予測者~Prophet~

高ちゃん

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獣人族戦編

未知の力

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五日前獣人族である噂が流れた。
あの四天王の一人、タウロスさんがやられたという噂だ。
何かを調べており出かけてから帰ってこないという。
その時は不謹慎な噂が流れるものだと呆れていた。
というのもあのタウロスさんが負けるところが想像できない。
能力が弱く落ちこぼれと言われていたが、努力と結果でのしあがってきた人だ。
俺にも言っていた。
どんな力も使い方次第だ、腐るなと。
その言葉通り、あの人は強い能力者相手にも打ち勝ってきた。
そうそうこの使い方。
獣人族に能力を使いやすい環境作りを浸透させたのもこの人だ。
そのおかげで我々がここまでこれたのだ。
そんな武勇伝が多く、貢献度も高いタウロスさんが死んだ扱いなんて。
そう思っていた。
だが、現実は非情だった。
調査隊が、タウロスさんの死体を発見した。
ブラウン草原のオーガ岩の近くで首を斬られていたらしい。
オーガ岩だが崩れていて斧が埋まっていたんだとか。
どういう方法かは分からないが相手は斧を封じ、タウロスさんを殺したんだ。
その時、怒りのような感情はもちろんあった。
尊敬していた方を殺されたんだから。
だが、あの方は戦士で死と隣り合わせだった。
なのでそれを恨むなどは違うのは分かっている。
怒りはすぐにそれほど無くなった。
それ以上に獣人族で流れた空気。
恐ろしいやつが敵対している可能性がある。
その恐れの方が強くなっていった。
獣人族の長はすぐに会議を始めた。
それは一晩、長い時間を一睡もせず行われたらしい。
そして僕らに告げられた。
敵は人間族であると。
我々は人間族と再び戦争すると。
馬鹿なと思った。
人間族は前の戦いでボロボロのはずだ。
今更タウロスさんを倒せる戦力があるのか?
そう思ったが、恐らく不意打ちの類だという説明も受けた。
どうも長たちは人間族の仕業とようだった。
だが、俺らはどうも納得いかない。
今、現在先の戦いに向け洞窟整備の仕事をしているのだが、まあモチベーションは上がらない。
本当に人間族と決め打って整備して大丈夫なのか?
その不安を噛み殺しながら命令を実行する。
「スネークさん、第一段階終了しました!」
部下の一人が俺に報告してきた。
「よし、それじゃあ次に穴を掘り、そこに泥を埋め立てる」
「「はい!!」」
部下十数人の返事が響く。
俺は今この洞窟整備のリーダーを務めてる。
理由は簡単、暗視ができるから。
洞窟整備は明かりを強くした結果見つかってしまうという事が無いようにしている。
これは実際あった事例だ。
なので最低限の、本当に小さい明りで行っている。
そのため暗視のできる俺が一番指示係に向いているというわけだ。
さて俺も洞窟が崩れないかの調査をもう一度やるか。
そんな時だ。
「スネークさん」
部下の一人が俺に声をかけた。
「どうした?」
「何か、音が聞こえませんか?」
その言葉に俺は耳を傾ける。
確かによく聞くと何か聞こえる。
カツーン、カツーン。
遠くから鳴り響く。
「本当だ、さすがラビット、耳がいいな」
その音は段々近づく。
何となくわかってきた。
「誰か、来る」
もしここに来るのが仲間ならあらかじめ連絡が入るようになっている。
それが無いという事は、警戒すべきだろ。
俺はバッグから音石を取り出し、壁に充てる。
トントン、トン。
小さいが俺らには聞こえる大きさだ。
そしてその音を聞いた部下たちは、作業の手を止める。
そして各々武器を手にとる。
今のは警戒の合図音だ。
このリズムでなった時武器を持つよう徹底している。
かくいう俺も、相棒である剣を手にした。
さて、どいつだ。
どんな奴が。
俺は暗視ではっきり見えているため、奥を見張る。
絶対に見逃さないようにと。
そして、少しずつ足音の人物が見えてくる。
そこにいたのは、見たことない人物。
…誰だ奴は。
見たことない素材でできている黒いフードの男。
前髪が長く、目がどうなっているのかあまり見えない。
そんな男だった。
そしてそんな男の右手に短剣を持っているのを確認した。
確定だ、敵だ。
トントン、トン。
俺はもう一度警戒音を鳴らす。
二回目は要警戒。
部下たちの気が引き締まる。
そして男は足を止め、こちらを見る。
「…武器持ってる…あぁ…めんどくさい…」
男は弱弱しくぶつぶつと何か言っている。
「…あぁ、良かったらなんだけど、降参する気ない?」
そいつはと突然そんなことを言い出した。
何を馬鹿な。
恐らくだがこいつはこの状況が分かっていない。
こちらには数十人。
多少とは言え暗闇での戦いを心得ているものだ。
更に俺は完全に暗視している。
はっきりと姿が見える。
そんな状態で、降参だと。
しかも突然やってきて。
ということは恐らく多少は見えてても全てが見えていない。
こちらを少人数だと誤解している可能性が高い。
ならば、大丈夫、勝機は大いにある。
そして、俺ら皆同じ気持ちだったのだろう。
誰一人として声を出さない。
どこまで見えているか分からないんだ、声を出し、場所の情報アドバンテージを与える理由がない。
流石だ皆。
「…無視ってことは…戦う気満々じゃん…めんどくさ…」
すると、男は短剣を構えて。
そして
「ガッ…」
消えたかと思ったら、近くで声が聞こえた。
チラッとそちらを見ると。
奴の手前にいた部下の首に、短剣を刺している奴の姿があった。
ゾッという寒気がした。
ヤバい、ヤバいヤバい、こいつ早いぞ。
俺は思わず一歩下がる。
すると男はこっちを見た。
目が合う。
「あんた反応早かったね…多分見えてるな…」
男は短剣を部下の首から抜き。
そして
ぐちゅっ
一瞬そんな音が俺の首からーーー




