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真実
正義の鉄槌
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綾人「いいか、俺に合わせてくれよ。」
陽太「分かった…」
「どうされましたか?」
綾人「友人と約束していてここに来たんですけど、出てこないから、二人で先に中入って待ってようとしたんです。そうしたら、これを見つけて…」
「なるほど…少し見てもいいですか?」
綾人「どうぞ。それと、あとこっちにも…」
綾人さんは二人の警察官を死体があったガレージに案内した。
あれは…累さんがあの手帳に書いた事を実行した確固たる証拠だ…でも…もう二度と見たくない…
「うわっ!?」
「お前、止まれ!」
ガレージから声が聞こえてきた。
どうやら、あの死体を直視したようだ。
でも、これは綾人さんがやったわけではない。
このままだと誤解されてしまう。
陽太「待ってください、僕達はなにもしてないんです。見つけて通報しただけで…」
警察官は俺を無視してるのか、そんなこと理解している上での警戒なのかは分からなかった。
応援が到着後、俺達は事情聴取を受けるために警察署に連行された。
洗いざらい全ての事を話した。
事情聴取中、俺は、自分の事より綾人さんが心配だった。
事情聴取が終わり、二人でまた話し合った。
陽太「そっちはどうだった?俺は全部話した。」
綾人「俺もだ。君はこれからどうしたい?」
累さんの素性、あの事件の全貌が完全に分かった。
確かに、俺は累さんに沢山お世話になった。
でも、だからと言って俺の激情を、綾人さんの悩みを利用して、私欲の為に殺人の片棒を担がせたのは許せない。
殺す以外、もっと平和的な解決方法があったはず。
俺は何も知らないけど、人の命をそんなに軽く見ていい訳がない。
累さん、最初からこうするつもりだったのか?
人の信頼を買って、私欲に利用する。
累さんがあのグループを解散させてなければ、俺のところに戻って来なくとも静は死ななかったはず。
綾人「彼は3人を殺しておきながら無期懲役だ。
本来なら死刑だが、彼は上手く証拠を隠して今に至る。
無期懲役でも模範囚となれば、いずれ仮釈放が許され社会に戻ってこれる。」
陽太「…それは許せない。人を利用し3人を殺した奴は、しっかりと正当な罰を受けるべきだ。」
綾人「あの手帳には君の名前が記されていた。だから再審をするとしたら、必ず証人として法廷に立つこととなるだろう。」
陽太「分かっている。その時に全部話すつもりだ。」
手帳の内容、家宅捜査、累さんの供述、死体の検査、過去の事件、これらの再捜査によって検察側が杉崎 累被告人の再審を要求した。
──────────
「検察側の証人尋問を始めます。証人 辻本陽太 入廷してください。」
俺は警察官に連れられて、法廷に入った。
累さんが俺の事をじっと見ている。
その表情は能面の様で、何を思っているのかが全く分からなかった。
「では伺います。あなたから見て、杉崎はどういう男ですか?」
陽太「…私欲のために他人を利用して人を殺す狂人です。」
累「…」
陽太「僕も彼の殺人に、間接的とはいえ利用されました一人です。
僕はあの手帳を見た時、怒りが沸き上がってきました。
今まで頼れる人だと思っていたのに、
今までお世話になってきたありがたさもありました。
でもそれらは全て、彼の欺瞞にまみれた策略だと分かった。
僕だけじゃない。沢山の人が彼に利用された。
それが許せなかった。」
証言が終わった後、検察側の反対尋問が始まった。
「これは、証人が見つけた手帳です。辻本さん、少し読み上げてもらってもいいですか?」
あの手帳に書いてある、主要となるであろう部分を抜粋して読み上げた。
愛莉を利用して放火殺人を行った事、
グループのリーダーと副リーダーの殺害計画、
