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男っぽい部屋vs女物パジャマ
しおりを挟む余談だが妻は20才、俺は32才。
いわゆる若干、年の差婚だ。
こんな若い子が、俺のプロポーズに二つ返事で応えてくれた……幸せ者だと今も本気で思っている。
誤解があるといけないので、あらかじめ言っておくが、もちろん妻を選んだのは若さが理由ではない。愛した女性がたまたま若かったと言う事だ。
「それでは……改めて当日の出来事を確認するぞ」
「うん。あっ!このウニ、凄いプリプリしてるよ?も一個頼もうよ」
「…………」
若いにもほどがある。子供か?
本来ならば、『ふざけるな!』と怒りを露わにする場面だが、グッと堪えた。
結婚直後、一度だけ本気で怒鳴った事がある。
しかしその際、『怖いから怒らないで』と大泣きをされた。『ヤダヤダヤダ!』と子供の様に駄々をこね、収拾がつかなくなった。
そして最後は子供みたいな声と表情で『怒る大ちゃんヤダよ』なんて言われた。思わず抱きしめながら『わかった。お前を泣かす様な事はしない』と、男を見せた。そして、熱い夜を過ごした。いや、そんな事はどうでもいい。
今回の尋問内容は、浮気疑惑だ。
しかも、朝起きたら知らない家のベッドと言うオマケ付き。
とりあえずウニを頼んだ。
「まず、同窓会を実施した居酒屋はどこだ?」
「駅前の鳥家族。貸し切り」
「何時からだった?」
「7時から」
「どのくらい酒を飲んだんだ?そして、何時頃まで記憶があるんだ?」
「え~っ?覚えてないよ」
「…………」
おいおい。尋問にならないぞ?
「ゴホン――状況はわかった。一緒にいた友達には確認したか?」
「え?聞いてないよ?そうか!確認すればいいんだ!大ちゃん、あったまいい~」
「…………」
こいつは女友達はいないな。むしろ嫌われるタイプだな。
とりあえず寿司達を食べよう。
最高級寿司を16貫ほど堪能した。
「それで朝起きたら知らない家のベッドだったと。誰もいなかったと言っていたが、アパートか?一戸建てか?部屋は男部屋か?カギはどうした?」
「マンションだよ。部屋はね~男性っぽかった。だから浮気しちゃったのかな?って思った。因みに女物のパジャマ着てた。あとなんだっけ?――――そうだ!カギだよね?そんなのないよ。閉めないで帰って来たよ」
「女物のパジャマ?じゃあ浮気の可能性は低いんじゃないか?」
「え?でも、部屋は男っぽかったよ?鉄アレイとか筋トレ道具あったし。あと重量挙げも置いてあった!」
「バーベルな」
「えっ?あれバーベルって言うんだ。ドーベルマンみたいで、強そうな名前だね」
「ーベルしか一致してないぞ」
「あと、部屋なんか臭かった」
「そうか。男の一人暮らしの生活臭だな。だが、女物パジャマ着てたんだろ?女性と一緒に暮らしてるんじゃないか?」
「そうかな?女装趣味かもよ?」
「…………」
おいおい、お前は容疑者だぞ?
なんで、俺の前に垂れ下がっている、無罪であって欲しいと言う名の蜘蛛の糸を切るんだ?
「とりあえず、他に話す事はないな?」
「うん。ウニ、あと一個だけ頼んでもいい?」
「一個と言わず、十個くらい頼むか?何ならお持ち帰り用に包んでもらうか?」
「駄目だよ。軍艦は時間経つと海苔がフニャフニャになっちゃうじゃん。ウニこぼれちゃうよ。持ち帰りなら、トロとアワビじゃない?あと、玉子」
「よし。わかった。ハマチとノドグロ、金目鯛を包んで貰おう」
「あと、穴子も!」
「ああ、わかった。他にはいいか?」
「うん!大丈夫!帰って食べよ!」
「…………」
耐えたぞ。
もうどうでもいいか?
とりあえず帰ろう。
俺達は会計で25000円を支払い、完全予約制個室高級寿司屋を後にした。
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