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橋倉 静

未知

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………

動画投稿を始めてから三週間が経った。
でも、再生数は大体が2~3桁。1000回以上は本当に稀。
とりあえず千鶴ちゃんから「声出しはね、最初からやるかかなり有名になってからの二択だよ。私は最初から声出ししたけど。」って聞いたから声出しをしているけど、一向に伸びる気配がない。私がプレイしてるゲームがメジャーではないのもあるんだろうけど、こんなに伸びないものなのかな?
千鶴ちゃんも最初はこんな感じだったらしいし、耐えなきゃいけないよね…
でもわざわざ時間を削ってまで投稿してるのに、これじゃあ不安になる。
でもここでやめたら今までの時間は何だったのか、無駄だったんじゃないか、とか色々考えちゃう。
今までの時間を無駄にしない為にも、何とか伸びる努力をしないとな…

そんな事を考えながらYouTubeのおススメ欄をスクロールしていく。
…さっきから目に留まるものがある。それは、アニメや映画の一部分を無断転載した動画。
でも、人気作品なだけあって再生回数は凄い。100万回越えが大半で時には1000万回以上の動画だってある。
一瞬こういう動画を投稿するか悩んだ。でも無断転載はダメだって聞いた事あるしなぁ…
私だって昔はよくこういう無断転載を観た事がある。でも音が高かったり、画面が小さかったりして見づらかった。
今考えれば、あれは規約に引っ掛からない為の対策なんだろう。でもそこまでして無断転載する意味って何…?
もちろん公式が投稿してる切り抜きだってある。でも再生回数は無断転載に劣っている事が多い。
そんな事ってあって良いのだろうか?他人が作ったものを無断転載して伸びるよりも、自分が頑張って作った動画で有名になった方が達成感もあるし、モチベーションだって保つ。

…でも、正直なところうんざりしている。折角時間をかけて作った動画でも、再生回数は伸びない。
かと言ってやめる訳にはいかない。折角使った時間を無駄にするくらいだったらスッキリ終わらせたい。
…どうしよう…

…いや、やっぱ正直に続けたほうがいいよね。
無断転載なんて、したところで何もメリットがないし、バレた時がまずい。
だから大人しくこの結果を認めて、何時も通りに投稿していこ。

何週間かして、メインチャンネルの動画が伸びてきた。
そしてついに…登録者が100人を越えた。

──やったぁぁぁあっ!!

あまりの喜びに、声に出てしまうほど私は嬉しかった。
ついに努力が実を結んだんだ!
最初はちょっと挫折しそうだったけど、何とか一つの目標を達成できた!
なんだかやる気も出てきたし、もっと動画作ろっかな

───

静「ねぇ千鶴」
千鶴「何?」
静「千鶴ってTwitterとかってやってるの?」
千鶴「うん、やってるよ。私が投稿した動画を宣伝出来るし、何よりみんなと会話するのが楽しいんだ~」
静「へぇ、そうなんだね。」
千鶴「静もやれば?そうすれば宣伝出来るし、人との関わりももっと沢山持てるんじゃない?」
静「え~…」

私は少し、いや、大分Twitterに不信感を持っていた。
だって、どこの誰だか分からない人と急に仲良くなれるかもしれないなんて、怖いじゃない。
何されるかも分からないんだし…

千鶴「それなら、私が静の動画を宣伝してあげよっか?」
静「えっ?いいの?」
千鶴「いいよいいよ~。私のネッ友も優しい人ばっかりだしすぐに広めてくれるよ」
静「へぇ~…そうなんだね…」
千鶴「静もやれば良いのに、みんな優しいし面白いよ?」

確かに、私が抱くTwitterへの不信感はただの想像でしかない。
幼い頃にテレビで飛行機墜落とか電車脱線のニュースを見たせいで飛行機が怖い、みたいな感じかもしれない。
実際はそんな事なくて、みんな優しく接してくれるかもしれない。
メインチャンネルでもコメント欄に「Twitterはやってないんですか?」とか結構書かれてるし、やってみるのも良いかもしれない。

静「そっか、じゃあ私もインストールしてみるよ。」
千鶴「えっ!?本当に?じゃあアカウント出来たらさ、ID私に送っといて~!」
静「分かった、それじゃまたね」
千鶴「うん!またね~」

家に着き、やるべき事も全てやった後、私はTwitterをインストールしてみた。
アカウントも出来たし、IDを千鶴ちゃんに送ってあげよう。

千鶴ちゃんにTwitterのIDを送ってあげた。そしたら千鶴ちゃんからもIDが送られてきた。きっとこれは千鶴ちゃんのアカウントだろう。
早速IDを検索してみる。あ、出てきた。そういえば千鶴ちゃんは''くるみ''っていうニックネームで活動してたっけ。
それにしても凄いなぁ…Twitterでもフォロワーが500人以上いる…
千鶴ちゃんと絡んでる人も男女問わずかなりの人数がいる。
そんな中、私の動画が宣伝されてるツイートを見つけた。
''70いいね 28リツイート''
これが多い数値なのかはよくわからないけど、少なくはないんだろうな。