累さんが統合失調症を偽ろうとした事、
全てを読み上げた。
傍聴席は顔をしかめる人がいた。
「ありがとうございました。」
俺が手帳を読み上げた後、検察側は手帳に書かれた事が本当であることを裏付けるような証拠を提出し始めた。
本棚を移動させ、その後ろの新しい壁紙を剥がしたところ、手帳に書かれているように、支離滅裂な文が書かれていたようだ。
他にも数点の証拠が提出された。
判決はこの場では出されず、裁判は閉廷となった。
─────────
綾人「お疲れ様。あれだけの証拠が出揃えばもう逆転は無理だろうな。」
陽太「あぁ…そうだな。」
…俺はずっと静の事を考えていた。
これだけやっても、結局静は帰ってこない。
あの可愛らしい静は、今どこで何をしているんだろう。
綾人「…冷たいけど、そんな事を考えたってもう…だから、程々にな…。俺にはその気持ちを分かってやれない…どれほど深くて、寂寥としているのかさえ、な…」
陽太「いや、いいんだ。ありがとう。それに、この気持ちは分からないほうがいい…」
綾人さんがいなければ、俺はずっと、この先も累さんに騙されたままだっただろう。
俺はそういう事が大嫌いだ。だから解消へ誘ってくれた綾人さんには感謝している。
───
綾人「陽太さん、判決が出たらしいですよ」
陽太「本当か」
綾人「計画的な犯行だったとして死刑らしい。三件の殺人に一件の死体損壊と放火だから、まあほぼ確定だったけど、今SNSでは"知能犯"だとか"猟奇殺人"だって話題になってる」
陽太「はぁ…よかった。悪人はしっかり裁かれるべきだし、こうして正解だった。」
今、こうして捕まらずに綾人さんと話せているのも綾人さんのお陰だ。
二人とも何も知らずに巻き込まれただけで、直接的な加担は行っていないとして、有罪を回避できた。
陽太「よし…じゃあそろそろ行くから…」
綾人「待ってくれ、俺達にも行かせてくれ」
陽太「…分かった、じゃあ待ってるよ」
綾人「ありがとう…呼んでくる」
全てが解決したということで、静のお墓に参ろうとしていた。
綾人「お待たせ」
美優「じゃあ、行こっか…」
陽太「まあ、そう気を落とさないで。フランクに行ったほうが静もきっと喜ぶだろうし」
俺達は車に乗ると、静がバイトしていた花屋で献花を買って、静が眠る霊園に向かった。
陽太「分かった…」
「どうされましたか?」
綾人「友人と約束していてここに来たんですけど、出てこないから、二人で先に中入って待ってようとしたんです。そうしたら、これを見つけて…」
「なるほど…少し見てもいいですか?」
綾人「どうぞ。それと、あとこっちにも…」
綾人さんは二人の警察官を死体があったガレージに案内した。
あれは…累さんがあの手帳に書いた事を実行した確固たる証拠だ…でも…もう二度と見たくない…
「うわっ!?」
「お前、止まれ!」
ガレージから声が聞こえてきた。
どうやら、あの死体を直視したようだ。
でも、これは綾人さんがやったわけではない。
このままだと誤解されてしまう。
陽太「待ってください、僕達はなにもしてないんです。見つけて通報しただけで…」
警察官は俺を無視してるのか、そんなこと理解している上での警戒なのかは分からなかった。
応援が到着後、俺達は事情聴取を受けるために警察署に連行された。
洗いざらい全ての事を話した。
事情聴取中、俺は、自分の事より綾人さんが心配だった。
事情聴取が終わり、二人でまた話し合った。
陽太「そっちはどうだった?俺は全部話した。」
綾人「俺もだ。君はこれからどうしたい?」
累さんの素性、あの事件の全貌が完全に分かった。
確かに、俺は累さんに沢山お世話になった。
でも、だからと言って俺の激情を、綾人さんの悩みを利用して、私欲の為に殺人の片棒を担がせたのは許せない。
殺す以外、もっと平和的な解決方法があったはず。
俺は何も知らないけど、人の命をそんなに軽く見ていい訳がない。
累さん、最初からこうするつもりだったのか?
