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振り返る
昔の記憶
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この老体になってからは、バイクの運転免許があるのを活かして郵便配達業をしている。
近所をバイクで回るだけだから、知り合いとも会うし、道も熟知しているから簡単だ。
家を回っていたらさとちゃんの家に来た。表札の筆記体で書かれたSATOUは、あいつの息子がこの家を改築する時につけたものらしい。
この事について、さとちゃんは思い出す度に「あいつがよ~」なんて言って愚痴ってるのを見る限り、気に入っていないようだ。
郵便を配達する為にインターホンを押して、声をかける。すると中からさとちゃんが出てきた。
佐藤「おう、幸次じゃねぇか、ちゃんとやってるか?」
幸次「当たり前だろ、さとちゃん、あいつは?」
佐藤「あいつはどっか出かけてったよ、それで…」
俺達はここでの付き合いが随分と長い。年齢も近いし、気が合うんだ。
だからすぐ仲良くなった。酒を飲んだり映画を観に行ったり…
こうやって立ち話してると、お互いに老いたと思う。昔はすぐに動けたが、今じゃそうはいかない。こんなしわくちゃでヨボヨボじゃ、走るのは勿論、キツイ坂を登る時はゼェゼェ言ってる。
おっと、こんな立ち話をしてる場合じゃないな。話のキリをつけるのも難しくなってな…
幸次「まだ郵便が残ってんだ、それやっちまうよ」
佐藤「おう、そうしろそうしろ、じゃあな、真面目にやれよ」
幸次「当たり前だ」
からかい気味にそう言ってくるが、それがまたさとちゃんのいいところだ。あの気さくさはちっちゃいのからしたら俺より話しかけやすくて遊びやすいだろう。
さて、残ってる分を早く終わらせて帰るか…
それで、しばらくバイクを走らせて各家を回っていった。周りの風景を見るたびに、その場所であった懐かしい記憶が浮かんでくる。
あの床屋で初めて髪を切った時、切りすぎだって怒った事があったな。母親になだめられて泣きべそをかきながら帰ったのが懐かしい。
あそこにあったはずの駄菓子屋は、コンビニになってしまった。いつも店頭に立ってたおばちゃんはオマケをくれたり、何かと優しかったな。
そして、あまり通らない道に入った。
ここ…そんな通らないのに、見るたびに強烈な何かを感じる…鮮明で、嫌な記憶な気がする…
この不明瞭な感覚に不快感を感じた時、左側にある公園が目に入った。
なんの変哲もない、ただの公園だが…
俺はその公園にあるベンチを見て、今まで不明瞭だった記憶を思い出した。
───────
学校から帰った後、友達を一人で待つ時はブランコで立ち漕ぎをするのが好きだった。でも他の人も並んでいて、そこでも待ってなきゃいけない。
数分か、数十分か待った後、やっと俺の順番になった。すぐ遊びたかった俺は足早にブランコへ向かった。
「いぇーい俺の勝ちー!」
「うわっ!お前ズルいよ!」
横から3人の男が走ってきたかと思ったら、俺が使おうとしていたブランコを取ってしまった。
待ちに待った、俺の順番なのに…
納得いかない、ズルすぎる!待ったのは俺なのに!
幸次「おい!そのブランコは俺の順番だったぞ!」
「は?早いもん勝ちだし~w」
「会いてんのに早く乗らないほうが悪いだろ!」
幸次「ズルい!そんなルール無しだ!無し!」
「ざんね~ん、俺はもうここから降りませ~んw」
ムカつく!こいつら、横入りしてきたくせに!
おかしいおかしい!絶対に俺の番だ!
幸次「横入りしてきたズルやろう!バーカ!」
「バカって言ったやつがバカなんだよ、バカ!」
佐藤「幸次!お前何やってんだ?」
幸次「さとちゃん!こいつらが俺の番なのにブランコ取った!」
佐藤「何やってんだよお前ら!幸次に乗せてやれよ!」
「早いもん勝ちで~す、残念でした~!」
佐藤「うわっ、ズルいやつ。幸次、もうこんなやつほっといてあっちで先に二人で野球やろうぜ!」
幸次「うぅ、そうだな、もうそうしよう!あっかんべーだ!」
結局この日はあいつらのせいで、嫌な気持ちのまま野球をやった。後からたっちゃんとのりがきて、4人で野球をやったが、俺達が野球をやってる間、あいつらは俺の乗るはずだったブランコにずっと乗ってた。
たまに横目で見たけど、いつみても乗ってたからムカついた。その日はいいプレイが出来なかった。
次の日、登校中にさとちゃん、たっちゃん、のりでまた公園で野球をする約束をした。
けど学校に行ったら、全校集会があった。何があったのかは教えてくれなかったが悪いことが起きたらしく、集団下校となった。
家に帰ってランドセルを玄関にほっぽり投げ、グローブを持ってあの公園に向かって走る。
公園に着いた!と思ったら、黄色くて黒い文字が書いてあるテープの様なものが公園に張り巡らされていた。なぜ入れないのかは分からなかった。入り口でボーッと立っていたら横からさとちゃんが走ってきた。
佐藤「おーい幸次!って、なんだこれ?」
幸次「そうなんだよ、これのせいで野球が出来ない」
佐藤「これ…"立ち入り禁止"だって、入れないじゃん!」
幸次「えっ!?出来ないの?」
佐藤「父ちゃんが言ってた、これがあるとこは事件が起きたとこだって」
幸次「そっか…」
その後にきたたっちゃんとのりにもその事を伝えた。二人とも俺と同じでがっかりしていた。
