隘路

重過失

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思い出す

出会った時

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 大学での学校生活は順調か?

 順調が指す指標が成績の事なら、まあ不満足ではあるが厳しくはない。
 つまり、成績は高いが俺は満足していないということだ。

 昔からそうだった。
 成績表は授業態度が一番高いのが当たり前で、知識技能とかは普通くらい。
 別に成績を突出させて目立ちたい訳ではないけど、自分ならもっとやれる気がしてならなくて、とにかく悔しい。

 指す指標が人間関係の事なら、すこぶる悪い。
 ゴミ。
 俺は特に気にしていないが、何故かものすごくいじられる。
 典型的な虐めみたいに、物を隠されたり暴言暴力を振られたりの様なものではなく、単なる煽り言葉だ。
 ただ小説を書いているってだけで、ここまで言われなければいけないのか?

 読んでもない割には口の滑りがよく、沢山の言葉が流れる様に出てくる彼らは、毎日同じようなことしか言ってこない。
 滑りが良いだけで、語彙力や思考は無いらしい。大学に来てまで不適切な言動で叱られるやつがいるか?

 ただいじるだけの奴なんか、友達とはおろか、知り合いとすら言えないだろ?

 とにかく、友達はいないし、先生からの評判が特別良いわけでもない。
 彼女?友達がいないのに彼女はいる人なんて二次元にしかいないだろ。
 あまり妄想をしない方がいい。あらゆる物事に支障が出る。

「おい!お前の小説、中々面白いじゃねーか」

 宏樹「本当に読んだのか?」

「あぁ勿論、0章の0話までな!」

 宏樹「それは読んだとは言わないだろ」

 何がしたい?
 これを言うだけの為にわざわざ近寄って、笑いながら去っていくんだから、本当に何を考えているのかがよく分からないし、分からなくていい。

 無視すればいいのはそうなんだが、無視すれば悪評が広まって悪い印象で目立ってしまう。
 だから適当に返事をしている。
 返事をする時に顔すら見たことが無いから、今は何色の髪なのかもサッパリだ。

 ───

 今日もあの公園を歩こう。
 やはり、誰もいない公園は清々しくて気持ちがいい。
 夕方に来ると、必ず一組のカップルがディープキスをしている場面に出くわす羽目になるから、絶対に来たくない。
 他所でやれ、家でやれ、そんなはしたない場面を公の場でするな。特にこの公園は子供だって遊びにくるんだから尚更やめろ。

 はぁ、せっかくここを歩いているのだから、そんな邪な事を考えるべきじゃない…

 ───

 家での生活は?

 普通。
 いや、強いて言うなら母親が少し、いや大分しつこい。
 別にどうでもいい、知っても意味が全く無いような質問を投げかけ、俺が答えるのを拒否、あるいは質問を無視すると一人で勝手に無茶苦茶な理論を並べて怒りだす。

 酷すぎる。更年期障害か?
 早く貯金して引っ越したいところだが、生憎のところまだ出来ない。
 父親は全然そんな事ないのに。普通逆じゃないか?
 父親が怒る役で、母親が慰める様な役じゃないのか?
 はぁ、いつも一言余計だし、そんな母親から産まれた自分は、悪いことがあると大体遺伝のせいにしていた。
 そんな悪癖を治すのにどれだけの時間と、判断と、呵責があったと思う。

 まあ、そんな母親以外は普通だ。
 虐待は勿論なく、買いたいものは普通に買えて、こちらの要望は基本難なく通る。

 食生活にも困ってないし、家での精神的汚染は殆どないと言っていいだろう。

 太りはしない。運動を特別しているわけではないが、登校中のストレスを受けてみればいい。太れるわけない。

 健康状態もまあ良い。
 ストレスで悪くなっている部分は生活習慣で補っているつもりだ。

 じゃあ、ゲームは…

 そして、お前は何でそんなにも俺の事を知りたがる?
 さっき言った。俺は知っても意味ないだろうと思う情報は話したくないんだ。無駄だから。

「い、いや、ただ気になっただけで…」

 宏樹「そうか、じゃあ教えてやろう。」

「ほ、本当か」

 宏樹「中学校での人間関係もクソだった。」

「それはどういう…」

 宏樹「お前みたいに、何でも知りたがるストーキング野郎が、無意味近付いてきては下らない質問ばかり問いかけてきたからな。」

「…で、でも、友達の事を知りたがるのは皆そうじゃないか?」

 宏樹「俺はお前の事を一度たりとも"友達"だと思ったことは無い。」

「なら、なんでこの電話に出たんだ?」

 宏樹「こう言ってやる為だ。」

 二度と電話をかけるな。
 そう言って俺はしつこい奴から何度もかかってくる無価値の電話を強引に切った。
 何度もかけてきて、その度に同じことを聞いてくる。
 お前は引っ越してすぐの子どもを持つ親か?
 親の場合は過保護だとか、心配性とか、用心深いとかと言えるが、お前の様な奴を呼称する単語は、少なくともこの俺の頭脳の中に無い。

 ───

 いつもの様に帰宅して、あの公園を全く同じルートで通る。
 誰もいない公園は孤独感があって侘しげな雰囲気が漂っている。毎日親と店員以外の異性に話しかけられない俺にとって、この公園を歩いて、誰もいない辺りを見回していると妙に親近感が湧く。

 そして今日も誰も見かけずに済むままこの公園を出ることが出来る。

 と思った。

 こんな時間にベンチに座ってノートを読んでいる女子高生が視界に入るまでは。
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