Like

名前未確定

文字の大きさ
上 下
3 / 33
橋倉 静

選択

しおりを挟む
Twitterを使ってみて色々分かった事がある。
それは、思っていたより楽しい事。楽しくて時間がすぐに過ぎていくせいで、生活習慣に支障が出てるのも事実だけど。
みんな優しいし、面白くてつい夢中になってしまう。だから自然とTwitterを開く回数も、見てる時間も増えていく。
その内、宣伝以外に色々日常ツイートもするようになった。おはよう、とかただいまとか。
段々と知名度も上がっていって、フォロワーは200人を超えたし、YouTubeの方も順調に進んでいる。
今や登録者は300人と、中々のペースで増えている。再生回数も1000回が平均だし、このまま何も無ければいずれ1000人も夢じゃない…。

半年後に高校受験もあるから、勉強もやらなきゃいけない。でもTwitterがあれば大丈夫…な気がしてきた。
だって、分からない部分があればそこをTwitterに投稿すればみんな教えてくれるし、答えが合ってれば褒めてくれる。
そうすればやる気も湧いてくるし、何より上手くいく。
今まで観てるだけだったSNSも使いこなせばここまで便利なものだとは思わなかった。
ルーイさんやよーたさん以外にも異性のネッ友が増えた。でも最初期の頃から知り合ってるし、二人とも頼れる存在なのは揺るぎない。
この前、鍵垢っていうのを作ってみた。ルーイさんによると、私がフォローリクエストを承認した人だけが鍵垢のツイートを見れるらしい。これなら信頼してる人にだけ発信出来るし便利だな。

Twitterを始めてから色々趣味が増えた気がする。ゲーム以外にも、イラストを描いてみたり、映画を観てみたり。
とりあえずTwitterを始めてからと言うものの、明らかに前より人生が楽しくなった。
色んな人と関わりを持って、会話して仲を深めたり、時には通話する事もあった。でも通話は恥ずかしいからあんまりしないけど…
実際に会った事は無いけど、会わなくたって充分楽しい。
でも、だからといって現実に疎くなった訳ではない。美優ちゃんや千鶴ちゃんとの会話だって楽しいし、面白い。
私の中ではリア友とネッ友は別物。

休日、何もする事がないからYouTubeを観てた。
するととある動画が気になった。動画というか、ジャンルなのかな?
''VTuber''というもの。
名前は聞いた事あったし、VTuberの有名人は誰か、くらいは言える。
でも最近のVTuberの動画は見た事がなかった。私が最後に見たのは3D空間でVTuberが色々動いている動画だった。
3D空間とか、3Dモデルとか、設備が整ってないと出来ないだろうし、そんなお金は私には無い。
そもそもモデルの絵すら描けない私からしたらVTuberなんて遠い遠い世界だった。
でも最近は違うのかな、とにかく気になって動画のサムネをタップした。
表示された動画に映っていたのは、昔見た3Dモデルが動き回るようなものではなく、端にある2Dのイラストの顔が動いていて、ゲーム実況してる動画だった。
あまりにも昔の記憶と違いすぎて、動画を間違えたのかと疑うほどだった。
でもこの動画は間違いなくVTuberというジャンルの動画だった。

声出しは元からしていたけど、流石に顔出しはしていなかった。
それが故に、声で感情が読み取れても表情での感情は読み取れない。だから物足りなく感じていた。
これなら私にも出来るかもしれない。きっと専用のソフトとかがあるんだろうけど、3Dモデルを動かすよりは遥かに簡単だろうし。
何より、顔を出さずに表情を見せれるというメリットに目が眩んだ。しかも自分で描いたキャラで。
別に私はイラストレーターじゃないけど、中の上か、上の下くらいの実力はあるだろうから、自分で描いた絵を絵師さんに描き直して貰えばモデルに関しての問題は補える。