結局、この日は野球ができず、近くの駄菓子屋によって駄菓子を買って帰った。
近所をバイクで回るだけだから、知り合いとも会うし、道も熟知しているから簡単だ。
家を回っていたらさとちゃんの家に来た。表札の筆記体で書かれたSATOUは、あいつの息子がこの家を改築する時につけたものらしい。
この事について、さとちゃんは思い出す度に「あいつがよ~」なんて言って愚痴ってるのを見る限り、気に入っていないようだ。
郵便を配達する為にインターホンを押して、声をかける。すると中からさとちゃんが出てきた。
佐藤「おう、幸次じゃねぇか、ちゃんとやってるか?」
幸次「当たり前だろ、さとちゃん、あいつは?」
佐藤「あいつはどっか出かけてったよ、それで…」
俺達はここでの付き合いが随分と長い。年齢も近いし、気が合うんだ。
だからすぐ仲良くなった。酒を飲んだり映画を観に行ったり…
こうやって立ち話してると、お互いに老いたと思う。昔はすぐに動けたが、今じゃそうはいかない。こんなしわくちゃでヨボヨボじゃ、走るのは勿論、キツイ坂を登る時はゼェゼェ言ってる。
おっと、こんな立ち話をしてる場合じゃないな。話のキリをつけるのも難しくなってな…
幸次「まだ郵便が残ってんだ、それやっちまうよ」
佐藤「おう、そうしろそうしろ、じゃあな、真面目にやれよ」
幸次「当たり前だ」
からかい気味にそう言ってくるが、それがまたさとちゃんのいいところだ。あの気さくさはちっちゃいのからしたら俺より話しかけやすくて遊びやすいだろう。
さて、残ってる分を早く終わらせて帰るか…
それで、しばらくバイクを走らせて各家を回っていった。周りの風景を見るたびに、その場所であった懐かしい記憶が浮かんでくる。
あの床屋で初めて髪を切った時、切りすぎだって怒った事があったな。母親になだめられて泣きべそをかきながら帰ったのが懐かしい。
あそこにあったはずの駄菓子屋は、コンビニになってしまった。いつも店頭に立ってたおばちゃんはオマケをくれたり、何かと優しかったな。
そして、あまり通らない道に入った。
ここ…そんな通らないのに、見るたびに強烈な何かを感じる…鮮明で、嫌な記憶な気がする…
この不明瞭な感覚に不快感を感じた時、左側にある公園が目に入った。
なんの変哲もない、ただの公園だが…
俺はその公園にあるベンチを見て、今まで不明瞭だった記憶を思い出した。
───────
学校から帰った後、友達を一人で待つ時はブランコで立ち漕ぎをするのが好きだった。でも他の人も並んでいて、そこでも待ってなきゃいけない。
数分か、数十分か待った後、やっと俺の順番になった。すぐ遊びたかった俺は足早にブランコへ向かった。
「いぇーい俺の勝ちー!」
「うわっ!お前ズルいよ!」
横から3人の男が走ってきたかと思ったら、俺が使おうとしていたブランコを取ってしまった。
待ちに待った、俺の順番なのに…
納得いかない、ズルすぎる!待ったのは俺なのに!
幸次「おい!そのブランコは俺の順番だったぞ!」
「は?早いもん勝ちだし~w」
「会いてんのに早く乗らないほうが悪いだろ!」
幸次「ズルい!そんなルール無しだ!無し!」
「ざんね~ん、俺はもうここから降りませ~んw」
ムカつく!こいつら、横入りしてきたくせに!
おかしいおかしい!絶対に俺の番だ!
幸次「横入りしてきたズルやろう!バーカ!」
「バカって言ったやつがバカなんだよ、バカ!」
佐藤「幸次!お前何やってんだ?」
幸次「さとちゃん!こいつらが俺の番なのにブランコ取った!」
佐藤「何やってんだよお前ら!幸次に乗せてやれよ!」
「早いもん勝ちで~す、残念でした~!」
佐藤「うわっ、ズルいやつ。幸次、もうこんなやつほっといてあっちで先に二人で野球やろうぜ!」
幸次「うぅ、そうだな、もうそうしよう!あっかんべーだ!」
結局この日はあいつらのせいで、嫌な気持ちのまま野球をやった。後からたっちゃんとのりがきて、4人で野球をやったが、俺達が野球をやってる間、あいつらは俺の乗るはずだったブランコにずっと乗ってた。
たまに横目で見たけど、いつみても乗ってたからムカついた。その日はいいプレイが出来なかった。
次の日、登校中にさとちゃん、たっちゃん、のりでまた公園で野球をする約束をした。
けど学校に行ったら、全校集会があった。何があったのかは教えてくれなかったが悪いことが起きたらしく、集団下校となった。
家に帰ってランドセルを玄関にほっぽり投げ、グローブを持ってあの公園に向かって走る。
公園に着いた!と思ったら、黄色くて黒い文字が書いてあるテープの様なものが公園に張り巡らされていた。なぜ入れないのかは分からなかった。入り口でボーッと立っていたら横からさとちゃんが走ってきた。
佐藤「おーい幸次!って、なんだこれ?」
幸次「そうなんだよ、これのせいで野球が出来ない」
佐藤「これ…"立ち入り禁止"だって、入れないじゃん!」
幸次「えっ!?出来ないの?」
佐藤「父ちゃんが言ってた、これがあるとこは事件が起きたとこだって」
幸次「そっか…」
その後にきたたっちゃんとのりにもその事を伝えた。二人とも俺と同じでがっかりしていた。
結局、この日は野球ができず、近くの駄菓子屋によって駄菓子を買って帰った。
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