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探偵のエール
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椅子を座り外してしまい、ヒザカックンされてしまった人みたいに倒れてしまった。
「大丈夫ですか?」
太宰探偵は声をかけてくれたが、言葉のみで俺には指一本も触れなかった。
「は、はい……大丈夫です。ちょっとビックリしてしまって」
わかって欲しい。
他愛もない最後の報告を聞くつもりで、ここに来たんだ。更に始めての物的証拠を見せられて谷底に突き落とされたんだ。ビックリなんて言葉なんか生ぬるい。
「芥川様。少し時間を起きましょうか?」
「いいえ。続けて下さい」
俺は再び慎重に椅子へと腰を降ろした。
「ここまでの事実だけをまとめますと、大学卒業後、奥様はご結婚されるまでの間、職場の同僚女性と交際も破局。そして性同一性障害の三島さんとの関係性は不明ですが、タイへ2回渡航、しかし先日三島さんのマンションにて不貞行為と見られる抱擁を交わしました。ここまではよろしいでしょうか?」
「はい……」
「ここからは推測の域を出ませんが、奥様は二股をかけていた可能性が高いです。但しこれは婚姻前の過去の事です。2回の渡航も婚姻前、一度婚姻を期に距離を置かれたと思います。そして最近になり、芥川様が奥様の異変が顕著になったとお聞きしている事とこちらの写真から、最近になり何かしらの関係が再開されたと思います」
「はい」
「そして妊娠に関してですが……」
「ちょっと待って下さい。一つ確認させて下さい。三島なにがしが受けた性転換手術は間違いないんでしょうか?」
「間違いありません。こちらはタイの病院から入手した性転換……いや、性別適合手術の実施記録のコピーです。これによると二年前の渡航の際に実施した事が記載されています。そして、審理の請求をしていなかった性別変更に関しても、既に審理を請求していた事がわかりました」
俺はその言葉を聞き、一度下を向き息を整えた。そして自らの両手を机の上で恋人繋ぎで握りしめた。
「わかりました。ならば問題ありません」
「はい?」
「問題ありません」
「え?問題ない……ですか?」
「問題ありません。手術をしているのであるならば、三島と妻は物理的に子供を作る事は不可能ですよね?変な話しで申し訳ありませんが、三島が手術前に精子を冷凍保管して、このタイミングで授精させる事も今の医学では可能だとは思いますが、私には現実的ではない気がします」
「………」
太宰探偵は俺から見て、現実的ではないと言う発言に反論をしたいと言う様子が見てとれた。
「ですので、私は相手が女性であれば浮気は許します。元々専業主婦でいるのは私の希望なのですから、その代償と思う事にします」
「代償……ですか?」
「はい。後は無事に子供が産まれて落ち着いた頃、話してみようかと思います」
「三島さんとの関係でしょうか?」
「いいえ。私を愛して結婚したのか?男性と女性両方を同じ様に愛せるのか?もちろん返答が私との結婚が完全に偽りであればその時考えます。あ、今回の証拠に関しては、データにしてメールで送って下さい。もちろん既に調査は終わっていますから手数料なり費用が発生するならお支払い致します。今まで本当にお世話になりました」
「…………はい。わかりました」
こうして俺は、太宰探偵に心からの感謝を伝えビルを出た。
これでいい。
「芥川様!」
「え?」
ビルを出て5メートルくらい歩いた所で慌てて降りてきたアニメ声に呼び止められた。やはり特徴的な声と思ったのは俺だけじゃない。周囲の2、3人の人達も驚いて太宰探偵を見ている。
「太宰さん?」
数秒の沈黙で見つめ合った後、何も言わずペコリと太宰探偵は頭を下げた。俺もそれに釣られ頭を下げた。
そして、同時に振り返り俺は帰宅へ、太宰探偵はビルへと入って言った。