『もしもーし高橋君…』
「聞こえてるぞ獅童」
僕は横に置いてあった、所謂電話のようなものを手に取る。
「その洞窟はどんな様子だ」
『…あー…何か穴掘る道具と、泥かなこれ?それがめっちゃある…』
「ありがとう!引き続き、クライン洞窟に向かってくれ」
『え、ちょめんd』
僕は無視して通話を切る。
やはりスルダ洞窟の方にいたか。
僕はロードマップを覗きながら思考に走る。
ここにあるのはグランドヘヴンの人間族行動範囲のマップだ。
僕はこれと、過去の獣人族との戦闘レポートを使いながら行動を予測している。
例えば、過去にも獣人族は自分達にとって最高な舞台を整える戦い方をしているが、その場所に丸を付ける。
すると丸の位置がある一定の場所をぐるっと囲んでいることが分かる。
つまりそこを中心とした範囲が主な獣人族の行動範囲であり、恐らく住処もその辺にあるのだろう。
次に獣人族の主な戦闘者をピックアップ。
そいつらの能力を考察する。
例えば先ほどの泥のフィールドは恐らく足を取られるようにする相手。
「『馬鹿力』のタイガーだろうな」
そいつは力はとんでもないがそのかわり早くはない。
高速で動く相手に弱い。
なので洞窟で一本道にする手法をよくとる。
そこでこの辺の洞窟で道が狭く、丈夫めのところはどこだと聞き、白羽の矢が立ったのがここだ。
こんな感じで少しずつ、先に攻撃を仕掛けに行く。
「それにしても多すぎる…どれだけやる予定だったんだ」
既に9か所ぐらいを潰している。
それも多くの人間もおらず、僕らルイン隊と30人ほどのドルマ隊のみだ。
一応場所案内にセラミ隊は使っているが、どうやら戦闘向けのスキルではないらしく、攻撃には役立てないらしい。
『もしもし、高橋君』
宮垣から連絡が入る。
「どうした宮垣?」
『キャバレー森に到着したよ』
「ありがとう、そこにいそうか?」
『そうだね、今狼っぽいのが見えたよ』
「分かった、そしたら始めてくれ」
『分かった、ぶはっ!!』
何かやられたような声が聞こえる。
「どうした?」
『はぁはぁ…テン×ジンは何時まで経っても…記憶メモリーだけでも…いい!!』
あぁ、そういえば彼女はを使う能力だったな。
あちらから通話が切れた。
よし、キャバレー森の方は正解だった。
「問題は…こいつだけだか…」
僕はの資料を見ながら、悩ませていた。
こいつだけは、少し考察しずらいんだよな…





