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心の整理②
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「そして奥様と三島さんの関係性ですが、どうやら大学時代からお付き合いをしていた可能性があります」
「はい?」
大学時代から?「大学時代に」じゃないのか?「大学時代から」だと現在進行系に聞こえるぞ。
「但し、可能性と申し上げたのはそれを証明する、他者からの証言や具体的な証拠が得られませんでした。ただ、かなり親しくされていたのは事実です。それは三島さんの友人の方に話を伺う事が出来た事から判断致しました」
「でも、彼は現在は性同一性障害ですよね?心も身体も女性ですよね?」
「そうです。けれども戸籍上は男性のままなのです。現在は一定の条件を全て満たせば戸籍上の変更の申し立てをする事も可能です。現在婚姻をしていない事、子供がいない事、手術をしている事、二人以上の医師の診断を受けている事などです。しかし、三島さんは全ての条件を満たしているのにも関わらず、性別変更の審理の請求をしていません」
「ちょっと待って下さい!その事と妻の浮気疑惑に何か関係があるのですか?………あ、すいません……」
思考がまとまらない。つい語気を荒らげてしまった。
学生時代から付きあっていた可能性がある?
その時は違うかも知れないが、現在は戸籍上以外は女性だぞ?
現在はどんな関係なんだ?
そもそも浮気として成立してないだろ?
「関係はあるともないとも言い切れません。そして、奥様自身……」
「………」
(奥様自身?なんだ?)
「同性愛でもある事実が判明致しました」
「はい?同性愛『でも』ある?」
「はい。女性も男性も同じ様に愛情を持てる……いわゆるバイセクシャルと言う可能性です」
「………」
バイセクシャルだと?
太宰探偵は、なんで衝撃事実の数々をこうも平然と語るんだ?まあそれも仕事だから……とは言っても少しは受け手の事を考えてくれてもいいんじゃないか?
太宰探偵はそんな俺の思いを、地面に落としてタバコを消す様にグリグリと踏みつけ、更に畳み掛ける。
「もちろん、正式に診断を受けている訳ではありませんが、かつての同僚で現在は退職された女性がお付き合いをしていたとの証言が得られました。ご本人様にもお会いし確認させて頂きました。芥川様との交際をきっかけに精算された様ですが。そしてもちろん身体の関係もあったそうです」
身体の関係はどうでもいいだろ?女性同士だぞ!いやいやいや、どうでもいいと言う事はないか?
「ここからは私共の推察ですが、まず奥様と三島さんは大学時代お付き合いをしていた、その後三島さんが性同一性障害を発症され破局、その後奥様は同僚の方と交際、破局。何かしらのきっかけで再び三島さんと接点が出来た」
「なるほど」
「すでに奥様は旅行をキャンセルされていますが、旅行のお相手は三島さんです。この事は、旅行カバンを買った履歴及び二人分のホテルの予約データがある事が判明、更に事前にお伺いした旅行先とも一致している事から結論付けました」
「データ?そんなのがわかるんですか?」
「はい。出処は企業機密でお伝えする事は出来ませんが事実です。すでに奥様は妊娠され、旅行もキャンセルした事から、関係も何かしらの決着は付いていると思いますが、これ以上の調査を続けるかどうかのご指示を仰ぎたく、芥川様にご足労願った次第です」
「………」
ちょっと待ってくれ。情報量が多すぎる。そして受け入れる体制も整えられてない。無理だ。整理が付かない。葛藤する時間もない。ここは一時撤退しよう。
「申し訳ありません。返答は改めてさせて頂いてもよろしいでしょうか?ちょっと正直、混乱して整理が付きません」
「はい。では一時的に調査は保留にさせて頂きます。改めてのご連絡お待ちしております」
トントンと沢山の書類を机に叩いて整え、太宰探偵は私がいる個室を後にする。俺も意気消沈し、共に個室を後にした。
「はい?」
大学時代から?「大学時代に」じゃないのか?「大学時代から」だと現在進行系に聞こえるぞ。
「但し、可能性と申し上げたのはそれを証明する、他者からの証言や具体的な証拠が得られませんでした。ただ、かなり親しくされていたのは事実です。それは三島さんの友人の方に話を伺う事が出来た事から判断致しました」
「でも、彼は現在は性同一性障害ですよね?心も身体も女性ですよね?」
「そうです。けれども戸籍上は男性のままなのです。現在は一定の条件を全て満たせば戸籍上の変更の申し立てをする事も可能です。現在婚姻をしていない事、子供がいない事、手術をしている事、二人以上の医師の診断を受けている事などです。しかし、三島さんは全ての条件を満たしているのにも関わらず、性別変更の審理の請求をしていません」
「ちょっと待って下さい!その事と妻の浮気疑惑に何か関係があるのですか?………あ、すいません……」
思考がまとまらない。つい語気を荒らげてしまった。
学生時代から付きあっていた可能性がある?
その時は違うかも知れないが、現在は戸籍上以外は女性だぞ?
現在はどんな関係なんだ?
そもそも浮気として成立してないだろ?
「関係はあるともないとも言い切れません。そして、奥様自身……」
「………」
(奥様自身?なんだ?)
「同性愛でもある事実が判明致しました」
「はい?同性愛『でも』ある?」
「はい。女性も男性も同じ様に愛情を持てる……いわゆるバイセクシャルと言う可能性です」
「………」
バイセクシャルだと?
太宰探偵は、なんで衝撃事実の数々をこうも平然と語るんだ?まあそれも仕事だから……とは言っても少しは受け手の事を考えてくれてもいいんじゃないか?
太宰探偵はそんな俺の思いを、地面に落としてタバコを消す様にグリグリと踏みつけ、更に畳み掛ける。
「もちろん、正式に診断を受けている訳ではありませんが、かつての同僚で現在は退職された女性がお付き合いをしていたとの証言が得られました。ご本人様にもお会いし確認させて頂きました。芥川様との交際をきっかけに精算された様ですが。そしてもちろん身体の関係もあったそうです」
身体の関係はどうでもいいだろ?女性同士だぞ!いやいやいや、どうでもいいと言う事はないか?
「ここからは私共の推察ですが、まず奥様と三島さんは大学時代お付き合いをしていた、その後三島さんが性同一性障害を発症され破局、その後奥様は同僚の方と交際、破局。何かしらのきっかけで再び三島さんと接点が出来た」
「なるほど」
「すでに奥様は旅行をキャンセルされていますが、旅行のお相手は三島さんです。この事は、旅行カバンを買った履歴及び二人分のホテルの予約データがある事が判明、更に事前にお伺いした旅行先とも一致している事から結論付けました」
「データ?そんなのがわかるんですか?」
「はい。出処は企業機密でお伝えする事は出来ませんが事実です。すでに奥様は妊娠され、旅行もキャンセルした事から、関係も何かしらの決着は付いていると思いますが、これ以上の調査を続けるかどうかのご指示を仰ぎたく、芥川様にご足労願った次第です」
「………」
ちょっと待ってくれ。情報量が多すぎる。そして受け入れる体制も整えられてない。無理だ。整理が付かない。葛藤する時間もない。ここは一時撤退しよう。
「申し訳ありません。返答は改めてさせて頂いてもよろしいでしょうか?ちょっと正直、混乱して整理が付きません」
「はい。では一時的に調査は保留にさせて頂きます。改めてのご連絡お待ちしております」
トントンと沢山の書類を机に叩いて整え、太宰探偵は私がいる個室を後にする。俺も意気消沈し、共に個室を後にした。
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