人の信頼を買って、私欲に利用する。
累さんがあのグループを解散させてなければ、俺のところに戻って来なくとも静は死ななかったはず。
綾人「彼は3人を殺しておきながら無期懲役だ。
本来なら死刑だが、彼は上手く証拠を隠して今に至る。
無期懲役でも模範囚となれば、いずれ仮釈放が許され社会に戻ってこれる。」
陽太「…それは許せない。人を利用し3人を殺した奴は、しっかりと正当な罰を受けるべきだ。」
綾人「あの手帳には君の名前が記されていた。だから再審をするとしたら、必ず証人として法廷に立つこととなるだろう。」
陽太「分かっている。その時に全部話すつもりだ。」
手帳の内容、家宅捜査、累さんの供述、死体の検査、過去の事件、これらの再捜査によって検察側が杉崎 累被告人の再審を要求した。
──────────
「検察側の証人尋問を始めます。証人 辻本陽太 入廷してください。」
俺は警察官に連れられて、法廷に入った。
累さんが俺の事をじっと見ている。
その表情は能面の様で、何を思っているのかが全く分からなかった。
「では伺います。あなたから見て、杉崎はどういう男ですか?」
陽太「…私欲のために他人を利用して人を殺す狂人です。」
累「…」
陽太「僕も彼の殺人に、間接的とはいえ利用されました一人です。
僕はあの手帳を見た時、怒りが沸き上がってきました。
今まで頼れる人だと思っていたのに、
今までお世話になってきたありがたさもありました。
でもそれらは全て、彼の欺瞞にまみれた策略だと分かった。
僕だけじゃない。沢山の人が彼に利用された。
それが許せなかった。」
証言が終わった後、検察側の反対尋問が始まった。
「これは、証人が見つけた手帳です。辻本さん、少し読み上げてもらってもいいですか?」
あの手帳に書いてある、主要となるであろう部分を抜粋して読み上げた。
愛莉を利用して放火殺人を行った事、
グループのリーダーと副リーダーの殺害計画、
累さんが統合失調症を偽ろうとした事、
全てを読み上げた。
傍聴席は顔をしかめる人がいた。
「ありがとうございました。」
俺が手帳を読み上げた後、検察側は手帳に書かれた事が本当であることを裏付けるような証拠を提出し始めた。
本棚を移動させ、その後ろの新しい壁紙を剥がしたところ、手帳に書かれているように、支離滅裂な文が書かれていたようだ。
他にも数点の証拠が提出された。
判決はこの場では出されず、裁判は閉廷となった。
─────────
綾人「お疲れ様。あれだけの証拠が出揃えばもう逆転は無理だろうな。」
陽太「あぁ…そうだな。」
…俺はずっと静の事を考えていた。
これだけやっても、結局静は帰ってこない。
あの可愛らしい静は、今どこで何をしているんだろう。
綾人「…冷たいけど、そんな事を考えたってもう…だから、程々にな…。俺にはその気持ちを分かってやれない…どれほど深くて、寂寥としているのかさえ、な…」
陽太「いや、いいんだ。ありがとう。それに、この気持ちは分からないほうがいい…」
綾人さんがいなければ、俺はずっと、この先も累さんに騙されたままだっただろう。
俺はそういう事が大嫌いだ。だから解消へ誘ってくれた綾人さんには感謝している。
───
綾人「陽太さん、判決が出たらしいですよ」
陽太「本当か」
綾人「計画的な犯行だったとして死刑らしい。三件の殺人に一件の死体損壊と放火だから、まあほぼ確定だったけど、今SNSでは"知能犯"だとか"猟奇殺人"だって話題になってる」
陽太「はぁ…よかった。悪人はしっかり裁かれるべきだし、こうして正解だった。」
今、こうして捕まらずに綾人さんと話せているのも綾人さんのお陰だ。
二人とも何も知らずに巻き込まれただけで、直接的な加担は行っていないとして、有罪を回避できた。
陽太「よし…じゃあそろそろ行くから…」
綾人「待ってくれ、俺達にも行かせてくれ」
陽太「…分かった、じゃあ待ってるよ」
綾人「ありがとう…呼んでくる」
全てが解決したということで、静のお墓に参ろうとしていた。
綾人「お待たせ」
美優「じゃあ、行こっか…」
陽太「まあ、そう気を落とさないで。フランクに行ったほうが静もきっと喜ぶだろうし」
俺達は車に乗ると、静がバイトしていた花屋で献花を買って、静が眠る霊園に向かった。
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