でも、問題は設備だった。色々調べてみたけどやっぱりスマホじゃ私の思うような事は出来ない。
つまり、PCが必要という事。それも高性能であればある程良い。
でも高性能な分、値段も高くなるのが世の摂理。バイトもしてない中学3年生の私じゃとうに及ばない金額。
高校に受かって、入学したら部活を続けようかと思っていたけど、部活をやめてバイトしてPCを買うという選択肢。
部活かPCか。それは私にとっては凄く難しい選択肢だった。
でもとりあえず、中学を卒業してからの話なのでこれは後々に決めればいいかと思って今は考えるのをやめた。

でもいつか必ずPCは買いたい。動画の為とかではなく、単に生活する為に必要だと思ったから。
まあこういう事は中学を卒業してからだよね…
VTuberの事は一旦諦めよう。半年経ったらまた考える。

今日はフォロワーさん達といっぱい話せて楽しかった。また明日もみんなと話したいな。

動画投稿を始めてからかなり経った。
投稿を始めたのは6月下旬、もう2月になる。
TikTokも始めたりして、登録者数は900人にもなった。
もはや相手の性別、年齢なんて関係ない。私と気が合えば誰だって受け入れるようになった。通話もするようになった。
学校で美優ちゃん達と話して、家で勉強して、Twitterに投稿すれば褒められるし、通話で笑って話す。
そんな人生が最高に楽しい。でもいい事ばかりじゃない。

もうすぐ高校受験が明日に控えてる。でもきっと大丈夫…
SNSを控えてまで勉強時間を増やしたんだし、実際にテストの点数も上がった。

…高校受験が終わった。今は合格発表ページが見れるようになるまで待ってる。不合格だったらマズイ。合格しても高校生活に慣れれるかどうか不安…

いよいよ合格発表ページが見れるようになった。さっきまであんなに楽しみにしていたのに、いざ見れるようになると緊張して見れない。
でも見なければ何も始まらないし分からない。私は意を決して合格発表ページにアクセスした。
ページを開くとそこにはこう書いてあった。

結果 : 合格

………!!!
嘘…!?合格した!?!?
やったぁぁあ!!!!!

私は狂喜した。家族にも美優ちゃん達にもTwitterにも投稿した。
YouTubeとかにも動画として投稿するか迷ったけど、流石にやめた。
この抑えきれない喜びに私は踊らされていた。
そこからの行動は早かった。新しく私服を買ったり、日用品も買った。でも高校で化粧品が使えるかどうか分からなかったから、化粧品は買わなかった。
中学の振り返り勉強もしたし、高校生活に向けてもう準備万端。
後は登校日まで待つだけ…

1日1日が長くも短くもあった。みんな祝福してくれたし、色々くれようとしてくれた。でも流石に私はそういうネットの人からの贈り物には抵抗感があったから断った。
恋愛ドラマとかでよく見る恋愛もしてみたい。学園アニメでよく見る学校生活を送りたい。
でも留年はしたくない。いじめはないと思うけど…ちょっと心配。
とにかく、私の頭の中には高校生活への理想と不安がひしめき合っていた。

そうして高校への初登校日。中学の時より早く家を出た私は、美優ちゃんと合流した。
そう。美優ちゃんも私と同じ高校を受けて、無事に合格したのだ。
初めて二人とも受かったって分かった時は喜び祝い合った。
千鶴ちゃんは別の高校に行っちゃったけど…あの子も合格してたしまあいっか!
高校が別だからって千鶴ちゃんと話せなくなった訳じゃないし、遠くはないから会えないわけでもない。
今度余裕が出来た時に3人で女子会でもしようかな?

