々すごく素直になるね」
「うるさいな。ってそうじゃなくて。この小説、まるっきり俺らの話だろうが!」
「ちゃんとぼかして書いてあるだろう?」
「確かに、名前やら性別やらの詳細は変えてあるけども!」
「だって、せっかく書いた物語を世に出さないのは勿体ないし」
「だからって……。周りからは分からないとしても、恥ずかしいだろ……」
「でも、そういう君だって、新作の恋愛描写がかなり僕の関係に近いみたいだけど?」
「うっ。それは……」
「しかも最近、恋愛描写が捗ってるおかげで随分新規ファンが増えたらしいじゃないか」
「ぐっ」
「何だったら、もっといい描写ができるように、もっとすごいこと教えてあげようか?」
「煩悩作家め」
「おかげさまで」
 二人の物語は、まだまだ終わりそうにない。続きはきっと彼らの小説の中に。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

体育倉庫で不良に犯された学級委員の話

煉瓦
BL
以前撮られたレイプ動画を材料に脅迫された学級委員が、授業中に体育倉庫で不良に犯される話です。最終的に、動画の削除を条件に学級委員は不良の恋人になることを了承します。 ※受けが痛がったりして結構可哀想な感じなので、御注意ください。

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

処理中です...