宣伝効果は的面だった。千鶴ちゃんが宣伝してくれた動画の再生回数は他の動画の2倍くらいにもなった。
ついでに私のTwitterアカウントも紹介してくれたらしい。お陰でまだ何もツイートしてないのにフォロワーが30人いる。

とりあえず自己紹介ツイートはしておかないとね…

まあ、当たり障りのないであろう情報を載せた。
性別、年齢、私のYouTubeアカウント、おススメの動画…
流石に住んでる県とか、顔写真とかは載せなかった。そこまでする必要はないだろうし。
すると色んな人から反応が来た。
いいねとかリツイートは勿論、リプライも来た。
これからよろしくね、とか仲良くしようとか。
思っていたよりみんな常識があった。敬語を使ってる人はあまりいなかったけど、それでもよろしくが言えるだけいいと思う。
これは私の偏見でしかないけど、Twitterをやってる人なんて女子中学生の自己紹介ツイートなんて見かけたら、君のスリーサイズを教えてくれ!!って言ってくる人間しかいないと思ってたからちょっと意外だった。

送られてきたリプライに返信を送ってたら見覚えのある名前を見つけた。
千鶴ちゃんにアドバイスを教えてもらった日、千鶴ちゃんが口にしていた名前だった。
『ルーイ』と名乗る彼は、送られてきたリプライの中で唯一敬語を使っていた。
気になってプロフィールを見てみると、千鶴ちゃん程では無いけど人気な様子だった。
なんとなくルーイさんのツイートを見ていて、彼について分かったことがある。

彼は男性の方であって、私や千鶴ちゃんと同年齢だという事。
性格は真面目そうで、頭が良いという事。
千鶴ちゃんが宣伝ツイートをする前から私の事を知っている事。

とりあえず、私は送られてきたリプライへの返信が終わった。
何から始めればいいか分からないけど、やってく内に理解してくでしょ。
後は、リプライを送ってくれた人達をフォローしよう。
そうしてフォローしていくと、ルーイさんから返信が来ていた。
どうやらルーイさんは、Twitterの事を何も知らないであろう私に用語とか色々教えてくれるらしい。
最初は断ろうかと思ったけど、本当に私は何も知らないし、仲を深めるいい機会だと思い聞いてみる事にした。

フォローを返す事を、フォロバって言う。
ツイートが伸びる事をバズると言う。
今ルーイさんが私に連絡している手段をDM(ダイレクトメッセージ)と言う。

他にも色々教えてくれた。その過程でまたルーイさんについて一つ分かった事がある。
それは、丁寧な人だという事。この人なら信頼出来そうかも。

静「色々教えてくれてありがとうございました。」
ルーイ「いえいえ、また何か分からない事があったら私に訊いてください。分かる範囲ですが教えますので。」

千鶴ちゃんにこの人の事を訊いてみよう。彼女ならこの人とも関わりが長いはず。

静「千鶴ちゃん、Twitterのルーイさんって人知ってる?」
千鶴「知ってるよ。ルーイさんはね、私がTwitter初めてかなり最初の方からずっと絡んでる人。優しいし面白いんだよね~」
静「そうなんだね、ありがとう。」

やっぱり、優しくて面白いらしい。
とりあえず、Twitterで困ったらルーイさんに訊けばいいかな。

なんとなくTwitterを見てみる。TLではみんながワイワイ話してて、なんだか楽しそうだな。
その中に、外島さんのファンらしき人を見つけた。その人のアカウント名は『よーた』
…なんかいかにも本名っぽい名前だと思う。まあいいや。
外島さんのファンなら、ファン同士でしか分からない話も出来そうだし、そういう話が出来る友達は学校にいない。
私はよーたさんにリプを送ってみた。3分くらいして、いいねと返信が来た。
ああ、なんかいい気分。共通の好きなものがある人と会話するって楽しいな。
とりあえず外島さんのファンとして、よーたさんとは分かり合えそうだからフォローした。
するとすぐフォロバされた。Twitterってこういうものなんだろうか。

やる事は終わり、Twitterも初めてみて、今日の動画も投稿したし、もう寝ようかな。
そう思いながらTwitterを見ていた。
色んな人とリプで会話したりしてる内に、なんだか上手くやっていけそうな気がしてきた。
千鶴ちゃんの言う通り、みんな優しいし、千鶴ちゃんが紹介した事もあってか趣味が近い人も多い。これならすぐに馴染めそう。
そんな事を考えながらふと時計を見ると23:00だった。

…もうこんな時間!?早く寝なきゃ!!

…Twitterは楽しいけど、これはこれでマズイかもしれない。
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