「洞窟班、定期連絡ありませんでした!」
「調査班、定期連絡ありませんでした!」
「岩山班、定期連絡ありませんでした!」
そんな隊員の報告が止まない。
無事かの確認をとる定期連絡。
ほぼ形骸化していた文化だが、まさかこんなことになるとは。
「定期連絡のあった班は!?」
「訓練班、食料班、貿易班、整備班のみです」
「それだけか!?」
全15班もある我々の班。
そのうちたった4班だけしか定期連絡が無かっただと?
察しの悪い俺でも分かる。
何者かによって攻撃を受けている。
それも恐ろしい、何者かによって。
「!!、隊長!!森林班から連絡が!!」
「何!!よかったすぐに出てくれ!!」
部下の持っている通話アイテムが震えている。
部下は赤いボタンを押す。
「こちら本部!!森林班無事か!?」
『助けてくれ!!!!』
通話から聞こえた声は悲鳴だった。
「どうした!?」
部下が声を上げる。
『奴の!!奴の血が当たったやつらが!!』
「血!?何のことだ!?」
『皆!!あれに当たって!!体が溶けて…ヒッ!?』
取り乱し会話ができない状態になっている。
そんな状態から悲鳴が聞こえた。
『ぎゃぁぁぁぁ熱い!!熱い!!溶ける!!』
「溶ける…?どうした!?落ち着け!?」
『止めろ!!それ以上つけないで!!嫌だぁぁぁぁ!!』
「おい!!応答せよ!!森林班!!森林班!!」
『あ…あ…あ…』
そこから聞こえる音は消え入るようなそんな声だけ。
少しするとそれすら聞こえない。
「…っく!流石にピンチってやつかな…!」
思わず苦笑いしてしまう。
くっそ、向いていない隊長業しているときになんでこんな非常事態になるんだ。
「…待て、確か領空班にはあいつがいただろ、奴もやられたのか?」
「確認してみます」
部下はアイテムを操作する。
少しして、軽い声が聞こえてくる。
『あ、もしもーし、ごっめーん連絡忘れてたー』
その声に少しイラッとしたが、ぐッとこらえ部下からアイテムを借りる。
「…俺だ、エレファンだ」
『げっ隊長…どうしたんすかイライラなさってー』
どうやら事態を把握していないようだ。
「…多くの班が攻撃を受けた、恐らく壊滅状態だろう」
『え…マジ?』
流石にトーンが落ちている。
「あぁ、さっき森林班から連絡があって、あそこは全滅したであろう状態だ」
『うっわマジか怖!?』
「あぁ、何か血を使った相手を溶かす能力者によってやられたみたいだ」
『血で溶かす?何それ、オウルっち知ってる?』
奴は後ろにいるであろうオウルに話をふっていた。
『オウルっちも知らないって、そんなやついるんだね』
「そうか…」
オウルは我々獣人族の中でもトップクラスの知識人だ。
そんな奴が知らないという事は。
「…何か未知の能力が動いている」
『あぁ、それもう恐ろしいほど、強力なね』
流石のこいつも少し真面目な声になっていた。
『…なぁエレファン、俺たちもやるしかないみたいだね』
「おい、今は隊長だぞ」
『悪いね隊長、でも俺たちが動く事態にはなるよ絶対』
「…それは命令を待つ」
俺はこの時何を思っていたのだろう。
恐怖だろうか。
いやそれよりーー
『んでこれからどうすんの?』
「…とりあえず生存確認をとりたい、無事なものは全員撤退させる」
『OK!んじゃ領空班!帰るよー』
そんな声が聞こえ、通話は切れた。
…未知の力。
この短時間で多くの班を壊滅させた辺り、一人ではないのだろう。
何人いるんだ?10人か?100人か?
敵は何だ?まさか竜族が動き出したか?
「ふっ…」
思わずこぼれた声に部下が怯む。
おっと悪いな。
だが、思わず出てしまうよ。
「やはり、隊長業より、こういう方が燃えるなぁ!!」
待ってろ未知の力ども。
必ず俺の手で皆殺しにしてやる。
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