美優「どう?高校の制服は?」
静「まだ初日だから慣れないよ~。美優はよく似合ってるね!」
美優「そうかなぁ?静の方が似合ってると思うけど」
静「何言ってんのよ!ふふっ」

あぁ、幸せだなぁ。
親友と同じ高校に受かって入学だなんて。
まだ高校の正門すら通ってないのに、もう凄く楽しい。
そうして美優ちゃんと雑談を交わしながら登校した。

入学式も終わり、クラスの教室へ入った。
席を確認して、同じ中学だった子達と雑談を交わしていると聞き覚えのある気がする声がした。
その声は男のもので、優しい口調が特徴的な彼の声はすぐに判った。
…まさかよーた君?
いや、気のせいかもしれない。この世には何万、何億と人間がいるんだから、声くらい似てる人は沢山いるだろう。
でも…それでも私はあの声の主がよーた君だと思っていた。

先生からの話も終わり、休憩時間となった。次の時間は自己紹介。
自己紹介の時にもう一度静かなタイミングで声を聞こうか悩んだけど、それまで待てない。
私は早く知りたかった。この声の主はよーた君なのか。
幸いにも今はよーた君?の周りには誰もいない。私は早速、よーた君と思しき人物へ話しかけに行く。

静「…ねぇねえ、ちょっといいかな?」
陽太「ん?何?」
静「ちょっと聞きたい事があるんだけどさ…」
陽太「はぁ」
静「…君ってTwitterやってる?」
陽太「まぁ、やってるよ」
静「……もしかして、よーた君?」
陽太「…え?」
静「いや、ちょっと声が似てるなって思って、話しかけてみたんだけど、もしかして違った…?」
陽太「…いや、俺も聞きたい事があるんだけどさ…」
静「…何?」
陽太「君ってもしかして、Twitterのシズさん?」
静「…えっ!?」
陽太「あ…」

数秒間、沈黙が流れた。でも多分お互い驚いて黙ってるだけで私達は確信してたと思う。
…私がシズで、彼がよーた君だって事を。

陽太「いや…なんていうか、その…」
静「ううん、私こそ、まさかそうだとは思って無かったし…」

なんだか気まずい雰囲気がする。けど居心地の悪いものでは無かった。

陽太「これから…よろしく…ね?」
静「わ、私こそ、よろしくおねがい…します…」

ちょっと恥ずかしい。Twitterであんなに仲良く話して、通話だってしてたあのよーた君が目の前にいる。
私の顔も、何もかもがよーた君に知られてしまった。

美優「静~、誰と話してるの~…」
静「あっあのえっと…」
美優「…もしかして、静がよく言ってるよーた君って人?」
陽太「あぁ、そうですそうです。」
美優「…まさか同じ学校だとは思わなかった!私は美優、これからよろしくね!」
陽太「はい、よろしくおねがいします」

もう仲良くなってる…流石美優ちゃん。
いや…まさかこんな事が起こるとは思わなかった。
Twitterで仲良くしてた人が同じ高校に入学して来るなんて。
なんだが話しかけ辛くなっちゃうかもな…これ…。
まあいいや、これからの高校生活で慣れればなんとかなるでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

現 ─うつつ─

きよし
ミステリー
──この、今見ている景色が夢なのか現実なのか、明確に判断することは可能だろうか。 ある十六歳の少年は、父親のお盆休みに家族四人で父の実家に向かっていた。 実家は長野県松本市にあり、父の運転する車で観光を楽しみながらの旅であった。 平和そのものの日常は、ある宿場町を過ぎた辺りで一転する。 現実か夢か、戸惑う少年は、次第に精神的に追い詰められていく。 本作はフランツ・カフカの「変身」に着想を得て、なにか書けないかとプロットを考えてみたのですが、上手くまとめられませんでした。 「変身」では朝起きると毒虫に変化していたので、知っている人に変わる、知らない人に変わる、小動物に変わる、等など考えてみたのですが、よくある設定で面白くない。よくある設定でおもしろいもの、と思い出来上がったのがこのお話です。 今までとは違うものを書きたかったので、そこはクリアできているとは思います。 面白いかの判断は読んでくださった皆さんが決めることでしょう。 お口に合えば幸いです。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...