「芥川様………頑張って……下さい」
もちろん、太宰探偵のつぶやきはオレの耳には聞こえなかった。
「大丈夫ですか?」
太宰探偵は声をかけてくれたが、言葉のみで俺には指一本も触れなかった。
「は、はい……大丈夫です。ちょっとビックリしてしまって」
わかって欲しい。
他愛もない最後の報告を聞くつもりで、ここに来たんだ。更に始めての物的証拠を見せられて谷底に突き落とされたんだ。ビックリなんて言葉なんか生ぬるい。
「芥川様。少し時間を起きましょうか?」
「いいえ。続けて下さい」
俺は再び慎重に椅子へと腰を降ろした。
「ここまでの事実だけをまとめますと、大学卒業後、奥様はご結婚されるまでの間、職場の同僚女性と交際も破局。そして性同一性障害の三島さんとの関係性は不明ですが、タイへ2回渡航、しかし先日三島さんのマンションにて不貞行為と見られる抱擁を交わしました。ここまではよろしいでしょうか?」
「はい……」
「ここからは推測の域を出ませんが、奥様は二股をかけていた可能性が高いです。但しこれは婚姻前の過去の事です。2回の渡航も婚姻前、一度婚姻を期に距離を置かれたと思います。そして最近になり、芥川様が奥様の異変が顕著になったとお聞きしている事とこちらの写真から、最近になり何かしらの関係が再開されたと思います」
「はい」
「そして妊娠に関してですが……」
「ちょっと待って下さい。一つ確認させて下さい。三島なにがしが受けた性転換手術は間違いないんでしょうか?」
「間違いありません。こちらはタイの病院から入手した性転換……いや、性別適合手術の実施記録のコピーです。これによると二年前の渡航の際に実施した事が記載されています。そして、審理の請求をしていなかった性別変更に関しても、既に審理を請求していた事がわかりました」
俺はその言葉を聞き、一度下を向き息を整えた。そして自らの両手を机の上で恋人繋ぎで握りしめた。
「わかりました。ならば問題ありません」
「はい?」
「問題ありません」
「え?問題ない……ですか?」
「問題ありません。手術をしているのであるならば、三島と妻は物理的に子供を作る事は不可能ですよね?変な話しで申し訳ありませんが、三島が手術前に精子を冷凍保管して、このタイミングで授精させる事も今の医学では可能だとは思いますが、私には現実的ではない気がします」
「………」
太宰探偵は俺から見て、現実的ではないと言う発言に反論をしたいと言う様子が見てとれた。
「ですので、私は相手が女性であれば浮気は許します。元々専業主婦でいるのは私の希望なのですから、その代償と思う事にします」
「代償……ですか?」
「はい。後は無事に子供が産まれて落ち着いた頃、話してみようかと思います」
「三島さんとの関係でしょうか?」
「いいえ。私を愛して結婚したのか?男性と女性両方を同じ様に愛せるのか?もちろん返答が私との結婚が完全に偽りであればその時考えます。あ、今回の証拠に関しては、データにしてメールで送って下さい。もちろん既に調査は終わっていますから手数料なり費用が発生するならお支払い致します。今まで本当にお世話になりました」
「…………はい。わかりました」
こうして俺は、太宰探偵に心からの感謝を伝えビルを出た。
これでいい。
「芥川様!」
「え?」
ビルを出て5メートルくらい歩いた所で慌てて降りてきたアニメ声に呼び止められた。やはり特徴的な声と思ったのは俺だけじゃない。周囲の2、3人の人達も驚いて太宰探偵を見ている。
「太宰さん?」
数秒の沈黙で見つめ合った後、何も言わずペコリと太宰探偵は頭を下げた。俺もそれに釣られ頭を下げた。
そして、同時に振り返り俺は帰宅へ、太宰探偵はビルへと入って言った。
「芥川様………頑張って……下さい」
もちろん、太宰探偵のつぶやきはオレの耳には聞こえなかった。
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